前立腺がん患者のQOL、性機能とADTの影響に配慮を/Lancet Oncol

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/03/29

 

 昨今の医療のトピックに「治す医療から支える医療へ」がある。英国・リーズ大学のAmy Downing氏らは集団ベース研究により、進行前立腺がん患者と限局性前立腺がん患者とで、健康関連QOLアウトカムは大きく異なってはいないが、アンドロゲン除去療法を受けた患者ではホルモン機能と疲労に関してかなりの問題を抱えていることを明らかにした。著者は、「性機能障害がよくみられるものの、ほとんどの男性は有益な介入や支援を提供されていない。性機能リハビリの改善やアンドロゲン除去療法の影響を軽減するための対策が必要だ」とまとめている。Lancet Oncology誌2019年3月号の掲載報告。

 研究グループは、あらゆるステージの前立腺がん患者の機能的アウトカムと健康関連QOLを報告し、医療の提供に対する影響を明らかにする目的で、英国のがん登録データベースを活用した検討を行った。前立腺がん診断後18~42ヵ月の男性を特定し、郵送によるアンケート調査を行った。
 調査項目は、限局性前立腺患者の特異的QOL尺度であるEPIC-26による機能的アウトカム(尿失禁、排尿刺激・障害、排便、性機能、活力およびホルモン機能)、ならびに性機能障害に対する治療や一般的な健康関連QOLとした。また、一般的な健康関連QOLは、移動の程度、身の回りの管理、日常の活動、痛み/不快感、および不安/うつの5項目の健康状態をそれぞれ5段階で評価するEQ-5D-5Lを用いた。
 対数線形および二項ロジスティック回帰モデル(年齢、社会経済的貧困、およびその他の長期的な健康状態の数で補正)を用い、前立腺がんのステージおよび治療法で機能的アウトカムと健康関連QOLを比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・5万8,930例中3万5,823例(60.8%)から回答が得られ、そのうちStageを認知していたのは3万5,823例中3万733例(85.8%)であった。
・StageI/IIは1万9,599例(63.8%)、StageIIIは7,209例(23.4%)、StageIVは3,925例(12.8%)であった。
・EPIC-26の4項目(排尿、排便、性機能、ホルモン)のうち、性機能を除く3項目は平均補正後スコアが高く機能が良好であることが示されたが、性機能項目のスコアは非常に低かった。
・アンドロゲン除去療法を受けている患者は受けていない患者と比較し、ほてり(30.7%[95%CI:29.8~31.6] vs.5.4%[95%CI:5.0~5.8])、活力低下(29.4%[95%CI:28.6~30.3] vs.14.7%[95%CI:14.2~15.3])、体重増加(22.5%[95%CI:21.7~23.3] vs.6.9%[95%CI:6.5~7.3])に関して、中程度~重大な問題があると報告した。
・性機能障害はStageに関係なく一般的で(81.0%、95%CI:80.6~81.5)、半数以上の患者(1万8,782例、55.8%)はこの健康状態を改善するためのいかなる介入も提供されていなかった。
・自己評価による健康状態は、StageI~IIIの患者では類似していたが、StageIVの患者ではわずかに低下しており、転移を有する患者でEQ-5D-5Lのどの項目についても問題がないと回答したのは23.5%であった。

(ケアネット)