ブルガダ症候群、ICD植込み後の成績に関するメタアナリシス【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/03/12

 

 日本を含めたアジアでよくみられるブルガダ症候群に対する植え込み型除細動器(ICD)の適応は、以前と比べて変わってきており、どの症例で本当にICDが必要なのかの判断はいまだに難しい。オランダ・エラスムス大学医療センターのAdem Dereci氏らが、メタアナリシスの結果をJACC.Clinical Electrophysiology誌2019年2月号に報告している。

 本研究の目的は、ICDが植込まれたブルガダ症候群患者の予後を要約することである。ブルガダ症候群は、心臓伝導障害や突然死につながる心室性不整脈の発生リスクが高いことで知られる。臨床的な予後、適切および不適切なICD治療、そしてICD治療による合併症についてすべて要約したものはない。

22の研究から1,539例のデータを抽出
 オンラインのMEDLINEデータベースを用いて、2017年12月までに発表された報告が抽出され、ブルガダ症候群に対するICD植込み後の臨床成績と合併症に関する828の研究が調べられた。それらを慎重に評価した結果、22の研究から1,539例がメタアナリシスに組み込まれた。

ICDの適切作動は100患者・年当たり3.1
 1,539例の平均年齢は45歳、18%が女性で、79%の患者は一次予防目的、21%の患者は二次予防目的でICDが植込まれていた。4.9年の平均フォローアップ期間中、適切および不適切ICD作動は、100患者・年あたりそれぞれ3.1、3.3であった。

 100患者・年あたりの心臓関連死亡率は0.03で、非心臓関連死亡率は0.3であった。100患者・年あたりのICDに関連した合併症は、リードの不具合が1.6、精神的な合併症が1.3、感染症が0.6、リードの移動が0.4、その他の合併症が0.6であった。

リードの不具合、心房細動に伴う不適切作動の評価にはより長期の評価が必要
 ブルガダ症候群の患者で、心室性不整脈のリスクが高いと判断された患者は、ICD治療からかなりの恩恵を受ける可能性があり(100患者・年当たり3.1)、ICDの植込み後の心臓関連死亡率と非心臓関連死亡率は低い。ただし、不適切なICDによる治療とICDに伴う合併症は重篤な問題となりうる。

 今回の研究では患者の平均年齢が45歳であり、平均フォローアップ期間が5年程度しかないことは、ICDのリードの長期使用に伴う合併症や心房細動による不適切作動が十分に評価されていないことを示唆している。また、ブルガダ症候群のリスク評価手法はこれらの論文が発表された頃とは変わってきており(たとえばEPSの有効性は今では疑問視されている)、個別の症例に応じたリスク評価が必要と考えられる。

(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)

関連コンテンツ

循環器内科 米国臨床留学記