1型糖尿病患者に経口治療薬登場

提供元:ケアネット

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公開日:2019/02/05

 

 2019年1月17日、アステラス製薬株式会社は、寿製薬株式会社と共同開発したイプラグリフロジン(商品名:スーグラ)が、2018年12月に1型糖尿病への効能・効果および用法・用量追加の承認を受けたことを機に、都内でプレスセミナーを開催した。

 セミナーでは、SGLT2阻害薬の1型糖尿病への期待と課題、適正使用のポイントなどが解説された。

1型糖尿病患者への経口薬の適応が検討されてきた経緯

 セミナーでは、加来 浩平氏(川崎医科大学・川崎医療福祉大学 特任教授)を講師に迎え「1型糖尿病治療の新しい選択肢 ~SGLT2阻害薬スーグラ錠への期待と注意すべきポイント~」をテーマに講演が行われた。

 1型糖尿病は、全糖尿病患者の約6%(11万人超)の患者がいるとされ、治療では、インスリンの絶対的適応となる。また、1型糖尿病では、いままで経口治療薬としてαグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)の1種類しか保険適用ではなく、治療では低血糖やケトアシドーシスの発現で非常に苦労をしていたという。そのため、血糖管理を2型糖尿病患者と比較しても、2型糖尿病の平均HbA1c値が2002年7.42%から2017年7.03%へと低下しているのに対し、1型糖尿病では2002年8.16%からの推移を見ても、2009年から7.8%前後で下げ止まりとなるなど、インスリンだけの治療の困難さについて触れた。

 こうした背景も踏まえ1型糖尿病患者への経口薬の適応が検討され、イプラグリフロジンの臨床試験が行われたと臨床試験の経緯を説明した。

1型糖尿病患者175例を対象にインスリン製剤と併用投与

 24時間インスリン製剤を使用した際のイプラグリフロジン50mgの有効性および安全性を検討した、第III相二重盲検比較試験/長期継続投与試験が行われた。対象者は、20歳以上のインスリン療法で血糖管理が不十分な1型糖尿病患者175例(HbA1c7.5%以上11.0%以下)で、4週間のスクリーニング期と2週間のプラセボrun-in期を経て、イプラグリフロジン50mgまたはプラセボに2:1に無作為に割り付けられ、二重盲検下で24週間、インスリン製剤と併用投与された。また、安全性に問題がないと判断された場合は、28週間の非盲検期に移行された。主要評価項目はHbA1c値の改善で、副次評価項目は空腹時血糖値の改善、併用総インスリン1日投与単位数であった。

 24週後の二重盲検投与終了時のHbA1c値は、イプラグリフロジン群で-0.47%だったのに対し、プラセボ群は-0.11%とイプラグリフロジン群の方が-0.36%低下し、優越性が検証された。また、併用総インスリン1日投与単位数では、イプラグリフロジン群とプラセボ群では-7.35IUと有意差を認める結果だった。体重の変化では、プラセボ群に比べ、イプラグリフロジン群で平均-2.87kgと有意な体重減少も認められた。

 安全性に関しては、死亡や重篤な副作用は確認されなかったが、「インスリンを減量しないと低血糖の発現リスクが、一方で減量しすぎるとケトアシドーシスのリスクが高まる可能性がある。ケトン体の出現など服用3ヵ月くらいが注意する期間」と加来氏は指摘し、これら相反する問題に対して、どうマネジメントしていくかがSGLT2阻害薬処方時のこれからの課題と語った。

1型糖尿病治療へイプラグリフロジンを用いる長所

 加来氏は、イプラグリフロジン使用のポイントとして、日本糖尿病学会提唱の「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を参考にするとともに、とくに1型糖尿病の患者への注意点として、「必ずインスリン製剤を併用すること、インスリンの注射量の減量は医師の指示に従うこと」を挙げた。また、処方で注意すべき症例として「女性、痩せている人、インスリンポンプ使用者」を具体的に挙げ、女性はケトアシドーシスの報告が多く、インスリンポンプは故障により低血糖リスクが増加するケースがあると注意を促した。

 最後にまとめとして、イプラグリフロジンを1型糖尿病治療へ用いる長所として「血糖改善、インスリン使用量の削減、体重抑制」などがあるとともに、課題として「ケトアシドーシスのリスク増加、インスリンの中断や過剰な減量などでのリスクがある。この点を見極めて使用してもらいたい」と述べ、講演を終えた。

(ケアネット 稲川 進)