熱中症対策は小児と高齢者に注目

提供元:ケアネット

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公開日:2018/07/24

 

 総務省消防庁発表の速報によると熱中症により救急搬送された人は、全国で9,956人にのぼる(2018年7月15日現在)。今後もこの暑さは全国的に続くと予想され、患者数も増加すると思われる。

 こうした事態を受け2018年7月20日、日本救急医学会・熱中症に関する委員会は、「熱中症予防に関する緊急提言」を発表した。緊急提言では、次の理由を掲げ小児や高齢者、持病のある人を熱中症にかかり易い『熱中症弱者』と定義している。

・小児では汗腺の発達や自律神経が未熟で高齢者や持病のある方は自律神経の機能が低下しており体温調節機能が弱い
・高齢者では全身に占める水分の割合が低く、容易に脱水になり易い。脱水になると発汗の機能が低下し、体温調整が困難となる
・小児では身長が低いため、地面からの輻射熱の影響を受けやすい
・(小児・高齢者などでは)自分で予防する能力が乏しい

 そして、日本救急医学会・熱中症に関する委員会では、次の4つの緊急提言を発表した。

(1)暑さ指数を意識した生活を心がけ、運動や作業中止の適切な判断を!
(2)水分をこまめに取ること。おかしいなと思ったらすぐ涼しい場所に誘導を!
(3)適切な重症度判断と応急処置を。見守りつつ改善がなければすぐ医療機関へ!
(4)周囲にいるもの同士が、お互いに注意をし合う!

 また、補足事項として上記の提言の具体的な実施手段を下記のように解説する。

WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)暑さ指数(熱中症指数)の認識と活用

 WBGTは熱中症が起きやすい外的環境を知るための指標。この暑さ指数を意識した生活指導が必須であり、これを用いた屋外活動の可否判断が重要。小児の場合はさらに厳格な対応が必要。

・WBGTが31℃以上(危険)の場合:運動は原則中止
 原則的にはすべての授業での運動や課外活動を中止するのが望ましい。また、屋内であっても空調の無い部屋での活動は避ける。

・WBGTが28~31℃(厳重警戒)の場合:激しい運動は中止
 原則すべての授業での運動や課外活動を中止するのが望ましい。また、屋内であっても空調の無い部屋での活動は避ける。運動競技会などでやむを得ない場合は、適切な医療機関の指導を受け、十分な準備のもと競技実施を検討する。その際も頻繁な水分・塩分補給と休憩を義務化する。

・WBGTが21~25℃(注意)、25~28℃(警戒)の場合
 頻繁な水分・塩分補給と休憩を行った上で、屋外活動を実施するべきである。

体調のチェック:おかしいなと思ったらすぐアクションを!

 少しぼーっとしたり、息が荒く呼吸回数が多い、脈が速いなどの兆候を認めた場合には注意が必要。とくに低学年児童では自分の体調をうまく言葉に表わせない点に注意が必要。「足がつった」と訴える筋痙攣や集中力や運動能力の低下を、単純に疲労や弛みと判断するのは危険であり、熱中症の初期症状を見逃さないこと。また、「顔の紅潮」は体温上昇を示唆する所見であり、「大量の発汗」も体温上昇を示唆し、逆にまったく発汗を認めない状態も体温低下という重要な機能が働いていない証拠であり注意が必要となる。基本的に集団活動を行った際には、最も体力的に厳しい状態に陥った児童を基準にその後の方針を決定することも大事。同様の体調不良が示唆されれば、可及的速やかにその屋外活動や授業における運動を中止すべき。

適切な重症度判断と応急処置を。改善がなければすぐ医療機関へ!

 熱中症を疑った場合、まず涼しい場所で休憩させる。その際は、必ず付き添いの者をつける。周囲の見守りも非常に重要。患者の意識がない場合、水分を自力で摂取できない場合、そして水分を自力で摂取しても十分に体調が回復しない場合は救急搬送を要請。

 大切なことはまず、熱中症だと考え、休憩をさせ、必要な場合は躊躇なく救急搬送を要請し、医療機関へ搬送するように示している。応急処置で十分に体調が回復しても、熱中症再発の可能性が極めて高く、屋外活動には復帰させず、涼しい場所での経過観察や帰宅後の体調変化にも注意するなど、小児ついては保護者とコミュニケーションを密に行うようにと提言を行っている。

(ケアネット 稲川 進)