軽度~中等度のアルツハイマー病患者における急速な認知機能低下の予測因子

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/23

 

 アルツハイマー病(AD)は、治療や予防手段がなく、進行を遅らせる方法が証明されていない疾患である。ADは、あまり知られていないさまざまな因子に起因する認知機能悪化と関連している。フランス・リモージュ大学のAchille E. Tchalla氏らは、高齢者のAD患者における急速な認知機能低下に関連する要因について検討を行った。Dementia and geriatric cognitive disorders誌オンライン版2018年4月23日号の報告。

 12ヵ月間のプロスペクティブマルチセンターコホート研究を実施した。対象は、軽度~中等度のADを有する65歳以上の地域住民。急速な認知機能低下は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア3点/年以上の減少と定義した。潜在的な個人レベルの予測因子をベースライン時に収集した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者は、521例であった。
・平均年齢は、80.8±9.0歳、女性の割合は66.0%であった。
・ベースライン時の平均MMSEスコアは、20.5±4.5点であった。
・急速な認知機能低下の発現率は、40.9%(95%CI:36.7~45.1)であった。
・急速な認知機能低下は、軽度AD(22.3%)よりも中等度AD(53.5%)で多く認められた。
・急速な認知機能低下に関連する因子は以下のとおりであった。
 ●親の認知症歴(オッズ比:2.32、95%CI:1.24~4.21、p=0.011)
 ●精神症状(オッズ比:2.06、95%CI:1.22~3.48、p=0.007)
 ●栄養不良(オッズ比:1.61、95%CI:1.06~2.63、p=0.028)
 ●女性(オッズ比:1.48、95%CI:1.03~2.15、p=0.036)
・治療開始時のMMSEスコア20点未満も、急速な認知機能低下と関連が認められた(p<0.001)。

 著者らは「これらの結果は、患者、その家族、医師と直接的に関連する可能性があり、困難な臨床経過や機能アウトカム不良の早期予測を可能にする」としている。

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(鷹野 敦夫)