双極性うつ病に対する抗うつ薬補助療法による再入院率に関するコホート研究

双極性うつ病に対し抗うつ薬が広く用いられているが、その有効性や安全性に関するエビデンスは弱い。また、双極性障害に対する抗うつ薬維持療法のリスク・ベネフィット比に関する研究は不十分である。イスラエル・テルアビブ大学のYahav Shvartzman氏らは、抗うつ薬補助療法の有無にかかわらず、気分安定薬や非定型抗精神病薬治療で退院したうつ病エピソードを有する双極I型障害患者の再入院率について比較検討を行った。European neuropsychopharmacology誌2018年3月号の報告。
2005~13年にうつ病エピソードで入院した双極I型障害患者98例を対象に、6ヵ月および1年後の再入院率についてレトロスペクティブに調査を行った。再入院までの期間だけでなく、退院時の治療(気分安定薬や非定型抗精神病薬、抗うつ薬の有無)に応じて検討を行った。検討には、再入院に影響する共変量で調整した多変量生存時間モデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・抗うつ薬補助療法群は、非抗うつ薬補助療法群と比較して再入院率が有意に低く、6ヵ月後(9.2% vs.36.4%、p=0.001、power=0.87)、1年後(12.3% vs.42.4%、p=0.001、power=0.89)であった。
・抗うつ薬補助療法群は、非抗うつ薬補助療法群と比較して再入院までの期間が有意に長く、6ヵ月以内(169.9日 vs.141日、p=0.001)、1年以内(335.6日 vs.252.3日、p=0.001)であった。
・抗うつ薬補助療法は、調整された再入院リスクを有意に低下させ、6ヵ月以内(HR=0.081、95%CI:0.016~0.412、p=0.002)、1年以内(HR=0.149、95%CI:0.041~0.536、p=0.004)であった。
・さらに、抗うつ薬補助療法は、躁病エピソードによる再入院率を増加させなかった。
著者らは「気分安定薬や非定型抗精神病薬治療で退院したうつ病エピソードを有する双極I型障害患者に対する抗うつ薬補助療法は、1年間のフォローアップ期間中の再入院率が低く、再入院までの期間を延長させる」としている。
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