視力低下が認知機能の低下に関連か

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/30

 

 視力障害と認知機能低下は高齢者によくみられるが、両者の関係はよくわかっていない。米国・スタンフォード大学のStephanie P. Chen氏らは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)および国民健康加齢傾向調査(NHATS)のデータを解析し、遠見視力障害と主観的視力障害は、認知機能低下と関連していることを示した。著者は今回の結果について、「自己申告の視力を用いている米国のメディケア受益者集団で確認されており、視力障害を有する患者を確認することの重要性を強調するものである。視力と認知機能との間の長期的な相互作用についてさらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年8月17日号掲載の報告。

 研究グループは、米国の高齢者における自己申告の視力障害と認知機能との関連を評価する目的で、1999~2002年のNHANESならびに2011~15年のNHATSの2つのデータを解析した。NHANESは一般人の非入院集団、NHATSは米国本土におけるメディケア受益者が含まれる。

 視力は、NHANESでは近見および遠見視力測定と、自己申告の視力が用いられ、NHATSでは自己申告に基づいた。

 認知機能は、NHANESではDigit Symbol Substitution Test(DSST)が用いられ、DSSTスコア28以下(下位1/4)を認知機能障害とした。また。NHATSでは、NHATSプロトコールによる分類が用いられた(probableおよびpossible認知症)。

 主な結果は以下のとおり。

・回答が得られた調査参加者で解析対象となったのは、NHANES集団ではDSSTを完遂した60歳以上の2,975例、NHATS集団では認知症を評価し得た65歳以上の3万202例であった。
・参加者背景は、NHANES集団が年齢(平均±SD)72±8歳、女性52%(1,527例)、非ヒスパニック系白人61%(1,818例)、NHATS集団は75~84歳が最も多く(40%、1万2,212例)、58%は女性(1万7,659例)、69%は非ヒスパニック系白人(2万842例)であった。
・NHANES集団において、DSSTスコア低値は遠見視力障害(β=-5.1[95%信頼区間[CI]:-8.6~-1.6]、オッズ比[OR]:2.8[95%CI:1.1~6.7])と主観的視力障害(β=-5.3[95%CI:-8.0~-2.6]、OR:2.7[95%CI:1.6~4.8])のいずれとも関連しており、共変量を完全に調整後も認知機能障害のオッズ比が高かった。
・一方、近見視力障害は、認知機能障害のオッズ比上昇はなかったが、DSSTスコア低値と関連していた。
・NHATS集団では、すべての視力の指標は、共変量を完全に調整後も認知症と関連しており(遠見視力障害のOR:1.9[95%CI:1.6~2.2]、近見視力障害のOR:2.6[95%CI:2.2~3.1]、遠見または近見視力障害のいずれかのOR:2.1[95%CI:1.8~2.4])、NHANES集団での結果が裏付けられた。

(ケアネット)