アルツハイマー病が回復する可能性~実験モデルで確認

アルツハイマー病では、脳内にアミロイドベータ(Aβ)が蓄積することにより神経細胞に異常が現れると考えられている。最近、Aβの集合体(Aβオリゴマー)がこれらの病態の引き金になることが明らかになってきたが、この引き起こされた神経細胞の障害が回復する可能性について明確な実証はなされていなかった。今回、国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループが、ラット由来の神経細胞モデルを用いて検討した結果、Aβオリゴマーによって引き起こされる神経細胞の障害は、Aβオリゴマーを除去することによって回復可能であることを初めて実証した。Molecular Brain誌オンライン版2017年1月31日号に掲載。
研究グループは、ラットの胎児脳由来の神経細胞をAβオリゴマーで2日間処理した後、Aβオリゴマー処理を継続する細胞と、Aβオリゴマーを含まない培養液に交換しAβオリゴマーを除去する細胞に分け、さらに2日間培養した。
主な結果は以下のとおり。
・最初の2日間のAβオリゴマー処理後の細胞では、無処理の細胞に比較し、カスパーゼ3の活性化などのアポトーシス誘導性の変化が現れるとともに、リン酸化や分子内切断の増加といったタウタンパク質の異常変化が認められた。また、シナプスの形成・維持などに重要な役割を持つβカテニンの異常変化も観察された。
・Aβオリゴマー処理と除去に分けた2日間で、Aβオリゴマー処理を継続した細胞では、細胞死誘導性変化は増悪し、タウタンパク質やβカテニンの異常が持続した。一方、Aβオリゴマーを除去した細胞では、細胞死誘導性変化やタウタンパク質の異常が無処理の細胞と同程度まで回復し、βカテニンの異常も部分的に回復した。
これらの結果から、Aβオリゴマーが主に細胞外から毒性作用を発揮し、その結果生じる細胞内の障害性変化は可逆的なものであること、また、Aβオリゴマーを除去することにより回復可能なことが示唆された。
国立精神・神経医療研究センターのプレスリリースはこちら
(ケアネット 金沢 浩子)
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