TAVR患者における左心耳血栓の評価と心臓CTの役割

心房細動(AF)はTAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)を受ける患者においてよく認められ、心房細動と関連がある左心耳血栓は、周術期の脳梗塞の原因となりうる。TAVRの患者群における左心耳血栓の発生率とその臨床的な影響は報告されていない。また、左心耳血栓を診断するうえでどの画像診断が最適であるかも明確になっていない。そこで、英国のThe James Cook University HospitalのSonny Palmer氏らは、TAVRを受ける患者群において、左心耳の血栓の発生率と臨床的な影響と心臓CTの役割を評価した。JACC Cardiovascular Intervention誌2017年1月号に掲載。
TAVRを検討する198例で心臓CTを施行
TAVRに紹介された連続198例の患者に対し、二相性心臓CTが施行された。経食道エコー(TEE)も併せて施行された患者においては、心臓CTの結果をTEEの結果と比較した。対象者は、男性が113例(57%)で、平均年齢は82.6±6.1歳。CHA2DS2-VASc Scoreの平均値は4.0±1.4、左室駆出率が30%以下の患者は37例(18.7%)だった。心臓CTにより、全体の11%、AF既往患者の32%で左心耳血栓を診断
心臓CTで左心耳血栓の確定診断に至ったのは22例(11%)、左心耳血栓が否定されたのは166例(84%)、残りの10例(5.1%)は左心耳血栓が否定できない、という結果であった。つまり、198例中188例(95%)で、心臓CTによって左心耳血栓の有無を診断できた。また、左心耳血栓が認められた患者のうち 2例(1.6%)においては、AFの既往がなかった。AFは、心臓CTで診断された左心耳血栓のリスクファクターであった(オッズ比[OR]:19.8、95%信頼区間[CI]:4.5~88、p<0.0001)。本研究では、AFを有する患者の32%(63例中20例)において左心耳血栓が認められた。TEEを参考標準とした場合の心臓CTの感度は100%、特異度は98%
本研究では、全体の49%(98例)がTEEを受けていた。TEEを参考標準とすると、心臓CTの感度と特異度はそれぞれ100%と98%であり、陰性的中率は100%であった。また、124例がTAVRを受け、院内脳梗塞の発生率は4.8%であった。脳梗塞のリスクは、左心耳に血栓がある患者(20%[2/10])では、血栓がない患者(3.8%[4/105])に比べて有意に高かった。TAVRが検討される患者において左心耳血栓の評価は重要
TAVRに紹介された患者において左心耳血栓の発生率は高く、左心耳血栓は周術期の脳梗塞の原因となっている可能性がある。二相性の心臓CTは、画像診断のツールとして左心耳血栓の診断をするのに正しい選択肢と考えられ、周術期のTEEを省略できるかもしれない。左心耳血栓の存在はTAVR候補患者において評価されるべきであり、左心耳血栓がみつかった患者に対し、適切な戦略が立てられるべきである。著者らは、左心耳血栓が本当に周術期の脳梗塞の独立したリスクなのかどうかを結論付けるには、より大規模な研究が必要であると結んでいる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)
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