歴史的に、統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、一方は精神疾患、もう一方は神経発達障害として、それぞれ異なる疾患に分類されてきた。しかし近年の研究では、これら2つの疾患の間には、重複している部分が多い可能性が示唆されている。サウジアラビア・Northern Border UniversityのNahi Sabih Alruwaili氏らは、両疾患の類似点を示す疾患発症に関与する生物学的メカニズムについてのレビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2026年6月11日号の報告。
主な内容は以下のとおり。
・疾患発症に関与する生物学的メカニズムには、ドパミン、セロトニン、グルタミン酸、GABA、アセチルコリンといった神経伝達物質系の調節不全、BDNFシグナル伝達の変化、ヒスタミン調節の異常、ミクログリアの活性化、神経炎症、補体介在性のシナプス除去、脳腸相関シグナル伝達、エンドカンナビノイド系の機能不全などが挙げられる。
・重要なポイントとして、上述の生物学的メカニズムは、うつ病、アルツハイマー病、多発性硬化症などの中枢神経系疾患にも認められる。
・他の多くの中枢神経系疾患についても、統合失調症やASDと共通の生物学的メカニズムを有している可能性がある。しかし、統合失調症とASDの類似性は、次の6つの理由から顕著であった。
(1)統合失調症とASDにみられる生物学的メカニズムが著しく類似している
(2)遺伝率のパターンが高い整合性を示す
(3)発達の経過が類似している
(4)神経回路レベルでの病態が類似している
(5)双方向的な疫学的リスクを共有している
(6)神経発達スペクトラムに沿って推移している
・こうした重複を認識することは、早期診断やバイオマーカーの開発、さらには疾患横断的な治療戦略(例えばメマンチン、α7ニコチン受容体作動薬、抗炎症薬などの既存薬のリポジショニングを含む)において、重要な意義を持つ可能性がある。
・ただし、共通する経路を早期にターゲットとすることが、ASDにおける長期的な精神疾患リスクに影響するかを明らかにするには、縦断的な研究が必要とされる。
(鷹野 敦夫)