心房細動患者の肥満パラドックス、日本人で検証~J-RHYTHMレジストリ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/06/10

 

 日本人の非弁膜症性心房細動患者において、低体重者は正常体重者に比べて全死因死亡および心血管死亡リスクが高く、過体重や肥満は死亡率増加に関連しないことが、J-RHYTHMレジストリデータの事後解析にて示唆された。The American journal of cardiology誌オンライン版2016年5月5日号に掲載。

 肥満は心房細動(AF)の危険因子であるが、一方で、AF患者では肥満者のほうが死亡率が低く、このことは「肥満パラドックス」として知られている。AF患者の心原性塞栓症リスクにおける体重の影響について、これまでの研究結果は一貫していない。今回、富山県済生会富山病院の井上 博氏らはJ-RHYTHMレジストリの観測データを用いて、日本人の非弁膜症性AF患者におけるBMIと予後との関係を事後解析した。

 被験者をBMIにより、低体重(18.5未満)、正常(18.5~24.9)、過体重(25.0~29.9)、肥満(30以上)に分類。エンドポイントは、血栓塞栓症、大出血、全死因死亡率、心血管死亡率であった。非弁膜症性AF 7,406例のうち、ベースライン時のBMIデータのある6,379例(70±10歳、BMI:23.6±3.9)を研究対象とした。

 主な結果は以下のとおり。

・2年間の追跡期間中、血栓塞栓症は111例、大出血は124例にみられ、159例が死亡した。
・Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では、BMIカテゴリのいずれも血栓塞栓症の独立した予測因子ではないことが示唆された。
・しかし、低体重は、正常体重を対照とした場合に、全死因死亡(ハザード比[HR]:2.45、95%信頼区間[CI]:1.62~3.69、p<0.001)および心血管死亡(HR:3.00、95%CI:1.52~5.91、p=0.001)の独立した予測因子であった。
・過体重は、低い全死因死亡率の予測因子であった(HR:0.60、95%CI:0.37~0.95、p=0.029)。

(ケアネット 金沢 浩子)