てんかん重積状態の薬物療法はエビデンス・フリー・ゾーン 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2015/10/08 てんかん重積状態(SE)は、最も重篤なてんかんの様式であり、最もよく発生する精神的緊急症状で、発生頻度は10万人年当たり61件、推定死亡率は20%である。臨床的に強直性間代性けいれんSEは、4つの連続するステージすなわちearly、established、refractory、super-refractoryに分けられる。しかしSEの薬物治療について、とくに後半のステージには、臨床決定の情報となる質の高い対照試験がないことから、“エビデンス・フリー・ゾーン”となっている。オーストリア・パラケルスス医科大学のEugen Trinka氏らは、SEの経過に応じた薬物療法のエビデンスについて包括的ナラティブレビューを行った。その結果、established SEにはフェニトインやフェノバルビタール、refractory、super-refractoryには麻酔薬が広く使用されていることを明らかにした。Drugs誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、上述の4ステージアプローチに従って展開し、利用可能な文献の科学的エビデンスの強さに応じて、各抗てんかん薬の薬理学的特性と有効性/安全性のデータを提供しているSEの薬物療法に焦点を絞った包括的ナラティブレビューを行った。データソースは、MEDLINEおよび関連研究の参考文献とした。 主な結果は以下のとおり。 ・early SEでは、ロラゼパム静注またはミダゾラム筋注により約63~73%で有効なコントロールを得ていた。 ・established SEの治療には、安全性プロファイルは最適ではないものの、フェニトインの静注またはフェノバルビタールの静注が広く使用されていた。また、代替薬としてバルプロ酸、レベチラセタム、ラコサミドなどがあった。 ・refractoryまたはsuper-refractory SEには、十分な試験が行われていないにもかかわらず麻酔薬が広く使用されていた。また、後半ステージの代替治療に関するデータは限定的であった。 ・第1選択薬のベンゾジアゼピン系薬投与にもかかわらずestablished SEが持続している場合、バルプロ酸およびレベチラセタムが、フェノバルビタールおよびフェニトインの代替薬として安全かつ有効であることが示された。 ・いずれにせよ、established、refractory、super-refractory SEに対する抗てんかん薬として最も強く推奨支持するクラスIのデータはなかった。 結果を踏まえ、著者らは「established SEにはフェニトインやフェノバルビタール、refractory、super-refractoryには麻酔薬が広く使用されていることが明らかになったが、推奨治療を支持するエビデンスデータは乏しかった。試験間の方法論的不均一性を是正し、establishedおよびrefractory SEに対する最適な治療に関する情報を臨床医に提供できる、質の高いランダム化対照試験の実施が求められる」と指摘している。 関連医療ニュース てんかん再発リスクと初回発作後消失期間 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Trinka E, et al. Drugs. 2015;75:1499-1521. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] BPSDが死亡リスクに及ぼす影響~日本人コホート研究(2024/04/29) 認知症の修正可能な3大リスク因子(2024/04/29) 人間の脳は世代を追うごとに大きくなっている(2024/04/29) 1日30分座位時間を減らすと高齢者の血圧が低下(2024/04/29) 近くにあるAEDが心停止者に使われることはまれ(2024/04/29) 加糖飲料とフルーツジュースは男子の2型糖尿病リスクを高める(2024/04/29) 夜間の屋外照明は脳卒中リスクを高める?(2024/04/29) CVD患者のフレイルと「アクティブな趣味」の関係(2024/04/29) [ あわせて読みたい ] 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV シーズンII(2014/07/03) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)