神経難病へのメマンチンの可能性:群馬大

提供元:ケアネット

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公開日:2015/03/24

 

 脊髄小脳変性症1型(SCA1)はSca1遺伝子内にあるCAGリピートの伸長を原因とする進行性の神経変性疾患である。SCA1症状の発症機序は明確になっていないが、ニューロンの異常活性が、この疾患の特徴であるニューロン細胞死の一因となっている可能性が高い。群馬大学の飯塚 朗氏らは、SCA1ノックイン(KI)マウスにN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)のメマンチンを長期経口投与し、SCA1の発症メカニズムについて検討した。その結果、マウスの体重減少抑制と生存期間の延長が認められ、SCA1の発症にNMDAR異常活性が関与している可能性を示唆した。Neuroscience Letters誌オンライン版2015年2月25日号の掲載報告。

 本研究では、SCA1 KIマウスを用いて、低親和性非競合的NMDARアンタゴニストのメマンチンを投与し、SCA1発症過程にシナプス領域外NMDAR活性が関与している可能性について検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・KIマウスでは、ataxin 1遺伝子上のエクソンが異常伸長154CAGリピートと置換されている。
・SCA1 KIマウスに生後4週から死亡するまでメマンチンを経口投与したところ、体重減少の抑制と寿命の有意な延長が認められた。
・さらに、メマンチンは小脳内のプルキンエ細胞および迷走神経背側運動核にある運動ニューロンの減少を有意に抑制した。
・プルキンエ細胞と運動ニューロンはどちらも運動機能や副交感神経の機能に不可欠なものである。これらの結果はシナプス領域外NMDARの異常活性がSCA1 KIマウスのニューロン細胞死に関与することを裏付けるものであり、メマンチンが人間のSCA1患者に対し治療効果を有することも示唆している。

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(ケアネット)