急がれるAll RAS検査承認

提供元:ケアネット

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公開日:2014/08/04

 

 2014年7月29日(火)、東京都千代田区において大腸がんにおけるバイオマーカー「RAS遺伝子」をテーマにしたプレスセミナー(主催:メルクセローノ株式会社)が開催された。その中で、愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部長/外来化学療法センター長である室 圭氏が、「大腸がんのさらなる『個別化治療』に向けて バイオマーカーとしての『RAS遺伝子』の可能性」と題して講演を行った。

 いまや「個別化治療」は、がんの領域においても広く用いられる言葉の1つである。がんにおける個別化治療とは、バイオマーカーである遺伝子の検査結果に基づき、その患者さんに効果が期待できる薬剤選択を行い、治療を進めることである。個別化治療が広く浸透することによって、患者さんにより高い治療効果が得られる薬剤を投与することができるだけでなく、治療効果が期待できない薬剤を投与しないことで無駄な出費が抑えられ、国民医療費の削減にもつながる。

 現在、切除不能大腸がんに投与することのできる分子標的薬のうち、セツキシマブやパニツムマブなどの抗EGFR抗体薬は、KRAS(exon2)野生型の患者さんに効果を示すことがわかっている。そのため、治療薬を投与する前にKRASの遺伝子型を調べ、KRAS変異型の患者さんには他の治療法を選択することが一般的である。しかしながら近年、KRAS(exon2)野生型であっても、治療薬が奏効しない患者さんが存在し、それはKRASのexon3、exon4やNRASの変異型を持つ患者であることがわかってきた。そのため、KRASNRASを含むRAS(All RAS)遺伝子検査の必要性が高まっている。

 これを受け欧米では、2013年よりセツキシマブやパニツムマブの適応を、KRAS野生型からRAS野生型へ変更したが、本邦でAll RAS検査が承認されるのは、おそらく2014年末から2015年になるだろうと室氏は語る。現時点で保険償還が認められている検査は、KRAS(exon2)遺伝子検査のみであるが、All RAS検査承認へ向け、日本臨床腫瘍学会のホームページでは、「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス」を公開しており、閲覧およびダウンロードができるため、参考にされたい。

日本臨床腫瘍学会ホームページ
2014年04月10日「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス」が完成しました。

 大腸がんでは、近年さまざまな分子標的治療薬の登場により、生存期間中央値は30ヵ月まで延長している。今後、さらなる個別化治療を進めるためにも、一刻も早いAll RAS検査の承認が望まれる。

(ケアネット 岸田有希子)