抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2014/06/13

 

 大阪大学の喜多 祐紀氏らは、ガランタミンによる神経新生促進メカニズムについて、マウスを用いて検討した。その結果、ガランタミンはM1ムスカリン受容体およびα7ニコチン性アセチルコリン受容体を介して、神経新生を促進している可能性が示唆されたことを報告した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2014年5月12日号の掲載報告。

 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬のガランタミンは、海馬における神経新生を促進するが、正確なメカニズムはわかっていない。本研究において、ガランタミンがマウス海馬にもたらす急性作用の背景にあるメカニズムを調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・ガランタミン(3mg/kg)は、歯状回の顆粒細胞下層における5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)-陽性細胞数を増加させた。
・本作用は、ムスカリン受容体アンタゴニストのスコポラミンおよび優先的M1ムスカリン受容体アンタゴニストのテレンゼピンにより阻害されたが、ニコチン性受容体アンタゴニストのメカミラミンおよびメチリカコニチンにより阻害されなかった。
・ガランタミンは、顆粒細胞下層および顆粒細胞層における神経核(NeuN)-またはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)-陽性細胞数のBrdU-標識細胞数に対する比率を変化させなかった。
・ガランタミン(1, 3mg/kg)は、マウス歯状回の顆粒細胞層における2週目の新規分裂細胞の生存を促進したが、1週目および4週目の新規分裂細胞の生存には影響を及ぼさなかった。
・ガランタミンに誘発される生存細胞の増加は、α7ニコチン性受容体アンタゴニストのメチリカコニチンにより阻害されたが、スコポラミンにより阻害されなかった。
・海馬歯状回に遺伝子組換えIGF2を両側性に注射したところ、ガランタミン類似作用がみられた。
・ガランタミンの作用は、IGF1受容体アンタゴニストJB1の直接投与により阻害された。
・これらの知見から、ガランタミンは、M1ムスカリン受容体およびα7ニコチン性アセチルコリン受容体を介して、神経新生を促進していることが示唆された。
・また、ガランタミンの歯状回における2週の未熟な細胞への作用にIGF2が関わっていることも示唆された。

関連医療ニュース
認知症治療薬ガランタミン、ラット試験で喫煙欲求の軽減効果を確認
皮膚がんとの関連研究で判明!アルツハイマー病に特異的な神経保護作用
検証!非定型抗精神病薬の神経保護作用


  担当者へのご意見箱はこちら

(ケアネット)