てんかん治療の改善は健康教育から始まる

提供元:ケアネット

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公開日:2014/02/06

 

 てんかん治療の格差は貧困国において最も大きい。ケニア・KEMRI(Kenyan Medical Research Institute)のFredrick Ibinda氏らは、健康教育プログラムにより治療アドヒアランスが改善するのか、無作為化試験にて評価を行った。農村地帯への1日の介入で行われた検討の結果、健康教育がてんかんに関する知識を向上することが示された。しかし1日だけの教育では、アドヒアランスの改善には結びつかなかったことも判明し、著者は「継続的な教育がアドヒアランスを改善する可能性があり、さらなる研究が必要である」と述べている。Epilepsia誌オンライン版2014年1月21日号の掲載報告。

 ケニアの農村地帯への1日健康教育プログラム(キリフィてんかん教育プログラム)の有効性について検討した無作為化試験は、738例のてんかん患者を介入群と非介入(対照)群に割り付けて行われた。主要アウトカムは、抗てんかん薬(AED)のアドヒアランス状況で、血中薬物濃度(標準的な血液アッセイで測定、検査技師は割り付けをマスキング)にて評価した。副次アウトカムは、てんかん発作の頻度とKilifi Epilepsy Beliefs and Attitudes Scores(KEBAS)(訓練された介入スタッフにより行われた質問アンケートで評価)であった。データは、ベースライン時と介入群への教育介入後1年時点に集め分析した。また事後解析として、修正ポアソン回帰分析にて、アドヒアランス改善(AEDのベースライン時の非至適血中濃度からの変化で評価)、発作の減少、KEBASの改善に関連した因子を調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時と介入後1年時点の両時点で評価が行われたのは581例であった。
・試験終了時点で血液サンプルが入手できたのは、介入群105例、対照群86例であった。解析は、最もよく服用されていたAED(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン)について行われた。
・結果、AED血中濃度ベースのアドヒアランスについて、介入群と対照群で有意差はみられなかった(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:0.74~2.90、p=0.28)。自己報告でみた場合も同様であった(同:1.00、0.71~1.40、p=1.00)。
・一方で、介入群のほうが対照群よりも、てんかんの原因についての伝承、民間療法、ネガティブなステレオタイプに対する固定観念を持っている人が有意に少なかった。
・発作の頻度については、差がなかった。
・ベースライン時とフォローアップ時のデータを比較した結果、アドヒアランス(血中濃度で評価)は介入群(36%から81%、p<0.001)、対照群(38%から74%、p<0.001)ともに有意に増大した。
・発作頻度が減少した(直近3ヵ月で3回以下)患者数は、介入群は62%から80%(p=0.002)、対照群67%から75%(p=0.04)と増大した。
・治療アドヒアランスの改善(両群を統合して検討)は、てんかんリスクについてのポジティブな信条への変化(リスク比[RR]:2.00、95%CI:1.03~3.95)、および非伝統的宗教的信条への変化(同:2.01、1.01~3.99)と明らかな関連がみられた。
・発作頻度の減少は、アドヒアランスの改善と関連していた(RR:1.72、95%CI:1.19~2.47)。
・KEBASのポジティブな変化は、高次教育を受けたことと関連していた(非教育との比較でのRR:1.09、95%CI:1.05~1.14)。
・以上のように、健康教育はてんかんについての知識を改善するが、1回だけではアドヒアランスは改善しないことが示された。しかしながら、将来的な検討で継続的教育はアドヒアランスを改善する可能性がある。

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(ケアネット)