認知症患者の約2割にせん妄が発現

提供元:ケアネット

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公開日:2013/08/07

 

 神戸大学大学院医学研究科精神医学分野の長谷川典子氏らは、外来の認知症患者におけるせん妄の発現状況について検討した。その結果、認知症患者の約2割にせん妄が認められ、その発現は認知症のタイプにより異なること、またCVD併発例で多くみられることを報告した。International Psychogeriatrics誌オンライン版2013年7月22日号の掲載報告。

 せん妄と認知症は深く関連するが、認知症に重なるこの変性意識状態を検討した包括的な疫学研究はほとんどない。今回、認知症外来患者におけるせん妄の頻度、認知症タイプ別の発現状況、神経変性疾患による認知症患者の脳血管疾患(CVD)との関連について検討した。2010年4月~2011年9月において、精神病院のメモリークリニックを受診した外来患者261例(連続症例)を対象とした。全患者について、臨床検査、CT検査、Mini-Mental State Examination(MMSE)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)、Physical Self-Maintenance Scale(PSMS)、およびDelirium Rating Scale-Revised-98スコアを評価した。せん妄の診断はDSM-Ⅳ-TRにより行い、CVDはCTにより検出した。

 主な結果は以下のとおり。

・認知症患者206例のうち、せん妄は40例(19.4%)に認められた。
・認知症タイプ別のせん妄の発現状況は、アルツハイマー病が14.7%、血管性認知症で34.4%、レビー小体型認知症が31.8%で、前頭側頭葉変性型では認められなかった。
・せん妄は、認知症とCVD併発例に多くみられた。
・NPI総スコアおよび興奮のサブスケールスコアは、せん妄を伴う認知症患者のほうが、せん妄を伴わない認知症患者に比べ有意に高かった。
・PSMSスコアは、せん妄を伴う患者のほうが、せん妄を伴わない患者に比べ有意に低かった。
・以上より、認知症のタイプによってせん妄の頻度はさまざまであること、せん妄はADL(日常生活動作)を低下させ、認知症の行動・心理症状を悪化させること、神経変性疾患による認知症患者におけるCVD併発と関連することが示された。

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(ケアネット)