第54回日本神経学会学術大会レポート -パーキンソン病-

提供元:ケアネット

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公開日:2013/06/13

 

 2013年5月29日(水)~6月1日(土)の4日間、東京国際フォーラム(千代田区)において「第54回日本神経学会学術大会」が開催された。今回はとくに、パーキンソン病にフォーカスしてレポートする。

【パーキンソン病治療を再考する時が来た!?】
 パーキンソン病に関する複数の講演会場で、話題に挙がったキーワードは「パーキンソン病治療再考」であった。その背景には、現在のパーキンソン病治療ガイドラインのあり方と、近年、新たなパーキンソン病治療薬が登場したことで治療選択肢が増えたことなどが挙げられる。

 パーキンソン病の代表的な治療薬であるL-ドパ製剤は、その症状改善効果から第一選択薬として位置づけられ、現在も広く処方されている。しかしながら、ジスキネジアが出現するという理由でL-ドパ製剤を増量せず、十分な治療効果が得られていない例が散見され、ガイドラインやエビデンスが周知されていない実態が明らかとなった。また、2012年以降ドパミンアゴニストの徐放錠や貼付剤、注射剤など新たな剤形や、非ドパミン系治療薬などが登場した。治療の選択肢が広がった一方で、臨床医が迷う場面が増えたことも現実だろう。

 治療ガイドライン作成から10年が経過した。今、あらためてガイドラインに立ち返り、パーキンソン病治療との向き合い方を再考する時なのかもしれない。

【運転すると知りながら、突発性睡眠の副作用がある抗パーキンソン病治療薬を処方した医師は罪に問われるのか?】
 道路交通法の改正により、眠気を催す恐れのある薬剤を服用して交通事故を起こした場合、その薬剤を処方した医師も罪に問われる可能性がある。この話題は、複数のセミナーで議論となりフロアからも活発な質問が相次いでいた。
(この改正案は現在、参議院を通過しており、衆議院で可決されれば改正されるだろう、とのこと)

※現在、道路交通法第66条では、薬の副作用等によって正常な運転ができない状態で運転することを禁止している。

 多くの抗パーキンソン病治療薬の副作用として突発性睡眠が報告されており、該当薬剤の添付文書上で、「本剤服用中には、自動車の運転等危険を伴う作業に従事させないよう注意する」旨が記載されている。とくにドパミンアゴニストは、非高齢者で、認知機能障害もしくは精神症状が無く、当面の症状改善を優先させる特別な事情がないパーキンソン病患者の第一選択薬となっており、自動車等の運転をする機会の多い非高齢者に処方する可能性が高い。

 職業ドライバーの患者や、車が無くては生活できない患者に対して、どのように治療を行えばいいのか。医師は、この法律に矛盾を感じずにはいられないだろう。
「この改正が現実となれば、患者とのコミュニケーションを十分に取り、降りかかる火の粉を回避するほかない」とは演者の言葉である。

(ケアネット 岸田有希子)