日本語でわかる最新の海外医学論文|page:833

若年者の大動脈弁置換、機械弁より生体弁/JAMA

 50~69歳の若年者大動脈弁置換における弁の選択は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢であることが明らかにされた。米国・マウントサイナイ医療センターのYuting P. Chiang氏らが、患者4,253例について後ろ向きコホート分析を行った結果、15年生存および脳卒中について両群間で有意差は認められなかった。生体弁患者のほうが再手術を受ける可能性が大きかったが、大出血を起こす可能性は低かったという。若年者大動脈弁置換における弁の選択は、長期生存や重大疾患の発生について明らかになっておらず、論争の的となっていた。JAMA誌2014年10月1日号掲載の報告より。

糖尿病患者への意思決定支援ツールの効果/BMJ

 患者指向の治療意思決定支援(デシジョンエイド)の有用性について、相当量を投じても同ツールの使用で期待される患者のエンパワメント改善には結び付かないことが、オランダ・フローニンゲン大学医療センターのPetra Denig氏らによる、プラグマティック無作為化試験の結果、明らかにされた。原因として、大半の患者が、同ツールを完全には使いこなしていないことが判明したという。デシジョンエイドは、治療管理における患者と医師の意思疎通を助け、患者指向型の治療ゴール設定を促進することが可能とされる。本検討では複数の疾患を抱える糖尿病患者についての有用性を検討した。BMJ誌オンライン版2014年9月25日号掲載の報告より。

統合失調症と利き手に関するメタ解析

 統合失調症は右利きでない例が多いことを特徴とするという概念は、統合失調症が異常な脳側性化により発症、そして遺伝的に関連しているという理論の基礎となっている。レビューおよびメタ解析により、統合失調症患者では右利きでない者が高率であることが報告されている。ただし、これらの結果は、性別の問題あるいは自己報告に基づく利き手に関する質問票に潜むバイアスによるものではないかとの指摘があった。

ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM

 ICU入室の重症患者への早期栄養療法について、経静脈ルート(静脈栄養法)と経腸ルート(経腸栄養法)を比較した結果、30日全死亡率などのアウトカムは同等であることが示された。低血糖症と嘔吐の発生については、静脈栄養療法群で有意に低率だった。英国・Intensive Care National Audit and Research Centre(ICNARC)のSheila E. Harvey氏らが、ICU患者2,400例について行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。同早期栄養療法については、いずれのルートが最も効果的かについて明らかとなっていなかった。NEJM誌オンライン版2014年10月1日号掲載の報告より。

ホモ型家族性高Chol血症、PCSK9阻害薬で改善/Lancet

 新規開発中のコレステロール低下薬エボロクマブ(AMG 145)について、ホモ接合型家族性高コレステロール血症でスタチン療法などの継続的な脂質低下療法を受けている患者に投与することで、LDLコレステロール(LDL-C)値が約3割低下することが示された。南アフリカ共和国・Witwatersrand大学のFrederick J Raal氏らが第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、報告した。エボロクマブは、LDL-Cの能力を低下する前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する。Lancet誌オンライン版2014年10月2日号掲載の報告。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の内科的治療の選択について(解説:小林 英夫 氏)-261

まず、掲載された本論文の概略にお目通しいただきたい。本論文から読み取るべき点は、どのような薬剤が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として優れているかについてランダム化試験を実施すべきである、という記述に尽きるというのが筆者の印象である。

2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは

 米国・メルク社のAnthony L Gotter氏らは、睡眠導入について、標準ケアの非ベンゾジアゼピン系ガンマアミノ酪酸受容体A(GABAA)受容体モジュレーター、エスゾピクロンとデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)であるスボレキサントを比較する前臨床試験を行った。結果、DORAはノンレム睡眠とレム睡眠の両方について、同程度の割合および大きさで促進することが示されたという。結果を踏まえて著者は、DORAは睡眠障害からの回復を楽にする効能がある可能性を報告した。BMC Neuroscience誌オンライン版2014年9月22日号の掲載報告。

中国、日本は他国より疼痛有病率・治療率が低い

 米国・Kantar Healthが実施したNational Health and Wellness Survey(NHWS)によると、新興国と先進国のいずれにおいても、疼痛はQOLや機能、活動、労働生産性などすべての健康状態の評価項目に影響していることが明らかになった。また、新興国の中国、先進国の日本はともに、他の国よりも疼痛有病率と治療率が低いことも報告された。

急性呼吸促迫症候群へのスタチンの効果/NEJM

 急性呼吸促迫症候群(ARDS)の治療において、シンバスタチンは臨床転帰の改善をもたらさないことが、英国・クイーンズ大学ベルファストのDaniel F McAuley氏らIrish Critical Care Trials Groupが行ったHARP-2試験で示された。ARDSでは、肺胞障害を引き起こすコントロール不良な炎症性反応が認められ、豊富なタンパク質を含む肺浮腫液の肺胞腔内への滲出により呼吸不全を来す。スタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害することで、ARDSの発症に関与する複数の機序を修飾することが示され、動物実験やin vitro試験、さらにヒトの第II相試験においてARDSの治療に有効である可能性が示唆されている。NEJM誌2014年9月30日号掲載の報告。

慢性膝痛に鍼・レーザー鍼治療は有効か/JAMA

 50歳以上の中等度~重度の慢性膝痛患者に対する鍼治療やレーザー鍼治療は、疼痛の緩和や身体機能の改善に有効ではないことが、オーストラリア・メルボルン大学のRana S. Hinman氏らの検討で示された。慢性膝痛はプライマリケア医を受診する高齢者に最も高頻度にみられる疼痛であり、典型的には骨関節炎に起因し身体機能を低下させる。鍼治療は慢性膝痛の最も一般的に用いられる代替治療で、使用機会は増加傾向にあるという。従来の鍼だけでなく、経穴への非侵襲的な低出力レーザー鍼治療の有用性を示すエビデンスがある。JAMA誌2014年10月1日号掲載の報告。

ADVANCE-ON試験:一定期間の降圧治療の有無でも、長期的な心血管イベント発症に影響(解説:桑島 巌 氏)-260

2型糖尿病合併高血圧患者で、大血管障害を予防するためには、血糖管理に加えて、厳格な血圧管理が非常に重要であることは、UKPDS38という有名な臨床試験で証明されていた。しかし、厳格血圧コントロールといっても平均144/82mmHg、通常血圧管理群154/87mmHgという高いレベルでの比較だった。

レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー型(AD)との違いは?

 2014年9月19日、アルツハイマー型認知症(AD)治療薬アリセプト(一般名:ドネペジル)について、レビー小体型認知症(DLB)の効能・効果が承認された。都内で10月8日に開催されたエーザイ株式会社によるプレスセミナーでは、横浜市立大学名誉教授の小阪 憲司氏と、関東中央病院 神経内科部長の織茂 智之氏が講演した。世界で初めてDLB例を報告し、DLB家族を支える会の顧問でもある小阪氏は、「DLBは最もBPSD(行動・心理症状)を起こしやすい認知症であり、患者さんの苦しみも強く介護者の苦労も多い」と述べ、患者さんや介護者のQOLを高めるため、早期診断・早期治療の重要性を強調した。DLBは誤診されやすく、診断にはDLBの特徴を知ることが必要である。本稿では、織茂氏の講演からDLBの特徴を中心に紹介する。

MPHがADHD症状やメラトニンに及ぼす影響を検証

 注意欠如・多動症(ADHD)患者の大半は、うつ症状に代表される、その他の関連症状を有している。ADHDに関与している可能性のあるメディエーターの1つメラトニンは、サーカディアンリズム、神経機能およびストレス反応を調節していると考えられている。スペイン・Clinico San Cecilio Hospital のIsabel Cubero-Millan氏らは、ADHDのサブタイプにおける血清中メラトニン濃度の状況、およびメチルフェニデート(MPH)が及ぼす血清中メラトニン濃度やADHDに併存する症状への影響を検討した。International Journal of Molecular Sciences誌2014年9月号の掲載報告。

喫煙が低EPA/AA比と関連:日本の2型糖尿病患者

 喫煙は、50歳以上の日本人2型糖尿病患者において、EPA/AA比(エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比)に影響を与える可能性があることが、自治医科大学の岡田 健太氏らによる研究で明らかになった。2型糖尿病患者に禁煙を促すことが、心血管疾患発症の抑制につながるかもしれない。Diabetology & metabolic syndrome誌2014年8月13日号の報告。

てんかんに効くサプリメント、低用量EPA+DHAが発作を抑制

 低用量の魚油(EPA+DHA 1,080mg[3カプセル/日])は、てんかん発作を抑制し、その改善効果は薬剤抵抗性てんかん(DRE)における抗てんかん薬に関する最近の試験結果と同程度であったことが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のChristopher M DeGiorgio氏らによる低用量と高用量をプラセボと比較した第II相無作為化クロスオーバー試験の結果、報告された。高用量魚油に関する試験はこれまでにも行われているが、その効果は示されていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「低用量魚油はてんかん発作を抑制し、てんかん患者の健康を改善することが示された」と述べ、「DREにおける低用量魚油(1,080mg/日未満)の大規模な無作為化試験の実施が正当化された」とまとめている。Journal of Neurol Neurosurg Psychiatry誌オンライン版2014年9月8日号の掲載報告。

登録試験の報告率、ペナルティ予告メールで1.7倍/BMJ

 ClinicalTrials.govに登録した試験で、完了1年までに結果を同サイトで公表していなかった試験の責任者に対し、試験結果の報告に関するリマインダーを電子メールで送付したところ、6ヵ月後の同報告率が1.7倍増大した。フランス・パリ大学のAnnabel Maruani氏らが行った無作為化比較試験の結果、示された。登録試験結果の報告は低率で、試験が無駄になっている主因との認識が高まっている。米国FDAは2007年9月27日に、試験終了後1年までにベーシックな結果を報告することを指針に加え、ペナルティーが課せられる可能性も生じるようになったが、報告率は低調のままで、該当する試験の約75%が未報告の現状であるという。今回の結果を踏まえて著者は、「当局からの直接的なリマインダーが効果的のようだ」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年9月19日号で発表した。

下肢静脈瘤、ベストな治療法は?/NEJM

 下肢静脈瘤の治療法について、フォーム硬化療法、レーザーアブレーションを、外科手術と比較した結果、疾病特異的QOLがフォーム硬化療法でわずかに劣っていたほかは、QOLアウトカムはいずれも同等だった。合併症リスクはレーザーアブレーションが外科手術より低く、伏在静脈主幹部のアブレーション成功率はフォーム硬化療法が外科手術より低かった。英国・アバディーン大学医学部のJulie Brittenden氏らが、下肢静脈瘤患者798例を対象に行った多施設共同無作為化試験の結果、示された。下肢静脈瘤治療として、フォーム硬化療法とレーザーアブレーションは外科手術の代替法として広く行われている。しかし、その有効性や安全性の比較はこれまで行われていなかったという。NEJM誌2014年9月25日号掲載の報告より。