日本語でわかる最新の海外医学論文|page:570

FTD/TPI、3次治療以降の胃がんでOS、PFSを延長(TAGS)/ESMO2018

 転移を有する胃がん(mGC)の予後は不良で、5年OS率は4%とされる。また、3次治療の選択肢が限られており、高度の前治療を受けた患者における課題は多い。トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)(商品名:ロンサーフ)は、治療歴のあるmGC患者を対処にした我が国の第II相EPOC1201試験で、全生存期間(OS)中央値8.7ヵ月、病勢コントロール率(DCR)65.5%という成績が報告されている。ドイツ・ミュンヘンにおける欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)では、3次治療以降の転移を有する胃・胃食道接合部がん(mGC/GEJC)患者を対象に、FTD/TPIとプラセボを比較したTAGS試験の結果が報告された。

あの道端アンジェリカも、乾癬は自分だけと思い込む

 10月29日の世界乾癬デーは、乾癬に対する意識向上や症状で悩んでいる患者の治療アクセス改善、周囲の理解などを目指し、2004年の制定後から毎年世界中でイベントが開催されている。これに先駆け10月24日に、日本乾癬患者連合会、日本乾癬学会と製薬会社9社が共催でメディア・イベントを開催。第一部では乾癬患者への支援について、江藤 隆史氏(日本乾癬学会評議員/東京逓信病院皮膚科部長)と患者会の代表らがトークセッションを繰り広げた。第ニ部では乾癬患者の1人であるモデルの道端 アンジェリカさんが、乾癬患者さんにお薦めのファッションとメイクを紹介した。

治療抵抗性統合失調症に対する電気けいれん療法とクロザピンとの併用

 韓国・Dongguk University International HospitalのJung Hyun Kim氏らは、統合失調症患者に対するクロザピンと電気けいれん療法(ECT)との併用療法の有効性および忍容性について調査を行った。Psychiatry Investigation誌2018年8月号の報告。電子カルテ(Electronic Medical Record)より、5年間のクロザピン治療を行った統合失調症患者を抽出した。精神症状に対する急性期ECTの臨床効果を調査した。また、ECTの維持療法を必要とする予測変数の同定も試みた。

PI3K阻害薬alpelisib、HR+/HER2-進行乳がんでPFS約2倍(SOLAR-1)/ESMO2018

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんにおいて、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用療法が、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。HR+/HER2-乳がん患者の約40%がPIK3CA遺伝子変異を有する。日本も参加している第III相SOLAR-1試験の結果に基づき、フランス・パリ第11大学のFabrice André氏がドイツ・ミュンヘンにおける欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で報告した。SOLAR-1試験では、閉経後女性および男性の、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴はなし)を対象に、PIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートでそれぞれ、alpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+28日を1サイクルとして、フルベストラント500mgを1サイクル目の1日目と15日目、以降1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+28日を1サイクルとして、フルベストラント500mgを1サイクル目の1日目と15日目、以降1日目に投与)に1:1の割合で無作為に割り付けた。

2040年の全世界平均余命、2017年から4.4歳延長/Lancet

 米国・ワシントン大学のKyle J. Foreman氏らは、195の国・地域における2016~40年の平均余命、全死因死亡、250項目の死因別死亡を予測し、多くの国では死亡率の継続的な低下と平均余命の改善が示されることを明らかにした。一方で、良い/悪いシナリオについて差がみられ、将来の展望は不安定であることも示唆された。著者は、「技術革新の継続と、世界の貧困層の人々に対する開発援助を含む医療費の増加は、すべての人が寿命を全うし健康な生活を送ることができる将来図を描くために不可欠な要素である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年10月16日号掲載の報告。

重度肥満2型DM、肥満手術で大血管イベントリスク低下/JAMA

 肥満外科手術を受けた重度肥満の2型糖尿病患者は、肥満外科手術を受けなかった場合と比較し、大血管イベント(冠動脈疾患、脳血管疾患)のリスクが低下したことが、米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニアのDavid P. Fisher氏らによる後ろ向きマッチングコホート研究の結果、明らかとなった。大血管イベントは、2型糖尿病患者の障害および死亡の主たる原因であり、生活習慣の改善を含む内科的治療ではリスクを低下させることができない場合がある。いくつかの観察研究では、肥満外科手術が2型糖尿病患者の合併症を低下させる可能性が示唆されていたが、症例数が少なくBMI値が試験に利用できないこと(非手術群では入手不可のため)が課題であった。JAMA誌2018年10月16日号掲載の報告。

降圧薬の低用量3剤合剤は軽度から中等度の高血圧患者においても、安全に降圧目標への到達率を改善できる(解説:石川讓治氏)-939

日本高血圧治療ガイドライン2014においては、カルシウムチャンネル拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬およびサイアザイド利尿薬の3種類のいずれかを降圧薬の第1選択とし、降圧目標に達しなかった場合に他の降圧薬を追加することが推奨されている。英国のNICEガイドラインにおいても、年齢55歳と人種に応じてカルシウムチャンネル拮抗薬またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(または低価格のアンジオテンシンII受容体拮抗薬)のどちらかを第1選択とし、これらの併用でも目標降圧レベルに到達できないときにサイアザイド系利尿薬を追加することを推奨している。しかし、高リスクの高血圧患者においては、これらのステップに沿った降圧治療では目標レベルに達するまでに時間を要するため、その間の心血管イベントの発症が問題となっていた。そのため欧米の高血圧治療ガイドラインでは、高リスクの高血圧患者においては、第1選択薬として降圧薬の合剤を使用することが認められている。

AIが3年後の糖尿病発症リスクを予測

 わが国では、糖尿病が強く疑われる人が約1,000万人、糖尿病の可能性を否定できない人が約1,000万人と推計されている。糖尿病は、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症に加えて、心血管疾患、がん、認知症などのさまざまな疾患のリスクを高めることが知られており、健康寿命を延伸するため、糖尿病の予防対策は国民的な課題となっている。

日本の頭部外傷の現状は?/脳神経外科学会

 日本頭部外傷データバンクは、日本脳神経外傷学会のプロジェクトである。日本の頭部外傷診療の現状の把握を目的に、1996年に日本頭部外傷データバンク検討会が設立され、1998年より重症頭部外傷患者を対象とした間欠的に2年間の疫学研究を開始。現在まで、Project1998、2004、2009が行われ、このたび、Project2015の解析が開始された。その概要について、日本脳神経外科学会 第77回学術総会において、山口大学 脳神経外科 末廣 栄一氏が発表した。

肥満手術後の体重増、アウトカムと関連する尺度は/JAMA

 腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス(RYGB)術を受けた後の、体重再増加と臨床アウトカムとの関連は、体重再増加を最大体重減少量の%値でみた場合に最も強く認められることが示された。米国・ピッツバーグ大学のWendy C. King氏らによる、RYGB術を受けた約1,400例を5年以上追跡した前向きコホート試験の結果で、JAMA誌2018年10月16日号で発表された。RYGB術後の体重再増加には、大きなばらつきがある。研究グループは、RYGB術後の体重減少が最大に達した後に増加に転じる様子を描出し、体重再増加とアウトカムとの関連を調べた。

AIによる頭部CT読影の精度を検証/Lancet

 ディープラーニング(深層学習)アルゴリズムによる頭部CTスキャン検査データの読影は、頭蓋内出血や頭頂部骨折、正中偏位などを高い精度で検出可能なことが明らかにされた。インド・Qure.ai社のSasank Chilamkurthy氏らが、約29万例のデータを基に検出アルゴリズムを開発し、2万例超のデータで検証した結果で、Lancet誌オンライン版2018年10月11日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「頭部CTスキャン検査の読影にアルゴリズムを活用した、自動トリアージシステム実現の可能性が出てきた」とまとめている。

どないしたらええの? 心原性ショック伴う多枝病変AMI患者へのランダマイズ試験(中川義久 氏)-938

心原性ショックを伴う急性心筋梗塞患者への梗塞責任病変への急性期PCIの有用性を疑うものはいない。一方で、心原性ショックを伴う多枝病変急性心筋梗塞患者への非責任梗塞冠動脈病変へのPCI介入のタイミング判断は難しい。CULPRIT-SHOCK試験は、責任病変と同時に70%以上の冠動脈狭窄を伴うすべての病変にもPCIを行う群と、責任病変のみにPCIを施行する群を比較した多施設ランダマイズ試験である。30日以内の死亡または腎代替療法を要する重症腎不全と定義される主要評価項目は、責任病変のみのPCIが優ることが2017年にすでに報告されている。今回、その1年時のデータが報告された。事前に設定された本試験の2次評価項目である、全死亡・再心筋梗塞には差がなく、心不全入院・再血行再建率は非責任病変にもPCIを施行する多枝PCI群が優っていたという。

喫煙が橈骨動脈増幅係数と関連~わが国の横断研究

 わが国の地域住民を対象としたCIRCS研究(Circulatory Risk in Communities Study)により、大量喫煙男性と女性において喫煙および累積喫煙曝露量が、橈骨動脈増幅係数の増加と正相関を示すことが報告された。橈骨動脈増幅係数は機能的動脈硬化の指標となる。Hypertension Research誌オンライン版2018年10月17日号に掲載。

統合失調症患者の強制入院と再入院リスクとの関連~7年間のレトロスペクティブコホート研究

 台湾・慈済大学のChing-En Lin氏らは、統合失調症患者における再入院リスクを評価するため、強制入院と任意入院の再入院リスクを比較し、そのリスク要因の特定について、検討を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2018年9月24日号の報告。

GIP/GLP-1受容体アゴニスト「LY3298176」、有望な効果/Lancet

 2型糖尿病治療薬として開発中のGIP/GLP-1受容体デュアルアゴニスト「LY3298176」の有効性と安全性を検討した、米国・National Research InstituteのJuan Pablo Frias氏らによる第II相の無作為化プラセボ・実薬対照試験の結果が発表された。LY3298176は、デュラグルチドと比べて血糖コントロールが良好で体重を減少し、有効性および、安全性に関する許容範囲と忍容性プロファイルも有意に良好であった。著者は、「GIPとGLP-1受容体の組み合わせ製剤は、2型糖尿病の治療において新たな治療選択肢を提供するだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年10月4日号掲載の報告。

企業治験に関与すると便益もあるがジレンマも感じるものだ(解説:折笠秀樹氏)-936

企業が資金提供した第III相試験と第IV相試験で、結果が超一流医学誌に出版された200試験を調査したものである。第III相試験は企業主宰の治験がほぼすべてではないかと思う。そこで、同じ企業による資金提供とはいっても、企業主宰の臨床試験と研究者主導の臨床試験では性格が異なる。研究者主導の臨床試験は臨床研究法の対象であり、企業主宰の臨床試験(治験等)はGCP省令の対象である。アカデミアの研究者はどちらの臨床試験にも関与することはあるが、近年では企業主宰の臨床試験への関与は限定的になりつつある。