日本語でわかる最新の海外医学論文|page:572

気胸の入院発生が増加、疫学的特性は?/JAMA

 英国において1968~2016年に自然気胸で入院治療を受けた患者の推移を調べた結果、有意な増加が認められ、患者の約6割が慢性肺疾患を有しているといった特徴が明らかにされた。英国・オックスフォード大学Hospitals NHS Foundation TrustのRob J. Hallifax氏らによる住民ベース疫学研究の結果で、JAMA誌2018年10月9日号で発表された。自然気胸は頻度の高い疾患であり、独特の疫学的プロファイルを有するが、住民ベースのデータは限定的であった。

抗血栓薬の「診療ガイドライン」を書くには勇気が必要!(解説:後藤信哉氏)-934

ランダム化比較試験を中心とする「エビデンス」をまとめて診療ガイドラインが作成される。新薬では薬剤開発の第III相試験が唯一の「エビデンス」の場合も多い。しかし、疾病の発症リスクは時代とともに変化する。ある時点のランダム化比較試験に基づいて「診療ガイドライン」を作成しても、数年後には血栓イベントリスクは激減して、抗血栓薬などは不要になるかもしれない。「診療ガイドライン」は、過去のエビデンスに基づいて作成されるが、出血イベント増加が不可避の抗血栓薬では未来の血栓イベントリスクが低下すれば未来の適応は現在よりも限局される。

新診断基準による妊娠糖尿病(GDM)の診断は出産後の母親の糖代謝異常と関連する(解説:住谷哲氏)-932

HAPO研究の結果を受けてIADPSG は妊娠糖尿病診断基準を2010年に発表した。わが国においてもその発表を受けて、ただちに日本糖尿病学会、日本産科婦人科学会および日本糖尿病・妊娠学会がそれに基づいた診断基準を発表した。診断基準そのものは3学会で同一であったが微妙な文言の差異があったために現場に少なからぬ混乱を生じたが、2015年に統一見解が発表された。GDMの診断基準は「75gOGTTにおいて、(1)空腹時血糖値92mg/dL以上、(2)1時間値180mg/dL以上、(3)2時間値153mg/dL以上のいずれか1点を満たした場合」とされている(ただし妊娠中の明らかな糖尿病[overt diabetes in pregnancy]は除く)。

歯周炎とアルツハイマー病リスクが関連

 歯周病が、軽度認知障害(MCI)・主観的認知低下(SCD)・アルツハイマー病(AD)のリスク増加の一因となるかどうかを検証するために、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJacob Holmer氏らが症例対照研究を実施した。その結果、辺縁性歯周炎と早期認知障害およびADとの関連が示唆された。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2018年10月5日号に掲載。

日本人教師における仕事のストレスと危険なアルコール消費の性差に関する横断研究

 多くの教師は、仕事に関連するストレスや精神障害のリスクが高いといわれている。また、教師の飲酒運転や危険なアルコール消費(hazardous alcohol consumption:HAC)は、社会問題となっている。そして、燃え尽き症候群、職業性ストレス、自己効力感、仕事満足度に関する教師間の性差が報告されている。大阪市立大学の出口 裕彦氏らは、日本の教師における、認識された個人レベルの職業性ストレスとHACとの関連について性差を明らかにするため、検討を行った。PLOS ONE誌2018年9月20日号の報告。

新種のカンジダ症、意外な感染経路/NEJM

 Candida aurisは、新興の多剤耐性病原体であり、2009年、日本で入院患者の外耳道から分離されたカンジダ属の新種である。2011年、韓国で院内の血流感染の原因として報告されて以降、多くの国や地域で相次いで集団発生が確認されており、集中治療室(ICU)でも頻繁に発生している。英国・オックスフォード大学病院のDavid W. Eyre氏らは、同大学関連病院のICUで発生したC. auris感染の集団発生の調査結果を、NEJM誌2018年10月4日号で報告した。

ICUにおけるCandida aurisの集団発生と制圧(解説:吉田敦氏)-930

英国・オックスフォード大学病院の神経ICUで、C. aurisの集団感染が発生し、アクティブサーベイランス、全ゲノム解析に基づく分子疫学、伝播要因の追究、制圧の過程が今回NEJM誌に報告された。多剤耐性を示す本菌の増加は世界中で報告されており、米国および英国は2016年6月にアラートを発したが、今回の事例はその前から始まっていたもので、最終的に皮膚体温計のリユースが最も疑われる結果となった。

マダニが媒介するライム病、最適な抗菌薬は?

 早期ライム病(LB)における遊走性紅斑の管理について、抗菌薬の種類や治療法の選択をめぐる論争がある。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのGabriel Torbahn氏らは、早期LBへの各種抗菌薬と治療法に対するすべての無作為化試験について、ネットワークメタアナリシス(NMA)を行った。その結果、抗菌薬の種類や治療法は、有効性および薬剤関連有害事象に寄与しないことが明らかになった。著者は、「今回の結果は、LB患者を治療する医師ならびに患者の意思決定にとって重要なものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年10月3日号掲載の報告。

日本の高齢ドライバーの自動車事故死亡率

 近年、先進国では高齢ドライバーによる自動車事故が大幅に増加している。わが国の高齢ドライバーの自動車事故の傾向を京都府立大学の松山 匡氏らが日本外傷データバンク(Japan Trauma Data Bank: JTDB)を用いて調べたところ、65歳以上のドライバーによる自動車事故の割合は年々増加しており、75歳以上で院内死亡率が最も高いことがわかった。Medicine誌2018年9月号に掲載。

日本人統合失調症患者の喫煙率に関する大規模コホートメタ解析

 統合失調症患者の喫煙は、世界的に一般集団と比較してより多くみられるが、日本での研究結果では矛盾が生じていた。最近では、一般集団の喫煙率は徐々に低下している。金沢医科大学の大井 一高氏らは、日本人の統合失調症患者を対象に、喫煙率の大規模コホートメタ解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年9月17日号の報告。

潜在性甲状腺機能低下症へのホルモン療法、最新メタ解析結果/JAMA

 潜在性甲状腺機能低下症患者への甲状腺ホルモン療法の便益は不明とされる。スイス・ベルン大学病院のMartin Feller氏らは、成人患者において甲状腺ホルモン療法の有効性を検討し、一般的なQOLや甲状腺関連症状の改善効果はみられないことを示した。研究の成果は、JAMA誌2018年10月2日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値と遊離サイロキシン(FT4)正常範囲内で定義され、とくに甲状腺機能低下症に起因する可能性がある症状(疲労感、便秘、原因不明の体重増加など)を伴う場合は、甲状腺ホルモン(レボチロキシン)による治療が行われることが多い。最近、2つの大規模臨床試験の結果が報告されたことから、これらを含めたメタ解析のアップデートが求められていた。

日本の常識、世界の常識(解説:野間重孝氏)-931

2015年にLancet誌(オンライン版)に発表されたSCOT-HEART試験は、安定胸痛患者の管理に冠動脈造影CT(CTA)を利用することにより、診断精度、診断頻度を上げることができることを示したが、フォローアップ期間が短かったこともあり、非致死性・致死性心筋梗塞の発症頻度の低下を証明することはできなかった(低下傾向はみられたが統計学的有意差が得られなかった)。このことから、CTAの利用が非致死性・致死性心筋梗塞の発症を低下させることを示すことを主な目的として、同研究グループが前研究の参加者を対象に5年間(中間値で4.8年)の長期フォローを行ったのが本研究である。

認知症と自殺との関係

 認知症と診断された患者における自殺念慮の存在、促進因子、保護因子について、英国・プリマス大学のGary Hodge氏が、文献レビューおよびデータ統合を行った。本レビューでは、どのような因子が自殺念慮のリスク上昇に影響を及ぼすかを考慮し、認知症での死亡を議論する際、選択の道徳性と倫理性への反映を試みた。Dementia(London, England)誌オンライン版2018年9月14日号の報告。

医師の企業からの金銭受け取り、容認患者は少ない

 2014年から米国では国家的プログラムとして、医師に対する医療関連の企業支払いデータをOpen Paymentsのデータベースにて公開している。これらのデータに関する患者の意見は、患者の懸念や、このような支払い報告の仕組みを改善する政策担当者の理解に役立つとして、米国・コロンビア大学医療センターのGregory E. Stein氏らは、Open Paymentsの情報に対する患者の認識について評価した。その結果、医師の企業からの金銭受け取りを認めないとする患者が多いこと、一方でOpen Paymentsのデータベースにアクセスしたことがある/するつもりがあると回答した患者は少数派であることが明らかになった。著者は、「今回の結果が他の設定条件下でも一般化できるものかどうか、さらなる調査が必要である」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年9月13日号掲載の報告。

高血圧の発症、黒人成人でなぜ多い?/JAMA

 米国・アラバマ州立大学のGeorge Howard氏らは、白人成人との比較による黒人成人の高血圧症の過剰リスクについて臨床的および社会的要因との関連を調べた。媒介分析法を用いた検討の結果、男女ともに統計的な人種間の差を媒介しているキー要因は、南部型の食事スコア、食事におけるナトリウム値のカリウム値に対する比率、そして教育レベルであることが示されたという。また女性においては、腹囲とBMI値も主要因であった。米国の黒人集団は、高血圧症の有病率の高さが平均余命に格差をもたらす主因となっている。一方で、なぜ黒人成人で高血圧症の発症率が高いのかは明らかにされていなかった。JAMA誌2018年10月2日号掲載の報告。

BVS vs.DES、30日・1年時評価は?/Lancet

 拡大患者集団において、最適化された手技で留置された生体吸収性スキャフォールド(BVS)は金属製薬剤溶出ステント(DES)と比較して、30日時点と1年時点の標的病変不全および狭心症の発生について非劣性であることが示された。米国・コロンビア大学医療センターのGregg W. Stone氏らによる無作為化試験「ABSORB IV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年9月24日号に掲載された。先行研究で、BVSはDESよりも有害事象の発現頻度が多いことが示されていたが、1件の無作為化試験で狭心症の頻度がBVS群で低下したことが報告されていた。しかしながら、それら初期に行われた試験は、マスキングがされておらず、スキャフォールドにとって至適とされるサイズよりも小さい病変が登録された頻度が高く、留置テクニックは未熟であり、さらにBVSがより適しているのではと目されていた心筋梗塞の患者は除外されていた。

臨床試験サイトへ事前登録したら、結果の報告義務のあることを覚えておこう(解説:折笠秀樹氏)-929

EU臨床試験サイト(EUCTR)は事前登録サイトの1つである。そこでは、試験終了後12ヵ月以内に結果を報告することが義務付けられている。ネットから結果の欄へ書き込むことが求められているのだ。EUCTRには3万1,818試験が登録されており、報告期限を過ぎている臨床試験7,274試験を今回調べたようである。EUCTRへの結果報告を順守していたのは、ほぼ半数の49.5%にすぎなかった。順守していないのはなぜだろうか。これは類推になるが、ほとんどが怠惰か失念ではないだろうか。サイトに結果報告の記入がなければ、学会発表も論文もないことを意味するわけではない。試験状況を「終了(all completed)」とチェックしているのだから、学会発表や論文執筆を通じて公表はしていると思いたい。サイトに要約した結果を書くのは面倒くさいだけと信じたい。

統合失調症または双極性障害患者におけるアリピプラゾール経口剤と持効性注射剤の服薬アドヒアランスの比較

 リアルワールドにおける統合失調症または双極I型障害患者(BD-I)に対する長時間作用型持効性注射剤抗精神病薬(とくに、アリピプラゾール持効性注射剤月1回製剤400mg[AOM400]のような新規薬剤)と経口抗精神病薬のアドヒアランスを比較した研究は、あまり行われていない。米国・Partnership for Health Analytic ResearchのTingjian Yan氏らは、アリピプラゾールの経口剤と持効性注射剤の服薬アドヒアランスについて、比較を行った。Advances in Therapy誌オンライン版2018年9月11日号の報告。