日本語でわかる最新の海外医学論文|page:572

クリスマスの体重増加は予防できるか/BMJ

 年々増える体重の大部分は、クリスマスなどの祝祭日の食べ過ぎに原因があるという。英国・バーミンガム大学のFrances Mason氏らWinter Weight Watch Studyの研究グループは、定期的な体重測定、体重管理に関する助言、お祝いの食事のカロリーの消費に要する身体活動量の情報から成る簡易行動介入により、クリスマス休暇中の体重増加を予防できることを示し、BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)で報告した。英国など多くの国では、お祝いの季節が国民の休日と重なり、長期の過剰な摂食や座位行動の機会をもたらしており、クリスマス1日の摂取熱量は6,000カロリーと推奨の約3倍にも達するとの報告もある。これによる体重増加は、その後、完全には解消されず、わずかな体重の増加が毎年積み重なって10年で5~10kg増えることで、将来の肥満につながるとされる。

アジア人でより良好な結果、ニボルマブ+イピリムマブによる高TMB肺がん1次治療(CheckMate-227)/日本肺癌学会

 第III相CheckMate-227試験(Part 1)の結果、高腫瘍遺伝子変異量(TMB)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において、ニボルマブ・イピリムマブの併用療法が標準化学療法と比較して有意に無増悪生存期間(PFS)を延長したことがすでに報告されている。本試験のアジア人サブグループ解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が11月29~12月1日に東京で開催された第59回日本肺癌学会学術集会で発表した。なお、本結果は、11月8~10日に中国・広州市で開催されたIASLC ASIAでのKeunchil Park氏による発表のアンコール演題。

限局性前立腺がん、前立腺全摘で生存期間延長/NEJM

 余命が長い臨床的に発見された限局性前立腺がん患者は、根治的前立腺全摘除術により平均2.9年の生存期間延長を期待できることが示された。グリーソンスコア高値および切除標本で被膜外浸潤が確認された患者は、前立腺がんによる死亡リスクが高かった。スウェーデン・Orebro University HospitalのAnna Bill-Axelson氏らが、スカンジナビア前立腺がんグループ研究4(SPCG-4)の29年間の追跡結果を報告した。根治的前立腺全摘除術により臨床的な限局性前立腺がん患者の死亡率は低下するが、長期にわたり追跡した無作為化試験のエビデンスはほとんどなかった。NEJM誌オンライン版2018年12月13日号掲載の報告。

クリスマス休暇中の退院、30日死亡/再入院リスク増大/BMJ

 12月のクリスマス休暇中に退院した患者は、退院後1~2週間以内の経過観察受診率が低く、30日以内の死亡/再入院リスクが高いことが、カナダ・トロント総合病院のLauren Lapointe-Shaw氏らによる、地域住民を対象とした後ろ向きコホート研究の結果、示された。多くの研究で、休日に入院した患者の院内死亡リスクの増加が見いだされている。また、金曜日や週末に退院した患者の再入院リスク増加を明らかにした研究もいくつかあるが、これまでに12月のクリスマス休暇中に退院した患者のアウトカムは明らかにされていなかった。BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

デュルバルマブMYSTIC試験のOS結果/アストラゼネカ

 アストラゼネカとそのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンは、2018年12月13日、スイスのジュネーブで開催された2018年欧州臨床腫瘍学会がん免疫療法会議において第III相MYSTIC試験の全生存期間および無増悪生存期間に関するデータを発表した。  MYSTIC試験は、未治療のステージIV非小細胞肺がん患者を対象としてデュルバルマブ単剤またはデュルバルマブと抗CTLA-4抗体tremelimumabの併用療法を、プラチナベースの標準化学療法とを比較検討した多施設共同無作為化非盲検国際第III相試験。主要評価項目は、PD-L1発現25%以上の患者における、デュルバルマブ単独療法のOS、デュルバルマブ・tremelimumab併用療法のPFSおよびOS。

京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科「医療人のための学術・基本マナーセミナー」【ご案内】

 京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科は、2019年1月21日(月)、「医療人のための学術・基本マナーセミナー」を開催する。医師には、日々の臨床や研究成果の学会発表、英語論文の世界発信などが求められるため、学会抄録やスライドの作成、プレゼンテーション、統計解析、英語論文作成における能力が必要となる。しかし、医学生時代はもちろん、医師として就業後も、これらを系統的に教わる機会が少ないため、社会人としての基本マナーや常識を学んでいない医師も多いという。

糖尿病患者の認知症リスク、活動的・社会的な生活で減らせるか

 糖尿病関連認知症に対する健康的な生活習慣の効果はまだわかっていない。今回、活動的な生活習慣と豊かな社会的ネットワークが糖尿病患者の認知症リスクの増加を防げるかどうか、スウェーデン・ストックホルム大学のAnna Marseglia氏らが検討した。その結果、活動的で社会的な生活習慣が、認知症リスクにおける糖尿病の有害作用を打ち消す可能性があることが示唆された。Diabetes Care誌オンライン版2018年12月6日号に掲載。

飲酒運転の再発と交通事故、アルコール関連問題、衝動性のバイオマーカーとの関連

 危険な運転行為において、個々の生物学的な傾向が役割を担うはずである。衝動性、アルコール使用、過度なリスクのマーカーとして、血清モノアミンオキシダーゼ(MAO)、ドパミントランスポーター遺伝子(DAT1)、神経ペプチドS1受容体(NPSR1)遺伝子多型が同定されている。エストニア・タルトゥ大学のTonis Tokko氏らは、衝動性の神経生物学的因子が、飲酒運転や一般的な交通行動に及ぼす影響について検討を行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2018年11月26日号の報告。

知的活動、加齢による認知機能低下を予防せず/BMJ

 認知機能は行使することによって維持または強化が可能で、後年の認知機能低下も相殺する、ということを表す“use it or lose it”の考え方がある。しかし、英国・NHS GrampianのRoger T. Staff氏らが、498例を対象に15年追跡した前向き観察試験の結果、知的活動(intellectual engagement)は、加齢による認知機能低下への移行とは関連がないことが明らかにされた。一方で、後年の認知能力の向上とはわずかに関連が認められ、なかでも問題解決型の活動が、後年の認知能力の向上と最も関連していたという。BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)掲載の報告より。

心房細動の早期発症関連遺伝子を特定/JAMA

 タイチン(TTN)遺伝子の機能喪失型変異(LOF)と、早期発症心房細動の関連が、症例対照試験で確認された。早期発症心房細動患者のうちTTN LOFが認められた人の割合は、対照群の1.76~2.16倍で、発症年齢が30歳未満群の同倍率は5.94倍だった。米国・The Broad Institute of MIT and HarvardのSeung Hoan Choi氏らが、国立心肺血液研究所(NHLBI)のTrans-Omics for Precision Medicine(TOPMed)プログラムの全ゲノムシークエンスデータを基に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2018年12月11日号で発表した。著者は、「さらなる研究を行い、因果関係があることなのかを明らかにする必要がある」とまとめている。心房細動は、集団の1%に認められる、よくみられる不整脈である。心房細動を有する若年者は、疾患に関連した遺伝子の関与が強いとされるが、そのメカニズムは完全には明らかになっていないという。

ネーザルハイフロー(高流量鼻カニュラ)酸素療法の効果について(解説:小林英夫氏)-981

ネーザルハイフロー酸素療法は、従来の経鼻カニュラや酸素マスクとは異なり、数十L/分以上の高流量で高濃度かつ加湿された酸素を供給できるシステムである。価格は50万円以下で外観は太めの鼻カニュラ様であるが、酸素ボンベでは稼働せず配管を要するために診療所や外来診察室での利用は難しい。本療法に期待されることは、ガス交換や換気効率向上、PEEP類似効果、加湿による気道粘液線毛クリアランス改善、などといった単なる酸素投与にとどまらない効果であり、NPPVの一歩手前の呼吸療法としての活用が想定されていた。

このままでは現場は崩壊、医療のかかり方を厚労省懇談会が提言

 皆保険制度を維持しつつ医療の質を確保していくため、また医師の需給対策や医師の働き方改革を進めるにあたり、医療を受ける側の意識変容は欠かせない。2018年10月から5回にわたり開催されてきた厚生労働省「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」が12月17日、“「いのちをまもり、医療をまもる」国民プロジェクト宣言”と題したアクションプランを発表した。このアクションプランでは、医療を取り巻く状況の変化が大きい中で、市民・医師/医療提供者・行政・民間企業のそれぞれの立場で起こしていくべきアクションの例が提示されている。

複合免疫療法の時代へ、変化する腎細胞がん薬物療法

 転移した場合は有効な抗がん化学療法がなく、術後10年以上経過しても再発がみられる場合があるなど、ほかのがん種とは異なる特徴を多く持つ腎細胞がん。近年は分子標的治療薬が薬物療法の中心だったが、2016年8月に抗PD-1抗体ニボルマブの単剤療法(2次治療)、2018年8月にニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法(1次治療)が承認され、大きな変化が訪れている。12月7日、都内で「変化する腎細胞がんに対する薬物療法」と題したメディアセミナーが開催され(共催:小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)、大家 基嗣氏(慶應義塾大学医学部泌尿器科 教授)が講演した。

統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤切り替え~ドイツにおけるコスト比較

 ドイツ・Institute of Empirical Health EconomicsのChristoph Potempa氏らは、統合失調症治療において経口抗精神病薬からアリピプラゾール持効性注射剤へ切り替えることによるコスト推進要因を調査し、ドイツのヘルスケア環境における予算影響分析(BIA)を行った。Health Economics Review誌2018年11月23日号の報告。  単一レトロスペクティブ非介入前後比較研究として実施された。統合失調症患者132例を対象に、経口抗精神病薬治療およびアリピプラゾール持効性注射剤治療における精神科入院率と関連費用の比較を行った。両治療期間におけるヘルスケア関連費用を比較するため、BIAを用いた。結果のロバスト性を評価するため、単変量感度分析を行った。

がん患者の静脈血栓塞栓症予防、アピキサバンが有望/NEJM

 がん患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高いとされる。カナダ・オタワ大学のMarc Carrier氏らAVERT試験の研究グループは、中等度~高度の静脈血栓塞栓症リスク(Khoranaスコア≧2)を有し、化学療法を開始した外来がん患者では、アピキサバンにより静脈血栓塞栓症の発生が抑制されることを示し、NEJM誌オンライン版2018年12月4日号で報告した。Khoranaスコアは静脈血栓塞栓症のリスクが高いがん患者を同定し、予防治療により便益を得ると考えられる患者の選定に役立つ可能性がある。また、直接経口抗凝固薬は、がん患者の血栓予防薬として、利便性や費用も含め、非経口薬よりも優れる可能性が示唆されている。

スタチンに加え注射でLDL-Cをさらに下げると、心血管リスクが減少(解説:佐田政隆氏)-980

約30年前にスタチンが発売されてから、数々のエビデンスが築かれてきた。2次予防はもちろん、ハイリスク症例の1次予防にも、有効性が示された。その後、スタチン間のhead to headの試験が組まれ、LDLコレステロールを大量のストロングスタチンで積極的に低下させる方が、より心血管イベント抑制効果が大きいことが示され、Lower is Better という概念が確立した。そして、LDLコレステロール値と心血管イベントがほぼ直線的に低下するグラフが作られ、その直線を外挿するとLDLコレステロールを20~30 mg/dL程度まで低下させれば心血管イベントを0にすることができるのではないかと予想されていた。しかし、最大耐用量のストロングスタチンと小腸でのコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブを用いても、LDLコレステロールはせいぜい50 mg/dLまでしか下げられなかった。そして、至適薬物療法を施しても、冠動脈病変が進行していく症例が存在し、いわゆるスタチン投与後の残余リスクとして問題になっている。

日本と世界の平均寿命は2040年にどうなるか?(解説:有馬久富氏)-979

日本人の平均寿命は、戦後右肩上がりで延び続け、世界でもトップクラスの長寿国となった。2017年の平均寿命は、男性で81年、女性で87年と報告されている。先日、Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study(GBD)研究2016のデータを用いて、2040年の世界平均寿命を予測した成績がLancetに掲載された。その結果、世界の平均寿命は、男女ともに平均4.4年延び、日本の平均寿命も85年を超えて世界のトップクラスにあり続けると予測された。

アトピー性皮膚炎患者、皮膚以外の感染症リスク上昇

 アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚への細菌定着や感染の増加、皮膚以外の感染症の多数のリスク因子に関連している。しかし、ADが皮膚以外の感染症の増加と関連しているかどうかについては、これまでの研究では相反する結果が得られていた。米国・ノースウェスタン大学のLinda Serrano氏らはシステマティックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、AD患者は、皮膚以外の感染症リスクが高いことが明らかとなった。著者は「今後、これらの関連を確認し、その機序を明らかにする必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年11月21日号掲載の報告。

薬剤耐性菌の拡大を防ぐ「かぜ診療」最前線

 薬剤耐性(AMR)の問題は、これに起因する死亡者数が2050年には1,000万人に上ると推定されている喫緊の課題だ。2018年12月8日、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは抗菌薬の適正使用を目指し「かぜ診療ブラッシュアップコース」を都内で開催した。  「適切なかぜ診療を行う際に知っておきたいこと」と題し、藤友結実子氏(国立国際医療センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)が、一般市民の抗菌薬に関する意識調査の結果を紹介した。抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある割合は94.2%だが、効果に関しては、71.9%が「細菌が増えるのを抑える」と正しく認識している一方、40.9%「熱を下げる」、39.9%が「痛みを抑える」とも回答している。

抗うつ薬使用と道路交通事故による死亡との関連

 抗うつ薬は、最も一般的に使用されている精神疾患治療薬の1つである。しかし、抗うつ薬治療において、薬剤のクラス間または各物質に関連する交通事故リスクへの影響については、ほとんど知られていない。韓国・ソウル大学校病院のBo Ram Yang氏らは、道路交通事故における抗うつ薬使用と死亡リスクとの関連について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2018年11月24日号の報告。