日本語でわかる最新の海外医学論文|page:520

プロカルシトニン値による抗菌薬投与短縮と肺炎再発

 肺炎における抗菌薬投与について、プロカルシトニン(PCT)値に基づいた管理により、死亡率を増加させることなく投与期間を短縮したという研究がいくつか報告されている。今回、福岡大学筑紫病院の赤木 隆紀氏らの研究により、PCTガイドによる抗菌薬中止により、肺炎の再発を増加させることなく投与期間を短縮するのに役立つ可能性が示唆された。the American Journal of the Medical Sciences誌オンライン版2019年4月16日号に掲載。

日本人統合失調症患者に対するブロナンセリンとハロペリドールの二重盲検ランダム化比較試験

 以前、CNS薬理研究所の村崎 光邦氏が、統合失調症患者に対するブロナンセリンの有効性および安全性について、ハロペリドールとの比較を行った日本の多施設共同ランダム化二重盲検試験を日本語で発表した。米国・マイアミ大学のPhilip D. Harvey氏らは、以前報告されたプロトコルごとのデータセットの代わりに完全な分析データセットに基づく試験結果を提示し、統合失調症の薬理学的治療の最新知識に照らし合わせて、調査結果についての議論を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年4月30日号の報告。

重症OSAは非心臓手術後30日の心血管リスクと関連/JAMA

 非心臓大手術を受ける成人において、未診断の重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、術後30日の心血管合併症リスクの有意な増大と関連することが示された。中国・香港中文大学のMatthew T.V. Chan氏らが、1,218例を対象に行った前向きコホート試験の結果で、JAMA誌2019年5月14日号で発表した。一般集団の検討で、未診断のOSAは心血管リスクを増大することが示されていたが、OSAが周術期において同程度のリスクとなるかは不明であった。今回の結果について著者は、「さらなる研究を行い、介入によって同リスクが軽減可能かを評価する必要がある」とまとめている。

ESUSの再発予防、ダビガトランvs.アスピリン/NEJM

 塞栓源不明の脳塞栓症(ESUS)を発症した患者に対し、ダビガトラン投与群はアスピリン投与群との比較において、再発予防効果について優越性は示されなかった。一方で、大出血ではないものの臨床的に重要な出血の発生リスクは、ダビガトラン群が高かった。ドイツ・Duisburg-Essen大学のH.-C. Diener氏らによる、42ヵ国5,390例の患者を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌2019年5月16日号で発表した。脳梗塞の20~30%は原因不明で、その大半がESUSに分類されるという。これらESUS後の再発予防において、先行無作為化試験で、リバーロキサバンの有効性はアスピリンと同程度であることが示されていた。ダビガトランがESUS再発予防に有効であるかは不明であった。

Supraflex対Xienceの比較試験(解説:上田恭敬氏)-1052

Supraflex stentとXience stentを比較した単盲検国際多施設無作為化比較非劣性試験の結果である。Supraflex stentはultrathin struts(60μm)、biodegradable polymer等を特徴とする新世代ステントの1つである。720症例がSupraflex群に715症例がXience群に割り付けられた。主要評価項目は1年でのcardiac death, target-vessel myocardial infarction, or clinically indicated target lesion revascularisationの複合エンドポイントである。ほとんど除外基準のないall-comerデザインで検討された。

認知症患者におけるカフェインと精神症状~システマティックレビュー

 カフェイン摂取は、健康成人の行動や睡眠に影響を及ぼすことが知られている。行動症状や睡眠障害に対しカフェイン摂取が影響している可能性のある認知症患者は、多く見受けられる。オランダ・ライデン大学のM. A. Kromhout氏らは、認知症患者におけるカフェイン摂取と精神症状との関連について調査するため、システマティックレビューを行った。Experimental Gerontology誌オンライン版2019年4月30日号の報告。

大腸がんの便潜血検査、アスピリンで感度は向上するか/JAMA

 アスピリンは免疫学的便潜血検査(FIT)による進行新生物の検出感度を、とくに男性において改善することが、観察研究で示されている。ドイツ・German Cancer Research CenterのHermann Brenner氏らは、この知見を検証するために、大腸内視鏡検査が予定されている40~80歳の男女を対象に無作為化試験を行った。その結果、FITの前にアスピリンを経口投与しても、進行大腸がんの検出感度は上昇しないことが示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年5月7日号に掲載された。FITは、大腸がんの検出において高い特異度を有するが、多くの大腸がんの前駆病変である進行腺腫(advanced adenoma)の検出能は十分でない。特異度を損なわずに感度を向上させることができれば、大腸がんのスクリーニングにおけるFITの検出能が改善される可能性があるという。

新生児アトピー予防戦略、ビタミンD補給よりも紫外線曝露

 ビタミンDとアトピー性疾患の関連はさまざまに取り上げられている。オーストラリア・西オーストラリア大学のKristina Rueter氏らは、新生児におけるビタミンD補給による湿疹および免疫能への効果を明らかにするため、二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施。その結果、ビタミンD補給と湿疹罹患率との間に有意な関連はみられなかった。一方で、一部の対象児について行った紫外線曝露量との関連評価(非無作為の探索的解析)から、その曝露量が多い児では湿疹罹患率が低く、炎症誘発性免疫マーカー値が低値であったことを報告した。著者は今回の検討は紫外線量と湿疹罹患率などの関連を初めて明らかにしたものだとしたうえで、「生まれて間もない時期のアレルギー予防策として、紫外線曝露がビタミンD補給よりも有益と思われることを示すものである」とまとめている。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2019年3月号掲載の報告。

治療抵抗性統合失調症に対するECTの治療反応速度と臨床的有効性

治療抵抗性統合失調症患者に対する電気けいれん療法(ECT)は、有効であることが示唆されているが、治療反応率、認知機能およびQOLのアウトカムに関するエビデンスは限られている。シンガポール・Institute of Mental HealthのChristopher Yi Wen Chan氏らは、治療抵抗性統合失調症患者を対象とした自然主義的レトロスペクティブコホート研究において、ECTの有効性および治療反応速度について検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年4月26日号の報告。

IV期NSCLCにおける放射線治療と免疫CP阻害薬の相乗効果

 切除不能な局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する化学放射線同時療法の維持治療にデュルバルマブが適応になるなど、放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせは相乗効果をもたらすとされる。しかし、IV期NSCLCにおける放射線治療の意義を明確に示した報告は少ない。埼玉医科大学国際医療センターの山口央氏らは、放射線療法(RT)の治療歴がその後のニボルマブ(抗PD-1抗体)の治療効果や予後に影響を与えるかを後方視的に解析した。Thoracic Cancer誌2019年4月号の掲載報告。

英国の性交頻度、性的活発集団で急低下/BMJ

 性的に活発な人々の割合や、この集団における性交頻度の低下が、日本を含むいくつかの国で観察されている。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のKaye Wellings氏らは、同国の全国調査のデータを解析し、最近は性交頻度に低下傾向が認められ、とくに25歳以上および結婚/同棲者で顕著であることを明らかにした。BMJ誌2019年5月7日号掲載の報告。  研究グループは、英国における性交頻度およびその生活様式上の因子との関連の経時的な変化を調査する目的で、3つの反復的な横断研究のデータの解析を行った(英国Wellcome Trustなどの助成による)。

腰痛診療ガイドライン2019発刊、7年ぶりの改訂でのポイントは?

 2019年5月13日、日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修による『腰痛診療ガイドライン2019』(編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会、腰痛診療ガイドライン策定委員会)が発刊された。本ガイドラインは改訂第2版で、初版から実に7年ぶりの改訂となる。  初版の腰痛診療ガイドライン作成から現在に至るまでに、腰痛診療は大きく変遷し、多様化した。また、有症期間によって病態や治療が異なり、腰痛診療は複雑化してきている。そこで、科学的根拠に基づいた診療(evidence-based medicine:EBM)を患者に提供することを理念とし、『Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014』で推奨されるガイドライン策定方法にのっとって腰痛診療ガイドライン2019は作成された。

統合失調症患者の同意能力と認知機能との関係

 同意の意思決定能力は、倫理的および法的な新しい概念であり、重要な医学的決定や臨床研究への参加に直面している患者において、自己決定と密接に関連するものである。国立精神・神経医療研究センターの菅原 典夫氏らは、統合失調症患者における同意の意思決定能力と認知機能との関係について、Frontiers in Psychiatry誌2019年4月12日号で報告した。

孤立性の三尖弁閉鎖不全への開心術、長期予後改善せず?【Dr.河田pick up】

 中等度から重症の三尖弁閉鎖不全症の患者は米国では160万人以上おり、その予後は一般的に不良である。現在のACC/AHAガイドラインでも三尖弁閉鎖不全症に対する開心術は、重症で、症状があり、弁周囲の拡大と右心不全がある患者に推奨されているが、エビデンスは乏しい。  左心系の弁膜症のない孤発性の三尖弁閉鎖不全症患者に対しては、長い間保存的な薬物治療が行われてきた。この論文では、孤発性の三尖弁閉鎖不全症に対する外科的弁修復および弁置換の効果を検証している。米国・マサチューセッツ総合病院のJason H. Wasfy氏らによる、Journal of American College of Cardiology誌オンライン版5月3日号への報告。

貧血/鉄欠乏の心臓手術患者、術前日の薬物治療で輸血量減少/Lancet

 鉄欠乏または貧血がみられる待機的心臓手術患者では、手術前日の鉄/エリスロポエチンアルファ/ビタミンB12/葉酸の併用投与により、周術期の赤血球および同種血製剤の輸血量が減少することが、スイス・チューリッヒ大学のDonat R. Spahn氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月25日号に掲載された。貧血は、心臓手術が予定されている患者で高頻度に認められ、赤血球輸血量の増加や、死亡を含む有害な臨床アウトカムと関連する。また、鉄欠乏は貧血の最も重要な要因であり、鉄はエネルギーの産生や、心筋機能などの効率的な臓器機能に関与する多くの過程で中心的な役割を担っている。そのため、貧血と関連がない場合であっても、術前の鉄欠乏の治療を推奨する専門家もいるという。

急性期脳梗塞の血栓溶解療法、発症後9時間まで有効?/NEJM

 救済可能な脳組織を有する急性期脳梗塞患者の治療において、発症後4.5~9時間または脳梗塞の症状を呈して起床した場合のアルテプラーゼ投与による血栓溶解療法は、プラセボと比較して神経障害がない/軽度(修正Rankinスケールスコアが0/1)の患者の割合が有意に高いことが、オーストラリア・メルボルン大学のHenry Ma氏らが行ったEXTEND試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年5月9日号に掲載された。急性期脳梗塞に対する静脈内血栓溶解療法の開始時期は、一般に発症後4.5時間以内に限られる。一方、画像所見で、脳組織の虚血がみられるが梗塞は認めない患者では、治療が可能な時間を延長できる可能性が示唆されている。

労作ではあるがnegative studyである(解説:野間重孝氏)-1051

評者は多くの読者がこの論文を誤解して読んだのではないかと危うんでいる。つまり、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)による心停止から回復した患者に対する治療方針として、血管インターベンション(PCI)を前提とした緊急冠動脈造影を行うのが望ましいのか、待機的冠動脈造影とするのが望ましいのかを検討した論文として読んだ方が多いのではないだろうか。また、ある方はもっとストレートに、NSTEMIを基礎として起こった心停止例の治療に対して緊急PCIが望ましいのか、待機的PCIが望ましいのかを検討した成績として読んだ方もいらっしゃるかもしれない。確かに、この論文の筆致から致し方がないようにも思われるのだが、もう一度この論文の題名を確かめていただきたい。“Coronary Angiography after Cardiac Arrest without ST-Segment Elevation”となっており、NSTEMIといった言葉は入っていないことに気付かれると思う。論文評としてはいささか妙な書き出しになったのは、実は評者自身一読した段階で誤解しそうになったからだ。

睡眠時間と青年期うつ病との関連

 青年期の睡眠時間とうつ病との関連について、再現性の懸念が高まっていることを考慮し、米国・ミネソタ大学のA. T. Berger氏らは、青年期の睡眠と精神的ウェルビーイングとの関連を新たなデータセットを用いて、これまでの分析を概念的に再現した。Sleep Health誌2019年4月号の報告。  START研究のベースラインデータを用いて、以前の分析(Sleep Health, June 2017)を概念的に再現した。START研究は、高校の始業時間を遅らせた際、青年期の体重変化に対する睡眠時間の影響を自然実験で評価した縦断的研究である。STARTとそれ以前の研究において、学校がある日の就寝、起床時間、6項目のうつ病サブスケールアンケートを学校で自己報告により回答してもらった。睡眠変数(睡眠時間、起床時間、就寝時間)と一連のアウトカムとの関連性および95%信頼区間(CI)を、ロジスティック回帰モデルを用いて算出した。

進行胆道がん、nab-パクリタキセルの上乗せで生存延長/JAMA Oncol

 進行胆道がんの生存期間改善に有望な治療法が示唆された。現在、進行胆道がんに対する標準治療はゲムシタビン+シスプラチンであるが、無増悪生存期間(PFS)中央値は8.0ヵ月、全生存期間(OS)は11.7ヵ月である。米国・アリゾナ大学がんセンターのRachna T. Shroff氏らは、ゲムシタビン+シスプラチンへのnab-パクリタキセルの上乗せ効果について検討し、nab-パクリタキセル+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法により、ヒストリカルコントロール(ゲムシタビン+シスプラチン)の報告と比較し、PFSおよびOSが改善したことを報告した。著者は「今回の結果は、第III相の無作為化臨床試験で検証されることになるだろう」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年4月18日号掲載の報告。

再発/難治性多発性骨髄腫でCAR-T療法が有望/NEJM

 再発または難治性多発性骨髄腫患者において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の、安全性と抗腫瘍効果が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのNoopur Raje氏らが、bb2121の第I相臨床試験(CRB-401試験)の結果を報告した。bb2121は、前臨床試験において、多発性骨髄腫の治療薬として有望であることが示されていた。NEJM誌2019年5月2日号掲載の報告。  研究グループは、2016年1月31日~2018年4月30日の期間に、プロテアソーム阻害薬および免疫調整薬を含む3レジメン以上の治療歴がある、または両方の薬剤に治療抵抗性の再発/難治性多発性骨髄腫患者を登録した。