日本語でわかる最新の海外医学論文|page:517

トラスツズマブを用いた術後補助療法は6ヵ月間で十分か?‒PHARE試験の結果から(解説:岩瀬俊明氏)-1085

これまでHER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブを用いた術後補助療法の標準投与期間は12ヵ月とされていたが、心毒性、高額な医療費、また長期の通院等のデメリットが憂慮される。そのため治療期間を短縮するオプションがいくつかの臨床試験で検討されてきたが、コンセンサスは得られていない。以上の背景から、本試験はHER2陽性早期乳がんにおいて12ヵ月のトラスツズマブ治療に対して6ヵ月の治療効果を第3相ランダム化非劣性試験で比較した。

医師の応召義務、診療しないことが正当化されるケースとは/日医

 診療時間内か診療時間外かで、応召義務の解釈は異なるのか? 7月24日、日本医師会の定例会見で、現代における応召義務の解釈と対応の在り方について検証した厚生労働省研究班による報告書の内容を、松本 吉郎常任理事が解説した。この報告書は、2018年度の厚生労働科学研究費により実施された「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈についての研究(研究代表者:上智大学法学部 岩田 太氏)」の研究報告書1)として、7月18日の社会保障審議会医療部会に提出されている2)。

重度の日本人アルコール依存症に対するナルメフェンのランダム化比較試験(第III相試験)

 アルコール摂取量を減らすことは、アルコール依存症患者にとっての治療アプローチの1つである。東京慈恵会医科大学の宮田 久嗣氏らは、飲酒リスクレベル(DRL)が高い、または非常に高い日本人アルコール依存症患者を対象に、ナルメフェンの多施設共同ランダム化二重盲検比較試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年7月12日号の報告。  対象患者は、心理社会的治療と併せて、必要に応じてナルメフェン20mg群、10mg群、プラセボ群にランダムに割り付けられ、24週間治療を行った。主要評価項目は、大量飲酒日数(HDD)のベースラインから12週目までの変化とした。副次的評価項目は、総アルコール摂取量(TAC)のベースラインから12週目までの変化とした。

本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。  本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。

急性脳梗塞、迅速な血管内治療開始でアウトカム改善/JAMA

 脳主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中(AIS)患者の実臨床治療では、血管内治療開始までの時間の短縮によりアウトカムが改善することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校David Geffen医学校のReza Jahan氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。AISにおける脳主幹動脈閉塞への血管内治療の有益性は時間依存性とされる。一方、治療開始までの時間短縮が、アウトカムや実臨床への一般化可能性に、どの程度の影響を及ぼすかは不明だという。

GLP-1受容体作動薬は注射薬から経口薬へシフトするのか?(解説:住谷哲氏)-1090

われわれが使用できるインクレチン関連薬には、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬がある。これまでに報告された心血管アウトカム試験の結果から考えると、GLP-1受容体作動薬がDPP-4阻害薬に比べて、動脈硬化性心血管病の再発予防に関しては積極的に選択される薬剤であるのは異論がないだろう。しかし注射薬のハードルは高く、とくにわが国ではGLP-1受容体作動薬が十分に使用されていないのが現状である。経口セマグルチドは経口GLP-1受容体作動薬であり、この状況を大きく変化させる可能性がある。PIONEER programは経口セマグルチドの第III相臨床試験プログラムでありPIONEER 1から10までの10試験、組み込み総数9,543人から構成される。

急性期脳梗塞の新たな治療法として期待される翼口蓋神経節刺激(解説:内山真一郎氏)-1087

翼口蓋神経節刺激は、急性期脳梗塞の前臨床モデルにおいて脳血管の側副血行路を増加し、脳浮腫を軽減して梗塞容積を縮小する効果が示されており、先行研究により機能予後を改善したと報告されている。ImpACT-24B試験は、血栓溶解療法未施行の前循環領域脳梗塞発症後8~24時間の患者を対象として18ヵ国が参加した国際共同研究による二重盲検無作為化比較試験であった。1,000症例が2群に無作為割り付けされ、翼口蓋神経節刺激か疑似刺激を受けた。全体では3ヵ月後の自立不能例に両群間で差がなかったが、皮質梗塞例(52%)では翼口蓋神経節刺激群で疑似刺激群より自立不能例が有意に多く(50% vs.40%)、低~中等度の刺激では転帰良好例が40%から70%に増加した。安全性は両群間で差がなかった。急性期脳梗塞患者のうち、70%は血栓溶解療法の適応がなく、90%は血栓回収療法の適応がないので、発症後24時間まで治療時間枠がある本治療法は、より多くの患者に適応できる新たな治療オプションとして期待される。

1型糖尿病でのSGLT2阻害薬使用の注意

 2019年7月25日、日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、2014年に策定され、過去3度のアップデートを行っている「SGLT2阻害薬適正使用に関するRecommendation」のアップデート版を公開した。現在、同学会のホームページ上で公開され、学会員などへの周知が図られている。  SGLT2阻害薬は、現在6成分7製剤が臨床使用され、なかには1型糖尿病患者でインスリン製剤との併用療法としての適応を取得した製剤もある。しかし、ケトアシドーシスのリスクの増加が報告され、海外では、SGLT2阻害薬の成人1型糖尿病への適応が慎重にされていることもあり、1型糖尿病患者への使用に際し、十分な注意と対策が必要であるとしている。

循環器医もがんを診る時代~がん血栓症診療~/日本動脈硬化学会

 がん患者に起こる“がん関連VTE(Venous Thromboembolism、静脈血栓塞栓症)”というと、腫瘍科のトピックであり、循環器診療とはかけ離れた印象を抱く方は多いのではないだろうか? 2019年7月11~12日に開催された、第51回日本動脈硬化学会総会・学術集会の日本腫瘍循環器病学会合同シンポジウム『がん関連血栓症の現状と未来』において、山下 侑吾氏(京都大学大学院医学研究科循環器内科)が「がん関連静脈血栓塞栓症の現状と課題~COMMAND VTE Registryより~」について講演し、循環器医らに対して、がん関連VTE診療の重要性を訴えた。

この耳鳴りは治療が必要な耳鳴りか

 2019年7月18日、『耳鳴診療ガイドライン 2019年版』の発刊に寄せ、金原出版はメディアセミナーを都内で開催した。  一般外来でも耳鳴の主訴は多いが、自然に改善することもあるために放置されるケースもあり、見過ごされている。しかし、高齢社会となり、耳鳴にともなう難聴や生活・認知機能への影響なども指摘され、これらへの対応として今回、耳鳴診療ガイドラインが日本聴覚医学会耳鳴研究会により編集された。

長期介護における抗精神病薬再投与の要因

 抗精神病薬は、有害事象などが懸念されるにもかかわらず、認知症の周辺症状(BPSD)に対して一般的に用いられる。長期介護における抗精神病薬の使用中止(Halting Antipsychotic Use in Long-Term care:HALT)試験では、抗精神病薬の減量に成功したが、抗精神病薬の再使用または中止に達しなかった患者が19%でみられた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のLiesbeth Aerts氏らは、抗精神病薬の再使用の理由や現在使用中の要因と、介護スタッフの要望や行動変化との関連について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年7月5日号の報告。

フレイルな非小細胞肺がんに対する低用量エルロチニブの有効性/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては分子標的薬がスタンダードだが、フレイル患者への実臨床での至適投与量は明らかではない。そのような中、EGFR変異陽性NSCLCのフレイル患者に対する低用量エルロチニブの効果と安全性を評価する多施設第II相TORG1425試験が行われた。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、その最終結果が三井記念病院の青野ひろみ氏により発表された。

掌蹠膿疱症へのグセルクマブ、52週の有効性と安全性を確認

 乾癬治療における新規の生物学的製剤として2018年3月に保険収載された、ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤のグセルクマブ(商品名:トレムフィア皮下注シリンジ)に、同年11月、「既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう:PPP)」の効能追加が承認された。この根拠となった日本大学の照井 正氏らの試験結果が論文発表され、有効性エンドポイントの改善が52週間にわたり一貫して示された。昨年の著者らの研究では、PPPの発症に対するIL-23の関与が明らかになり、グセルクマブが安全かつ有用であることが16週時の評価において認められていた。結果を踏まえて著者らは「IL-23p19をターゲットとするグセルクマブは、PPPという困難を伴う疾患に対し、有効で安全な治療選択肢となりうることが示された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年7月3日号掲載の報告。

地域全員への抗HIV療法は有効か/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の予防において、複合的予防介入と地域のガイドラインに準拠した抗レトロウイルス療法(ART)の組み合わせは、標準治療に比べ新規HIV感染を有意に抑制するが、地域住民全員を対象とするARTは標準治療と差がないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のRichard J. Hayes氏らが行ったHPTN 071(PopART)試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年7月18日号に掲載された。新規HIV感染を抑制するアプローチとして、地域住民全員を対象とする検査と治療は有効な戦略となる可能性が示唆されているが、これまでに行われた試験の結果は一貫していないという。

転移性前立腺がん患者に対してのエンザルタミドは、ファーストラインとしても有効(解説:宮嶋哲氏)-1088

本研究は、アンドロゲン依存性転移性前立腺がん患者を対象にアンドロゲン除去療法とともに、エンザルタミド追加群と標準治療群の2群において3年全生存率、無増悪生存期間ならびに有害事象を評価項目としたオープンラベルランダム化比較第3相試験である。対象となった1,125症例の平均観察期間は34ヵ月、患者年齢中央値は両群ともに69歳であった。症例の約60%がGleason score 8~10であり、平均臓器転移数は3ヵ所で、15~17%の患者でドセタキセル早期導入がなされていた。3年OSはエンザルタミド追加群80%に対し、標準治療群72%でエンザルタミドは有意に死亡リスクを低下させ、3年PFSでもエンザルタミド追加群67%に対し標準治療群37%で、エンザルタミドは有意に再発を低下させた。有害事象により治療困難となった症例はエンザルタミド追加群で多く(33症例)、とくに倦怠感とてんかん発作が著明であった。

トラスツズマブを用いた術後補助療法は6ヵ月間で十分か?‒PERSEPHONE試験の結果から(解説:岩瀬俊明氏)-1084

これまでHER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブを用いた術後補助療法の標準投与期間は12ヵ月とされていたが、心毒性、高額な医療費、また長期の通院等のデメリットが憂慮される。そのため治療期間を短縮するオプションがいくつかの臨床試験で検討されてきたが、コンセンサスは得られていない。以上の背景から、本試験はHER2陽性早期乳がんにおいて12ヵ月のトラスツズマブ治療に対して6ヵ月の治療効果を第3相ランダム化非劣性試験で比較した。

加熱式タバコが“有害性物質90%カット”となぜ言えるのか

 加熱式タバコの一部のパンフレットには、購入者に対し、健康被害が大幅に低下するような“誤解”を与える表現で売り出している製品がある。しかし、これらの広告は規制されていない。これは一体なぜなのか。このからくりについて、2019年6月20日、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで飯田 真美氏(岐阜県総合医療センター 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会長)が解説。原 眞純氏(帝京大学医学部附属溝口病院 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会員)は「タバコと動脈硬化」として、古くも新しい話題について講演した。

日本人の婚姻状態と不眠症状との関連

 配偶者の有無は、健康に関連する社会経済的要因の1つである。いくつかの研究では、配偶者の有無と不眠症との間に有意な関連が認められることが示唆されている。日本では、未婚者の割合が増加しており、不眠症に大きな影響を及ぼす可能性がある。順天堂大学の川田 裕美氏らは、日本における配偶者の有無と不眠症との関連について調査を行った。European Journal of Public Health誌オンライン版2019年7月6日号の報告。  対象は、2010年の国民生活基礎調査より抽出した30~59歳の3万5,288人。配偶者の有無に応じて5群(独身、家族と同居している夫婦、夫婦のみで生活、未亡人、離婚)に分類を行った。不眠症関連症状(IRS)は、「私は眠れなかった」との回答に基づき収集した。配偶者の有無によるIRSの性別多変量オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、潜在的な交絡因子で調整されたロジスティック回帰モデルを用いた。

免疫CP阻害薬のやめ時は?最終サイクル後の30日死亡率/日本臨床腫瘍学会

 進行・難治性がん患者に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えているが、明確な中止基準は確立されていない。2011 national cancer strategy for Englandでは、回避可能な全身性抗がん剤治療(SACT)による害の臨床指標として、30日死亡率を提唱している。今回、一宮市立市民病院 龍華 朱音氏らが、ICI治療の最終サイクル後30日以内に死亡した患者について調査したところ、PS不良の患者にICI治療が選択される傾向があり、また、最終サイクルの治療費が従来の治療の約10倍となっていることが明らかになった。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で報告された。

認知症発症に生活様式と遺伝的リスクはどう関連?/JAMA

 認識機能障害および認知症のない高齢者において、好ましくない生活様式と高い遺伝的リスクの双方によって認知症リスクは増加し、同じ遺伝的リスクが高い集団であっても、生活様式が好ましい群はリスクが低いことが、英国・エクセター大学のIlianna Lourida氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年7月14日号に掲載された。遺伝的要因により認知症リスクは増加することが知られている。一方、生活様式の改善によってこのリスクをどの程度減弱できるかは明らかになっていない。