日本語でわかる最新の海外医学論文|page:519

COPDの増悪頻度に抗IL-5抗体の追加は影響せず/NEJM

 中等度~きわめて重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)で、頻回の中等度または重度の増悪既往がある好酸球数220個/m3以上の患者において、抗インターロイキン-5受容体αモノクローナル抗体benralizumabのアドオン療法は、プラセボと比較してCOPD増悪の年率頻度を減少しないことが示された。米国・テンプル大学のGerard J. Criner氏らが、それぞれ1,000例超のCOPD患者を対象にした2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GALATHEA試験」と「TERRANOVA試験」の結果を、NEJM誌2019年5月20日号で発表した。

令和の新時代にはベアメタルステント不要である(解説:中川義久氏)-1054

新規の医療機器や薬剤を開発するときに、どのような項目を観察・測定して効果等を判定するかを定める必要がある。この評価項目のことをエンドポイントと呼び、有効性と安全性に大別される。冠動脈ステントの、有効性と安全性に関する一般的な認識は以下のものであった。ベアメタルステント(BMS)は、再狭窄が多く有効性は劣るが安全性に優れる。一方、薬剤溶出性ステント(DES)は、確実な再狭窄抑制効果から有効性は高いが安全性においてはBMSに劣る。それは、CypherとTAXUSに代表される第1世代DESでは、再狭窄抑制という有効性はあるが遅発性ステント血栓症に代表される安全性への懸念があったからである。このように、BMSとDESは、それぞれ「一長一短」があると理解されていた。

日本人男女の喫煙と膵がんリスク~35万人の解析

 喫煙と膵がんリスクの関連はすでによく知られているが、アジアの大規模集団における詳細な前向き評価は少ない。今回、愛知県がんセンターの小栁 友理子氏らが、日本人集団における10研究をプール解析したところ、喫煙と膵がんリスクの関連に男女差がある可能性が示され、男性では禁煙が膵がん予防に有益であることが示唆された。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2019年5月21日号に掲載。  本研究では、10の集団ベースのコホート研究のプール解析を行った。各研究のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)についてCox比例ハザード回帰を用いて計算し、これらの推定値をランダム効果モデルと統合して要約HRを推定した。

焦点性てんかん重積状態に対する薬理学的治療のレビュー

 てんかん重積状態(SE)は、罹患率や死亡率が高く、神経学的に急を要する。SEのタイプは、予後因子の1つであるといわれている。スペイン・Hospital Universitario Severo OchoaのN. Huertas Gonzalez氏らは、SE治療に関連するさまざまな学会や専門家グループの最新レコメンデーションおよび最新研究を分析し、焦点性SEのマネジメントに関する文献を評価した。Neurologia誌オンライン版2019年5月7日号の報告。  2008年8月~2018年8月に公表された成人の焦点性SEおよび他のタイプの薬理学的治療に関する研究をPubMedより検索した。

グルコサミン、心血管イベントを抑制/BMJ

 変形性関節症の痛みを軽減するためのグルコサミンの習慣的な補充療法が、心血管疾患イベントのリスクを低減しており、とくに喫煙者でその効果が高い可能性があることが、米国・テュレーン大学のHao Ma氏らによる前向きコホート研究で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2019年5月14日号に掲載された。グルコサミン補助剤を用いる補充療法は、変形性関節症の治療で一般的に使用されているが、疾患や関節痛の軽減への効果は議論が続いている。その一方で、最近の動物実験やヒトの横断研究により、心血管疾患の予防や死亡率の抑制において役割を担う可能性が示唆され、前向き研究のエビデンスが求められている。

IV期NSCLCに対するEGFR-TKIと放射線療法の併用

 EGFR変異を有するIV期の非小細胞肺がん(NSCLC)における1次治療として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)と胸部放射線療法を組み合わせた有効性と安全性が、前向き研究により検討された。  今回、中国・Xinqiao Hospitalがん研究所のLinPeng Zheng氏らが行った研究結果は、The oncologist誌オンライン版2019年4月30日号に掲載された。末期NSCLCにおける1次治療としてのEGFR-TKIと胸部放射線療法の併用は、原発性肺病変の長期管理を可能にするかもしれない。

食塩摂取と肥満の関連~日本と中国・英国・米国

 食塩摂取が過体重や肥満の独立した危険因子である可能性が、いくつかの研究で報告されている。しかし以前の研究では、1日食塩摂取量を推定するために24時間蓄尿ではなく単回尿や食事思い出し法を用いていること、単一国や単施設のみの集団でのサンプルといった限界があった。今回、中国・西安交通大学のLong Zhou氏らは、International Study of Macro-/Micro-nutrients and Blood Pressure(INTERMAP研究)のデータから、日本、中国、英国、米国における、2回の24時間蓄尿で推定した食塩摂取量とBMIおよび過体重/肥満の有病率の関係を調査した。

術後疼痛への長期使用リスク、トラマドールvs.他オピオイド/BMJ

 短時間作用型オピオイド系鎮痛薬トラマドールは、一般に他の同種のオピオイドに比べ安全性が高いと考えられているが、相対的にリスクが低いことを支持するデータはないという。米国・メイヨークリニックのCornelius A. Thielsらは、術後の急性疼痛の治療にトラマドール単剤を投与された患者では、退院後の長期オピオイド使用のリスクが、他の同種のオピオイドよりも、むしろわずかに高いことを示した。研究の成果はBMJ誌2019年5月14日号に掲載された。

脳梗塞リスク有するAF患者への経皮的植込み型頸動脈フィルターの有用性は?【Dr.河田pick up】

 脳梗塞リスクが高いものの、経口抗凝固薬が適さない心房細動(AF)患者に対しては、異なった脳梗塞予防の戦略が必要となる。両側の頸動脈に直接植込むことができる、新規のコイル型永久フィルターは、径が1.4mm以上の塞栓を捕捉するようにデザインされている。  この論文は、Icahn School of Medicine at Mount Sinai(米、ニューヨーク)のVivek Reddy氏とHomolka Hospital(チェコ、プラハ)のPetr Neuzil氏がJACC誌オンライン版5月3日号に発表したものである。米国では新規のデバイスに対するFDAの審査が厳しく、治験に時間がかかる。

軽度認知障害や認知症を診断するためのACE-III日本語版のスクリーニング精度

 軽度認知障害(MCI)や認知症の早期発見は、適切な治療の迅速な開始と、疾患の悪化を防ぐために、非常に重要である。岡山大学の竹之下 慎太郎氏らは、MCIおよび認知症を診断するためのAddenbrooke's Cognitive Examination III(ACE-III)日本語版のスクリーニング精度について調査を行った。BMC Geriatrics誌2019年4月29日号の報告。  オリジナルのACE-IIIを翻訳して作成したACE-III日本語版を、日本人の集団に使用した。認知機能を評価するため、改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)およびミニメンタルステート検査(MMSE)を用いた。総対象者は389例(認知症:178例、MCI:137例、対照群:73例)であった。

早期乳がんへの術前nab-PTX、DFSを改善/JCO

 GeparSepto試験では、早期乳がん患者のネオアジュバント治療として、アルブミン懸濁型パクリタキセルの週1回投与(weekly nab-PTX)が、従来の溶媒型パクリタキセルの週1回投与(weekly sb-PTX)に比べ、病理学的完全寛解率を有意に改善することが示されている。今回、ドイツ・Helios Klinikum Berlin-BuchのMichael Untch氏らは、本試験の長期アウトカムとして、invasive disease-free survival(iDFS)などを報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年5月13日号に掲載。

所得別の平均寿命差が拡大、ノルウェーの調査/JAMA

 ノルウェーでは2005~15年の期間に、家計所得別の平均寿命の差が実質的に拡大しており、米国と比較して男女とも低~中所得層の平均寿命が長かった点を除けば、両国は類似の傾向にあることが、ノルウェー公衆衛生研究所のJonas Minet Kinge氏らの調査で示された。研究の詳細はJAMA誌オンライン版2019年5月13日号に掲載された。所得関連の平均寿命の差の理解には、死因を調査し、各国間で比較することが重要だという。米国の2000~14年のデータでは、最も富裕な1%と最も貧困な1%の平均寿命の差は、男性14.6年、女性10.1年と報告されている。ノルウェーは、高所得国家であると同時に、大部分が税金で運営される公的医療保険システムが整備されており、米国に比べると所得と富の分配が公平とされる。

転移のある腎細胞がんの1次治療、抗PD-L1抗体+VEGF阻害薬が有効/Lancet

 転移を有する腎細胞がんの1次治療において、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法はスニチニブ単剤と比較して、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、安全性プロファイルも良好であることが、米国・クリーブランドクリニックのBrian I. Rini氏らが実施したIMmotion151試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年5月9日号に掲載された。過去10年、局所進行・転移を有する腎細胞がんの1次治療では、スニチニブなどの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬が標準治療とされてきたが、多くの患者が抵抗性を獲得する。アテゾリズマブによるT細胞を介するがん細胞の殺傷効果は、VEGF阻害薬ベバシズマブの併用で増強する可能性が示唆され、PD-L1発現病変を有する患者では、スニチニブ単剤に比べPFS期間および客観的奏効率を改善したと報告されている。

転移の少ない転移性前立腺がんで原発巣への放射線治療は生存期間を延長(解説:宮嶋哲氏)-1053

STAMPEDE試験は、multi-armかつmulti-stageに設定した第III相ランダム化大規模比較臨床試験である。本試験は英国とスイスにおいて新たに診断された転移性前立腺がん2,061例(年齢中央値:68歳)を対象に、原発巣である前立腺への放射線照射が全生存期間延長に寄与するのか検討を行ったSTAMPEDE試験の1つである。本試験では、標準治療群、または標準治療+前立腺への放射線照射併用群の2群にランダム化している。放射線照射は連日照射を4週間(55Gy/20回)、または週に1回照射を6週間(36Gy/6回)継続するプロトコルであった。なお標準治療群はアンドロゲン除去療法であり、早期ドセタキセル導入も可能とした。ただし早期アビラテロン導入の症例は含まれていない。

早期乳がん患者の心血管疾患リスク、運動で低下/JAMA Oncol

 がんサバイバーの心血管疾患による死亡は重大な懸念となっている。米国・南カリフォルニア大学のKyuwan Lee氏らによる前向き無作為化臨床試験の結果、16週間の監視型有酸素運動およびレジスタンス運動の介入により、過体重または肥満の早期乳がん患者におけるFraminghamリスクスコア(FRS)で予測された10年間の心血管疾患発症リスクが、低下することが示された。FRSは、10年間の心血管疾患発症リスクを予測する有効な方法として知られる。早期乳がんで過体重の患者では、同年齢の健康な女性と比較してFRSが高いことが報告されているが、これまでこの患者集団において運動介入によりFRSが低下するかどうかはわかっていなかった。JAMA Oncology誌オンライン版2019年3月28日号掲載の報告。

新精神作用物質使用患者における臨床症状の変化

 新精神作用物質(NPS)の使用は、国内外を問わず広まり続けている。NPSは、より深刻な臨床的、公的および社会的な問題と関連している。日本におけるNPSの影響を改善するための政治的な措置は、治療法を確立することではなく、規制を厳しくすることに焦点が当てられてきた。現在の研究では、数年にわたるNPS関連疾患を有する患者の精神症状を比較しようとしている。国立精神・神経医療研究センターの船田 大輔氏らは、NPSを規制するための法的な措置の影響を明らかにするため、依存症治療専門病院を受診した患者を調査した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年4月9日号の報告。

「ソーダ税」導入、販売量への効果は?/JAMA

 2017年1月、ペンシルベニア州フィラデルフィア市は、砂糖あるいは人工甘味料入り飲料の消費を減らすために、1オンス(約30mL)当たり1.5セントの加糖飲料税(いわゆるソーダ税)を米国で2番目に導入した。米国・ペンシルベニア大学医学大学院のChristina A. Roberto氏らは、課税導入後の飲料価格と販売量について、フィラデルフィアと非課税のメリーランド州ボルティモア市を比較し、課税商品の購入を避けるための越境ショッピングの可能性を評価した。解析の結果、フィラデルフィアでは加糖飲料の価格が有意に上昇し、課税飲料の販売量は半減したことが認められたが、その一部は、近隣地域での販売量増加によって相殺されることが明らかになったという。JAMA誌2019年5月14日号掲載の報告。

alpelisib併用群、HR+/HER2-進行乳がんのPFS延長/NEJM

 PIK3CA遺伝子変異を有する内分泌療法歴のあるホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)の進行乳がん患者において、alpelisib+フルベストラント併用療法により無増悪生存期間(PFS)が延長した。フランス・パリ第11大学のFabrice Andre氏らが、国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SORAR-1(Clinical Studies of Alpelisib in Breast Cancer 1)試験」の結果を報告した。PIK3CA遺伝子変異は、HR+/HER2-乳がん患者の約40%に認められる。PI3Kαを特異的に阻害するalpelisibは、初期の試験で抗腫瘍活性が示唆されていた。NEJM誌2019年5月16日号掲載の報告。

がん患者の喫煙継続で増える治療失敗とコストはどの程度?

 喫煙は、がんの大きなリスク因子といわれているが、がん患者の喫煙継続およびがん1次治療の失敗増は、がん2次治療コストの有意な増大と関連していることが、米国・サウスカロライナ医科大学のGraham W. Warren氏らによる検討の結果、示された。著者は「さらなる調査を行い、コスト増を軽減する最適な方法を明らかにする必要があるだろう」と述べている。先行研究で、がん患者の喫煙継続は全死亡率・がん死亡率や二次原発がんリスク、がん治療の毒性作用を増大することが示唆されていたが、著者らによれば、喫煙によるがん治療の追加コストの推算はこれまでされていなかったという。JAMA Network Open 2019年4月5日号掲載の報告。