日本語でわかる最新の海外医学論文|page:521

新世代DES vs.BMS、2万例超のメタ解析結果/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後最初の1年における新世代薬剤溶出ステント(DES)の成績は、安全面から従来のベアメタルステント(BMS)を標準治療と見なすべきとする見解を打破するものであることが示唆されたという。イタリア・フェデリコ2世 ナポリ大学のRaffaele Piccolo氏らが、新世代DESとBMSのアウトカムを比較検証した無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。新世代DESは、ほとんどが初期DESと直接比較する非劣性試験で検証され、概して同等の有効性と優れた安全性が示されてきたが、BMSとの比較については明確なものがなかった。今回の結果から著者は「1年を超える臨床アウトカムの改善を目標に、DESのさらなる技術開発が望まれる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年5月2日号掲載の報告。

エンドセリン受容体拮抗薬は糖尿病腎症の新しい治療アプローチとなるか?(解説:小川大輔氏)-1049

糖尿病腎症の治療において血糖のコントロールは基本であるが、同時に血圧や脂質、体重などを適切に管理することも重要である。そして早期の糖尿病腎症であれば多面的かつ厳格な管理により腎症の進展を抑制することが示されている。ただひとたび腎障害が進行すると、集約的な治療を行っても腎不全への進展を阻止することが難しい。今年4月に開催された国際腎臓学会(ISN-WCN 2019)において、SGLT2阻害薬カナグリフロジンが顕性アルブミン尿を呈する糖尿病腎症患者の腎アウトカムを有意に改善するという結果(CREDENCE試験)が報告され注目を集めている。実はこの学会でもう1つ、糖尿病腎症に対する薬物療法の試験結果(SONAR試験)が発表された。この試験も顕性腎症患者を対象としており、エンドセリン受容体拮抗薬atrasentanの有効性と安全性が検討された。

APT試験のHER2陽性乳がん、術後パクリタキセル+トラスツズマブの長期転帰/JCO

 Adjuvant Paclitaxel and Trastuzumab(APT)試験は、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんに対する術後化学療法としてのパクリタキセル・トラスツズマブ併用療法について検討した第II相試験。これまでに主要解析の3年無病生存率(DFS)は98.7%であることが示されていたが、今回、長期追跡(7年)の結果が米国・ダナ・ファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らにより発表された。長期予後はきわめて良好であったこと、また、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんの内因性サブタイプは腫瘍径が大きなHER2陽性乳がんと類似していることや、パクリタキセル誘発性末梢神経障害(TIPN)に関連する一塩基多型(SNP)について明らかになったという。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年4月2日号掲載の報告。

尿酸値が低いと認知症リスクは増大するのか?~44年の追跡調査

 血清尿酸が減少すると抗酸化力が損なわれる可能性があるため、血清尿酸値が低いと認知症リスクが増大することが示唆されている。一方、血清尿酸値が高いと心血管リスクが増加し、認知症とくに血管性認知症のリスクが増大する恐れがある。今回、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLieke E.J.M. Scheepers氏らによる集団ベースの研究で、アルツハイマー病や血管性認知症などの認知症のサブタイプにかかわらず、血清尿酸値が高いと認知症リスクが低いことが示された。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2019年5月2日号に掲載。

抗精神病薬治療患者における脳波の変化~システマティックレビュー

 オーストラリア・モナッシュメディカルセンターのAnvesh Jackson氏らは、さまざまな抗精神病薬に関連した脳波(EEG)の変化を特徴付けるため、システマティックレビューを行った。Epilepsy & Behavior誌オンライン版2019年4月15日号の報告。  Medline、PsycINFO、PubMedを用いてシステマティックに検索を行い、PRISMAガイドラインを順守した。抗精神病薬治療の有無による比較を含む記述的なEEG結果を報告した主な研究論文(てんかん患者を除く)について分析を行った。アウトカムは、てんかん性放電の有無またはEEG低下とした。

院外心停止への経鼻蒸発冷却法は有益か/JAMA

 院外心停止患者への経鼻蒸発冷却法(trans-nasal evaporative intra-arrest cooling)の実施は、通常ケアと比較して90日後の良好な神経学的アウトカムの生存を、統計学的に有意に改善しなかったことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のPer Nordberg氏らが、欧州7ヵ国の救急医療サービス(EMS)を通じて行った国際多施設共同無作為化試験「PRINCESS試験」の結果で、JAMA誌2019年5月7日号で発表した。経鼻蒸発冷却法は、心肺蘇生中(すなわち心停止中)に主に脳を冷却するための手法である。心停止後に実施する低体温治療は、良好な神経学的アウトカムの生存を増大する可能性が示唆されていた。

CVD高リスクCOPD、LAMAの長期安全性確認/JAMA

 心血管疾患リスクの高いCOPD患者に対して、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)アクリジニウムの長期投与はプラセボと比較して、3年時点の主要心血管イベント(MACE)リスクについて非劣性であることが示された。中等症~重症COPDの1年時増悪率も有意に減少した。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のRobert A. Wise氏らが、約3,600例を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2019年5月7日号で発表した。LAMAについては、COPD患者の心血管罹患率および死亡率を増大するとの懸念が示されていた。

経口セマグルチドは注射薬と同様にHbA1cを改善し体重を減少させる(解説:住谷哲氏)-1050

注射薬であるGLP-1受容体作動薬セマグルチドは、心血管イベントを増加しない新規血糖降下薬としてわが国以外の多くの国ですでに販売されている。とくにCVOTであるSUSTAIN-6において3-point MACEを減少させることが報告されたので、今後も使用量は増加すると考えられる。経口セマグルチドは、ペプチドホルモンを消化管から吸収させる新たな方法を採用することで開発が進められてきた(「経口semaglutideがもたらした血糖降下薬のパラダイムシフト」)。第II相臨床試験の結果はすでに報告されていたが、シタグリプチンを対照薬として実施された第III相臨床試験の結果が本論文である。

がん生存率に降圧薬が影響するか

 降圧薬のがん生存率に対する影響について結論は出ていない。米国ヴァンダービルト大学医療センターのYong Cui氏らは、主な降圧薬と乳がん、大腸がん、肺がんおよび胃がんの全生存(OS)・がん特異的生存(DSS)との関連について、潜在的な交絡因子を包括的に調整し、時間依存Cox回帰モデルにより検討した。その結果、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬、Ca拮抗薬が、消化器がんの生存を改善する可能性が示唆された。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2019年5月7日号に掲載

5/9呼吸の日に「ぜん息外来.jp」リリース

 アストラゼネカ株式会社は、5月9日“呼吸の日”に喘息治療サポートサイト「ぜん息外来.jp」をオープンした。  本サイトは、「ぜん息について」「あなたのぜん息タイプは?」「知ろう、あなたのぜん息コンディション」「専門医からのメッセージ」「医療機関検索」という5つのコンテンツで構成され、疾患が起こるメカニズムや検査、重症化の原因によって分けられる喘息のタイプなど、喘息に関する最新情報を提供する。  とくに喘息患者の5~10%を占める重症喘息については、昨今の研究によって好酸球などの存在が喘息を悪化させる原因として明らかになってきた。

CIDPの病態は再発と寛解の繰り返し…患者のQOLを変えるハイゼントラ

 2019年4月10日、CSLベーリング株式会社は、都内で慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)に関するメディアセミナーを開催した。セミナーでは、最新のCIDPの知見のほか、患者実態調査の報告などが行われた。  はじめに「CIDPの多様性と治療戦略 患者さんのQOLを維持するために」をテーマに、祖父江 元氏(名古屋大学大学院医学系研究科 特任教授)を講師に迎え、診療の概要が説明された。  CIDPとは、進行性または再発性の経過で、2ヵ月以上にわたりびまん性の四肢の筋力の低下やしびれ感を来す末梢神経疾患である。典型的な症状としては、左右対称性に腕があがらなくなる、箸が使えないほどの握力低下、階段に登れないなどがある。また、手足のしびれ感やピリピリ感などの違和感を認めることもあるという。

精神療法中のうつ病および不安症状の変化

 精神療法での治療効果の40%は、3回の治療セッションによる症状変化で説明されるものと推定されている。しかし、この変化は、患者群および症状により一様ではないと考えられる。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRob Saunders氏らは、精神療法中のうつ病および不安症状の変化が異なる患者をサブグループに分類し、これらの違いと関連付けられるベースライン時の患者の特性について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年4月15日号の報告。

オバマケア、低出生時体重/早産の転帰を改善/JAMA

 米国の低所得者を対象とする公的医療保険制度であるメディケイドの受給資格の拡大(Medicaid expansion)に関連して、これを導入した州と未導入の州で、新生児の低出生時体重および早産のアウトカムに差はないものの、導入州は未導入州に比べ黒人と白人の新生児の間にみられたアウトカムの相対的な差が改善されたことが、米国・University of Arkansas for Medical SciencesのClare C. Brown氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月23日号に掲載された。米国では、低出生時体重および早産は、新生児の死亡や新生児~成人の慢性疾患のリスク増大などの有害な結果をもたらすが、黒人の新生児は白人の新生児よりも早産の可能性が高く、死亡や慢性疾患にも差がみられる。一方、1990年の包括財政調整法(OBRA)下では、メディケイドの適用は妊娠が条件であったため、各州の貧困の基準を満たさない低所得の母親は、産後60日で保険適用を失う場合があったが、医療費負担適正化法(ACA、オバマケア)下では、一部の州でメディケイド拡大が導入され、貧困基準の緩和とともに、妊娠の有無にかかわらず低所得の女性も継続的な医療の利用が可能となり、これによって母親の健康および出産前の早期ケアの受診機会が改善された可能性が示唆されていた。

元全米NFL選手におけるタウPET(解説:中川原譲二氏)-1048

元全米フットボール・リーグ(NFL)選手において報告された慢性外傷性脳症(CTE)は、反復性の頭部衝撃の既往と関連する神経変性疾患である。神経病理学的診断は、アルツハイマー病などの他の疾患とは異なり、タウは蓄積するがアミロイドβはほとんど蓄積しない特異的なパターンに基づいて行われる。CTEのリスクがある生存人の脳内で、タウとアミロイドの蓄積の検出が実現可能かどうかは、これまで十分な研究が行われていない。R.A. Sternらは、元全米NFL選手を対象として、CTEのリスクがある生存人の脳で、タウとアミロイドの蓄積の検出が可能と報告した(Stern RA, et al. N Engl J Med. 2019 Apr 10. [Epub ahead of print])。

現実と乖離する「ナトリウム・カリウム摂取量」と、健康長寿(解説:石上友章氏)-1047

健康日本21の第2次の栄養目標では、平成34年度の食塩摂取量を8g(平成22年 10.6g)に定めている。カリウムについては個別の目標は採用せず、野菜・果物摂取量が設定されている。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、1日の栄養摂取量として、ナトリウムは2.0g未満に制限を、カリウムは3.5g以上摂取を推奨している。いずれの目標も、ナトリウム過剰摂取やカリウム摂取不足が、健康・長寿にマイナス要因に働くという認識については一致している。カナダ・マックマスター大学のMartin O'Donnell氏らが行った調査(PURE研究)の結果は、現実が必ずしも理想どおりではないことを示している。

アミロイドβの毒性機序解明となるか?

 アルツハイマー病(AD)における病因蛋白アミロイドβの毒性機序の解明について、昭和大学がプレスリリースを発表した。  今回、昭和大学の小野 賢二郎氏(昭和大学 医学部脳神経内科学部門 教授)、辻 まゆみ氏(薬理科学研究センター)らを中心とする研究グループは、アミロイドβの高分子オリゴマーであるプロトフィブリルが神経細胞膜を傷害する機序の一端を解明し、2019年5月13日、米国実験生物学会連合学術誌The FASEB Journal誌オンライン版に掲載された。

内容充実!『がん免疫療法ガイドライン』の第2版が発刊

 2019年3月29日、日本臨床腫瘍学会が編集した『がん免疫療法ガイドライン第2版』が発刊。2016年に初版が発行されてから2年。非常にスピーディな改定が行われた。今回の改定では、この間に明らかとなった各疾患での治療エビデンスや副作用管理などが集約化された。  本ガイドラインの構成についての大幅なリニューアルはないが、各項の解説が「発症の頻度」、「臨床症状と診断」、「治療方針」に細分化されたことで、実臨床に役立てやすくなっている。

新インフルワクチンで毎年の接種不要に? P1試験開始/NIH

 インフルエンザワクチンは次シーズンの流行予測に基づき、ワクチン株を選定して毎年製造される。そのため、新たな変異株の出現と拡大によるパンデミックの可能性に、世界中がたえず直面している。米国国立衛生研究所(NIH)は4月3日、インフルエンザウイルスの複数サブタイプに長期的に対応する“万能(universal)”ワクチン候補の、ヒトを対象とした初の臨床試験を開始したことを発表した。  この新たなワクチン候補は、菌株ごとにほとんど変化しない領域に免疫系を集中させることで、さまざまなサブタイプに対する防御反応を行うよう設計された。本試験は、米国国立アレルギー感染症研究所のワクチンリサーチセンター(VRC)が主導している。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用率を日本の精神科外来患者で調査

 ベンゾジアゼピンとアルコールの併用は、一般的に認められる。慶應義塾大学の内田 貴仁氏らは、精神科外来患者におけるベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用率、併用と関連する臨床的特徴および因子、併用に関する精神科医の意識について調査を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2019年4月15日号の報告。  ベンゾジアゼピン系睡眠薬の投与を受けている統合失調症、うつ病、不眠症の外来患者を対象に、睡眠薬とアルコールの使用も記録可能な睡眠日誌を7日間連続で記入するよう依頼した。臨床的特徴を評価し、併用に関連する因子を調査するため、ロジスティック分析を実施した。さらに、担当精神科医に対し、患者がベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールを併用したと思ったかどうかを調査した。

ER陽性/HER2 陰性乳がんに対するS-1 アジュバントが有効中止/京都大学

 京都大学大学院医学研究科外科学講座乳腺外科 戸井雅和氏(中井雅和氏)を主任研究者とした研究グループが2012年より実施してきたエストロゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性乳がんに対するS-1術後療法ランダム化比較第Ⅲ相試験(POTENT試験)の中間解析結果を同大学のHPで発表。  主要評価項目である無浸潤疾患生存期間が、事前に設定した有効中止の基準に合致したことにより試験を中止することを決定した。POTENT試験は先進医療Bに基づく医師主導の臨床試験。