日本語でわかる最新の海外医学論文|page:514

喘息患者の3 人に1 人は救急経験あり

 アストラゼネカ株式会社は、気管支喘息患者を取り巻く現状や喘息治療の実態を明らかにすることを目的とした患者調査を全国3,000名の患者に実施し、その結果が公表された。  調査結果は今回発表の「喘息患者さんの予定外受診・救急受診・救急搬送の現状」編のほか、「喘息患者さんの通院・服薬の現状」編、「重症喘息患者さんの現状」編という3つのテーマで公開される。監修は東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)が担当した。  調査実施日:2019年4月15~26日

仕事に関連した精神的疲労と不眠症リスク

 ノルウェー科学技術大学のEivind Schjelderup Skarpsno氏らは、仕事に関連した精神的疲労と不眠症状リスクとの将来にわたる関連性を調査し、余暇がこの関連性に影響を及ぼすかについて、検討を行った。Behavioral Sleep Medicine誌オンライン版2019年7月15日号の報告。  対象は、ノルウェーHUNT研究の調査に2回連続で参加した女性8,464人と男性7,480人。1995~97年のベースライン時に、不眠症状の認められない就労者に関する縦断的なデータを調査した。2006~08年のフォローアップ期間において、ベースライン時の仕事に関連した精神的疲労と、余暇の身体活動に関連した不眠症状の調整リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、ポアソン回帰分析を用いた。

慈善団体の患者支援プログラム、経済的困窮者の多くが対象外/JAMA

 米国の大規模な独立慈善団体が運営する疾患別患者支援プログラム(274件)の97%が、無保険患者を対象外としており、また、プログラムがカバーしている医薬品の年間薬剤費はカバー対象外の医薬品と比べ3倍以上であることが、同国ジョンズホプキンス大学のSo-Yeon Kang氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。米国の独立慈善団体による患者支援プログラムは、高額な処方薬への患者アクセスを改善するが、最近の連邦政府の調査では、薬剤費の増大や反キックバック法違反の疑いが生じている。また、これらプログラムの構成や患者の適格基準、カバーされる医薬品の詳細はほとんど知られていないという。

心房細動を洞調律から検出、AI対応ECGによるPOCT/Lancet

 新たに開発された人工知能(AI)対応心電図(ECG)アルゴリズムを用いた臨床現場即時検査(point of care test:POCT)は、標準12誘導ECGで洞調律の集団の中から心房細動患者を同定できることが、米国・メイヨー・クリニックのZachi I. Attia氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号に掲載された。心房細動は無症状のことが多いため検出されない場合があるが、脳卒中や心不全、死亡と関連する。既存のスクリーニング法は、長期のモニタリングを要するうえ、費用の面と利益が少ないことから制限されている。

保存期CKD患者の貧血治療が経口薬で(解説:浦信行氏)-1101

従来、CKDに合併する腎性貧血は透析例も含めて赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が治療の主体であった。roxadustatは経口投与の低酸素誘導因子(HIF)の分解酵素阻害薬であり、結果的にHIFを安定化させて内因性エリスロポエチン(EPO)の転写を促進して腎性貧血の改善を促す。現在、roxadustatを含めて5製剤が開発中である。同時に鉄吸収や肝臓からの鉄の放出を抑えるヘプシジンの産生を抑制して、鉄利用を高める作用も併せ持つ。今回の第III相の結果は貧血改善に著効を呈し、しかも反応も2~3週間後の早期から期待できるようだ。これにはEPO産生の増加だけでなく、EPOの受容体も活性化し、加えて鉄供給・利用も連動することによると考えられる。

乳がんリンパ浮腫のセルフケア、Webとパンフレットどちらが効果的

 乳がん治療関連リンパ浮腫(BCRL)患者のケアに対するウェブベースのマルチメディアツールを用いた介入(WBMI)の結果が示された。米国・ヴァンダービルト大学のSheila H. Ridner氏らによる検討で、WBMIを受けた患者は、対照(パンフレットのみ)より生物行動症状(気分)が改善し、介入に対する知覚価値も高いことが示されたという。ただし、WBMI群は完遂率が低く、他の評価項目については大きな違いはみられなかったとしている。Journal of Women's Health誌オンライン版2019年7月17日号掲載の報告。

統合失調症におけるムスカリン性アセチルコリン受容体の役割

 統合失調症の病態生理において、ムスカリン受容体機能障害が重要な役割を担っていることが示唆されている。最近、神経伝達物質受容体に対する免疫反応性が、統合失調症のいくつかのケースにおいて、病原性の役割を担う可能性についても明らかとなっている。オーストラリア・クイーンズランド大学のAlexander E. Ryan氏らは、統合失調症におけるムスカリン受容体機能障害のケースをレビューし、この機能障害からムスカリン受容体標的抗体の開発が支持されるかについて検討を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年7月26日号の報告。

妊娠性肝内胆汁うっ滞症、ウルソデオキシコール酸常用は再考を/Lancet

 妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦をウルソデオキシコール酸で治療しても、周産期の有害転帰は低下しないことから、ウルソデオキシコール酸の常用は再考されるべきである。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLucy C. Chappell氏らが、イングランドとウェールズの33施設で妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦を対象に実施した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(PITCHES)の結果を報告した。妊婦の皮膚掻痒と血清胆汁酸濃度の上昇で特徴づけられる妊娠性肝内胆汁うっ滞症は、死産、早産、新生児治療室への入室の増加と関連がある。ウルソデオキシコール酸はこの治療に広く使用されているが、先行研究では症例数が限られており統計学的な有意差もなく、エビデンスは不十分であった。Lancet誌オンライン版2019年8月1日号掲載の報告。

認知機能低下と入院の関連、外科と内科で違いは/BMJ

 手術による2泊以上の入院は、平均的な認知機能の経過(the cognitive trajectory)にわずかながら影響を及ぼしたが、非外科的入院ほどではなかった。重大な認知機能低下のオッズは、外科手術後で約2倍であり、非外科的入院の約6倍よりも低かったという。米国・ウィスコンシン大学のBryan M. Krause氏らが、加齢に伴う認知機能の経過と大手術との関連を定量化する目的で行った前向き縦断的コホート研究の結果を報告した。手術は長期的な認知障害と関連する可能性があるが、これらの関連性を検討した先行研究では、認知機能低下が加齢に伴い加速するという認知機能の経過を考慮しておらず、方法論的な問題のため一貫した結果が得られていなかった。著者は、「本研究の情報は、インフォームドコンセントの際に、手術による健康上の有益性の可能性と比較検討されるべきである」とまとめている。BMJ誌2019年8月7日号掲載の報告。

デュラグルチドは心血管イベント低リスク患者においても有用である(解説:住谷哲氏)-1103

GLP-1受容体作動薬を用いた心血管アウトカム試験CVOTは、経口セマグルチドによるPIONEER 6を除くと、これまでにELIXA、LEADER、EXSCEL、SUSTAIN-6、Harmony Outcomesの5試験が報告されている。これら5試験と比較して本試験REWINDの特徴は、(1)非劣性試験ではなく優越性試験である、(2)心血管イベントの既往のない1次予防患者が多く含まれている(2次予防患者は全体の31.5%)、(3)女性が多く含まれている(全体の46.3%)、(4)HbA1cが比較的低い(平均7.3%)、(5)観察期間が長い(中央値5.4年)が挙げられる。対象患者の糖尿病罹病期間は10.5年であり、80%以上がメトホルミン、45%以上がSU薬を投与されていることから初回治療患者ではないが、心血管イベントリスクの低い、われわれが日常診療で出会う患者像に比較的近いといって良い。CVOTはすべてランダム化比較試験であるため、介入の有効性efficacy、因果関係causalityを明らかにすることができるが、一般化可能性generalizabilityに問題があるとされている。これまでに発表されたGLP-1受容体作動薬のCVOTの結果が心血管イベントリスクのきわめて高い患者で得られたのに対して、REWINDはより低リスクである患者が多く含まれているため、その結果はわれわれの日常臨床で多くの患者に適用できる可能性がある。

収縮期血圧、拡張期血圧ともその上昇は心血管系発症リスクであることを確認(解説:桑島巖氏)-1099

本論文は130万例という膨大な症例数の観察研究から、収縮期/拡張期血圧の心血管合併症発症リスクを高血圧の定義を130/80mmHg、140/90mmHgに分けて検討したものである。結果としていずれの定義であっても収縮期血圧、拡張期血圧は、各々独立した発症リスクの予測因子であることが示され、収縮期血圧のリスクは拡張期血圧よりも予測リスクが高いことを証明した。観察研究において収縮期血圧と拡張期血圧とを各々分け、心血管リスク評価にあたってはその解釈に十分に注意する必要がある。なぜなら加齢変化により収縮期血圧は上昇傾向となり、拡張期血圧は下降傾向をたどるからである。すなわち高齢者により脈圧が大きくなることは多くの臨床家が経験していることである。

病院ランキングと患者アウトカムは関連する?/JAMA Surgery

 出版不況と言われる中、相変わらず病院ランキング本だけは堅調と言われている。米国の病院ランキング本をめぐる興味深いエビデンスが報告された。米国・カリフォルニア大学アーバイン医療センターのSahil Gambhir氏らが、US News & World Report(USNWR)掲載の年間ランキングが最高位の病院について、ランキング外の病院と比較した結果、高度な腹腔鏡下消化器外科手術に関する病院ランキングデータと、良好な患者アウトカムは関連していないことが示された。

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、うつ薬治療に奏効しなかったうつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法(0.5~3mg/日)の二重盲検ランダム化比較試験を含むシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年7月27日号の報告。  アウトカムは、奏効率(主要)、寛解率(副次)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS、副次)、シーハン障害尺度(SDS、副次)、臨床全般印象/重症度(CGI-I/CGI-S)、中止率、有害事象とした。6週目のデータにおけるサブグループメタ解析において、2mg/日超または2mg/日以下の投与量でアウトカムの比較を行った(2mg/日が推奨投与量)。

認知症リスクに50歳での心血管健康度が関連/BMJ

 中年期に推奨される心血管健康スコア「ライフ シンプル7」の順守が、晩年における認知症リスク低下と関連していることが明らかにされた。「ライフ シンプル7」では、生活習慣や血糖値、血圧など7つの項目をスコア化し心血管リスクの指標としている。フランス・パリ大学のSeverine Sabia氏らが、約8,000例を約25年間追跡した、前向きコホート試験により明らかにし、BMJ誌2019年8月7日号で発表した。  研究グループは、ロンドンの公務員を対象に行われたWhitehall II試験(1985~88年に登録)の参加者で、50歳時点における心血管健康スコアのデータがあった7,899例を対象に前向き試験を行った。

重症妊娠高血圧、経口薬ではニフェジピンがより効果大か/Lancet

 医療資源が乏しい環境下の重症高血圧症の妊婦について、基準値への降圧を図る経口薬治療の効果を検証した結果、ニフェジピン、メチルドパ、ラベタロールのいずれもが現実的な初回選択肢であることが示された。3薬間の比較では、ニフェジピンの降圧達成率がより高かったという。米国・ワシントン大学のThomas Easterling氏らが、これまで検討されていなかった3種の経口降圧薬の有効性と安全性を直接比較する多施設共同非盲検無作為化比較試験を行い、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号で発表した。高血圧症は妊婦における最も頻度の高い内科的疾患であり、重症例では広く母体のリスク低下のための治療が推奨される。急性期治療としては一般に静脈投与や胎児モニタリングが有効だが、医療従事者が多忙であったり医療資源が限られている環境下では、それらの治療は困難であることから研究グループは本検討を行った。

食道アカラシアに対する内視鏡的筋層切開術(POEM)はバルーン拡張術より優れている(解説:上村直実氏)-1100

下部食道の良性狭窄により食物の通過障害、嘔吐、胸痛、誤嚥性肺炎などを生じる疾患である食道アカラシアの原因は下部食道のアウエルバッハ神経叢の変性消失と考えられている。治療法として薬物療法、内視鏡的バルーン拡張術、ボツリヌス菌毒素局注療法、外科的治療として腹腔鏡下Heller手術などが行われていたが、2008年に経口内視鏡を用いて食道の筋層切開を行い、食道アカラシアの狭窄を改善する内視鏡的筋層切開術が現日本消化器内視鏡学会理事長である井上晴洋氏により開発された。その後、2012年から先進医療として施行された後、2016年に保険収載され、手術例数はわが国で2,000例以上、世界中では3,000例に達している。

HIV感染症の治療も、過ぎたるは猶及ばざるが如し(解説:岡慎一氏)-1098

HIV感染症治療で、4剤併用療法と3剤併用療法のどちらが効果があるかを比較したRCTに関するsystematic review and meta-analysisである。1987年初めて開発された抗HIV薬がAZTであった。当然単剤治療であり、その治療効果は半年しか持たなかった。1990年代に入り、AZT+ddIやAZT+3TCなどの核酸系逆転写酵素阻害薬2剤による併用療法が可能になった。しかし、やはりその効果は長く続かなかった。薬剤耐性ウイルスが原因であった。ところが、1996年後半からプロテアーゼ阻害薬もしくは非核酸系逆転写酵素阻害薬が追加され3剤併用療法になった途端、HIV感染者の予後は劇的に改善した。耐性ウイルスが出にくくなったからである。

日本と米国における認知症ケア選択~横断的観察研究

 日本では、認知症者ができるだけ長く社会に関わっていけるようにするため、国策として「dementia-friendly initiative」を導入した。しかし、家族の介護負担を軽減するために特別養護老人ホームへの入所を選択する人もいる。政策を決定するうえで、介護する場所に対する中年の好みを理解し、それに影響を及ぼす要因を特定することは、「dementia-friendly initiative」の促進に役立つ。東京都医学総合研究所の中西 三春氏らは、認知症を発症した際の、日本と米国の中年におけるケアの好みについて調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年7月7日号の報告。

T790M陽性肺がんのオシメルチニブ治療、日本の実臨床データ/日本臨床腫瘍学会

 EGFR T790M変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブの市販後調査の一環として行われた全例調査の最終結果を、神奈川県立がんセンター加藤晃史氏らが第17回日本臨床腫瘍学会学術集会で発表。3,000例を超えるわが国のT790M変異NSCLCに対するオシメルチニブ治療の実臨床データが示された。  対象は2次治療以降にオシメルチニブの治療を受けた切除不能・再発EGFR T790M変異NSCLC患者。予定のサンプルサイズは3,000例、追跡期間は12ヵ月であった。

70歳以下のCLLの1次治療、イブルチニブ+リツキシマブ併用が有効/NEJM

 70歳以下の未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、イブルチニブ+リツキシマブ併用レジメンは標準的な化学免疫療法レジメンと比較して、無増悪生存(PFS)と全生存(OS)がいずれも有意に優れることが、米国・スタンフォード大学のTait D. Shanafelt氏らが行ったE1912試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月1日号に掲載された。70歳以下の未治療CLL患者の標準的な1次治療は、フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによる化学免疫療法とされ、とくに免疫グロブリン重鎖可変領域(IGHV)の変異を有する患者で高い効果が確認されているが、重度の骨髄抑制や、わずかながら骨髄異形成のリスクがあるほか、T細胞免疫抑制による日和見感染などの感染性合併症を含む毒性の問題がある。ブルトン型チロシンキナーゼの不可逆的阻害薬であるイブルチニブは、第III相試験において、フレイルが進行したため積極的な治療を行えない未治療CLL患者でPFSとOSの改善が報告されているが、70歳以下の患者の1次治療のデータは少ないという。