日本語でわかる最新の海外医学論文|page:513

妊娠による子宮内膜がんリスク低下、中絶でも/BMJ

 妊娠が受胎後早期で終了しても40週(正期産)で終了しても、子宮内膜がんのリスクは顕著に減少することが明らかにされた。人工妊娠中絶で妊娠終了に至った場合と出産で妊娠が終了した場合とで、リスク低下との関連性は類似しており、妊娠による子宮内膜がんのリスク低下は妊娠初期に生じる生物学的なプロセスによって説明できる可能性も示唆されたという。デンマーク・Statens Serum InstitutのAnders Husby氏らが、デンマークの女性を対象とした全国コホート研究の結果を報告した。生涯の出産数は子宮内膜がんのリスク低下と関連があり、妊娠により抑制された月経周期数が保護的に作用することが示唆されていたが、妊孕性や妊娠累積期間、妊娠中のある特定時期に生じる過程がこの保護作用を強めるかどうかは不明であった。BMJ誌2019年8月14日号掲載の報告。

内側に限局する膝OAに対してはTKRよりPKRが望ましい?― TOPKAT試験より(解説:小林秀氏)-1106

内側型の末期変形性膝関節症(膝OA)に対する人工膝関節置換手術は、TKR(全置換)とPKR(単顆置換として知られる)の2種類に大別できる。TKRの多くは十字靭帯を切除し骨切除量も多くなるが、PKRでは内側コンパートメントのみを置換するため十字靭帯も温存でき骨切除量も少なく、早期回復が可能となる。TKRは古くから行われ、安定した長期成績が報告されているが、一方で患者満足度は約80%程度とされており、人工股関節手術に比べ術後満足度が低いことが知られている。近年PKRは、手術手技が改善され、侵襲の少なさから高い術後満足度が期待され普及しつつあるが、一方で手術適応(どこまでの変形に対して適応となるか)、長期成績、合併症の問題も懸念されるためか、施設によってはまったく施行されていないという現状がある。TKRとPKRの術後成績の比較は、適応のばらつきが大きく、確固たるエビデンスがほとんど示されていなかったため、今回のTotal or Partial Knee Arthroplasty Trial(TOPKAT)試験は多施設共同無作為化比較試験であり、これらの疑問に答える大変興味深い試験となった。

手術不要な心不全患者の救急搬送を減らすには?

 救急車で運ばれた心不全患者のうち、約8割の患者は手術が不要であったことが、厚生労働省作成による診断群分類毎の集計結果(2017年)から明らかになった。これはいったい何を意味しているのだろうか-。2019年8月8日に開催されたメディアセミナー『ハート・トーク2019』において、磯部 光章氏(榊原記念病院 院長/東京医科歯科大学名誉教授)が「脳卒中・循環器病対策基本法について」、代田 浩之氏(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学)が「心臓病の二次予防と心臓リハビリテーション」について講演。トークセッションでは、俳優の渡辺 徹氏が心筋梗塞の発症当時のエピソードや再発予防策について語った(日本心臓財団、アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社共催)。

青年期双極性障害患者のメタボリックシンドローム有病率

 メタボリックシンドローム(MetS)の有病率は増加しており、中年期の双極性障害におけるMetSが重要な臨床的相関を示すことが報告されているにもかかわらず、青年期および若年成人におけるこの問題に関してはよくわかっていない。カナダ・トロント大学のChristine Li氏らは、青年期の双極性障害患者のMetSについて、COBY(Course and Outcome of Bipolar Youth)研究を実施し、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2019年7月30日号の報告。  2000~06年にCOBY研究に登録された青年期および若年成人の双極性障害患者162例(平均年齢:20.8±3.7歳、年齢範囲:13.6~28.3歳)を対象に、横断的レトロスペクティブ研究を実施した。MetSの定義には国際糖尿病連合の基準を用い、測定値(血圧、ブドウ糖、HDLコレステロール、トリグリセライド、胴囲)を単一時点で収集した。気分、併存疾患およびMetS評価の6ヵ月前の治療は、Longitudinal Interval Follow-Up Evaluationを用いて評価した。

非扁平上皮NSCLCの維持療法、ベバシズマブかペメトレキセドか併用か/JCO

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の維持療法にはベバシズマブまたはペメトレキセドの単剤投与か併用投与なのか、あるいはいずれも有効なのか。米国・エモリー大学ウィンシップがん研究所のSuresh S. Ramalingam氏らは、それらを直接比較する「ECOG-ACRIN 5508試験」の結果、ベバシズマブ単剤またはペメトレキセド単剤は有効であるが、生存ベネフィットの不足とその毒性から、ベバシズマブ・ペメトレキセドの併用療法は推奨できないとまとめている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年7月30日号掲載の報告。

中年~晩年期の高血圧症、認知症リスクが増大/JAMA

 中年期~晩年期に高血圧症の人や、中年期に高血圧症で晩年期に低血圧症の人は、中年期~晩年期に正常血圧の人に比べ、認知症を発症するリスクが約1.5~1.6倍高いことが明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のKeenan A. Walker氏らが住民ベースのコホート試験で明らかにした。晩年期の血圧値と認知機能の関係は、過去の高血圧症やその慢性化によると考えられている。また、高血圧が続いた後の晩年期の血圧低下は、不良な認知機能アウトカムと関連している可能性も指摘されていた。JAMA誌2019年8月13日号掲載の報告。

10~16歳の2型DMにリラグルチド追加は有効?/NEJM

 2型糖尿病の小児・思春期患者(10~17歳)において、メトホルミンへのリラグルチド(1.8mg/日)追加投与は、基礎インスリン投与の有無にかかわらず、52週間にわたり血糖コントロール改善の効果があることが示された。ただし、消化器系有害事象の発現頻度がかなり高かった。米国・イェール大学のWilliam V. Tamborlane氏らが、135例を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2019年8月15日号で発表した。メトホルミンは、疾患初期の若い2型糖尿病患者の大半にとって選択肢として承認された血糖コントロール薬である。一方で、メトホルミン単独治療を受けていると血糖コントロールが早期に不能になることが観察されている。若い2型糖尿病患者においてリラグルチドの追加(基礎インスリンの有無を問わず)の安全性および有効性は明らかになっていなかった。

short DAPTとlong DAPTの新しいメタ解析:この議論、いつまで続けるの?(解説:中野明彦氏)-1105

PCI(ステント留置)後の適正DAPT 期間の議論が、まだ、続いている。ステントを留置することで高まる局所の血栓性や五月雨式に生じる他部位での血栓性イベントと、強力な抗血小板状態で危険に晒される全身の出血リスクの分水嶺を、ある程度のsafety margin をとって見極める作業である。幾多のランダム化試験やメタ解析によって改定され続けた世界の最新の見解は「2017 ESC ガイドライン」1)に集約されている。そのkey message は、

がん患者が言い出せない、認知機能障害への対応策/日本臨床腫瘍学会

 がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害(cancer-related cognitive impairment;CRCI)は海外で研究が進みつつあるものの、国内での認識は医療者・患者ともに低い。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「がんと関連した認知機能障害:病態解明・診断・治療/ケアはどこまで進んだか」と題したシンポジウムが開かれ、国内外の知見が紹介された。本稿では、橋本 淳氏(聖路加国際病院 腫瘍内科)、谷向 仁氏(京都大学大学院医学研究科)による発表内容を中心に紹介する。  がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害は、現時点で有効な評価方法や治療は確立されていないが、がんそのものによる肉体的・精神的影響によって治療前からみられるもの、化学療法や手術、内分泌療法などの治療に伴ってみられるものがあると考えられている。橋本氏は、乳がん、卵巣がん、消化器がんなどにおける海外の報告を紹介。治療前は20~30%の患者で1)、化学療法に伴うものとして17~75%の患者でみられたという報告がある(報告により認知機能の評価法が異なり、幅のある結果となっている)2~3)。

日本におけるベンゾジアゼピン長期使用に関連する要因

 ベンゾジアゼピンやZ薬(BZD)の長期使用は、現在の臨床ガイドラインで推奨されていないものの、実臨床において引き続き行われている。東京医科歯科大学の高野 歩氏らは、日本における長期BZD使用率とそのリスク因子について調査を行った。BMJ Open誌2019年7月26日号掲載の報告。  本研究は、健康保険データベースを用いたレトロスペクティブコホート研究である。対象は、2012年10月1日~2015年4月1日の期間にBZD使用を開始した18~65歳の外来患者8万6,909例。そのうち、初回BZD使用日に手術を行った患者762例および8ヵ月間フォローアップを行っていない患者1万2,103例を除く7万4,044例を分析した。新規BZD使用患者の8ヵ月以上の長期使用率を調査した。患者の人口統計、診断、新規BZD使用の特徴、長期BZD使用の潜在的な予測因子について評価を行った。長期使用と潜在的な予測因子との関連を評価するため、多変量ロジスティック回帰を用いた。

夜間・24時間血圧が、死亡リスク上昇と関連/JAMA

 夜間および24時間血圧の上昇は、死亡や心血管アウトカムのリスク上昇と関連し、他の診察室ベースの血圧や自由行動下血圧で補正しても、このリスクの上昇は維持されることが、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のWen-Yi Yang氏らの検討で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。血圧は、全死亡および心血管特異的な致死性・非致死性のアウトカムの既知のリスク因子とされる。一方、血圧インデックス(測定法、測定時間)がこれらのアウトカムと強い関連を有するかは不明だという。

健康長寿の秘訣は「不飽和脂肪酸」―2型糖尿病患者でも明らかに(解説:小川大輔氏)-1104

多くの疫学研究により、赤身肉、ラード、バターなどに含まれる飽和脂肪酸は動脈硬化症や死亡のリスクを上昇させ、反対にオリーブ油、キャノーラ油、大豆油などの植物油や魚油に含まれる不飽和脂肪酸はこれらのリスクを低下させることが知られている。しかしこれまでの報告では一般人を対象としており、糖尿病患者を対象とした研究はなかった。今回米国の2つのコホートの解析により、2型糖尿病患者における食事中の脂肪酸と死亡率を調査した結果がBMJ誌に掲載された。2型糖尿病患者1万1,264例の解析により、多価不飽和脂肪酸の摂取は全炭水化物と比較し全死亡および心血管死のリスク低下と関連することが明らかになった。

アファチニブ→オシメルチニブのシ―クエンス、T790M変異NSCLCでOS45ヵ月(GioTag)/ベーリンガーインゲルハイム

 ベーリンガーインゲルハイムは、2019年8月2日、GioTag研究の中間解析結果を発表した。同研究では、初回治療のアファチニブに続きオシメルチニブを投与することにより、Del19変異陽性患者において、約4年間(45.7ヵ月間)の全生存期間(OS)を示した。

エヌトレクチニブ、NTRK固形がんとROS1肺がんでFDA承認

 2019年8月15日、米国食品医薬品局(FDA)は、NTRK融合遺伝子陽性でほかの治療法がない固形がんに対して、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブを迅速承認した。同時に、転移のあるROS1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しても承認している。  NTRK陽性がんの有効性は、ALKA、STARTRK-1、STARTRK-2の3つの多施設単群臨床試験のいずれかでエヌトレクチニブを投与された54例の成人患者で検討された。54例の独立評価委員による全奏効率(ORR)は57%(95%CI:43~71)であった。奏効期間(DOR)は、患者の68%が6ヵ月以上は、45%が12ヵ月以上であった。

医師は仕事でSNSを使っている? 会員医師アンケート

 多くの人が日常的に使っているソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。人によっては、仕事上の情報収集・情報発信の目的で利用しているケースもある。では、医師の場合、研究や日常診療に役立つ情報を収集するために、どのSNSを利用しているのだろうか。ケアネットでは、2019年7月にCareNet会員医師を対象にSNS利用動向についてのアンケートを行った。アンケートは、2019年7月4日(木)~19日(金)の期間にインターネットで行われ、会員医師400人(20~30代・40代・50代・60代以上の各年代100人)から回答を得た。

遺伝学的に血清Caが高い人は骨折しにくいのか/BMJ

 正常カルシウム値の集団において、血清カルシウムを増加させる遺伝的素因は、骨密度の上昇とは関連せず、臨床的に意義のある骨折予防効果をもたらさないことが、カナダ・マギル大学のAgustin Cerani氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年8月1日号に掲載された。カルシウム補助剤は、一般住民において広く使用されており、骨折リスクの低減を意図して用いられることが多いが、冠動脈疾患のリスクを増大させることが知られており、骨の健康への保護効果は依然として不明とされる。

透析患者のEPO抵抗性貧血の解決になるか(解説:浦信行氏)-1102

同時報告の保存期CKDでも述べたように、roxadustatは経口投与の低酸素誘導因子(HIF)の分解酵素阻害薬であり、結果的にHIFを安定化させて内因性エリスロポエチンの転写を促進して腎性貧血の改善を促す。併せて、ヘプシジンの産生を抑制して、鉄利用を高める作用も持つ。今回の透析例における第III相の結果は、EPO製剤投与群と比較して貧血改善効果は同等であった。従来のEPO製剤は、高用量を要するEPO抵抗性の症例が存在する。今回の検討ではCRPの値で2群に分けて検討しており、CRP高値群では反応性の低下からEPOの用量を多く必要としたが、roxadustat群ではCRPの高低にかかわらず良好な反応を示し、炎症に左右されない効果を発揮することが明らかとなった。

非糖尿病者でHbA1cとがん発症にU字型の関連

 HbA1cとがん発症との関連を経時的に評価するため、聖路加国際病院の小林 大輝氏らがHbA1cを複数回測定する縦断研究を実施した。その結果、非糖尿病者においてHbA1cレベルとがんリスクとの間にU字型の関連がみられたが、前糖尿病レベルで追加リスクは認められなかった。また、HbA1c低値が乳がんおよび女性性器がんの発症と関連することが示唆された。Acta Diabetologica誌オンライン版2019年8月9日号に掲載。  本研究は、聖路加国際病院で実施された後ろ向き縦断研究で、2005~16年に同病院で自主的に健康診断を受けたすべての参加者を含む。アウトカムはがん発症で、HbA1cレベルのカテゴリー間で比較した。HbA1cの変動を考慮するために、HbA1cの経時的な測定を適用した混合効果モデルを使用し縦断的に分析した。