日本語でわかる最新の海外医学論文|page:511

脳損傷急性期の15%は行動反応なくとも脳活動あり/NEJM

 急性脳損傷患者の15%で、運動指令に対する行動反応はなくても、脳波測定(EEG)では指令に反応を示す記録がみられ、脳が活性化していることが明らかになった。米国・コロンビア大学のJan Claassen氏らが、脳損傷患者を対象に、音声による運動指令に反応する脳活動と予後への影響を検証した前向き試験の結果を報告した。臨床的に無反応な患者において、体を動かすよう声掛けをした際に脳活動を示す脳波が検出される場合がある。そのような認知と運動の解離が、脳損傷後の数日間にみられる割合や予後についての重要性は、これまで十分に解明されていなかった。NEJM誌2019年6月27日号掲載の報告。

DES留置後、DAPT3ヵ月+P2Y12阻害薬単剤vs.DAPT12ヵ月/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で薬剤溶出ステント(DES)を留置した患者において、3ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)+P2Y12阻害薬単剤療法は、12ヵ月間のDAPTと比較し、主要心・脳血管イベント(MACCE:全死因死亡、心筋梗塞または脳卒中の複合エンドポイント)の発生に関して非劣性であることが検証された。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、同国の33施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験「SMART-CHOICE試験」の結果を報告した。これまで、PCI後の短期間DAPT+P2Y12阻害薬単剤療法に関するデータは限定的であった。JAMA誌2019年6月25日号掲載の報告。

進行胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除は開腹術に匹敵するか?(解説:上村直実氏)-1071

最近の疫学調査によると、ピロリ感染者数の減少や除菌治療の普及により胃がん死亡者は減少の一途をたどっている。さらに、全国の検診体制の充実や内視鏡検査の普及により早期発見される胃がんが多くなり、内視鏡的切除術の件数が著明に増加しているのが現状である。しかし、臨床現場では手術可能な進行胃がんに遭遇する機会も少なくなく、従来の開腹手術と腹腔鏡下手術の適応に迷うこともある。日本、韓国および中国において両術式の有用性と安全性を検証する無作為介入試験(RCT)が進行中であるが、今回、進行胃がん(T2〜T4a)の約1,000症例を対象として中国で実施されたCLASS-01試験の結果が報告された。

乳がん患者への予後情報の開示は効果的か/Cancer

 がん患者へ明確な予後を知らせる効果に関する知見が示された。聖隷三方原病院 緩和ケアチームの森 雅紀氏らは、日本人乳がん女性患者に対して、予後の明確な開示の有無という点で異なる2つのビデオ(患者と医師のコミュニケーション場面を撮影したもの)を見せ、患者が抱く不確実性や不安、満足感などに変化が認められるかを無作為化試験により調べた。その結果、明確な予後の開示はそれらのアウトカムを改善することが示されたという。結果を踏まえて著者は、「がん患者に予後について質問をされたら、医療従事者は、その要望を尊重すべきであり、適切であれば明快に話し合うことが推奨されるだろう」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年6月17日号掲載の報告。

血圧と認知症サブタイプ別リスク~260万人を長期観察

 血圧上昇と認知症リスクの関連は、期間や認知症のサブタイプにより異なるのだろうか。今回、英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのJohn Gregson氏らによる約260万人の後ろ向きコホート研究から、血圧上昇は認知症リスク低下と短期的には関連するが、長期的な関連はあまり大きくないことがわかった。また、長期的な関連は、アルツハイマー型認知症と血管性認知症では逆であったことが報告された。European Journal of Neurology誌オンライン版2019年6月24日号に掲載。

抑うつ症状と燃え尽き症候群との関係

 燃え尽き症候群とうつ病との間に重複する概念が存在するのか、あるいは互いに異なるのかについては、継続的に議論されており、入院患者における精査は行われていない。この関連性を明らかにするため、スイス・ベルン大学のKathleen Schwarzkopf氏らは、3つの異なるうつ病尺度を用いて検討を行った。さらに、抑うつ症状と燃え尽き症候群との関連における心理的苦痛、知覚されたストレスおよび睡眠の質への影響についても調査を行った。Zeitschrift fur Psychosomatische Medizin und Psychotherapie誌2019年6月号の報告。

心筋梗塞疑いへの高感度トロポニン検査値、どう読み解く?/NEJM

 心筋梗塞を示唆する症状を呈する救急受診患者への高感度トロポニン検査のデータから、より正確に診断・予後情報を読み解くためのリスク評価ツールが、ドイツ・ハンブルグ大学心臓センターのJohannes T. Neumann氏らにより開発された。同検査データは、心筋梗塞である確率と、その後30日間のアウトカムの推定に役立つ可能性が示されていた。今回開発されたリスク評価ツール(「救急受診時[1回目]の高感度トロポニンIまたはトロポニンT値」「その後2回目採血までの同値の動的変化値」「2回の採血の間隔」を統合)は、それら診断・予後の推定に有用であることが示されたという。NEJM誌2019年6月27日号掲載の報告。

HIV感染リスク、避妊法間で異なるのか?/Lancet

 安全で避妊効果が高い3種類の避妊法(メドロキシプロゲステロン酢酸筋注デポ剤[DMPA-IM]、銅付加子宮内避妊器具[銅付加IUD]、レボノルゲストレル[LNG]インプラント)について、HIV感染リスクの差は実質的には認められないことが、米国・ワシントン大学のJared M. Baeten氏らEvidence for Contraceptive Options and HIV Outcomes(ECHO)試験コンソーシアムによる、アフリカ4ヵ国12地点で行われた無作為化多施設共同非盲検試験の結果、明らかにされた。これまでの観察研究や実験研究で、一部のホルモン避妊薬、とくにDMPA-IMは女性のHIV感染性を増す可能性が示唆されていたが、今回の試験において、対象集団のHIV感染率は3群ともに高かった。著者は、「アフリカの女性への避妊サービス提供では、併せてHIV予防を行うことが必須であることが明示された」と述べ、「今回の結果は、3種類の避妊法へのアクセス継続および増大を支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年6月13日号掲載の報告。

経口GLP-1受容体作動薬の心血管安全性を確認(解説:吉岡成人氏)-1070

日本では未発売の製剤であるが、GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドと構造が類似した週1回注射製剤セマグルチドは、2型糖尿病患者の心血管イベントを抑止することがすでに確認されている。また、セマグルチドには経口製剤があり(吸収促進剤により胃粘膜でのセマグルチドの分解を阻害し、胃粘膜細胞間隙から薬剤が吸収される製剤)、1日1回の経口投与によって注射製剤と同等のHbA1c低下作用と体重減少作用が示されている。今回、経口セマグルチドの承認申請前に実施する心血管系に対する安全性を評価する試験の結果が公表された。

FoundationOne CDx、エヌトレクチニブのコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は、2019年6月27日、遺伝子変異解析プログラムFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルに関し、ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)のNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対するコンパニオン診断としての使用目的の追加について、6月26日に厚生労働省より承認を取得したと発表。FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルは、NTRK融合遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3遺伝子と他の遺伝子の融合遺伝子)を検出することにより、エヌトレクチニブの適応判定補助を行う。エヌトレクチニブは、成人および小児の NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する治療薬として本年6月18日に承認を取得している。

統合失調症における抗精神病薬減量モデル~パイロット研究

 精神科医と統合失調症患者は、再発することを恐れ、抗精神病薬の減量をためらっているのではないか。このようなジレンマの克服を目的とし、米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校のChisa Ozawa氏らは、個々の患者のドパミンD2受容体占有率に対応した経口投与量を算出するモデルを開発した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2019年6月10日号の報告。  本パイロット研究では、リスペリドンまたはオランザピンの単剤治療で臨床的に安定している統合失調症患者35例を対象に、減量群(17例)または維持群(18例)にランダムに割り付けた。減量群では、モデルを使用してランダムに収集した血漿濃度から算出したトラフ値D2占有率65%に対応するよう、抗精神病薬の減量を行った。

理想の年収額は2,000万円以上

 ケアネットでは、5月30日(木)~6月3日(月)に会員医師1,000人(各年代200人ずつ)を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で、自身の業務内容・仕事量に見合うと思う年収額について尋ねたところ、現在の年収帯と同じ年収帯を回答する医師が多かった。また、全年収別で最も回答数が多かった年収帯は2,000~2,500万円(46%)であった。  実年収と自身の考える適正年収についての質問では、600万円未満では「現状と同額と回答」と「現状より高い金額を回答」がほぼ拮抗していたものの、600万円~2,000万円までの各項目では、「現状より高い金額を回答」が6割以上を占め、2,000万円以上から現状と同額またはそれより低い金額と回答する会員医師が約6割以上を占めた。

TAVR導入後5年で、米国の術後脳卒中は減少したか/JAMA

 米国では2012~15年の期間に、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の施行数が5倍以上に増加したが、TAVR後の脳卒中リスクは知られていない。米国・クリーブランドクリニックのChetan P. Huded氏らは、全国的な調査を行い、2011~17年の術後30日以内の脳卒中発生率は2.3%で、この期間の年間発生率の推移に大きな変動はないことを明らかにした。研究の詳細は、JAMA誌2019年6月18日号に掲載された。  研究グループは、米国におけるTAVR導入後5年間の術後30日以内の脳卒中の発生状況を調査し、脳卒中と30日死亡率、薬物療法と30日脳卒中リスクとの関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った。

アレルギー総合ガイドライン2019が発行、アレルギーとアナフィラキシーを網羅

 アレルギー疾患罹患率はとくに先進国で増加し、いまや日本人の約50%が何らかのアレルギー症状を有しているといわれる。代表的なアレルギー疾患に関する12の最新ガイドラインの内容を1冊にまとめた「アレルギー総合ガイドライン」の改訂版が、3年ぶりに発行された。アレルギー総合ガイドライン2019は診療科を超えて横断的に出現し、急性増悪のリスクもはらむアレルギー疾患に対して、標準的な臨床的対応を円滑に行うことができるよう、実用性を重視した構成となっている。

蜂窩織炎、丹毒、最適な抗菌薬治療は?

 蜂窩織炎や丹毒は、よくみる細菌感染症であり、抗菌薬治療が至適治療とされている。しかし、その治療法についてのコンセンサスは得られておらず、入手可能な試験データではどの薬剤が優れているのかを実証することができない。最適な投与ルート、治療期間のデータも限定的である。英国・ブリストル大学のRichard Brindle氏らは、システマティックレビューとメタ解析により、非外傷性の蜂窩織炎に対する抗菌薬治療の安全性と有効性を評価した。しかし、低質なエビデンス結果しか得られず、著者は「標準的なアウトカム(重症度スコア、用量、治療期間)を設定した試験を行う必要がある」と提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年6月12日号掲載の報告。

不眠症治療薬と自殺未遂リスク

 成人における慢性不眠症の薬理学的治療のためのガイドラインでは、エビデンスが不十分であるにもかかわらず、トラゾドンや他の適応外投与が一般的に行われているとされる。退役軍人保健局(VA)では、ベンゾジアゼピンやゾルピデムに加え、市販の鎮静性抗ヒスタミン薬、古い抗うつ薬などの安価な薬剤が大量に使用されている。これら薬剤の自殺行動に関する安全性の比較については、十分にわかっていない。米国・Canandaigua VA Medical CenterのJill E. Lavigne氏らは、VAにおいて、不眠症治療に一般的に使用されている薬剤の安全性について比較を行った。Journal of General Internal Medicine誌オンライン版2019年6月3日号の報告。

デュルバルマブの肺がんCCRT維持療法、3年後も一貫した効果(PACIFIC)/ASCO2019

 化学放射線同時併用療法(CCRT)を受けた切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした第III相PACIFIC試験において、デュルバルマブは無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の有意な改善を示した。本年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)では、PACIFIC試験の3年OSデータが発表された。  著者らは、PACIFIC試験の最新OSデータは、CCRT後デュルバルマブの長期臨床的有益性を強調し、さらにこの集団における標準治療としてのPACIFICレジメンを確立するものだとしている。

AT(N)測定、非認知症高齢者の記憶力の予後予測に有効/JAMA

 アミロイドPET、タウPET、MRI皮質厚による予測モデルは、より簡単に入手可能な臨床的/遺伝的情報とともに使用すると、認知症のない高齢者における記憶力低下の予測能が、臨床的/遺伝的情報だけの場合に比べて改善されることが、米国・メイヨー・クリニックのClifford R. Jack Jr氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年6月18日号に掲載された。米国国立老化研究所とアルツハイマー病協会(NIA-AA)の作業部会は、アルツハイマー病の研究枠組みにおいて、参加者のバイオマーカーをアミロイド、タウ、神経変性(ニューロンの損傷)の状態に基づき、AT(N)プロファイルとして分類するよう提唱している。

GLP-1受容体作動薬、デュラグルチドは2型糖尿病患者の腎イベントを抑制するか?:REWIND試験の腎に関する予備解析結果(解説:栗山哲氏)-1069

2型糖尿病においてGLP-1受容体作動薬、デュラグルチドのadd-on療法は、新規アルブミン尿発症を抑制する。インクレチン薬であるGLP-1受容体作動薬の腎作用が解明されつつある。現在までにGLP-1受容体作動薬に関する大規模研究は、セマグルチドのSUSTAIN-6研究、リラグルチドのLEADER研究、リキシセナチドのELIXA研究の3つ報告がある。この中で、前二者において腎複合イベントに改善作用が示唆された(ELIXA研究では腎イベントは事前設定されていない)。

宇宙医学研究の成果を高齢者医療に役立てる

 骨密度低下と聞けば高齢者をイメージするが、無重力空間に滞在する宇宙飛行士もそれが問題視されている。しかし、宇宙飛行士と高齢者の骨密度減少の原因と程度にはどのような違いがあるのだろうか? 2019年6月14日、大島 博氏(宇宙航空研究開発機構、整形外科医)が「非荷重環境における骨・筋肉の減少と対策」において、宇宙飛行士に対する骨量減少と筋萎縮の実態と対策について講演した(第19回日本抗加齢医学会総会 シンポジウム2)。