日本語でわかる最新の海外医学論文|page:325

僧帽弁閉鎖不全症、僧帽弁手術+三尖弁輪形成術併施の転帰/NEJM

 僧帽弁手術において、三尖弁輪形成術を併施した患者は僧帽弁単独手術の患者に比べ、重度の三尖弁逆流への進行が少ないことに起因し、術後2年時点のイベント(三尖弁の再手術、三尖弁逆流の悪化、死亡)発生は有意に少なかったが、永久ペースメーカー植込みが高頻度であることが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のJames S. Gammie氏らCardiothoracic Surgical Trials Network(CTSN)による無作為化臨床試験で明らかになった。三尖弁逆流は重度の器質的僧帽弁閉鎖不全症患者によくみられる症状であるが、中等度程度の三尖弁逆流を有する患者において僧帽弁手術の際に三尖弁輪形成を行うかどうかを決定するには、これまでエビデンスが不十分であった。NEJM誌オンライン版2021年11月13日号掲載の報告。

インド製コロナワクチン、有効率77.8%で忍容性良好/Lancet

 インドで開発された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBBV152は、成人においてウイルス学的に確認された症候性COVID-19の発症予防に対し高い有効性を示し、忍容性は良好で安全性に関する懸念はない。インド・バーラト・バイオテック社のRaches Ella氏らが、インドの25施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の中間解析結果を報告した。BBV152ワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)NIV-2020-770株をβ-プロピオラクトンで不活化し、ウイルス抗原6μgを、ミョウバン(Algel)にtoll様受容体7/8アゴニスト分子(イミダゾキノリン:IMDG)を吸着させたAlgel-IMDGと共に製剤化した不活化全ウイルスワクチンで、保存温度は2~8度であることから、輸送・保管システムの必要条件を緩和できる可能性が示されている。Lancet誌オンライン版2021年11月11日号掲載の報告。

3回目接種開始に伴う追記など、新型コロナ予防接種の手引き改訂/厚労省

 厚生労働省は、11月30日付でホームページ上に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(5.0版)」を公開した。今回は、今月より新型コロナワクチンの追加(3回目)接種が開始することに伴う追記(予診票、請求事務の変更など)が主な改訂ポイントとなる。  最新版手引きによると、追加接種は、「2回目接種から原則8ヵ月以上経過した者に対して1回行うこと」としている。そのため、追加接種についても2回目接種までの時期が早かった医療従事者などから順次開始する。初回接種(1、2回目接種)で使用したワクチン接種の種類にかかわらず、現時点で追加接種において使用できるワクチンは、ファイザー社製ワクチン(コミナティ)のみで、接種対象者は18 歳以上。今後の薬事承認等の状況を踏まえ、使用できるワクチンが追加される可能性がある。

HPVワクチンの接種個別勧奨を自治体へ指示/厚労省

 11月26日、厚生労働省は「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について」の通知を全国の自治体に向けて発出した。  同省は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症に係る予防接種の積極勧奨について、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛が接種後に特異的にみられたことから、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとし、平成25年6月14日発出の通知により接種の積極的な勧奨とならないよう留意するなどの対応を勧告してきた。  今回の通知はその勧告を変更するもので、先の平成25年の通知は廃止され、令和4年4月よりHPVワクチン接種対象者に予防接種法第8条に基づき勧奨を行うこととなる。

認知症診断に関する日米間の比較

 認知症は、日米で共通の問題であるが、医療システムの異なる両国における認知症診断に関するプライマリケア医の診療および今後の展望について、浜松医科大学の阿部 路子氏らが、調査を行った。BMC Geriatrics誌2021年10月11日号の報告。  日本全国および米国中西部ミシガン州におけるプライマリケア環境において、半構造化面接および主題分析を用いて、定性的研究を実施した。参加者は、日米それぞれ24人のプライマリケア医(合計48人)。両群ともに地理的因子(地方/都市部)、性別、年齢、プライマリケア医としての経験年数が混在していた。

LVEF40%超の心不全、サクビトリル・バルサルタンvs.RAS系阻害薬/JAMA

 心不全で左室駆出分画(LVEF)40%超の患者において、サクビトリル・バルサルタンは、レニン・アンジオテンシン(RAS)系阻害薬またはプラセボと比較して、12週後のN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値の低減効果は大きかったが、24週後の6分間歩行距離の改善について有意差はなかったことを、ドイツ・シャリテ大学医学部のBurkert Pieske氏らが、約2,600例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにした。これまで、サクビトリル・バルサルタンとRAS系阻害薬を比較した有益性のエビデンスをサロゲートアウトカムマーカー、6分間歩行距離、およびQOLで検討した試験は限られていた。JAMA誌2021年11月16日号掲載の報告。  研究グループは、2017年8月~2019年10月にかけて、32ヵ国、396ヵ所の医療機関を通じ、24週間の無作為化並行群間比較二重盲検試験を行った。被験者はLVEFが40%超、高値NT-proBNP、構造的心疾患があり、QOL低下が認められる患者で、4,632例をスクリーニングし、2,572例が被験者として組み込まれた。追跡は、2019年10月28日まで行った。

左冠動脈主幹部病変へのPCI vs.CABG、メタ解析で転帰の違いは/Lancet

 低~中等度の解剖学的複雑性を有する左冠動脈主幹部病変に対して、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の5年死亡リスクは同等であることが示された。一方でベイジアン解析では、死亡リスクには違いがありPCI よりCABGのほうが支持される(年率0.2%未満である可能性が高い)ことを示唆する結果が示された。また、自然発生心筋梗塞や血行再建術のリスクは、PCI群がCABG群より高かったが、脳卒中はPCI群が低かった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S. Sabatine氏らによるメタ解析の結果で、結果を踏まえて著者は、「これらの予想される結果の違いを伝えることは、患者の治療を決定するのに役立つだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年11月12日号掲載の報告。  研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochraneのデータベースを基に、左冠動脈主幹部病変に対し、薬剤溶出ステントを用いたPCIまたはCABGを行い5年以上追跡し、全死因死亡リスクを比較した無作為化比較試験で、2021年8月31日までに英語で発表されたものを検索した。選択基準に合った試験の抽出については、Sabatine氏ら2人が行った。

ダプロデュスタットの透析患者での有効性と初発の主要有害心血管系イベントはESAと同等(解説:浦信行氏)

CKDにおける腎性貧血の治療薬として低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬が透析の有無にかかわらず使用可能となり、これまでにロキサデュスタットをはじめとして5剤が使用可能となっている。HIF-PH阻害薬は転写因子であるHIF-αの分解を抑制して蓄積させ、HIF経路を活性化させる。その結果、生体が低酸素状態に曝露されたときに生じる赤血球造血反応と同様に、正常酸素状態でも赤血球造血が刺激され、貧血が改善する。これまでの臨床試験は5剤いずれも赤血球造血刺激因子(ESA)を対象とした非劣性試験であり、いずれも有効性と有害事象の頻度には非劣性が確認されている。少なくとも有効性に関しては5剤間で大きな違いはないようである。今回はダプロデュスタットの貧血改善効果や有害事象のESAに対する非劣性評価に加えて、初発の主要有害心血管イベント(MACE:全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)に対する評価が行われ、主な副次評価項目は、初発のMACEに加えて入院あるいは血栓塞栓イベントの発症であり、5月に発表されたバダデュスタットとほぼ同様の解析がなされている。

TRK阻害薬ラロトレクチニブ、NTRK陽性肺がんに奏効/日本肺癌学会

 まれな遺伝子変異である神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体(NTRK)融合遺伝子を有するがんの治療薬として開発されたTRK阻害薬ラロトレクチニブは、NTRK融合遺伝子を有する肺がん患者にも奏効することが、第62回日本肺癌学会学術集会において名古屋大学の安藤雄一氏により発表された。  NTRK融合遺伝子陽性の固形がん患者159例を対象とした第I相および第II相のバスケット試験において、ラロトレクチニブは79%という高い奏効率(ORR)を示している。今回はこの中から肺がん症例を抽出し、ラロトレクチニブの有効性と安全性についての解析を行った。

マスク・手洗いでコロナ発症率がどの程度下がるのか~メタ解析/BMJ

 新型コロナウイルスへの感染、発症、死亡に関して、感染対策はどの程度有効だったのだろうか。オーストラリア・Monash UniversityのStella Talic氏らの系統的レビューとメタ解析から、手洗い、マスク着用、対人距離保持などがCOVID-19発症率の減少と関連することが示唆された。BMJ誌2021年11月17日号に掲載。  本研究では、Medline、Embase、CINAHL、Biosis、Joanna Briggs、Global Health、World Health Organization COVID-19データベース(プレプリント)において、COVID-19発症率、SARS-CoV-2感染率、COVID-19死亡率の減少における感染対策の有効性を評価した観察研究と介入研究を検索した。主要評価項目はCOVID-19発症率、副次評価項目はSARS-CoV-2感染率とCOVID-19死亡率などであった。マスク着用、手洗い、対人距離保持がCOVID-19発症率に及ぼす影響をDerSimonian Lairdのランダム効果メタ解析で評価した。

ペムブロリズマブ+化学療法、食道がん1次治療に承認/MSD

 MSDは、2021年11月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)について、根治切除不能な進行・再発の食道癌に対する適応拡大に関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。  今回の承認は、化学療法歴のない根治切除不能な進行・再発の食道扁平上皮がんおよび食道腺がん並びに食道胃接合部(Siewert分類typeI)の腺がん患者749例(日本人141例を含む)を対象とする、国際共同第III相試験KEYNOTE-590試験の結果に基づいている。

反復性片頭痛に対するスマホベース音楽介入

 片頭痛は、世界中で多くの患者が苦しんでいる疾患の1つである。従来の予防薬や行動に基づく介入は、片頭痛発作の予防的治療として用いられてきた。しかし、原発性頭痛障害患者に対する代替介入のベネフィットについては、十分に調査されていなかった。フランス・CHU La Reunion-GHSRのGuilhem Parlongue氏らは、反復性片頭痛に対する患者の自己管理による音楽介入の影響について調査するため、パイロット研究を実施した。Complementary Therapies in Medicine誌オンライン版2021年9月30日号の報告。

精神疾患発症リスクの高い人に対する抗精神病薬の予防効果

 既存のガイドラインでは、精神疾患における臨床的にハイリスクな人に対する抗精神病薬の使用は推奨されていないが、抗精神病薬がハイリスクな人の精神疾患を予防できるかは、よくわかっていない。中国・上海交通大学医学院のTianHong Zhang氏らは、精神疾患発症リスクの高い人において、抗精神病薬の予防効果を比較するため、本研究を実施した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2021年9月18日号の報告。

脳梗塞の血栓除去術、発症6h以降でも機能障害を改善/Lancet

 発症後6~24時間で、可逆的な脳虚血の証拠が確認された急性期脳梗塞患者の治療において、血管内血栓除去術はこれを施行しない場合と比較して、90日後の修正Rankin尺度(mRS)で評価した機能障害が良好であり、日常生活動作の自立(mRS:0~2点)の達成割合も高いことが、米国・Cooper University Health CareのTudor G. Jovin氏らが実施した「AURORA試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年11月11日号で報告された。  研究グループは、発症から6時間以上が経過した脳梗塞患者における、血管内治療のリスクとベネフィットを評価する目的で、無作為化対照比較試験の系統的レビューを行い、個々の患者データに基づくメタ解析を実施した(Stryker Neurovascularの助成を受けた)。

左後方心膜切開術、心臓手術後のAFを抑制/Lancet

 心臓手術時に左後方心膜切開術を加えると、これを行わない場合に比べ術後の心房細動の発生率がほぼ半減し、術後合併症リスクの増加はみられないことが、米国・Weill Cornell MedicineのMario Gaudino氏らが実施した「PALACS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年11月12日号で報告された。  研究グループは、左後方心膜切開術は心臓手術後の心房細動の発生を抑制するとの仮説を立て、これを検証する目的で適応的単盲検無作為化対照比較試験を実施した(研究助成は受けていない)。

妊娠高血圧腎症pre-eclampsiaとメトホルミン(解説:住谷哲氏)

筆者は内科医で産科は専門外なのではじめに用語を整理したい。2018年に発表された日本産科婦人科学会の「妊娠高血圧症候群の定義分類」によると、「妊娠時に高血圧を認めた場合、妊娠高血圧症候群とする。妊娠高血圧症候群は妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧、加重型妊娠高血圧腎症、高血圧合併妊娠に分類される」とあり、病型分類から子癇eclampsiaを除外し、高血圧に母体の臓器障害や子宮胎盤機能不全を認める場合は蛋白尿がなくても妊娠高血圧腎症とする、とされている。妊娠高血圧腎症が以前の妊娠中毒症であり、本論文のpre-eclampsiaと同一概念である。HELLP(Hemolysis, Elevated Liver enzymes, and Low Platelet count)症候群のような腎症を伴わない病態を妊娠高血圧腎症の訳語に含めるのは何となく違和感があるが、本稿でもpre-eclampsiaの訳語として妊娠高血圧腎症を使用する。 妊娠高血圧腎症の病態は現在も明らかではないが、何らかの胎盤機能異常が存在するとされている。胎盤機能異常があるので、最も確実な治療法は分娩または中絶による妊娠終了であるが現実的には妊娠継続を選択する場合がほとんどである。妊娠高血圧腎症の高リスク妊婦に対する低用量アスピリン投与が発症予防に有効であるとのエビデンスがあるが、発症した妊娠高血圧腎症に対する治療薬は現在存在しない。そこでこれまで、drug-repurposingの観点から、プラバスタチン、プロトンポンプ阻害薬、それとメトホルミンなどの投与が試みられてきた。本論文はメトホルミンの有効性を検証するためのproof-of-concept trialである。

エアロゾル感染への対応、ワクチン後の対応などを改訂/医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版

 ⽇本環境感染学会は「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版」を2021年11月22日に公開した。第3版からの主な改訂項目は、エアロゾル(微⼩⾶沫)による感染への対応、新型コロナウイルスのワクチン接種後の対応、積極的な検査の導⼊を含めた対応、である。  本ガイドの第1版は2020年2⽉12 ⽇に公開され、その後の状況の変化に応じて改訂し、2020年5月8日に第3版を公開していた。

エンパグリフロジンの慢性心不全への承認取得/日本ベーリンガーインゲルハイム・日本イーライリリー

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と日本イーライリリー株式会社は、11月25日付でSGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)錠10mgについて、日本ベーリンガーインゲルハイムが、慢性心不全に対する効能・効果および用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を、厚生労働省より取得したことを発表した。SGLT2阻害薬の慢性心不全への適応拡大では2剤目となる。  今回の製造販売承認(一部変更)は、エンパグリフロジンが心血管死または心不全による入院の複合リスクをプラセボと比較して有意に25%低下させることを示した“EMPEROR-Reduced試験”の結果に基づく。  本試験の主要評価項目に関する結果では、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、サブグループ間で同様の結果を示した。また、試験の重要な副次評価項目の解析から、エンパグリフロジンは心不全による入院の初回および再発のリスクをプラセボと比較して30%低下させると共に、腎機能の低下を有意に遅らせることが明らかになった。安全性プロファイルは、これまでに確立されたエンパグリフロジンの安全性プロファイルと同様だった。

ニボルマブ、消化器がんで2つの適応が追加承認を取得/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2021年11月25日、ニボルマブについて、化学療法との併用療法による「治癒切除不能な進行・再発の胃癌」、および「食道癌の術後補助療法」に対する二つの効能又は効果並びに用法及び用量の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得した。  今回の承認は、CheckMate -649試験とATTRACTION-4試験のデータに基づいたもの。  CheckMate-649試験は、日本を含む世界規模で、未治療のHER2陽性以外の治癒切除不能な進行・再発の胃がん、胃食道接合部がんまたは食道腺がんを対象に、ニボルマブと化学療法の併用療法またはイピリムマブとの併用を、化学療法単独と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験。

ロルラチニブがALK陽性肺がんの1次治療に追加承認/ファイザー

 ファイザーは、2021年11月25日、第3世代ALK-TKIロルラチニブ(製品名:ローブレナ)が「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」(以下、ALK陽性肺がん)の治療薬として、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請の承認を取得したと発表。  今回の承認は、未治療のALK陽性肺がんを対象とした第III相試験CROWN試験の結果に基づくもの。  この承認取得により、ロルラチニブは、ALK陽性肺がんの2次治療以降だけでなく、1次治療薬としても使用することが可能となる。