診療所での効果的な感染対策例/COVID-19対策アドバイザリーボード

提供元:ケアネット

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公開日:2022/12/12

 

 第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で日本プライマリ・ケア連合学会より「診療所における効果的な感染対策の好事例の紹介」が報告された。
 これは、本格的な冬を迎え、プライマリ・ケアの外来には発熱などの感冒様症状を訴える患者が増えると予想されていることに鑑み、これに備え、これまでの新型コロナ流行下で実践されてきたプライマリ・ケアでの効果的な感染対策の工夫例と発熱外来を設置・運用するうえでの工夫例をまとめたもので、以下に概要を示す。

診療所における効果的な感染対策の工夫例

【工夫1】待合室における感染対策
・自家用車で来院している患者は車中で待機してもらう。
・基本的な感染対策を徹底する。具体的には窓開け、サーキュレーターの活用、二酸化炭素モニターを設置する。

【工夫2】診察・検体採取時の感染対策
(1)院内のゾーニング・動線分離を行う
・発熱・感冒様症状患者の駐車場と院内への動線を一般患者と分離する(例:矢印などで導線をわかりやすく表示する)。
・発熱・感冒様症状患者用の診察スペースなどを確保する(例:パーティションによる簡易な分離/空き部屋などを診察室として活用など)。
・空間的分離を行わない場合において、発熱・感冒様症状のある患者とそうでない患者を、時間的に分離して診察する。
(2)個人防護具(PPE:Personal Protective Equipment)の着脱を工夫する
・患者対応時にはサージカルマスクを常時装着し、飛沫曝露のリスクがある場合はアイシールド・フェイスシールドを装置する。
・患者に手や体幹が直接接触する可能性がある場合は、手袋・ガウンも装着する。
・1対応ごとに手指消毒を徹底する。手袋を使用する場合は、1対応毎に手袋を交換し手指消毒も徹底する。サージカルマスク、アイシールド・フェイスシールド、ガウンの交換は、大量の飛沫を浴びたり、それらが患者に直接接触した場合に限定してもよい。
(3)検体採取の場所を工夫する
・検体採取を屋外や駐車場(や車中)で行う(ただしプライバシーへの配慮は必要)。
・唾液によるPCR検査・抗原定量検査や、鼻かみ液によるインフルエンザ迅速抗原検査を活用することで飛沫やエアロゾルの発生を抑える。
(4)その他の感染対策上の工夫
・難聴の患者と大声で会話することを避けるために、スマートフォンを用いた翻訳機器の音声認識・自動文字化機能を活用する。
・患者にタブレット端末を渡して、オンラインで診療、説明などを行う。
・上記のような感染対策が構造的に困難な場合は、時間的分離で対応する。

【工夫3】処方・調剤における工夫
・特例承認の経口抗ウイルス薬の処方に必要な同意書を電子化し、タブレット上でサインを得る。
・発熱患者への処方・調剤の流れについて近隣調剤と共に確認し、感染対策の助言を行い、発熱患者が薬剤を受け取れる体制を構築する。
・調剤薬局が近接している場合は、患者は自院駐車場の自家用車内で待機し、薬局から手渡しに向かう。
・調剤薬局において電話やオンラインでの服薬指導や配送体制を構築する。

発熱外来を設置・運用する上での課題と工夫例

【課題1】通常診療よりも大きな作業負担を軽減する
 初診患者が多くなるため、病歴・背景情報把握にかかる負担の軽減が必要
・事前にWEB問診(インターネットによる問診)システムで情報収集する(例:企業が提供するWEB問診システムを活用し、対面診察の時間を短縮など)。
・発熱・感冒様症状用の問診票を用意し、緊急性のある症状の有無、電話診療やオンライン診療の可否、新型コロナ感染症治療薬の適応などを事前に確認する。

【課題2】院内感染が生じた場合の休業リスクに備える
・日本医師会などが提供する休業補償保険に加入する。
・医療機関の休業が生じても個別の訪問診療を維持するために、平時から地域の医療機関間での連携体制を整える(例:地域の在宅患者情報を共有するネットワークへの加入など)。
・休業した場合でも可能な限り電話・オンライン診療を継続する。

【課題3】かかりつけ患者に重症化リスクの高い患者が多い
・院内各所での感染対策に工夫が必要。
・電話・オンライン診療の適切な活用。

【課題4】施設構造などの問題で理想的な感染対策が難しい
・施設構造などの制約を踏まえた現実的かつ効果的な感染対策を工夫する。
・時間的分離(診療時間の分割)による対応。
・電話・オンライン診療の適切な活用。

【課題5】発熱・感冒様症状患者への処方・調剤の流れを工夫する
・上記【工夫3】を参照。

【課題6】必要に応じて一部の患者にオンライン診療を適切に活用する
・予約時の情報でオンライン対応できると判断した患者にはオンライン診療を提案する。
・事前にWEB問診で情報を収集する。
・企業が提供するオンライン診療システムの導入。
・行政が設置するオンライン診療センターで診療を行う。

【課題7】入居しているテナントの管理者の理解を得るよう努める
・時間的分離を検討する(例:発熱・感冒様症状患者専用の診療時間帯、曜日を設けるなど)。
・電話・オンライン診療の適切な活用。

 なお、別添1では「PPE(個人用防護具)の着脱について」、別添2では「発熱等かぜ症状外来事前問診例」を図で表記している。

(ケアネット 稲川 進)