日本語でわかる最新の海外医学論文|page:13

うつ病リスクに影響を及ぼす食事パターン、男女や年齢で違いがあるか?

 食生活パターンは、うつ病リスクと関連している可能性がある。男女間および年齢層別の食生活パターンの違いは報告されているものの、うつ病リスクへの影響はこれまで十分に検討されていなかった。フランス・マルセイユ大学のYannis Achour氏らは、性別および年齢層における食生活パターンとうつ病リスクとの関連性を調査し、ターゲットを絞った予防および介入戦略に役立てるため、脆弱な集団を特定することを目指し、本研究を実施した。Nutrients誌2025年5月4日号の報告。

日本人大腸がんの半数に腸内細菌が関与か、50歳未満で顕著/国がんほか

 日本を含む11ヵ国の大腸がん症例の全ゲノム解析によって発がん要因を検討した結果、日本人症例の50%に一部の腸内細菌から分泌されるコリバクチン毒素による変異シグネチャーが認められた。これらの変異シグネチャーは50歳未満の若年者において高頻度に認められ、高齢者と比較して3.3倍多かった。この報告は、国立がん研究センターを含む国際共同研究チームによるもので、Nature誌オンライン版2025年4月23日号に掲載された。  本研究は、世界のさまざまな地域におけるがんの全ゲノム解析を行うことで、人種や生活習慣の異なる地域でがんの発症頻度に差がある原因を解明し、地球規模で新たな予防戦略を進めることを目的としている。今回は、大腸がん症例の全ゲノム解析データから突然変異を検出し、複数の解析ツールを用いて変異シグネチャーを同定した。その後、地域ごと、臨床背景ごとに変異シグネチャーの分布に有意差があるかどうかを検討した。

中耳炎の治療、将来は抗菌ゲルの単回投与で済むかも?

 中耳炎に罹患した幼児の面倒を見た経験のある親なら、症状の治りにくさや再発のしやすさを知っているだろう。小児の中耳炎では、通常は数日間に及ぶ経口抗菌薬を用いた治療が行われるが、耐性菌が発生しやすく、再発リスクも高い。こうした中、ゲル状の外用抗菌薬の単回投与により中耳炎を効果的に治療できる可能性のあることが動物実験で明らかになった。米コーネル大学R.F.スミス化学・生体分子工学科のRong Yang氏らによるこの研究結果は、「ACS Nano」4月8日号に掲載された。

食生活の質は初潮を迎える年齢に影響する

 何を食べるかが、女児の初潮を迎える年齢に影響を与えるようだ。新たな研究で、食生活の炎症レベルが最も高かった女児では最も低かった女児に比べて、翌月に初潮を迎える可能性が約15%高いことが示された。この結果は、身長やBMIで調整後も変わらなかったという。米フレッド・ハッチンソンがんセンターのHolly Harris氏らによるこの研究の詳細は、「Human Reproduction」に5月6日掲載された。  この研究は、9〜14歳の米国の小児を対象にした追跡調査研究であるGrowing Up Today Study(GUTS)に1996年と2004年に参加した女児のうち、ベースライン時に初潮を迎えておらず、食生活の評価など必要なデータの完備した7,530人を対象にしたもの。参加者は初潮を迎える前に、9〜18歳の若者向けの食品摂取頻度調査(youth/adolescent food frequency questionnaire;YAQ)に回答しており、追跡期間中(2001〜2008年)に初潮を迎えた場合には、その年齢を報告していた。

不定愁訴、魚介類の摂取不足が原因か

 女性は男性よりも原因不明の体調不良(不定愁訴)を訴える可能性が高い。今回、日本の若い女性における不定愁訴と抑うつ症状の重症度が、魚介類の摂取量と逆相関するという研究結果が報告された。研究は和洋女子大学健康栄養学科の鈴木敏和氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に4月3日掲載された。  不定愁訴は、器質的な疾患背景を伴わない、全身の倦怠感、疲労感、動悸、息切れ、脳のもやもやなどの症状を指す。これらの症状は、検査で原因が特定できない場合が多く、心身のストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられている。過去50年間に行われた様々な横断研究より、不健康なライフスタイルとそれに伴う栄養摂取の影響が不定愁訴に関連することが報告されている。しかし、不定愁訴と特定の食品、栄養素との関連は未だ明らかにされていない。このような背景を踏まえ、著者らは不定愁訴および抑うつ症状を定量化し、これらの症状の重症度と関連する栄養素や食品を特定することを目的として、日本の若年女性を対象とした横断的調査を実施した。

抗ANGPTL4抗体、新たな脂質低下療法の可能性/Lancet

 完全ヒト化抗アンジオポエチン関連タンパク質4(ANGPTL4)抗体MAR001は、循環血中のトリグリセライドおよびレムナントコレステロールを安全かつ効果的に低下させ、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクを低減する有望な脂質低下療法となる可能性があることが、米国・Marea TherapeuticsのBeryl B. Cummings氏らが実施した「MAR001試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月15日号で報告された。  研究グループは、MAR001によるANGPTL4の阻害の包括的な安全性の評価を目的に、ヒトで初めての無作為化プラセボ対照単回増量投与第I相試験(2017年11月~2019年9月)および二重盲検無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験(2013年11月~2024年7月)を行った(Marea Therapeuticsの助成を受けた)。

コントロール不良の軽症喘息、albuterol/ブデソニド配合薬の頓用が有効/NEJM

 軽症喘息に対する治療を受けているが、喘息がコントロールされていない患者において、albuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる)単独の頓用と比較してalbuterol/ブデソニド配合薬の頓用は、重度の喘息増悪のリスクが低く、経口ステロイド薬(OCS)の年間総投与量も少なく、有害事象の発現は同程度であることが、米国・North Carolina Clinical ResearchのCraig LaForce氏らBATURA Investigatorsが実施した「BATURA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月19日号に掲載された。

NEJMに掲載された論文でも世界の標準治療に影響を与えるとは限らない?(解説:後藤信哉氏)

心筋梗塞と脳梗塞の病態には類似点が多い。心筋梗塞は冠動脈の動脈硬化巣破綻部位に形成される血栓が原因であるのに対して、脳梗塞の原因には塞栓症、微小血管障害などもあり複雑である。心筋梗塞により病態の似ているlarge-vessel occlusionによる脳梗塞が本研究の対象とされた。脳も心臓も虚血臓器に速やかに血液を灌流することが重要である。虚血の原因は血栓であるため、血栓溶解療法に期待が大きかった。しかし、心筋梗塞治療では血栓溶解療法の役割は残らなかった。病院への搬送に時間がかかる場合には救急車内にて血栓溶解療法を施行することも検討されたが、再灌流障害としての心室細動なども考えると、ともかくカテーテル治療のできる施設に素早く搬送することが何よりも重要との結論になった。

コーヒーは片頭痛予防に有効なのか?

 片頭痛は、不十分な薬物療法、不安、睡眠障害、うつ病、ストレスなど、さまざまなリスク因子の影響を受ける慢性的な神経疾患である。コーヒーは多様な生理活性作用が報告されており、急性片頭痛の症状緩和に役立つといわれているが、長期にわたる摂取を中止した場合、予期せぬ片頭痛の誘発につながる可能性がある。片頭痛患者の一部は、カフェインを潜在的な誘発因子として捉えているが、カフェインの片頭痛予防効果はいくつかの研究で示唆されている。コーヒーとその成分が片頭痛に及ぼす複雑な生理学的・薬理学的メカニズムは、依然として十分に解明されていない。中国・Shulan (Anji) HospitalのAyin Chen氏らは、コーヒーとその成分が片頭痛発症リスクに及ぼす影響を明らかにする目的で、メンデルランダム化(MR)解析を用いた調査を実施した。Neurological Research誌オンライン版2025年4月20日号の報告。

BRAF V600E変異mCRC、エンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6は新たな1次治療に(BREAKWATER)/ASCO2025

 BREAKWATERは、BRAF V600E変異転移大腸がん(mCRC)における、1次治療としてのエンコラフェニブ+セツキシマブ+化学療法と標準治療を比較評価する試験である。2025年1月に行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)では、主要評価項目の1つである奏効率(ORR)の主解析結果、全生存期間(OS)の中間解析結果の報告が行われ、ORRはEC+mFOLFOX6群が有意に高く(60.9%vs.40.0%)、OSのハザード比(HR)も0.47と大きな差が付いたことに注目が集まっていた。これまでの本試験の報告に基づき、本レジメンはBRAF V600E変異mCRCに対し、米国食品医薬品局(FDA)から1次治療を含む早期承認を取得している。

全医師が遭遇しうる薬剤性肺障害、診断・治療の手引き改訂/日本呼吸器学会

 がん薬物療法の領域は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場し、目覚ましい進歩を遂げている。しかし、これらのなかには薬剤性肺障害を惹起することが知られる薬剤もあり、薬剤性肺障害が注目を集めている。そのような背景から、2025年4月に『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き第3版2025』が発刊された。本手引きは、2018年以来の改訂となる。本手引きの改訂のポイントについて、花岡 正幸氏(信州大学病院長/信州大学学術研究院医学系医学部内科学第一教室 教授)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。

センサー搭載のマスクが呼気から慢性腎臓病を検出

 特殊な呼気センサーを搭載した改良型医療用マスクにより、マスク着用者が慢性腎臓病(CKD)であるか否かを正確に判定できる可能性があるようだ。研究では、アンモニアやエタノールなどのCKDに関連する代謝物を検知するセンサー搭載のこのマスクにより、CKD患者と非CKD患者を正確に区別できたという。ローマ・トル・ヴェルガータ大学(イタリア)のAnnalisa Noce氏らによるこの研究の詳細は、「ACS Sensors」に5月7日掲載された。  米国でのCKD患者数はおよそ3500万人と推定されているが、CKDに気が付いていない潜在的な患者も含めると、それ以上に上るとみられている。腎臓は、血液を濾過して余分な水分や老廃物を尿として排泄する役割を担っている。しかし、腎機能が低下すると、老廃物が十分に排出されずに体内に蓄積する。

尿検査で腎臓がん手術後の再発を検出

 尿中グリコサミノグリカンプロファイル(GAGome)は遠隔転移のない淡明細胞型腎細胞がん(M0ccRCC)の手術後の再発に高い感度を示すことが確認されたとする研究結果が、欧州泌尿器科学会議(EAU 25、3月21〜24日、スペイン・マドリード開催)で発表された。  ルンド大学(スウェーデン)のSaeed Dabestani氏らは、Leibovichスコアが5以上のM0ccRCC患者を対象に多施設共同前向きコホート研究を実施し、手術後の再発検出におけるGAGomeの有用性を評価した。スクリーニングを受けた393人の患者のうち、134人が適格基準を満たした。対象者は、手術後の標準的な画像検査により最長18カ月まで放射線学的再発の評価を受け、尿中GAGomeも3カ月ごとに測定された。

突然の心停止の最大のリスクは生活習慣

 生活習慣や環境関連のリスク因子をコントロールすることで、突然の心停止(SCA)の約3分の2を予防できる可能性があるという研究結果が、「Canadian Journal of Cardiology」に4月28日掲載された。復旦大学(中国)のRenjie Chen氏らの研究によるもの。論文の上席著者である同氏は、「リスク因子に対処することで、多くのSCAを予防し得るという結論に驚いている」と語っている。  SCAは致死率が高く、かつ予測が困難なため、世界的に主要な死亡原因の一つとなっている。SCAのリスク因子に関するこれまでの研究の多くは仮説主導型という研究手法で行われていて、この手法では事前に定義された仮説に含まれていない因子の発見が難しい。これを背景にChen氏らは、英国で行われている住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを利用し、エクスポソームワイド関連研究(EWAS)やメンデルランダム化(MR)解析という、仮説に依存せずリスク因子を探索する手法による研究を行った。

重症大動脈弁狭窄症、supra-annularの自己拡張弁は非劣性を示せず/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、ACURATE neo2は既存の市販弁と比較し、主要複合エンドポイント(1年時の全死因死亡、脳卒中、再入院)に関して非劣性基準を満たさなかった。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのRaj R. Makkar氏らACURATE IDE study investigatorsが、米国とカナダの71施設で実施した無作為化非劣性試験「ACURATE IDE試験」の結果を報告した。ACURATE neo2は、オープンセル構造でsupra-annularタイプの自己拡張型経カテーテル大動脈弁であり、50ヵ国以上で販売されているが、これまで無作為化試験による評価は実施されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年5月21日号掲載の報告。

肺サルコイドーシスの1次治療、メトトレキサートvs. prednisone/NEJM

 未治療の肺サルコイドーシス患者おいて、メトトレキサートはprednisoneに対して、ベースラインから24週時までの%FVC(努力肺活量[FVC]の予測値に対する実測値の割合)の変化量に関して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス医療センターのVivienne Kahlmann氏らが同国17施設で実施した無作為化非盲検非劣性試験「PREDMETH試験」の結果を報告した。prednisoneは現在、肺サルコイドーシスの第1選択治療薬として推奨されているが、多くの副作用を伴うことがある。一方、第2選択治療薬として推奨されているメトトレキサートは、prednisoneより副作用は少ないが、作用発現が遅いとされている。肺サルコイドーシスの1次治療として、メトトレキサートの有効性および副作用プロファイルをprednisoneと比較したデータが必要とされていた。著者は、「副作用プロファイルの違いは、医療従事者と患者による治療選択に関する共同意思決定に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年5月18日号掲載の報告。

抗精神病薬の過剰治療はどう変化しているのか

 抗精神病薬による過剰治療は、副作用の観点から重要な懸念事項である。これまでの研究では、抗精神病薬の多剤併用や過剰な高用量投与に焦点が当てられてきた。オランダ・フローニンゲン大学のStijn Crutzen氏らは、潜在的な過剰治療、抗精神病薬の多剤併用、抗精神病薬の総投与量、主観的な副作用の負担について、経時的な変化をマッピングし、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を調査するため、長期ケアを受けている患者を対象とした自然主義的コホート研究のデータを解析した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2025年5月7日号の報告。  自然主義的縦断的コホート研究であるPHAMOUS調査のデータ(2013~21年)を用いた。潜在的な過剰治療の定義は、リスペリドン換算5mg超の抗精神病薬投与量、または高い主観的な副作用の負担を伴う抗精神病薬の多剤併用とした。潜在的な過剰治療、多剤併用、総投与量、主観的な副作用の負担における傾向を調査し、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を評価するため、混合効果モデルを用いた。

中年期に運動量を増やすとアルツハイマー病のリスクが低下する

 中年期に運動量を増やすことが、後年のアルツハイマー病(AD)のリスク低下につながることを示唆するデータが報告された。バルセロナ国際保健研究所(スペイン)のMuge Akinci氏らの研究によるもので、詳細は「Alzheimer’s & Dementia」に4月30日掲載された。  運動習慣がADのリスクを低下させる可能性のあることは既に知られていて、ADの13%は運動不足が関与して発症するという報告もある。しかし、中年期の運動習慣の変化が高齢期のADのリスクに、どのような影響を及ぼすのかは明らかになっていない。Akinci氏らはこの点について、スペインにおけるADの患者と家族に関する研究(ALFA研究)のデータを用いた縦断的解析を行った。

人類の存続に必要な出生率とは?

 テスラ社のCEOで、少なくとも14人の子どもの父親であるイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、出生率の低下は「人類存続の危機である」と警告し、話題を呼んだ。新たな研究によれば、この脅威はマスク氏の警告よりさらに深刻かもしれない。人口が長期的に増減することなく一定に保たれる水準(人口置換水準〔replacement level fertility;RLF〕)はこれまで女性1人当たり2.1人と考えられていたが、新たな研究で、それよりも高い2.7人であることが示唆された。フィリピン大学ロスバニョス校のDiane Carmeliza Cuaresma氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に4月30日掲載された。

世界の主要な20の疾病負担要因、男性の健康損失が女性を上回る

 2021年の世界疾病負担研究(GBD 2021)のデータを用いた新たな研究で、女性と男性の間には、疾病負担の主要な20の要因において依然として格差が存在し、過去30年の間にその是正があまり進んでいないことが示された。全体的に、男性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や交通事故など早期死亡につながる要因の影響を受けやすいのに対し、女性は筋骨格系の疾患や精神障害など致命的ではないが長期にわたり健康損失をもたらす要因の影響を受けやすいことが示されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のVedavati Patwardhan氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Public Health」5月号に掲載された。