日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1020

被災地の医療従事者が必要としている情報に、福島と岩手で違いあり

 ファイザーは20日、東日本大震災の被災地に向けた支援のひとつとして、昨年7月から被災者へのPTSD(Post-traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)の治療を支援することを目的として日本トラウマティック・ストレス学会と共同で展開している「東日本大震災 こころのケア支援プロジェクト」活動報告のまとめを発表した。

うつ病は高血圧発症の危険因子か?

長い間、うつと高血圧の関連していることは知られていたが、うつ病が高血圧発症の危険因子であるかどうかは不明であった。中国 吉林省の吉林大学第一病院のMeng氏らは、観察研究のメタアナリシスの結果、うつ病が高血圧発症の独立した危険因子である可能性が高いことを発表した。Meng氏は「高血圧症の予防と治療においてうつ病を考慮することが重要である」と言及している。

心血管イベントリスクの予測に「仮面高血圧」は必要か?

フィンランドの一般住民を対象とした観察研究「Finn-Home Stydy」によると、白衣高血圧、仮面高血圧は正常血圧者より心血管疾患発症、死亡のリスクが高くなるものの、家庭血圧値および従来から知られている危険因子で調整した場合、有意な予後予測因子とはならないようだ。筆頭著者のHanninen氏は「心血管系リスクを層別化するには、家庭血圧値と従来の危険因子を用いれば十分である」と結論づけている。

高血圧患者、上腕収縮期血圧の左右差10mmHg以上で死亡リスクが3倍以上に

高血圧症患者の上腕収縮期血圧の左右差が10mmHg以上ある人は、全死因死亡リスクが3倍以上増大するという。英国Exeter大学のChristopher E Clark氏らが、高血圧症の治療を受ける230例を約10年間追跡して明らかにした。同左右差は、心血管イベントや心血管死リスクの増大にも関与しており、Clark氏は、「同左右差は、心血管リスク増大の有用なインジケーターとなり得る」と結論している。BMJ誌2012年4月7日号(オンライン版2012年3月20日号)掲載報告より。

日本の経済不況期、男性管理職、専門・技術職の死亡率、自殺率が急上昇

1990年代後半以降、日本の男性管理職や専門・技術職の死亡率、自殺率が急激に上昇し、その他の職種を上回るという西欧諸国の定説とは異なるパターンが出現したことが、北里大学医学部公衆衛生学の和田耕治氏らの調査で明らかとなった。日本の保健医療は現在、1990年代以降の長引く景気低迷により、特に労働年齢男性で危機的状況にあり、これは男性における高い自殺率で特徴づけられる。一方、この間の職種別の死亡率の傾向はほとんど知られていないという。BMJ誌2012年4月7日号(オンライン版2012年3月6日号)掲載の報告。

現金給付プログラム、就学中の若年女性のHIV、HSV-2感染を抑制

現金給付プログラムは、低所得層の就学若年女性においてHIVおよび単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)の感染を抑制するが、すでに退学している場合は効果がないことが、米国・ジョージ・ワシントン大学のSarah J Baird氏らがアフリカで行った調査で示された。世界のHIV感染者の3分の2がサハラ砂漠以南の地域に居住しており、その60%が女性だ。世界の新規感染者の45%が15~24歳の若年者であり、この年齢層の感染率は女性が男性の2倍以上だという。教育の不足や男性への経済的依存が、女性のHIV感染の重大なリスク因子であることが示唆されている。Lancet誌2012年4月7日号(オンライン版2012年2月15日号)掲載の報告。

薬剤師主導の介入により、プライマリ・ケアでの投薬過誤が低減

薬剤師の主導による情報技術ベースの介入により、プライマリ・ケアにおける投薬過誤が有意に低減することが、英国・ノッティンガム大学プライマリ・ケア科のAnthony J Avery氏らが実施したPINCER試験で示された。専門医の領域では、投薬の意志決定のサポートや医師の処方オーダーが電子化されるなど、投薬過誤防止における大きな進展がみられるが、プライマリ・ケアの現場では投薬の過誤が生じており、患者に重大な被害をもたらす場合がある。投薬過誤を抑制する有望な方法として、薬剤師主導の介入の有用性が示唆されているという。Lancet誌2012年4月7日号(オンライン版2012年2月21日号)掲載の報告。

ニューモシスチス肺炎治療薬「サムチレール内用懸濁液」発売

 グラクソ・スミスクラインは17日、同社のニューモシスチス肺炎治療薬「サムチレール内用懸濁液15%」(一般名:アトバコン、以下サムチレール)が薬価収載されたことを受け、同日より発売したことを発表した。  サムチレールは、酵母様真菌であるニューモシスチス・イロベチーのミトコンドリア電子伝達系を選択的に阻害することにより抗ニューモシスチス活性を示すアトバコンを有効成分とするニューモシスチス肺炎治療・発症抑制薬。サムチレールはニューモシスチス肺炎治療の第一選択薬であるスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤(ST合剤)の使用が副作用により困難な患者の治療の選択肢となるという。しかし、HIV感染患者におけるニューモシスチス肺炎の治療および発症抑制のために投薬される場合に限り、特例的に発売時より14日間の投薬期間制限が対象外となる。

がん診断後に、自殺、心血管死が増大:スウェーデン

スウェーデン人約600万人を対象とした大規模なヒストリカル・コホート研究の結果、がんとの診断を受けた人は、受けなかった人と比べて、自殺および心血管系の死亡が増大することが明らかにされた。スウェーデン・Karolinska InstitutetのFang Fang氏らの報告で、NEJM誌2012年4月5日号で発表された。がんと診断されることは、精神的外傷となる経験であり、がんという疾患やその治療による影響以上に、差し迫った有害な影響をもたらす可能性が指摘されていた。

肺塞栓症に対するリバーロキサバン、標準療法に非劣性

肺塞栓症の初期治療および長期治療に対する、経口第Xa因子阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の固定用量レジメンは、標準的な抗凝固療法との比較で非劣性であり、ベネフィット対リスク特性が改善されていることが報告された。EINSTEIN–Pulmonary Embolism(PE)Study研究グループの検討報告で、NEJM誌2012年4月5日号(オンライン版2012年3月26日号)で発表された。リバーロキサバンの固定用量レジメンは、検査室監視が不要で、効果は深部静脈血栓症治療の標準的な抗凝固療法と同程度であることが示されていた。そこで、肺塞栓症の治療をシンプルにする可能性があることから検討が行われた。

フルオロキノロン系薬の網膜剥離発症リスクを検討

 経口フルオロキノロン系薬服用中は、網膜剥離発症リスクが約4.5倍に増大することが報告された。一方で1週間以内、1年以内の使用歴は同リスクを増大しないことも示されている。カナダ・Child and Family Research Institute of British ColumbiaのMahyar Etminan氏らが、約99万人を対象としたコホート内症例対照研究の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月4日号で発表した。フルオロキノロン系薬の眼毒性については、多くの症例報告があるものの、網膜剥離発症リスクとの関連についての研究報告はこれまでほとんど行われていなかったという。

マンモグラフィに超音波やMRIを追加すると?

乳がん検出のため、マンモグラフィ検査に超音波検査やMRIを追加実施すると、乳がん検出の感受性は向上することが示された。ただし、疑陽性所見も増大する。米国Magee-Womens HospitalのWendie A. Berg氏らが、乳がんハイリスクの女性約2,800人について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月4日号で発表した。マンモグラフィでは見つからない小さなリンパ節陰性乳がんも、年1回の超音波スクリーニングで検知可能とされ、さらにMRIは、マンモグラフィと超音波スクリーニングでは検出不可能な乳がんを見つけられる可能性があるとされる。Berg氏らは、それらを踏まえて本検討を行った。

イグザレルト 肺塞栓症治療と深部静脈血栓症、PE再発抑制の適応症に関し、欧州連合の製造販売承認を申請

独バイエル ヘルスケア社は12日、経口抗凝固剤イグザレルト(リバーロキサバン)を成人における肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)の治療、ならびに深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)およびPEの再発抑制の適応症で、欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)に製造販売承認申請を行ったと発表した。リバーロキサバンは、静脈・動脈血栓症の主要な領域の大部分で、すでに承認されている。

がんでアルツハイマー病のリスクが低下?

がん患者はアルツハイマー病のリスクが低く、アルツハイマー病患者はがんのリスクが低下するという逆相関の関係がみられることが、米ボストン退役軍人医療センターのJane A Driver氏らの検討で示された。パーキンソン病ではがんのリスクが低減し、がんと神経変性疾患は遺伝子や生物学的経路を共有することが示されている。がんとアルツハイマー病の発症は逆相関することが示唆されているが、この関係はがんサバイバーに限定的な死亡の結果(アルツハイマー病発症年齢に達する前に死亡)なのか、それともアルツハイマー病患者におけるがんの過小診断(重度認知障害患者ではがん症状の検査が少ない)によるものかは不明だという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。