日本語でわかる最新の海外医学論文|page:75

コロナワクチン接種後心筋炎とコロナ感染後心筋炎の18ヵ月後予後〜関心はさらに長期的予後に(解説:甲斐久史氏)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、COVID-19 mRNAワクチン接種と抗SARS-CoV-2ウイルス薬の普及、さらには急性期における重症化予防と重症例治療法の確立により、パンデミックの収束を迎え、いまやCOVID-19と共生する時代“Withコロナ時代”となった。今後は、感染者の10〜20%に長期間認められる罹患後症状(PCC:post-COVID-19 condition)をはじめ、未知の後遺症など長期的・超長期的影響が大きな課題となる。その1つが、COVID-19罹患後心筋炎やCOVID-19ワクチン接種後心筋炎である。

入院中の高齢者におけるせん妄が長期的な認知症リスクに及ぼす影響

 これまでの研究において、せん妄と認知症との関連性が示唆されているが、その多くは術後環境においての検討である。韓国・亜洲大学のGyubeom Hwang氏らは、幅広いリアルワールドデータを活用し、入院患者におけるせん妄とその後の認知症との関連を評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。The American Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2024年8月21日号の報告。  韓国の医療機関9施設より抽出された60歳以上の入院患者1,197万475例を対象に、分析を行った。せん妄の有無を特定し、傾向スコアマッチング(PSM)を用いて比較可能なグループを作成した。10年間の縦断分析を行うため、Cox比例ハザードモデルを用いた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。すべての結果を集約し、メタ解析を実施した。さまざまなサブグループ解析および感度分析を実施し、各条件における結果の一貫性を評価した。

電子処方箋発行時の電子署名、必要な準備や認証方法は?/厚労省

 電子処方箋が2023年1月から開始された。患者のリアルタイムな処方・調剤結果情報が確認できるとともに、システムチェックによる重複薬や併用禁忌薬の投薬回避が可能になることなどが期待されている。薬局の電子処方箋システムの導入が先行し、その多くの薬局で紙の処方箋も含めて調剤結果情報の登録がされ、これら情報の活用はされつつある。一方、より安心・安全な医療となるメリットはすべての医療機関が導入することで最大化されるが、病院や診療所の導入率はまだ低い。今回は、電子処方箋の現状とメリット、電子処方箋発行時に必要となる電子署名、電子署名も関係する医療DX推進体制整備加算などについて、厚生労働省電子処方箋サービス推進室の長嶋 賢太氏に話を聞いた。

学校健診の留意点「検診項目追加は事前に打ち合わせを」/日医

 日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、9月25日の定例記者会見で、文部科学大臣へ「学校保健の更なる充実のための提言と要望」を提出し、文部科学省と日本医師会の共同で「学校健康 診断実施上の留意点」を作成したことを報告した。 「学校保健の更なる充実のための提言と要望」では、将来を担う子供たちの健康を増進する学校保健の重要性を踏まえ、下記の3点について検討を要望した。

EGFR exon19挿入変異NSCLCへのEGFR-TKI、第1~3世代の効果は?/WCLC2024

 EGFR遺伝子exon19挿入変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、第2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が有効であることが示唆された。EGFR-TKIの登場により、主要なEGFR遺伝子変異(exon21 L858R、exon19欠失変異)を有するNSCLC患者の予後は改善している。しかし、uncommon変異を有するNSCLC患者に対するEGFR-TKIの有効性はさまざまであり、希少変異であるexon19挿入変異に対する有効性は明らかになっていなかった。そこで、上原 悠治氏、泉 大樹氏(国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)らの研究グループは、遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」において、NSCLC患者のEGFR遺伝子exon19挿入変異の発現割合およびEGFR-TKIの有効性を検討した。本研究結果は、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)において発表された。

国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査ヘムサイトの承認取得/大塚

 大塚製薬は2024年9月20日、同社と国立がん研究センターが共同設計し、国立がん研究センター、九州大学、京都大学、名古屋医療センター、東京大学医科学研究所附属先端医療研究センター、慶應義塾大学医学部との共同研究コンソーシアムにて開発した造血器腫瘍遺伝子パネル検査ヘムサイトについて、国内における製造販売承認を取得したと発表。今後、保険適用の手続きを行い、発売に向けた準備を進める。  がん遺伝子パネル検査は、固形腫瘍を対象としたものがすでに保険適用されているが、造血器腫瘍では製造販売承認されたものはなく、保険診療下でのがんゲノム医療が実施できていない。

インフルワクチンがCVD患者の予後を改善~メタ解析

 心血管疾患患者では、インフルエンザワクチンの接種は全死亡、心血管死および脳卒中の低下と関連していることが、米国・Lehigh Valley Heart and Vascular Institute のRahul Gupta氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析で明らかになった。Cardiology in Review誌2024年9・10月号掲載の報告。  これまでの研究により、インフルエンザの予防接種を受けた高齢者では急性心筋梗塞のリスクが下がる可能性や、急性冠症候群治療中のインフルエンザワクチン接種によって心血管転帰が改善する可能性が報告されるなど、インフルエンザワクチン接種による心保護効果が示唆されている。そこで研究グループは、心血管疾患患者におけるインフルエンザワクチン接種による心血管系疾患の予防効果に関するエビデンスを深めるために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、最終OS結果(KEYNOTE-522)/NEJM

 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前補助療法およびペムブロリズマブ単独による術後補助療法は、術前化学療法単独と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長した。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らKEYNOTE-522 Investigatorsが、21ヵ国181施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「KEYNOTE-522試験」の結果を報告した。KEYNOTE-522試験では、プラチナ製剤を含む化学療法にペムブロリズマブを追加することで、病理学的完全奏効(pCR)率と無イベント生存期間(EFS)が有意に改善することが示されており、今回はOSについての最終結果が報告された。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

複雑病変へのPCI、OCTガイドvs.血管造影ガイド/Lancet

 複雑病変に対し薬剤溶出ステント(DES)の留置が必要な患者において、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管造影ガイド下PCIと比較し、1年後の主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が有意に低下した。韓国・延世大学校のSung-Jin Hong氏らが、同国20病院で実施した医師主導の無作為化非盲検優越性試験「Optical Coherence Tomography-guided Coronary Intervention in Patients with Complex Lesions trial:OCCUPI試験」の結果を報告した。PCI施行中にOCTは詳細な画像情報を提供するが、こうした画像診断技術の臨床的有用性は不明であった。Lancet誌2024年9月14日号掲載の報告。

重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の有効性(解説:小金丸博氏)

入院を要する重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の有効性を評価したシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果が、Lancet誌2024年8月24日号に報告された。評価対象としたアウトカムは、症状改善までの期間、入院期間、ICU入院、侵襲的機械換気への移行、機械換気の期間、死亡、退院先、抗ウイルス薬耐性の発現、有害事象、治療関連有害事象、重篤な有害事象に設定された。季節性インフルエンザによる入院期間は、オセルタミビル(平均群間差:-1.63日、95%信頼区間:-2.81~-0.45)およびペラミビル(-1.73日、-3.33~-0.13)投与において有意な短縮を認めたものの、エビデンスの確実性は「低(low)」であった。ランダム化比較試験のデータが乏しく、死亡率など重要な患者の転帰に及ぼす効果について確実性の高いエビデンスは得られなかった。

転移を有するホルモン感受性前立腺がん、ダロルタミド+ADTがrPFS改善(ARANOTE)/ESMO2024

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対して、ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)の併用療法が、プラセボ+ADTと比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)の有意な改善を示した。カナダ・モントリオール大学のFred Saad氏が、国際共同第III相ARANOTE試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。同患者に対しては、第III相ARASENS試験において、ダロルタミドをADT+ドセタキセルに加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して全生存期間(OS)を有意に改善している。

日本人治療抵抗性うつ病に対するケタミン治療の有用性~二重盲検ランダム化比較試験

 治療抵抗性うつ病(TRD)に対しケタミンが抗うつ効果をもたらすことは、北米や欧州各国から頻繁に報告されているが、アジア人患者におけるエビデンスは、これまで十分ではなかった。慶應義塾大学の大谷 洋平氏らは、日本人TRD患者におけるケタミン静脈内投与の有効性および安全性を評価するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年8月30日号の報告。  TRDの日本人患者34例を対象に、ケタミン群(0.5mg/kg)またはプラセボ群にランダムに割り付け、2週間にわたり週2回、40分間静脈内投与を行った。主要アウトカムは、ベースラインから治療終了までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの変化とした。副次的アウトカムは、その他のうつ病症状スコア、寛解率、治療反応率、部分反応率などであった。また、ベースライン時の臨床人口統計学的特性とMADRS合計スコアの変化との関連も調査した。

サシツズマブ ゴビテカン、トリプルネガティブ乳がんに承認/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年9月24日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における製造販売承認を取得したと発表した。  今回の承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンと医師選択治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

アミバンタマブ、化学療法との併用でEGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんに承認/ヤンセン

 Johnson & Johnson (法人名:ヤンセンファーマ)は2024年9月24日、アミバンタマブ(商品名:ライブリバント)と化学療法(カルボプラチンおよびペメトレキセド)の併用療法について、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の効能又は効果で、日本における製造販売承認を取得したと発表。  今回の承認は、化学療法歴のないEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者を対象に、アミバンタマブと化学療法との併用による有効性と安全性を化学療法群と比較する第III相PAPILLON試験の結果に基づくものである。

患者満足度向上対策をクリニックの6割が実施/医師1,000人アンケート

 クリニックや病院などの医療機関を受診する際、どのような基準で選択するのだろう。いつもの「かかりつけ医」ならともかく、新しい医療機関を受診する場合、最近では、WEB上での「口コミ」なども参考にしている患者さんも多い。医療機関、とくにクリニックなどでは、この口コミを良くするために、さまざまな対策を実施している。そこで、今回0~19床に所属する会員医師1,000人に自院の患者満足度向上対策やその課題について聞いた。

肛門扁平上皮がん1次治療、新規抗PD-1抗体上乗せが有用(POD1UM-30)/ESMO2024

 肛門管扁平上皮がん(SCAC)は、肛門がんの主要なリスク因子であるHPVウイルス感染の増加などを背景に、患者が増加傾向にある。新たな抗PD-1抗体であるretifanlimab単剤療法は、化学療法で進行したSCAC患者において抗腫瘍活性を示すことが報告されている。未治療の進行SCAC患者を対象に、retifanlimabの標準化学療法への追加投与を評価するPOD1UM-303試験が行われ、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)Presidential Symposiumで、英国・Royal Marsden HospitalのSheela Rao氏が初回解析結果を発表した。 ・試験デザイン:第III相二重盲検比較試験 ・対象:手術不適、化学療法未治療の局所再発/転移SCAC患者 ・試験群:retifanlimab 500mgを4週ごと6サイクル(最長1年)+標準化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)6ヵ月

急性心筋梗塞による心原性ショック、MCSデバイス使用は有益か/Lancet

 急性心筋梗塞による心原性ショック(AMICS)の患者に対する積極的な経皮的機械的循環補助(MCS)デバイスの使用は、6ヵ月死亡を抑制せず、大出血および血管合併症を増加したことが、ドイツ・ライプチヒ大学ハートセンターのHolger Thiele氏らMCS Collaborator Scientific Groupが行った個別患者データのメタ解析の結果で示された。ただし、低酸素脳症のリスクがないST上昇型心筋梗塞(STEMI)による心原性ショックの患者では、MCS使用後に死亡率の低下が認められた。積極的な経皮的MCSは、死亡への影響に関して相反するエビデンスが示されているにもかかわらず、AMICS治療での使用が増加しているという。

膀胱がんへの周術期デュルバルマブ併用、EFS・OSを改善(NIAGARA)/NEJM

 膀胱全摘除術が可能な筋層浸潤性膀胱がんにおいて、術前化学療法への周術期デュルバルマブ併用は、術前化学療法単独の場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)と全生存期間(OS)の有意な改善をもたらしたことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らNIAGARA Investigatorsによる第III相非盲検無作為化試験で示された。術前化学療法に続く膀胱全摘除術は、シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱がん患者における標準治療だが、周術期免疫療法の追加によりアウトカムを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

HFpEFに2番目のエビデンスが登場―非ステロイド系MRAの時代が来るのか?(解説:絹川弘一郎氏)

ESC2024はHFpEFの新たなエビデンスの幕開けとなった。HFpEFに対する臨床試験はCHARM-preserved、PEP-CHF、TOPCAT、PARAGONと有意差を検出できず、エビデンスのある薬剤はないという時代が続いた。CHARM-preservedはプラセボ群の一部にACE阻害薬が入っていてなお、プライマリーエンドポイントの有意差0.051と大健闘したものの2003年時点ではmortality benefitがない薬剤なんて顧みられず、PEP-CHFはペリンドプリルは1年後まで順調に予後改善していたのにプラセボ群にACE阻害薬を投与される例が相次ぎ、2年後には予後改善効果消失、TOPCATはロシア、ジョージアの患者のほとんどがおそらくCOPDでイベントが異常に少なく、かつ実薬群に割り付けられてもカンレノ酸を血中で検出できない例がロシア人で多発したなど試験のqualityが低かった、PARAGONではなぜか対照にプラセボでなくARBの高用量を選んでしまうなど、数々の不運または不思議が重なってきた。

初発統合失調症患者の約40%が治療抵抗性の可能性あり

 初回エピソード統合失調症(FES)患者における治療抵抗性統合失調症(TRS)の有病率は、国際的およびオーストラリア国内で十分に調査されていない。オーストラリア・Graylands HospitalのMirza Detanac氏らは、FES患者コホートにおけるTRSの有病率を評価し、TRS患者の社会人口学的および臨床的特徴について、治療反応が認められたFES患者との比較を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年8月28日号の報告。  2020年10月、西オーストラリアの早期精神疾患介入サービス(EPIS)4施設において、統合失調症と診断されたすべての患者(ICD-10)の人口統計学的、臨床的、治療関連のデータを2年にわたり収集した。TRSの診断には、慶應義塾大学の鈴木 健文氏らが2012年に報告したTRSの修正版診断基準を用いた。データ分析は、記述統計、マン・ホイットニーのU検定、Studentのt検定、False-Discovery Rateモデルを用いた。