抗精神病薬に伴うプロラクチン上昇は、統合失調症患者の服薬アドヒアランスおよび長期治療アウトカムに重大な影響を及ぼす。現在入手可能なデータでは、抗精神病薬を服用している患者におけるプロラクチン上昇のモニタリングとマネジメントを実践するには、不十分である。中国・上海交通大学のLei Zhang氏らは、実臨床における9種類の第2世代抗精神病薬(SGA)に関連するプロラクチン上昇パターンを調査し、プロラクチン上昇リスクを比較するため、本研究を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月19日号の報告。
2007〜19年の中国の大規模メンタルヘルスセンターの入院患者における電子カルテのデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、統合失調症と診断され(ICD-10基準)、SGA治療を行い、血清プロラクチン値を測定した患者。9種類のSGA(amisulpride、リスペリドン、パリペリドン、ziprasidone、オランザピン、ペロスピロン、クエチアピン、クロザピン、アリピプラゾール)の多剤併用療法および単剤療法を含む投与量を収集した。主要アウトカムは、入院患者におけるプロラクチン上昇の発現率とした。9種類のSGAにおけるプロラクチン上昇のハザード比(HR)を比較するために、調整層別Cox比例ハザード回帰分析を用いた。さらに、これらのSGAについて、規定1日用量(DDD)法を用いて用量反応解析を実施した。用量区分は、0.6DDD/日未満(低用量)、0.6~1.1DDD/日未満(中用量)、1.1DDD/日以上(高用量)とした。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象者数は、統合失調症患者6,489例(平均年齢:35.1±14.2歳、男性患者数:3,396例[52.3%])。
・非曝露群と比較し、プロラクチン上昇リスクと最も高い関連性が認められたSDAは、amisulpride(HR:2.76、95%信頼区間[CI]:2.12〜3.59)、リスペリドン(HR:2.70、95%CI:2.30〜3.16)、パリペリドン(HR:1.84、95%CI:1.37〜2.46)、ziprasidone(HR:1.36、95%CI:1.06〜1.76)であった。
・対照的に、クエチアピン(HR:0.73、95%CI:0.61〜0.87)、クロザピン(HR:0.59、95%CI:0.46〜0.76)、アリピプラゾール(HR:0.30、95%CI:0.23〜0.37)は、リスクが低かった。
・男性患者ではamisulprideが最もリスクが高く、女性患者ではリスペリドンが最もリスクが高かった。
・7種類のSGAにおいて、異なるタイプの用量反応関係が検出された。
著者らは「入院患者を対象とした本コホート研究により、SGAに関連するプロラクチン上昇の異なるリスクと、それぞれの用量反応曲線が明らかになった。SGA治療を行なっている統合失調症患者におけるプロラクチン上昇の分析においては、性別と年齢を考慮する必要がある」とまとめている。
(鷹野 敦夫)