肺動脈性肺高血圧症(PAH)の診断から1年未満の成人において、基礎療法へのソタテルセプト追加により、プラセボと比較し臨床的悪化のリスクが低下した。米国・University of Michigan Medical SchoolのVallerie V. McLaughlin氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験「HYPERION試験」の結果を報告した。アクチビンシグナル伝達阻害薬ソタテルセプトは、長期にわたりPAHの悪化および死亡率を低下させることが示唆されているが、診断後1年未満のPAH患者における有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年9月30日号掲載の報告。
診断後1年未満の中~高リスクPAH患者が対象、主要エンドポイントは臨床的悪化
研究グループは、WHO機能分類クラスIIまたはIIIのPAH患者で、診断後1年未満、死亡リスクが中~高リスク(REVEAL Lite 2リスクスコア≧6またはCOMPERA 2.0スコア≧2)で、90日以上安定した2剤または3剤併用療法を受けている18歳以上の患者を、ソタテルセプト群(初回0.3mg/kg、2回目以降0.7mg/kgまで増量、21日ごとに皮下投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け上乗せ投与した。
主要エンドポイントは臨床的悪化(全死因死亡、PAHの悪化による24時間以上の予定外の入院、心房中隔欠損作成術、肺移植、またはPAHに起因する運動負荷試験成績悪化の複合)で、初回イベント発生までの時間を評価した。
なお、本試験は2022年4月8日より登録が開始されたが、先行するZENITH試験で有意な有効性が確認されたことから2025年1月30日に早期終了となり、その後233例が非盲検継続投与試験「SOTERIA試験」に移行した(最終移行日2025年4月3日)。
ソタテルセプトの上乗せで、プラセボと比較して臨床的悪化のリスクが76%低下
321例が無作為化され、うち1例は無作為化後に同意撤回し治験薬の投与を受けなかったことから、320例が解析対象集団となった(ソタテルセプト群160例、プラセボ群160例)。
追跡期間中央値13.2ヵ月において、主要エンドポイントのイベントが少なくとも1回発生した患者は、ソタテルセプト群17例(10.6%)、プラセボ群59例(36.9%)であった(ハザード比:0.24、95%信頼区間:0.14~0.41、p<0.001)。
PAHによる運動負荷試験成績悪化はソタテルセプト群8例(5.0%)、プラセボ群46例(28.8%)、PAH悪化による予定外の入院はそれぞれ3例(1.9%)および14例(8.8%)、全死因死亡はそれぞれ7例(4.4%)および6例(3.8%)が報告された。心房中隔欠損作成術ならびに肺移植が行われた患者はいなかった。
ソタテルセプト群の主な有害事象は、鼻出血(31.9%)および毛細血管拡張症(26.2%)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)