日本語でわかる最新の海外医学論文|page:503

うつ症状に対するポリフェノールの影響~システマティックレビュー

 うつ病は、世界中で3億5,000万人が罹患している気分障害である。最近の研究では、うつ病に対して食事が保護的な役割を果たすことが示唆されている。いくつかのシステマティックレビューでは、うつ症状の軽減に地中海スタイルの食事パターンが有望であることが報告されている。これは、食事の中に一般的に含まれるポリフェノールの含有量が多いことが要因であると推測されている。オーストラリア・シドニー工科大学のJessica Bayes氏らは、うつ症状に対する地中海スタイルの食事に含まれるポリフェノールの影響について評価を行った。Advances in Nutrition誌オンライン版2019年11月5日号の報告。

出産歴による乳がん検診開始年齢を検討/Eur J Cancer

 乳がんリスクに出産歴が影響することは認識されているが、現在の乳がん検診ガイドラインはこの因子によるリスクの違いが考慮されていない。乳がんリスクが高い女性は早期の検診が必要であることから、ドイツ・German Cancer Research CenterのTrasias Mukama氏らは、生殖プロファイルに基づくリスクに合った検診開始年齢を検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2019年11月21日号に掲載。  本研究は、1931年以降に生まれた509万9,172人のスウェーデン人女性の全国コホート研究。参加者におけるSwedish Cancer Registry、Multi-generation Register、Cause of Death Register、および国勢調査(1958~2015)の記録をリンクさせた。

再発・難治性慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫治療薬、ベネトクラクス発売/アッヴィ

 アッヴィ合同会社は、2019年11月22日、再発/難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療薬として、経口BCL-2阻害薬ベネトクラクス(商品名:ベネクレクスタ)を発売した。  ベネトクラクスはファーストインクラスの経口BCL-2阻害薬で、がん細胞で失われたアポトーシスの過程を回復させる作用がある。

TAVR後の弁尖可動性低下、抗血栓療法は有効か/NEJM

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)の成功後に、長期的な抗凝固療法の適応がない大動脈弁狭窄症患者では、無症候性の弁尖の動きの異常の予防において、リバーロキサバンベースの抗血栓治療戦略は、抗血小板薬ベースの治療戦略に比べ高い有効性を示すものの、死亡/血栓塞栓性イベントや大出血のリスクが高いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のOle De Backer氏らが行ったGALILEO-4D試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。4次元CTにより、TAVR後の人工生体弁における無症候性の弁尖肥厚および弁尖の可動性の低下が示されている。一方、これらの現象の改善に、抗凝固療法が有効かは知られていないという。

抗がん剤の臨床試験の厳密性を審査報告書と論文で比較した(解説:折笠秀樹氏)-1148

2014~16年にEMA(欧州医薬品庁)で認可された新規抗がん剤32品を対象にして、承認審査の評価資料である臨床試験54件の厳密性を審査報告書と論文から評価した。がん臨床試験では、全生存率(OS)がゴールドスタンダードとされる。OSで有意な結果を得るのは至難なので、厳密な臨床試験を実施する傾向がある。そこで、OSを主要評価項目に設定した試験のほうがIntegrity(完全性と訳されるが、私は厳密性が良いと思う)は高いと思われていた。コクランのバイアスリスク評価ツールを用いて、そのことが明らかにされた。無増悪生存率(PFS)を主要評価項目に設定した試験に比べて、とくにアウトカム評価が厳密であった。

透析皮膚掻痒症は解決に向かうのか?(解説:浦信行氏)-1147

透析皮膚掻痒症は50~90%の例に認められると報告され、程度が強いものは睡眠障害などで患者のADLを著しく低下させる。従来の対処法には皮膚の保湿や抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬などがあるが、効果は限定的で満足な治療効果は得られていないのが現状である。また、腎不全そのものの病態、すなわち尿毒症物質やCa、Pの沈着などの機序も加味することから重症で難治性の症例が多い。掻痒の機序の一部は内因性オピオイドのβ-エンドルフィンによるμ受容体の活性化であるが、κ受容体がこの作用に拮抗し掻痒を抑制する。このたび報告されたdifelikefalinは選択的κ受容体作動薬である。有効性や有害事象は11月21日配信のジャーナル四天王の記事のとおりである。ただし、週3回透析終了後の回路からの静注で使用するので、腹膜透析患者や保存期腎不全患者には適応しにくい。保存期腎不全でも15~49%に難治性の掻痒症が見られると報告されている。difelikefalinの経口薬が保存期腎不全を対象に、現在第II相で試験が行われているようだ。末梢のκ受容体への選択性が高く、中枢性の幻覚や身体違和感などは見られていないとのことで安全性も高い。

ゾフルーザ耐性ウイルスの特性を解明、小児で高頻度に出現

 東京大学医科学研究所の河岡 義浩氏ら研究チームが、2018/2019シーズンに採取したA型インフルエンザ検体の遺伝子を解析したところ、バロキサビル(商品名:ゾフルーザ)を服用した12歳未満のA型インフルエンザ患者において、ゾフルーザ耐性ウイルスが高頻度で出現することが明らかになった。また、患者から分離した耐性ウイルスを動物に感染させ、感受性ウイルスと比較したところ、耐性ウイルスの増殖性および病原性は、感受性ウイルスと同等であることもわかった。Nature Microbiology誌オンライン版2019年11月25日号に掲載。

降圧薬と認知症リスク~メタ解析

 認知症は、予防や治療戦略が難しい健康問題である。認知症を予防するうえで、特定の降圧薬使用が、認知症リスクを低下させるともいわれている。米国・国立衛生研究所のJie Ding氏らは、特定の降圧薬による血圧低下が認知症リスクに及ぼす影響について検討を行った。The Lancet. Neurology誌オンライン版2019年11月6日号の報告。  1980年1月1日~2019年1月1日までに公表された適格な観察研究より参加者データを収集し、メタ解析を実施した。適格基準は、コミュニティーの成人を対象としたプロスペクティブコホート研究、参加者2,000人超、5年以上の認知症イベントデータの収集、血圧測定および降圧薬の使用、認知症イベントに関する追加データを収集するための対面試験、死亡率のフォローアップを含む研究とした。ベースライン時の高血圧(SBP140mmHg以上またはDBP90mmHg以上)および正常血圧において、5つの降圧薬クラスを用いて、認知症やアルツハイマー病との関連を評価した。降圧薬服用確率に関連する交絡因子を制御するため、傾向スコアを用いた。研究固有の効果推定値は、変量効果のメタ解析を用いてプールした。

アテゾリズマブ 840mgを発売、トリプルネガティブ乳がん適応に対し/中外

 中外製薬株式会社は、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)840mg製剤が、2019年11月27日、薬価収載および発売となった旨を発表。アテゾリズマブ840 mg製剤は、本年9月20日に承認を取得したPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌の適応に対する用法・用量となる2週間間隔投与に対する至適用量製剤である。

トロポニン値と年齢、死亡リスクとの関連は/BMJ

 トロポニン陽性例では、正常値をわずかに超えただけで、年齢にかかわらず死亡の臨床的に重要な増加と関連し、その値の上昇に伴う死亡の増加は、初回測定から数週間以内に集中していることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAmit Kaura氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年11月21日号に掲載された。トロポニンは、急性心筋梗塞の診断の優れたバイオマーカーとされる。トロポニン値が制限範囲を超えても、その上昇の程度と死亡との直接的な関連を示すエビデンスがある。一方、全年齢層におけるトロポニン値と死亡との関連のデータは十分でなく、若年層に比べ超高齢層ではとくに不十分であるが、医師は一般に、全年齢層で高トロポニン値は高死亡率を意味すると考える傾向があるという。

低用量コルヒチン、心筋梗塞後の虚血性心血管イベントを抑制/NEJM

 低用量コルヒチンは、心筋梗塞患者における虚血性心血管イベントのリスクをプラセボに比べ有意に低減することが、カナダ・モントリオール心臓研究所のJean-Claude Tardif氏らが行ったCOLCOT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。炎症は、アテローム性動脈硬化およびその合併症において重要な役割を担うことを示す実験的および臨床的なエビデンスがある。コルヒチンは、イヌサフランから抽出された抗炎症作用を有する経口薬で、痛風や家族性地中海熱、心膜炎の治療に使用されている。

DPP-4阻害薬の心血管安全性はSU薬と同等(解説:吉岡成人氏)-1146

DPP-4阻害薬であるリナグリプチンの心血管アウトカムに関する試験として、プラセボを対照として非劣性を示したCARMELINA(Cardiovascular and Renal Microvascular Outcome Study With Linagliptin)試験の結果がすでに報告されている(Rosenstock J, et al. JAMA. 2019;321:69-79.)。今回、SU薬であるグリメピリドを対照として心血管アウトカムについて検証したCAROLINA(Cardiovascular Outcome Study of Linagliptin Versus Glimepiride in Patients With Type 2 Diabetes)試験の結果が、JAMA誌に掲載された(Rosenstock J, et al. JAMA. 2019 Sep 19. [Epub ahead of print])。

ダメージは不可逆、頭痛の裏に失明リスクのある眼疾患/日本頭痛学会

 眼の痛みがあったとしても診断時にその訴えがあるとは限らず、併存疾患の多い高齢者ではとくに鑑別が困難だが、頭痛診療で頭に留めておきたい眼疾患がある。第47回日本頭痛学会(11月15~16日)の「頭痛診療のクロストーク・連携」と題したワークショップで、川崎医科大学附属病院眼科の家木 良彰氏が頭痛診療と眼疾患について講演した。  はじめに家木氏は、突然の嘔吐と頭痛を訴え受診した80代女性の症例を紹介した。精査加療のため入院し、他疾患による頭痛として退院。退院後も吐き気、頭痛、眼痛が持続するため、10日以上経過後に初めて眼科を受診した。眼圧を測定したところ右眼圧60mmHgで、急性閉塞隅角緑内障と診断。同日中に白内障手術が施行された。

血液1滴で13種のがん検出、2時間以内に99%の精度で―東芝

 東芝は11月25日、血液中のマイクロRNAを使ったがん検出技術を開発したと発表した。同社によると、独自のマイクロRNA検出技術を使った健康診断などの血液検査により、生存率の高いStage 0の段階でがんの有無を識別することが期待できるという。早期の社会実装に向け、来年から実証試験を進めていく。  リキッドバイオプシーの解析対象となるマイクロRNAを巡っては、2014年に「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が始動。国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターが保有するバイオバンクを活用し、膨大な患者血清などの検体を臨床情報と紐づけて解析。血中マイクロRNAをマーカーとした検査システムの開発が進んでいる。この研究成果をベースに、国内メーカー4社が、日本人に多い13種のがんについて、血液検体から全自動で検出するための機器や検査用試薬、測定器キットなどの開発に取り組んでいる最中だ。

PD-L1高発現NSCLC、ペムブロリズマブ単剤の5年生存率は25%以上(KEYNOTE-001)/JCO

 PD-L1陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単剤療法の長期5年の追跡結果が示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のEdward B. Garon氏らは、第Ib相KEYNOTE-001試験の結果で、未治療および既治療の進行NSCLC患者におけるペムブロリズマブ単剤療法による5年全生存率は高く、とくにPD-L1高発現患者(TPS≧50%)では25%以上で、長期安全性プロファイルは良好であることを明らかにした。ペムブロリズマブ単剤療法は、PD-L1陽性進行NSCLCに対し持続的な抗腫瘍活性を発揮することが示されていた。Journal of Clinical Oncology誌2019年10月号掲載の報告。

青年期うつ病の治療中および治療後の軌跡

 英国・ケンブリッジ大学のSian Emma Davies氏らは、UK IMPACT試験に参加した青年期うつ病患者を症状変化の軌跡によって分類し、その予測因子および治療反応の定義との比較を行った。Journal of Child Psychology and Psychiatry誌オンライン版2019年10月24日号の報告。  本研究は、成長混合モデリング(GMM)を用いた2次データ分析である。欠損データは補完された。対象患者465例について、86週間の6つの時点におけるスコアを用いて、自己報告された抑うつ症状の軌跡を作図した。

2型DMの腎機能維持、ビタミンDとオメガ3脂肪酸の効果は?/JAMA

 2型糖尿病患者において、ビタミンD3あるいはオメガ3脂肪酸の補給は、プラセボと比較し、5年時の推定糸球体濾過量(eGFR)のベースラインからの変化に有意差は認められないことが示された。米国・ワシントン大学のIan H. de Boer氏らが、「Vitamin D and Omega-3 Trial:VITAL試験」の補助的研究として実施した2×2要因デザイン無作為化臨床試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「腎機能維持のためのビタミンDまたはオメガ3脂肪酸サプリメントの使用は支持されないことが示された」と述べている。慢性腎臓病(CKD)は2型糖尿病でよくみられる合併症で、末期腎不全につながり心血管高リスクと関連があるが、2型糖尿病でCKDを予防できる治療はほとんどないとされている。JAMA誌オンライン版2019年11月19日号掲載の報告。

無症候性の大動脈弁狭窄症、保存的治療 vs.早期手術/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症患者において、追跡期間中の手術死亡または心血管死(複合エンドポイント)の発生率は、早期に弁置換術を施行した患者のほうが保存的治療を行った患者よりも有意に低いことが示された。韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らが、多施設共同試験「RECOVERY試験」の結果を報告した。重症大動脈弁狭窄症患者の3分の1から2分の1は診断時に無症状であるが、こうした患者における手術の時期と適応については依然として議論の余地があった。NEJM誌オンライン版2019年11月16日号掲載の報告。

左冠動脈主幹部病変はPCIとCABGのいずれで治療しても予後は同じ(解説:上田恭敬氏)-1145

左冠動脈主幹部に目視で70%以上の狭窄病変あるいは虚血が示された50~70%の狭窄病変があり、SYNTAX scoreが32以下である、PCIとCABGのいずれによっても血行再建が可能とハートチームにより判断された患者を対象として、XIENCEステントを用いたPCIで治療する群(PCI群:948症例)とCABGで治療する群(CABG群:957症例)のいずれかに割り付けた、多施設無作為化比較試験(EXCEL試験)の5年フォローの結果が報告された。主要エンドポイントは死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合エンドポイントである。

新規作用機序のimeglimin、インスリン併用下の有効性・安全性

 2型糖尿病の新規治療薬候補として期待されるimegliminは、ミトコンドリアの機能障害改善という新しいメカニズムを持つ。現在、本剤の開発を手掛けるフランスのバイオ医薬品企業Poxel SA(以下、Poxel社)は、大日本住友製薬と共同で、日本人1,100例以上を対象とした3つの第III相臨床試験で構成される「TIMES試験」(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)を実施中だ。  2019年11月26日、Poxel社は、2型糖尿病を対象とし、わが国で実施されたimegliminとインスリンの併用療法を評価するTIMES3試験の、非盲検下36週間継続投与試験における結果を公表した。