トロポニン値と年齢、死亡リスクとの関連は/BMJ

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 トロポニン陽性例では、正常値をわずかに超えただけで、年齢にかかわらず死亡の臨床的に重要な増加と関連し、その値の上昇に伴う死亡の増加は、初回測定から数週間以内に集中していることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAmit Kaura氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年11月21日号に掲載された。トロポニンは、急性心筋梗塞の診断の優れたバイオマーカーとされる。トロポニン値が制限範囲を超えても、その上昇の程度と死亡との直接的な関連を示すエビデンスがある。一方、全年齢層におけるトロポニン値と死亡との関連のデータは十分でなく、若年層に比べ超高齢層ではとくに不十分であるが、医師は一般に、全年齢層で高トロポニン値は高死亡率を意味すると考える傾向があるという。

年齢とトロポニン値の関連を評価する後ろ向きコホート研究
 研究グループは、年齢とトロポニン値の関連、およびその予後における意義を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。

 解析には、UK-NIHR医療情報学共同研究(UK-NIHR HIC)計画に参加している5つの病院の心血管センターのデータを使用した。対象は、2010~17年の期間に何らかの臨床的理由でトロポニン検査を受けた患者であった。

 トロポニンの解析には、トロポニン頂値(在院中に測定したトロポニンの最も高い値)を使用した。トロポニン値は、正常上限値(ULN)の99パーセンタイル値として標準化された。>ULNをトロポニン陽性とした。

 主要アウトカムは全死因死亡であった。

急性冠症候群患者では逆U字型の関係
 試験期間中に25万7,948例がトロポニンの測定を受けた。トロポニン陽性例は7万7,709例、陰性例は18万239例であった。全体の年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:50~79)で、14万2,718例(55.3%)が男性だった。

 トロポニン測定患者の相対的な割合は、20代から60代にかけてほぼ直線的に増加し、その後は10歳ごとに約50%ずつ急激に増加した。また、トロポニン陽性例の割合は、加齢に伴って増加し、18~29歳の9%から90歳以上では50%に達した。

 追跡期間中央値は1,198日(IQR:514~1,866)で、この間に5万5,850例(21.7%)が死亡したが、最初の1年間に3万1,112例(12.1%)が死亡していた。

 3年以上の試験期間において、ベースラインのトロポニン陽性例の死亡のハザードは、陰性例の3.2倍(95%信頼区間[CI]:3.1~3.2)であった。この影響はとくに若年患者で強く、死亡率のハザード比(HR)は18~29歳が10.6(95%CI:8.5~13.3)であったのに対し、90歳以上では1.5(1.4~1.6)であり、HRは加齢に伴って低下した。

 トロポニン陽性例は陰性例に比べ、全年齢層を通じて3年絶対死亡率が14.8ポイント高かった。また、トロポニン陽性例における死亡の増加のほとんどは、最初の3ヵ月間に集中していた。

 死亡率は、トロポニン値>5~10×ULNまでは漸増したが、これ以上の値では予想に反して低下した。また、入院患者と非入院患者でサブグループ解析を行ったところ、入院患者(15万6,410例)において死亡とトロポニン値に逆U字型の関係が認められ、トロポニン頂値約70×ULNでHRが最も高値(2.4、95%CI:2.3~2.4)を示した。

 多変量で補正した制限付き3次スプラインCox回帰を用いて解析したところ、急性冠症候群のない患者(12万49例)では、トロポニン値と死亡に直接的な関連が認められたのに対し、急性冠症候群患者(1万4,468例)では逆U字型の関係がみられ、トロポニン頂値>70×ULNを境に、逆に死亡率が低下した。

 急性冠症候群患者のうち、侵襲的管理(トロポニン頂値から3ヵ月以内の血管造影)を受けた患者では、多変量で補正しても逆U字型の関係が存続していたが、非侵襲的管理を受けた患者では、トロポニン値と死亡には直接的な正の相関が認められた。

 著者は、「トロポニン値は、わずかな上昇であっても予後において大きな意義を有するが、臨床的決定は基礎疾患を考慮して行う必要があり、トロポニンの上昇の程度にのみ依存すべきではない」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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