TAVR後の弁尖可動性低下、抗血栓療法は有効か/NEJM

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)の成功後に、長期的な抗凝固療法の適応がない大動脈弁狭窄症患者では、無症候性の弁尖の動きの異常の予防において、リバーロキサバンベースの抗血栓治療戦略は、抗血小板薬ベースの治療戦略に比べ高い有効性を示すものの、死亡/血栓塞栓性イベントや大出血のリスクが高いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のOle De Backer氏らが行ったGALILEO-4D試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。4次元CTにより、TAVR後の人工生体弁における無症候性の弁尖肥厚および弁尖の可動性の低下が示されている。一方、これらの現象の改善に、抗凝固療法が有効かは知られていないという。
GALILEO試験の、4次元CTを用いたサブスタディ
GALILEO-4D試験は、TAVRで生体弁を留置された大動脈弁狭窄症患者の弁尖肥厚および弁尖の動きの異常の予防における、リバーロキサバンベースの抗血栓治療と抗血小板薬ベースの治療の有用性を比較したGALILEO試験の参加者のうち、4次元CTによる評価を受けた患者を対象としたサブスタディである(Bayerの助成による)。被験者は、リバーロキサバンベースの抗血栓治療(リバーロキサバン[10mg]+アスピリン[75~100mg]を1日1回、3ヵ月投与後、リバーロキサバン[10mg]単剤を1日1回投与)、または抗血小板薬ベースの治療(クロピドグレル[75mg]+アスピリン[75~100mg]を1日1回、3ヵ月投与後、アスピリン単剤を投与)を受ける群に無作為に割り付けられた。無作為割り付けから平均90(SD 15)日の時点で、4次元CTによる評価が行われた。
主要エンドポイントは、人工生体弁の1つ以上の弁尖が、Grade3以上(弁尖の>50%)の動きの低下を来した患者の割合とした。副次エンドポイントは、Grade3以上の動きの低下を来した弁尖の割合、1つ以上の弁尖が肥厚を来した患者の割合、肥厚した弁尖の割合などであった。
主要エンドポイント:2.1% vs.10.9%
231例が解析の対象となり、115例がリバーロキサバン群(平均年齢79.7±7.3歳、男性64.3%)、116例は抗血小板薬群(80.5±6.2歳、63.8%)に割り付けられた。1つ以上の弁尖がGrade3以上の動きの低下を来した患者の割合は、リバーロキサバン群が2.1%(2/97例)と、抗血小板薬群の10.9%(11/101例)に比べ有意に低かった(群間差:-8.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-16.5~-1.9、p=0.01)。
1つ以上の弁尖が肥厚した患者の割合は、リバーロキサバン群では12.4%(12/97例)であり、抗血小板薬群の32.4%(33/102例)に比し低値であった(群間差:-20.0ポイント、95%CI:-30.9~-8.5)。
また、Grade3以上の動きの低下を来した弁尖の割合(リバーロキサバン群1.0%[3/291個]vs.抗血小板薬群4.6%[14/303個]、群間差:-3.6ポイント[95%CI:-6.7~-0.9])および肥厚した弁尖の割合(5.5%[16/291個]vs.17.3%(53/306個)、-11.8、-16.9~-6.8)も、リバーロキサバン群で低かった。
一方、このような4次元CT画像所見上の抗凝固療法の有益な効果にもかかわらず、GALILEO試験では、リバーロキサバンベースの抗血栓治療は抗血小板薬ベースの治療に比べ、死亡または血栓塞栓性イベントのリスクが高く(ハザード比[HR]:1.35、p=0.04)、生命を脅かす/後遺障害を伴う出血や大出血のリスクも高い傾向がみられた(HR:1.50、p=0.08)。
著者は、「GALILEO試験におけるリバーロキサバンの不良な臨床アウトカムを考慮すると、弁尖の動きの異常の予防を目的に、TAVR後に弁尖の動きの低下を検出するためのルーチンの画像検査や、抗凝固療法のルーチンの使用は推奨されない」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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コメンテーター : 上妻 謙( こうづま けん ) 氏
帝京大学医学部内科学講座・循環器内科 教授