日本語でわかる最新の海外医学論文|page:501

大腸がん術後補助化学療法、ctDNAによる評価(A GERCOR-PRODIGE)/ESMO2019

 フランス・European Georges Pompidou HospitalのJulien Taieb氏は、StageIIIの結腸がんでの術後補助化学療法では血液循環腫瘍DNA(ctDNA)が独立した予後予測因子であり、ctDNAが陽性か否かにかかわらず、術後補助化学療法は6ヵ月のほうが無病生存期間(DFS)が良好な傾向が認められたと欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。  今回の結果はIDEA FRANCE試験に参加した患者の血液検体を用いたA GERCOR-PRODIGE試験に基づくもの。IDEA FRANCE試験は、大腸がんの術後補助化学療法としてのFOLFOX療法またはCapeOX療法の投与期間について、3ヵ月間と6ヵ月間を比較した6つの前向き第III相無作為化試験を統合解析したIDEA collaborationに含まれる試験の1つ。

家族性高コレステロール血症患児へのスタチン、成人期の心血管リスク低減/NEJM

 小児期にスタチン治療を開始した家族性高コレステロール血症患者は、成人期の頸動脈内膜中膜肥厚の進行が抑制され、心血管疾患のリスクが低減することが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのIlse K. Luirink氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年10月17日号に掲載された。家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロール値の著しい増加と心血管疾患の早期発症を特徴とする。小児へのスタチン治療の短期的効果は確立されているが、心血管疾患リスクの変動を評価した長期的な追跡研究は少ないという。

成人期の体重変動が死亡リスクと関連/BMJ

 成人期を通じた肥満持続、成人初期から中期の体重増加、および成人中期から後期の体重減少は、いずれも死亡リスクの増加と関連することが、中国・華中科技大学のChen Chen氏らが米国のデータを用いて行った検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月16日号に掲載された。高BMIの成人は早期死亡のリスクが高いが、成人初期から後期あるいは成人中期から後期の体重の変化と死亡リスクとの関連の科学的エビデンスは、必ずしも一貫していない。また、成人の中でも、とくに初期から中期までの体重変動と、全死因および原因別の死亡率との関連はほとんど知られていないという。

SGLT2阻害薬は糖尿病薬から心不全治療薬に進化した(解説:絹川弘一郎氏)-1125

ESC2019にはPARAGON-HF目当てで参加を決めていたが、直前になってDAPA-HFの結果が同じ日に発表され、パリまでの旅費もむしろ安いくらいの気持ちになった。もう少し時間がかかると思っていたのでESCでの発表は若干驚きであったが、プレスリリースで聞こえてきたprimary endpoint達成ということ自体は想定内であったので、焦点は非糖尿病患者での振る舞い一点といってもよかった。なぜ、HFrEFに有効であることに驚きがなかったか、それはDECLAREのACC.19で発表された2つのサブ解析による。1つが陳旧性心筋梗塞の有無による層別化、もう1つがHFrEF/HF w/o known EF/no history of HFの3群間の比較である。ともに心血管死亡と心不全再入院というDECLAREのco-primary endpointに対する解析である。陳旧性心筋梗塞を有する群で明らかに早期からイベント抑制効果が認められ、EMPA-REG OUTCOMEやCANVASで心血管疾患の既往を有する患者で知られてきたSGLT2阻害薬の心不全予防効果が投与早期から現れるということは、言い換えると大半が虚血性心疾患であり、そしてそれは陳旧性心筋梗塞の患者であるということである。

またも敗北した急性心不全治療薬―血管拡張薬に未来はないのか(解説:絹川弘一郎氏)-1124

急性心不全に対する血管拡張薬は、クリニカルシナリオ1に対しては利尿薬も不要とまで一時いわれたくらい固い支持があるクラス1の治療である。シナリオ2でもほどほど血圧があればafterloadを下げることは古くから収縮不全に悪かろうはずがないと考えられてきて、そもそもV-HeFT IやV-HeFT IIはvasodilatorがHFrEFの長期予後を改善するのではないかという(今では顧みられない)コンセプトで始まり、レニンアンジオテンシン系にたどり着いた歴史的経緯がある。

せん妄経験と退院後の認知症発症との関連

 高齢者の急性疾患におけるせん妄発症は、退院後の認知症発症と関連があるかについて、ブラジル・サンパウロ大学のFlavia Barreto Garcez氏らが調査を行った。Age and Ageing誌オンライン版2019年9月30日号の報告。  2010~16年に3次医療の大学病院老年病棟に連続的に入院した60歳以上の急性疾患高齢者を対象に調査を行った。包括基準は、入院時のベースライン認知機能に低下が認められず、退院後12ヵ月間の臨床的フォローアップを実施した患者とした。すべての患者について標準化された包括的な高齢者評価結果を含む入院データは、ローカルデータベースより収集した。事前の認知機能低下は、病歴、CDR、IQCODE-16に基づき特定した。せん妄の評価には、簡易版CAMを用い、退院後12ヵ月後の認知症発症は、医療記録のレビューに基づいて特定した。せん妄と退院後の認知症発症との関連は、競合リスク比例ハザードモデルを用いて評価した。

レンバチニブ、胸腺がん2次治療以降に有望(REMORA)/ESMO2019

 胸腺がんは10万人年に0.02という希少悪性疾患である。プラチナベース化学療法が1次治療であるが、プラチナベース化学療法後の標準治療は確立していない。いくつかの試験では、スニチニブなど血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を主な標的とするマルチキナーゼ阻害薬の有効性が報告されている。マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)においては、前臨床試験でスニチニブと同等かそれ以上の阻害活性を示している。兵庫県立がんセンターの伊藤 彰一氏らは、進行または転移のある胸腺がん患者におけるレンバチニブの有効性と安全性を検討する多施設オープンラベル単群第II相REMORA試験を実施。その中間解析の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。

1型DMにはクローズドループシステムが有用/NEJM

 1型糖尿病患者において、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵島)の利用は、リアルタイム持続血糖モニター(CGM)機能付きインスリンポンプ(CSII)の利用と比較して、血糖値が目標範囲内であった時間の割合を増加させることを、米国・バージニア大学のSue A. Brown氏らが、6ヵ月間の多施設共同無作為化試験「International Diabetes Closed Loop trial:iDCL試験」で明らかにした。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する可能性があり、これまでのメタ解析ではその有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2019年10月16日号掲載の報告。

左冠動脈主幹部病変の5年転帰、PCI vs.CABG/NEJM

 解剖学的複雑度が低度~中等度の左冠動脈主幹部病変患者において、5年時点の全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイントは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)で有意差は確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のGregg W. Stone氏らが、左冠動脈主幹部病変の患者を対象に、エベロリムス溶出ステントによるPCIのCABGに対する追跡期間3年での非劣性を検証した国際多施設共同非盲検無作為化試験「EXCEL試験」の、最終5年アウトカムを報告した。左冠動脈主幹部病変患者において、現代の薬剤溶出ステントを用いたPCI後の、CABGと比較した長期アウトカムは明らかにされてはいなかった。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。

日本の進行胃がんに対するニボルマブのリアルワールドでの成績(JACCRO GC-08: DELIVER)/ESMO2019

 第III相ATRRACTION-2試験において、ニボルマブは3次治療以降の胃がんに対する有効性を示しているが、PS不良例、腹膜播種例などが含まれるリアルワールドでのデータはない。聖マリアンナ医科大学の砂川 優氏らは、リアルワールドでの進行胃がんに対するニボルマブの効果と安全性、そして腸内マイクロバイオームを含む宿主免疫バイオマーカーを検証した前向き観察研究JACCRO GC-08(DELIVER)の中間成績を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。

ペムブロリズマブのMSI-High固形がんに対する第II相試験(KEYNOTE-164、158統合解析)/ESMO2019

 米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター固形がん腫瘍学部門のLuis Diaz氏は、局所進行・転移のあるミスマッチ修復(MMR)欠損または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんに対するペムブロリズマブの第II相試験KEYNOTE-164とKEYNOTE-158の統合解析結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表。MMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんでは、がん種にかかわらずペムブロリズマブが安定した効果を示し、安全性も管理可能なものであると述べた。

家族歴が発症リスクに関連するがん種~日本人10万人の前向き研究

 がんの家族歴は、いくつかのがん種におけるリスク増加の重要な因子である。がんの家族歴と、遺伝的に一致するがんリスクとの関連は多くの疫学研究で報告されているが、生活習慣を調整した包括的な前向き研究はない。今回、わが国のJPHC研究において、国立がん研究センターの日高 章寿氏らによる研究から、膀胱がん、膵がん、食道がんなどのいくつかのがん種で、がんの家族歴ががんリスク増加と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年10月8日号に掲載。

急性期統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール切り替え療法

 他の抗精神病薬からブレクスピプラゾールへの切り替え時のクロスタイトレーションスケジュールの忍容性および有効性を評価するため、米国・ザッカーヒルサイド病院のChristoph U. Correll氏らは、ブレクスピプラゾール試験のデータを用いて比較検討を行った。CNS Spectrums誌2019年10月号の報告。  対象の統合失調症患者は、1~4週間の非盲検期間中に、他の抗精神病薬からブレクスピプラゾールへクロスタイトレーションされ、その後、単盲検ブレクスピプラゾール治療試験に移行した。切り替え期間に応じて、対象患者を4群に分類した。中止率、治療により発生した有害事象(TEAE)、効果(PANSS)について、群間比較を行った。

LOXO-292、RET異常甲状腺がんに有望(LIBRETTO-001)/ESMO2019

 RET異常を有する甲状腺がんに対する新規治療薬のselpercatinib(LOXO-292)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Massachusetts General Hospital, Harvard Medical SchoolのLori Wirth氏より発表された。  本試験は、RET異常を有する甲状腺がんと非小細胞肺がんを対象にした国際共同のオープンラベル・シングルアームの第I/II相試験である。selpercatinibはRETタンパクに高い選択的親和性を有するTKIであり、今回は全甲状腺がんの10~20%に存在するRET変異甲状腺がんに関する発表である。

NAFLD/NASH患者、リスク因子補正後のAMIや脳卒中リスクとの関連は?/BMJ

 欧州の大規模な4つのデータベースを用いた検討で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断された成人は、年齢、性別、診療情報を適合したNAFLDを有さない成人と比較して、既知の心血管リスク因子補正後、急性心筋梗塞(AMI)や脳卒中の発生リスクに、わずかな増大は認められるが有意差はないことが明らかにされた。英国・GlaxoSmithKlineのMyriam Alexander氏らが計1,770万例を対象とした適合コホート試験の結果で、著者は「NAFLD診断成人の心血管リスク評価は重要だが、一般集団のそれと同様とすべきであろう」と述べている。NAFLDは、メタボリックシンドロームやその他のAMIや脳卒中のリスク因子との関連が認められている。AMIおよび脳卒中リスク増大との関連、および心血管疾患の代用マーカー(surrogate marker)との関連が示されているが、既知のリスク因子補正後の関連性について完全には確立されていなかった。BMJ誌2019年10月8日号掲載の報告。

低リスク妊娠、第3期のルーチン超音波は有益か?/BMJ

 低リスク単胎妊娠において、妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことは通常ケアと比較して、出産前の在胎不当過小(SGA)胎児の検出率を高めるが、重度有害周産期アウトカムの発生減少には結びつかないことが明らかにされた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのJens Henrichs氏らが、1万3,046例の妊婦を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は「妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことを支持しない結果であった」とまとめている。BMJ誌2019年10月15日号掲載の報告。

悪い芽は早めに摘んでとりあえずコンプリートしておきますか!?:多枝病変を有するSTEMIへの戦略(解説:中野明彦氏)-1123

STEMIにおける多枝病変の確率は40~50%で、STEMI責任病変のみの一枝疾患に比べ予後不良かつその後の非致死性心筋梗塞が多いことが報告されている。心原性ショックを合併していないSTEMI急性期に責任病変以外の“病変”に手を加えるべきかどうか、一定の見解は得られていても明確な回答が得られていない命題である。急性期介入の期待される利点は、STEMIによる血行動態の悪化が他病変灌流域の局所収縮性を障害することへの予防的措置、あるいはhibernation(冬眠心筋)を来している領域の心機能改善が結果としてSTEMIの予後を改善する可能性、などが挙げられる。

アルツハイマー病の症状を抑制する初の薬剤となるか~aducanumab第III相試験の新たな解析結果

 バイオジェンとエーザイは2019年10月22日、早期アルツハイマー病(AD)患者に対する第III相試験において無益性解析に基づき中止となったaducanumabについて、中止後に新たに利用可能となったデータを追加し解析した結果から、米国食品医薬品局(FDA)との協議に基づいて、2020年に承認申請を予定していることを発表した。aducanumabが承認された場合、早期アルツハイマー病の臨床症状悪化を抑制する最初の治療薬となるとともに、アミロイドベータ(Aβ)の除去が臨床上のベネフィットをもたらすことを実証する世界初の薬剤となるという。

アテゾリズマブ+ベバシズマブ、肝細胞がんの生存を改善(IMbrave150)/Roche

 アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)とベバシズマブ(同:アバスチン)の併用が肝細胞がん(HCC)の1次治療において生存を改善した。  Roche社は、2019年10月21日、切除不能肝細胞がん(HCC)を対象にしたアテゾリズマブとベバシズマブ併用の第III相IMbrave150試験において、全生存(OS)および無増悪生存(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことを発表した。  IMbrave150は、未治療の切除不能HCCの501例を対象とした、国際多施設共同非盲検第III相試験。対象患者は無作為にアテゾリズマブとベバシズマブ併用またはソラフェニブに割り付けられ、許容できない毒性または臨床的利益の喪失まで、治療を受けた。主要評価項目は、独立審査委員会(IRF)によるOSとPFSである。IMbrave150試験のデータは、今後の医学学会で発表される予定。

脳転移のあるPD-L1陽性肺がんにもペムブロリズマブ単剤が有効/ESMO2019

 米メイヨークリニックのAaron S. Mansfield氏は、ペムブロリズマブに関する臨床試験であるKEYNOTE-001、010、 024、042の統合解析結果から、脳転移があるPD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単独療法は、脳転移なしと同等以上の予後改善効果があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。  統合解析に用いた4試験(KEYNOTE-001、010、024、042)のうちKEYNOTE-001のみが単群試験で、その他はいずれも化学療法との比較試験である。