日本語でわかる最新の海外医学論文|page:464

急性期統合失調症に対する認知リハビリテーションの可能性

 多くの研究において、統合失調症患者に対する認知リハビリテーションが有用なアウトカムを示しているが、日常的および社会的機能に対する認知リハビリテーションの有効性は、よくわかっていない。また、認知リハビリテーションの内容や方法に関する検討は不可欠ではあるが、実施するタイミングも重要であると考えられる。東邦大学の根本 隆洋氏らは、急性期統合失調症患者に対する認知リハビリテーションの実現可能性および受容性について調査を行った。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2020年3月26日号の報告。  入院病棟へ急性期入院した患者を15ヵ月間連続でエントリーし、入院後14日以内に8週間の認知リハビリテーションプログラムに参加できるかどうかを評価した。

RCTの事前登録順守率、インパクトファクターと相関/BMJ

 世界保健機関(WHO)は2008年にヘルシンキ宣言を改訂し、その後2015年に臨床試験登録国際プラットフォームを設置して、臨床試験の事前登録を勧告している。カナダ・トロント総合病院のMustafa Al-Durra氏らによる検討の結果、勧告にのっとり事前登録した試験の割合は、全登録試験の約42%と低いことが明らかになった。無作為化試験(RCT)の事前登録は、試験結果の選択的な報告を減らすものと見なされている。これまで行われた研究では、RCTの事前登録の順守率は低いものでは4%、高いものでは77%と報告されていた。BMJ誌2020年4月14日号掲載の報告。

COVID-19、早期診断や重症化の因子は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)の予測モデルに関する公表・公表前の試験結果についてシステマティック・レビューを行ったところ、31個の予測モデルが見つかったが、大半でバイアスリスクが高く、それら予測モデルを医療現場で活用することには、信頼性の点で懸念があることが示された。オランダ・マーストリヒト大学のLaure Wynants氏らによる検討で、BMJ誌2020年4月7日号で発表した。COVID-19は世界中の医療システムに負荷をもたらしており、効果的な早期検出、診断および予後に関する差し迫ったニードが生じている。ウイルス学的検査、胸部CTは診断の標準方法となっているが時間を要する。一方、先行研究報告で、高齢で、慢性疾患(COPD、心血管疾患、高血圧)がある患者や呼吸器症状のある患者は、重症となりやすく死亡率も高まることが示唆されていた。

SARS-CoV-2との戦いーACE2は、味方か敵か?(解説:石上友章氏)-1218

COVID-19は、新興感染症であり、科学的な解明が不十分である。これまでの報告から、致死的な重症例から、軽症例・無症候例まで、幅広い臨床像を呈することがわかっており、重症化に関わる条件に注目が集まっている。中国からの報告により、疾病を有する高齢者、なかでも高血圧を有する高齢者が多く重篤化する可能性が指摘された。SARS-CoV-2の類縁であるSARS-CoVは、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)の原因ウイルスである。標的である肺胞上皮細胞に感染する際に、細胞表面にあるACE2(アンジオテンシン変換酵素2)を受容体として、ウイルス表面のスパイク蛋白と結合する。ACE2と結合したスパイク蛋白は、細胞表面の膜貫通型セリン・プロテアーゼであるTMPRSS2などにより切断され、標的細胞の細胞膜と融合することで細胞内に侵入することが知られている(『感染の成立』)。SARS-CoV-2の感染症であるCOVID-19でも、同様の機序が想定されている。

血圧変動と認知症リスク~コホート研究

 血圧の来院時変動と一般集団における認知症発症率および認知症サブタイプとの関連を調査するため、韓国・Seoul National University HospitalのJung Eun Yoo氏らは、人口ベースのレトロスペクティブコホート研究を実施した。Hypertension誌2020年4月号の報告。  韓国国民健康保険データベースを用いて、2005~12年に3回以上の健康診断を受けた認知症既往歴のない784万4,814例を対象とした。血圧変動性(BPV)は、平均、変動係数、SDとは独立した変動性を用いて測定した。

がん患者のVTE治療、アピキサバンは低分子ヘパリンに非劣性/NEJM

 がん患者の静脈血栓塞栓症(VTE)の治療において、直接経口抗凝固薬(DOAC)アピキサバンは、低分子ヘパリン(LMWH)ダルテパリン皮下投与と比較して、VTE再発に関して非劣性で、消化管の大出血のリスクを増加させないことが、イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが行った「Caravaggio試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月29日号に掲載された。現行の主要なガイドラインでは、がん患者のVTE治療にはLMWHが推奨され、最近、DOACであるエドキサバンとリバーロキサバンの使用の考慮が追加されたが、これらのDOACは出血のリスクが高いため有益性は限定的だという。

新型コロナウイルス感染症患者に対するremdesivir人道的使用(解説:浦島充佳氏)-1220

現在、COVID-19に対する有効な治療薬はない。そこでSpO2 94%以下の低酸素症を伴うCOVID-19患者61例にremdesivirを使用した。しかし、結果の不明な7例と薬物使用量の不適切だった1例を除外し53例で解析が成された。投与開始中央値18日(IQR:12~23日)において53例中36例(68%)で酸素投与法の改善をみた。一方、有害事象として60%に肝臓酵素の上昇、下痢、発疹、腎機能障害、低血圧を認めた。23%に多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧を、人工換気をしている患者に認めた。

新型コロナウイルス検出用抗体、開発に成功/横浜市立大

 横浜市立大学大学院医学研究科の梁 明秀氏(微生物学・分子生体防御学 教授)らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原を特異的に検出できるモノクローナル抗体の開発に成功したことを2020年4月20日に発表した。今後は、本抗体を用い簡便かつ短時間にSARS-CoV-2だけを正しく検出できるイムノクロマトキットの開発を目指す。なお、この検査キットは2020年5月中旬を目処に関東化学株式会社より研究用試薬として販売が予定されている。

糖尿病予防、最も効果的な介入ターゲットが明らかに

 わが国の糖尿病患者は約1,000万人、さらに予備群も約1,000万人とされ、超高齢社会において、糖尿病予防は喫緊の課題のひとつである。しかし、人的・経済的な資源には限りがある。糖尿病を効果的に予防する介入ターゲットは、どのように絞り込めばよいのだろうか。  今回、坂根 直樹氏(京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室)は、「糖尿病予防のための戦略研究J-DOIT1」(研究リーダー:葛谷 英嗣氏)のデータを用いて、肥満、メタボリックシンドローム、肝臓の状態別に、生活習慣支援の糖尿病予防効果について解析を行った。Journal of Occupational Health誌2020年1月21日号に掲載。

オシメルチニブ、EGFR陽性肺がんアジュバントで有効性、早期非盲検化に(ADAURA)/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、4月10日、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が第III相ADAURA試験において有効性を示したことにより、独立データモニタリング委員会(IDMC)の勧告に従って早期に非盲検化されることを発表した。  ADAURA試験は、完全腫瘍切除したIB期、II期、IIIA期のEGFR遺伝子変異非小細胞肺がん患者を対象に術後補助療法としてのオシメルチニブの評価を行う第III相臨床試験で、主要評価項目は無病生存期間である。本試験では、オシメルチニブをプラセボと比較し、最長3年の治療期間で評価した。引き続き、副次評価項目である全生存期間の評価を行う。なお、IDMCからは、本試験における新たな安全上の問題は提起されていない。本試験の詳細データは、今後の学会で発表される予定。

うつ病や双極性障害における嗅覚記憶の比較

 嗅覚認識記憶の変化は、うつ病の感覚マーカーである可能性がある。そして、単極性うつ病と双極性うつ病で有意な差が存在する可能性もある。フランス・トゥール大学のFrancois Kazour氏らは、単極性および双極性うつ病の潜在的なマーカーを特定するため、検討を行った。Brain Sciences誌2020年3月24日号の報告。  双極性うつ病(DB)群、双極性寛解(EB)群、単極性うつ病(DU)群、単極性寛解(EU)群、正常対照(HC)群を募集した(176例)。対象者には、標準化された臨床評価および嗅覚評価を行った。

虚血性脳卒中の血栓除去術前のtenecteplase、至適用量は/JAMA

 脳主幹動脈閉塞を有する虚血性脳卒中患者では、tenecteplaseの0.40mg/kg投与は0.25mg/kgと比較して、血管内血栓除去術施行前の脳血管再灌流の達成を改善しないことが、オーストラリア・メルボルン大学のBruce C.V. Campbell氏らの検討「EXTEND-IA TNK Part 2試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年4月7日号に掲載された。EXTEND-IA TNK試験では、tenecteplase 0.25mg/kgによる静脈内血栓溶解療法は、アルテプラーゼに比べ血管内血栓除去術施行前の脳血管再灌流および臨床アウトカムの改善効果が優れると報告されている。一方、tenecteplaseの最も規模の大きい臨床試験「NOR-TEST試験」では、0.40mg/kgはアルテプラーゼに比べ安全性および有効性が優れないことが示され、ガイドラインによって推奨用量が異なる事態が生じているという。

今、私たちは冠動脈疾患治療の分岐点にいる(解説:野間重孝氏)-1219

至適内科治療(optimal medical therapy:OMT)という言葉がある。虚血性心疾患は典型的な複合因子的疾患であり、単に血圧を下げるとか禁煙してもらうというだけでは発症予防(1次予防)もその進展の予防(2次予防)もできない。主立った因子をすべてコントロール、それもエビデンスのある薬剤・方法を用いて複合的にコントロールすることによって虚血性心疾患の1次・2次予防をしようという考え方である。90年代の半ば過ぎに確立され、その後種々の改良・改変を加えられたが、その大体の考え方は変わっていない。そこに至るには危険因子の徹底的な洗い出し、それに対する対処とそのエビデンスの蓄積があったことは言うまでもない。世紀をまたぐころにはOMTは虚血性心疾患治療の基礎として確立されたばかりでなく、血行再建術の代替えにもなりうるとも考えられるまでになった。心筋梗塞、不安定狭心症などのいわゆる急性冠症候群(ACS)では血行再建術が絶対適応となっているが、安定狭心症に対しては血行再建術と同程度の治療効果が得られることが期待されるまでになった。この方面での治験のエンドポイントは死亡+非致死的心筋梗塞の発生に置かれることが多いが、いろいろな比較試験でコントロールにされたOMT群の発症率はいずれにおいても20%を切る結果(18%~19%程度)が示されている。

腫瘍遺伝子変異量(TMB)高値固形がんに対するペムブロリズマブ、FDAに承認申請

 Merck社は、2020年4月7日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブの新たな生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)によって受理され、優先審査項目に指定されたことを発表した。この申請では、治療後に進行し、他に十分な治療選択肢のない、腫瘍遺伝子変異量高値(TMB-High、FDAに承認された検査において10変異/megabase以上)の切除不能または転移を有する固形がんの成人および小児患者に対する単独療法としてペムブロリズマブの迅速承認を目指している。

慢性期統合失調症外来患者の維持治療におけるLAIと経口剤の比較

 台湾・マッカイ医科大学のSu-Chen Fang氏らは、慢性期統合失調症患者の維持療法において、抗精神病薬治療を長時間作用型注射剤(LAI)のみで行った患者と経口薬(PO)のみで行った患者における精神科サービスの利用率の比較を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2020年3月17日号の報告。  2011年の台湾全民健康保険研究データベースより、維持療法を受けた慢性期統合失調症患者のコホートを作成し、12ヵ月間のフォローアップを行った。対象患者は、統合失調症と診断されて3年以上、2011年の入院歴がない、維持療法を1年以上受けていた患者とした。精神科サービスの利用を推定するために、inverse probability of treatment weighting (IPTW法)、ロジスティック回帰モデル、線形回帰モデル、負の二項回帰モデルを使用し、LAI群とPO群の共変量の不均衡を調整した。

米国でC. difficile感染症の負担低減/NEJM

 米国の全国的なClostridioides difficile感染症と関連入院の負担は、2011年から2017年にかけて減少しており、これは主に医療関連感染(health care-associated infections)の低下によることが、米国疾病管理予防センター(CDC)のAlice Y. Guh氏ら新興感染症プログラム(EIP)Clostridioides difficile感染症作業部会の調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2020年4月2日号に掲載された。米国では、C. difficile感染症の予防への取り組みが、医療領域全般で拡大し続けているが、これらの取り組みがC. difficile感染症の全国的な負担を低減しているかは不明とされる。

安定冠動脈疾患、侵襲的戦略と保存的戦略に有意差なし/NEJM

 中等度~重度の虚血を有する安定冠動脈疾患患者の初回治療では、侵襲的介入+薬物療法と薬物療法単独のアウトカムの違いは明確でないという。米国・スタンフォード大学のDavid J. Maron氏らは、5,000例以上の安定冠動脈疾患患者を対象とする国際的な臨床試験「ISCHEMIA試験」で、侵襲的戦略は保存的戦略に比べ、虚血性冠動脈イベントや全死因死亡のリスクを抑制しないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌2020年4月9日号に掲載された。  本研究は、日本を含む37ヵ国320施設が参加した無作為化試験であり、2012年7月~2018年1月の期間に患者登録が行われた(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。

エピジェネティック制御薬は心血管疾患の残余リスクを低下させない(解説:佐田政隆氏)-1217

冠動脈疾患に対する薬物療法の進歩には目を見張るものがあり、患者の長期予後を大きく改善させた。その中でも高用量のストロングスタチンは心血管イベントを3割から4割低下させるという数々のエビデンスが積み重ねられて、現在、標準的治療となっている。しかし、逆にいうと6割から7割の人が至適な薬物療法を行っても心血管イベントを起こしてしまうことになる。これが残余リスクとして非常に問題になっている。

新型コロナ、病棟の床や靴底、患者から4mの空気からも検出

 病棟における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の分布について、中国・武漢のCOVID-19専門病院である火神山医院の空気と環境表面のサンプルを調査したところ、SARS-CoV-2は、床、コンピュータのマウス、ゴミ箱、ベッドの手すり、靴底など広く分布し、患者から約4m離れた空気からも検出された。Academy of Military Medical Sciences(北京)のZhen-Dong Guo氏らが、Emerging Infectious Diseases誌オンライン版2020年4月10日号で報告した。  著者らは、2020年2月19日~3月2日、火神山医院の集中治療室(ICU)とCOVID-19一般病棟(GW)の環境表面と空気のサンプルを検査した。ICUは重症患者15例、GWは軽症患者24例を収容していた。

アルツハイマー病とレビー小体型認知症の入院リスク

 認知症患者の入院リスクは高いことが知られているが、このことに認知症の種類による違いがあるのかは、あまりわかっていない。ノルウェー・スタヴァンゲル大学病院のRagnhild Oesterhus氏らは、アルツハイマー病(AD)患者とレビー小体型認知症(LBD)患者で入院に違いがあるのかを調査し、その入院率について年齢をマッチさせた一般集団との比較を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2020年3月5日号の報告。  対象は、軽度のAD(110例)またはLBD(91例)と最近診断された外来診療所受診患者(年齢:75.7±7.4歳)。対象患者には、診断後5年間または死亡までフォローアップが行われた。