日本語でわかる最新の海外医学論文|page:461

COVID-19にレムデシビルが有意な効果示せず、早期なら有効か/Lancet

 中国で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者へのレムデシビル投与は、臨床的改善までの期間を統計学的に有意に短縮しなかったことが報告された。しかし、発症後10日以内の患者に限定した解析で、有意差は示されなかったものの、臨床的改善までの期間はレムデシビル群で短縮する傾向が認められた。中国・中日友好医院のYeming Wang氏らによる試験の結果で、著者は「早期投与については大規模な研究で確認する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年4月29日号掲載の報告。

去勢抵抗性前立腺がん、オラパリブが有効/NEJM

 新規のホルモン療法薬投与中に病勢が進行し、BRCA1、BRCA2遺伝子などに変異が認められた、転移がある去勢抵抗性前立腺がんの患者に対して、PARP阻害薬オラパリブの投与はホルモン療法薬投与と比べて、無増悪生存(PFS)期間を延長し、奏効率や、患者評価のエンドポイント(疼痛増悪までの期間など)も有意に良好であることが示された。英国・Institute of Cancer ResearchのJohann de Bono氏らが第III相無作為化非盲検試験の結果を報告した。相同組み換え修復などDNA修復に関与する遺伝子における複数の機能喪失の変化は、前立腺がんやその他のがん患者においてPARP阻害に対する反応との関連が示唆されている。これを踏まえて研究グループは、遺伝子変異が認められ転移がある去勢抵抗性前立腺がん患者に対する、PARP阻害薬を評価する試験を行った。NEJM誌オンライン版2020年4月28日号掲載の報告。

日本のCOVID-19症例を症状で検索可、新サイトオープン/日医有識者会議

 5月7日、日本医師会は緊急記者会見を開き、「COVID-19有識者会議」のホームページ開設を発表した。4月30日に日本医師会が発行した「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」のほか、約70症例について所見から検索できる症例データベース、WHO発の情報を日本語で提供するWHOアップデート、治療薬開発の現状などが掲載されている。  COVID-19有識者会議は、COVID-19 に関するできるだけ良質な情報を収集し、現場に提供することを目的として、日本医師会内に設置される形で4月18日に発足。座長を永井 良三氏(自治医科大学学長)、副座長を笠貫 宏氏(早稲田大学特命教授)が務める。発足時開催された記者会見で横倉 義武会長は政府の専門家会議との関係について、「本有識者会議は主に、臨床の観点からエビデンスのある提言を行い、現場の支援を行うものであり、専門家会議とは“車の両輪"と言うべきものである」とし、連携を図りながらCOVID-19対策を推進していく考えを示した。

早期乳がんの術後AIの服薬アドヒアランス/JCO

 早期乳がんの術後補助療法におけるアロマターゼ阻害薬(AI)の服薬アドヒアランスは一般に低く、再発リスクにつながる。今回、大規模な長期無作為化試験(SWOG S1105)の結果、AIのアドヒアランス失敗率が高いこと、週2回のテキストメッセージ受信ではアドヒアランスが改善しなかったことを米国・コロンビア大学のDawn L. Hershman氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年5月5日号に掲載。  本試験は、米国の40施設においてテキストメッセージ(TM)群とテキストメッセージなし(No-TM)群を比較した無作為化試験。対象は、AI投与が36ヵ月以上計画され、30日以上服薬している早期乳がんの閉経後女性で、メッセージは週2回、36ヵ月送信した。

統合失調症に対するドパミンD2/D3受容体パーシャルアゴニストの忍容性の比較

 アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineは、ほかの第2世代抗精神病薬と異なり、ドパミンD2/D3受容体に対するパーシャルアゴニスト作用を有している。オーストラリア・モナッシュ大学のNicholas Keks氏らは、3剤のドパミンD2/D3受容体パーシャルアゴニストについて比較を行った。CNS Drugs誌オンライン版2020年4月3日号の報告。  主な結果は以下のとおり。 ・アリピプラゾールとは対照的に、ブレクスピプラゾールは、ドパミンD2活性が低く、セロトニン5-HT1Aおよび5-HT2A受容体親和性が高い。一方、cariprazineは、ドパミンD3受容体親和性が最も高く、半減期も最も長い。

膝OA、ゾレドロン酸の年1回投与は有効か/JAMA

 骨髄病変を有する症候性の変形性膝関節症者の治療では、ゾレドロン酸の年1回投与はプラセボと比較して、2年後の軟骨量減少の改善効果に差はないことが、オーストラリア・タスマニア大学のGuoqi Cai氏らの検討「ZAP2試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年4月21日号に掲載された。変形性膝関節症患者では、ゾレドロン酸の静脈内投与により膝の痛みや骨髄病変の大きさが低減することが、原理証明研究で示唆されているが、大規模臨床試験のデータはないという。

CLL1次治療、acalabrutinibの第III相試験成績/Lancet

 未治療の症候性慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、acalabrutinib±オビヌツズマブは、標準治療であるオビヌツズマブ+chlorambucilによる化学免疫療法と比較して、無増悪生存(PFS)を有意に改善し、安全性プロファイルも良好であることが、米国・Willamette Valley Cancer Institute/US OncologyのJeff P. Sharman氏らの検討「ELEVATE TN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年4月18日号に掲載された。acalabrutinibは、選択的な共有結合性ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬。未治療CLL患者を対象とした第I/II相試験では、単剤またはオビヌツズマブとの併用で、高い有効性(全奏効割合95~97%)とともに、持続性の寛解、良好な長期忍容性、低い治療中止率が報告されている。オビヌツズマブは抗CD20モノクローナル抗体、chlorambucilは化学療法薬(アルキル化薬)である。

COVID-19に特例承認のレムデシビル、添付文書と留意事項が公開

 2020年5月8日、ギリアド・サイエンシズ社(以下、ギリアド社、本社:米カリフォルニア州)は、特例承認制度の下、レムデシビル(商品名:ベクルリー)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として承認されたことを発表した。現時点では供給量が限られているため、ギリアド社より無償提供され、公的医療保険との併用が可能である。  本治療薬は5月1日に米国食品医薬品局(FDA)よりCOVID-19治療薬としての緊急時使用許可を受け、日本では5月4日にギリアド社の日本法人から厚生労働省へ承認申請が出されていた。

夜間の光曝露と双極性障害患者の躁症状との関連

 これまでの研究において、夜間に寝室を暗く保つことは、双極性障害(BD)患者の躁症状減少と関連することがわかっている。しかし、実際の夜間での光曝露の状況と躁症状との関連は明らかとなっていない。藤田医科大学の江崎 悠一氏らは、夜間の寝室での光曝露とBD患者の躁症状との関連について調査を行った。Chronobiology International誌オンライン版2020年4月2日号の報告。  本研究は、BD外来患者184例を対象とした横断的研究である。夜間の睡眠中の平均光強度は、ポータブル光度計を用いて、7夜連続で測定した。躁症状は、ヤング躁病評価尺度(YMRS)を用いて評価し、スコア5以上を「軽躁状態」と定義した。

進行NSCLC、PS不良患者へのICI投与/Cancer

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与について、全身状態(PS)が重要な指標となるようだ。米国・マサチューセッツ総合病院のLaura A. Petrillo氏らによる検討で、PSが低下した患者は良好な患者と比べて、投与後の生存期間が有意に短いこと、終末期での投与が多いことが判明したという。また、終末期の投与は、ホスピス利用の低さおよび院内死亡リスクの増大とも関連していた。Cancer誌2020年3月15日号掲載の報告。

心臓再同期療法後、神経体液性因子抑制薬の中止は可能か?【Dr.河田pick up】

 左脚ブロックを伴う心不全患者において、神経体液性因子抑制薬による左室駆出率(LVEF)の改善は2%程度にとどまる。一方、心室再同期療法(CRT)は、心室同期不全を伴う心筋症において、進行したケースにおいても劇的に左室駆出率を改善することがある。これは、左脚ブロックなどの伝導障害が、一部の心筋症において大きな要因となっていることを意味する。一方で、CRTの植込み後に心機能が正常化した心不全患者に対し、神経体液性因子抑制薬を継続する必要性ついてはいまだに不明である。本研究では、CRT植込み後に左室駆出率が正常化した患者において、神経体液因子抑制薬を中止することが安全かつ可能かどうかが評価されている。ベルギー・Ziekenhuis Oost-Limburg病院のPetra Nijst氏らによる報告で、Journal of the American College of Cardiology誌3月号に掲載。

カリウム代用塩の使用で心血管死が9割減?/BMJ

 中国において全国的に、食事で摂取する塩をカリウム代用塩にすることで、心血管疾患死の約9分の1を予防できるとの推定結果が示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMatti Marklund氏らが、任意の塩(卓上または料理で使用する塩)をカリウムが豊富な塩(カリウム代用塩)へ全国的に置き換えることが、中国における死亡率および心血管疾患死にどのような影響を及ぼすかを推定した研究結果を報告した。ナトリウムの摂取が多く、カリウムの摂取が少ない中国や他の国において、カリウム代用塩の使用は血圧を低下させ心血管疾患を予防する有望な戦略と考えられている。しかし、相対的な有益性や有害性について、とくに慢性腎臓病(CKD)患者における高カリウム血症や心臓死のリスクにおいては明らかになっておらず、カリウム代用塩の普及は限定的となっている。結果を踏まえて著者は、「高カリウム血症のリスクを考慮にいれても、相当の有益性がCKD患者にとってもあると推定された」と述べている。BMJ誌2020年4月22日号掲載の報告。

COVID-19、糞便でのウイルス検出期間中央値が22日/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、呼吸器や血清検体と比較して糞便検体で持続期間が有意に長く、流行の予防と管理という点で糞便検体の管理を強化する必要性があることが明らかとなった。さらに、このウイルスは、重症患者の呼吸器組織ではウイルス量が高い状態が長期的に持続しピークが遅いことも確認された。中国・浙江大学のShufa Zheng氏らが、中国・浙江省の病院に入院した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の後ろ向きコホート研究の結果を報告した。2020年4月9日現在、世界中で150万人以上のCOVID-19患者がおり、その数は急増を続けている。これまで、SARS-CoV-2は呼吸器、糞便、血清および尿から検出されることは少数例の検討で報告されてきたが、重症度が異なる疾患進行中のウイルス量の変化はわかっていなかった。BMJ誌2020年4月21日号掲載の報告。

急性上部消化管出血に対する緊急内視鏡の適切な施行時期は(解説:上村直実氏)-1225

吐血や下血を主訴とする急性上部消化管出血の死亡率および外科的手術を減少するために、発症から24時間以内の緊急内視鏡検査が推奨されている。日本の臨床現場でも緊急内視鏡の施行が早ければ早いほど救命率が増加すると考えられているものの、緊急内視鏡検査をいつでも施行できる診療体制を有する施設は限られていることも事実である。 最近、重篤な急性上部消化管出血症例を対象として緊急内視鏡検査の適正な時期を検証する目的で、消化器科へ紹介された後6時間以内に検査する緊急施行群と6時間から24時間以内の早期施行群に分けたRCTが行われた結果、検査施行時期が生命予後や再出血率に影響しないことがNEJM誌に発表された。

ペムブロリズマブによる肺がん2次治療、KEYNOTE-010の長期結果/JCO

 ドセタキセルとペムブロリズマブを既治療のPD-L1陽性進行生存非小細胞肺がん(NSCLC)と比較したKEYNOTE-010試験において、ペムブロリズマブはTPS≧50%と≧1%で全生存率(OS)を改善した。ペムブロリズマブ35サイクル/2年後あるいはペムブロリズマブ再治療を含めた、KEYNOTE-010長期結果が報告された。  KEYNOTE-010試験では、1,033例の対象患者が、ペンブロリズマブ群690例とドセタキセル群343例に無作為に割り付けられた。また、35サイクル/2年後にPDとなった場合も、適格患者において、最大17サイクルのペムブロリズマブによる再治療が許容された。

胆管がん、FGFR阻害薬pemigatinibに期待(FIGHT-202)/Lancet Oncol

 胆管がんの発生に線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)の関与が示唆されているが、FGFR1、2、および3に対する選択的阻害薬pemigatinibが有望であることが示された。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのGhassan K. Abou-Alfa氏らが、既治療の局所進行または転移のある胆管がん患者におけるpemigatinibの安全性と抗腫瘍活性を評価する、非盲検単群複数コホートの多施設共同第II相試験「FIGHT-202試験」を実施。pemigatinibは、FGFR2遺伝子融合/再構成陽性胆管がん患者に対する効果的な治療薬となる可能性が示されたという。Lancet Oncology誌オンライン版2020年3月20日号掲載の報告。

高齢者における難聴とうつ病との関係~メタ解析

 高齢者における難聴とうつ病との関連を報告した研究では、結果に矛盾がみられている。このことから、西オーストラリア大学のBlake J. Lawrence氏らは、関連エビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Gerontologist誌2020年4月2日号の報告。  MEDLINEなどの学術データベースの検索およびOpenGreyなどでの灰色文献の検索を行い、2018年7月17日までの関連記事を抽出した。横断的研究またはコホート研究を含めた。アウトカムの効果は、オッズ比(OR)として算出し、ランダム効果メタ解析を用いてプールした。

新型タバコ肺傷害の死亡例、喘息、心疾患、精神疾患が高率/NEJM

 電子タバコやベイピング製品使用に関連する肺傷害(EVALI)による致死症例および非致死症例について全米調査を行ったところ、致死症例は非致死症例に比べ、喘息や心疾患、精神疾患の併存割合が高いことが明らかになったという。米国疾病管理予防センター(CDC)のAngela K. Werner氏らが報告した。2020年1月7日時点でCDCに報告されたEVALI入院患者の非致死症例は2,558例、致死症例は60例であるという。NEJM誌2020年4月23日号掲載の報告。

NYのCOVID-19入院患者、高血圧57%、糖尿病34%/JAMA

 米国ニューヨーク州の12病院に入院した、新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)患者5,700例について症例研究(case series)を行ったところ、年齢中央値は63歳、約57%が高血圧症を、また約34%が糖尿病を有していたことなどが明らかにされた。米国・Northwell HealthのSafiya Richardson氏らが報告した。試験期間中(2020年3月1日~4月4日)に退院・死亡した患者は、約半数近くの2,634例で、うち死亡は21%だった。また、侵襲的機械的人工換気を要した患者は320例で、その死亡率は88.1%だったという。米国におけるCOVID-19入院患者の特徴とアウトカムの情報は限定的であったが、著者は、「今回の症例研究により、ニューヨーク市周辺におけるCOVID-19入院患者の特徴と早期アウトカムが明らかになった」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年4月22日号掲載の報告。

衝撃のISCHEMIA:安定冠動脈疾患に対する血行再建は「不要不急」なのか?(解説:中野明彦氏)-1224

安定型狭心症に対する治療戦略は1970年代頃からいろいろな構図で比較されてきた。最初はCABG vs.薬物療法、1990年代はPCI(BMS) vs.CABG、そして2000年代後半からPCI(+OMT)vs.OMT(最適な薬物療法)の議論が展開された。PCI vs.OMTの代表格がCOURAGE試験(n=2,287)1)やBARI-2D(n=2,368)、FAME2試験(n=888)である。とりわけ米国・カナダで行われ、総死亡+非致死性心筋梗塞に有意差なしの結果を伝えたCOURAGE試験のインパクトは大きく、米国ではその後の適性基準見直し(AUC:appropriate use criteria)や待機的PCI数減少につながった。一方COURAGEはBMS時代のデータであり、症例選択基準やPCI精度にバイアスが多いなど議論が沸騰、結局「虚血領域が広ければPCIが勝る」とのサブ解析2)が出て何となく収束した。しかしこの仮説は後に否定され3)、本試験15年後のfollow-up4)も結論に変化はなかった。