日本語でわかる最新の海外医学論文|page:439

血漿中P-tau217、アルツハイマー病を高精度に識別/JAMA

 血漿中P-tau217(plasma tau phosphorylated at threonine 217)は、アルツハイマー病(AD)と他の神経変性疾患を高い精度で識別できることが明らかにされた。従来の血漿中P-tau181やニューロフィラメント軽鎖(NfL)および画像診断のMRIよりもその精度は有意に高かったが、一方で脳脊髄液(CSF)・P-tau217、CSF・P-tau181やtau-PETとは有意差は示されなかった。スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らが、3つのコホート、被験者総数1,402例を対象に行った試験で明らかにしたもので、ADの診断検査について、現行のアプローチでは限界があると指摘されていることから、著者は「さらなる検討を行い、このアッセイを最適化し、非選択の多様な集団で検証を行い、臨床ケアにおける潜在的な役割を確立する必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年7月28日号掲載の報告。

新型コロナ感染症、ARDSの新たな機序の発見?(解説:山口佳寿博氏)-1265

本論文は、新型コロナ(SARS-CoV-2)に罹患し肺炎、ARDSを基礎とした重篤な呼吸不全のために死亡した7症例の肺組織を用いて病理・形態像(光顕、走査電顕、微小CT画像、免疫組織化学)ならびに血管増生に関与する323個の遺伝子の発現動態を解析したものである。比較として、A型インフルエンザ(AH1N1)で死亡した症例の肺(7例)と正常肺(10例、肺移植に使用されなかった肺)を用いて上記と同様の解析が施行された。SARS-CoV-2、AH1N1肺の基本病理像はDADであったが、肺重量はAH1N1で重くSARS-CoV-2肺の1.4倍であった。すなわち、AH1N1肺では血液成分の漏出に起因する肺水腫がより著明であることが示唆された。

新しく出てくるTAVI弁は使えるか?(解説:上妻謙氏)-1264

重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、その低侵襲かつ有効な治療のため世界中で急速に普及し、一般的な医療となってきた。今まで世界で市販され使用されてきた人工弁はバルーン拡張型と自己拡張型に分かれるが、新規で市販されてくる人工弁は自己拡張型ばかりである。先行するメドトロニック社のコアバルブシリーズの人工弁はsupra-annularタイプといって元々の自己弁輪部よりも大動脈の上部に新規の人工弁が存在するようになり、石灰化の強いAS患者において自己弁部の石灰化で人工弁が変形した影響を受けにくくなるメリットがある。

FDA、オシメルチニブのEGFR陽性肺がん術後補助療法をブレークスルーセラピー指定/アストラゼネカ

 2020年7月31日、米国食品医薬品局(FDA)は、第3世代EFGR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)による完全切除後の早期(Stage IB~IIIA)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)への術後補助療法をブレークスルーセラピーに指定した。  この指定は、米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表された第III相ADAURA試験のデータに基づくもの。この試験では、オシメルチニブによる術後補助療法は、統計的に有意で臨床的に意味のある無病生存率(DFS)の改善を示した(HR:0.21、95% CI:0.16~0.28; p

インフルとCOVID-19同時流行の対策提唱/日本感染症学会

 2020年8月3日、日本感染症学会は『今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて』の提言を学会ホームページ内に公開した。  新型コロナウイルスの流行を推測した研究によると、この冬、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行が予測されており、とくにインフルエンザの流行期と重なることで、重大な事態になることが危惧されている。また、インフルエンザとの混合感染は、COVID-19入院患者の4.3~49.5%に認められている。  そのため、本提言は、石田 直氏(インフルエンザ委員会委員長/倉敷中央病院)をワーキンググループ委員長に迎え、インフルエンザおよびCOVID-19の専門家、医師会の角田 徹氏(東京都医師会副会長/角田外科消化器科医院 院長)や釜萢 敏氏(日本医師会常任理事/小泉小児科医院 院長)が参加して作成された。

VTEへのリバーロキサバン、日本の実臨床での有効性(J'xactly Study)/日本循環器学会

 日本における静脈血栓塞栓症(VTE)患者は欧米ほど多くないが、増加傾向にある。VTE治療および再発抑制に対して、直接作用型第Xa因子阻害薬リバーロキサバンが2015年に承認され使用されているが、その実臨床データは十分ではない。VTE治療における日本の実臨床でのリバーロキサバンの有効性と安全性を前向きに評価したJ'xactly Studyの結果を、日本大学の奥村 恭男氏が、第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で発表した。  J'xactly Studyは、深部静脈血栓症(DVT)および肺血栓塞栓症(PE)患者を対象に、リバーロキサバンの有効性と安全性を検討した多施設共同前向き観察コホート研究。国内の152施設が参加した。

アカラブルチニブ、慢性リンパ性白血病治療薬として、EUの承認勧告取得/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年7月27日、欧州連合(EU)においてアカラブルチニブに対し、慢性リンパ性白血病(CLL)の成人患者の治療薬として、製造販売承認が勧告されたことを発表した。  今回の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)の肯定的見解は、前治療歴のないCLL患者を対象にしたELEVATE TN、および再発または難治性CLL患者さんを対象にしたASCENDの2つの第III相臨床試験の結果に基づいている。  ELEVATE TN試験では、前治療歴のないCLL患者において、アカラブルチニブとオビヌツズマブの併用療法、およびアカラブルチニブ単剤療法が、標準的な化学免疫療法であるchlorambucilとオビヌツズマブとの併用療法と比較して、病勢進行または死亡のリスクをそれぞれ90%および80%低下させることが確認された。ASCEND試験では、試験対象となった再発または難治性CLL患者のうち、12ヵ月時点で生存かつ病勢進行も認められなかった患者の割合が、アカラブルチニブ投与群では88%だったのに対し、リツキシマブとidelalisibまたはベンダムスチンの併用療法群では68%であった。アカラブルチニブの安全性および忍容性は、両試験ともに既知のプロファイルと一致していまた。

COVID-19パンデミック時の不安やうつ症状の有症率とその予測因子

 COVID-19による世界的なパンデミックの効果的なマネジメントのため、厳格な移動制限の実施とソーシャルディスタンスを保つことが求められている。キプロス大学のIoulia Solomou氏らは、一般集団におけるCOVID-19パンデミックの心理社会学的影響を調査し、メンタルヘルスの変化を予測するリスク因子と保護因子の特定を試みた。また、ウイルス蔓延を阻止するための予防策の準拠についても調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2020年7月8日号の報告。  社会人口統計学的データ、予防策の準拠、QOL、全般性不安障害尺度(GAD-7)およびこころとからだの質問票(PHQ-9)を用いたメンタルヘルスの状態を、匿名のオンライン調査で収集した。

腹壁ヘルニア修復術、ロボット手術は入院日数短縮せず/BMJ

 腹壁ヘルニアの修復術では、ロボット手術と腹腔鏡手術で術後90日までの入院日数に差はなく、ロボット手術は手術時間が2倍近く長く、医療費が有意に高額であることが、米国・McGovern Medical School at UTHealthのOscar A. Olavarria氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2020年7月14日号に掲載された。腹壁ヘルニア修復術におけるロボット手術と腹腔鏡手術を比較した、米国のデータベースを用いた後ろ向き研究では、術後の入院期間はロボット手術で短く、臨床アウトカムに差はないと報告されている。これらの知見を裏付けるために、無作為化対照比較試験の実施が望まれていた。

新規HIV感染者ゼロを目指して(解説:岡慎一氏)-1267

ワクチンのない現在、HIV感染を確実に防ぐ方法は2つある。1つは、感染者が治療を受けウイルス量を検出限界以下にすること(Undetectable equals Untransmittable:U=U)と、もう1つは感染リスクのある人が性行為の前に予防薬を飲むこと(Pre-Exposure Prophylaxis:PrEP)である。U=UとPrEPが実行されれば新規感染者はゼロになる、はずである。この論文は、PrEPに関する大規模RCTの結果である。もちろん世界のどんな地域でもHIV感染者より感染リスクのある人(非感染者)のほうが、圧倒的に人数が多い。したがって、PrEPへの注目度は、非常に高い。

ダパグリフロジン、2型DM合併問わずCKD患者に有益/AstraZeneca

 アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)は、同社が行ったダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の第III相DAPA-CKD試験の結果を発表した。  慢性腎臓病(CKD)は、腎機能が低下することにより起こる重篤な進行性の疾患。最も一般的な原因疾患は、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎で、重篤な状態になると腎障害および腎機能低下が進行し、血液透析や腎移植を必要とする末期腎不全(ESKD)となる。全世界で約7億人の患者が推定されている。

ラメルテオンの術後せん妄予防効果~胃切除後高齢者を対象とした第II相試験

 高齢患者における胃がん症例数は増加しており、術後せん妄を予防する重要性は高まっている。静岡県立静岡がんセンターの本田 晋策氏らは、胃切除後の高齢患者における術後せん妄の予防に対するラメルテオンの有効性を評価するため、単施設プロスペクティブ第II相試験を実施した。Surgery Today誌オンライン版2020年7月8日号の報告。  対象は、75歳以上の高齢患者。手術の8日前から退院までラメルテオン8mg/日を投与した。術後せん妄の評価には、集中治療室におけるせん妄評価法(CAM-ICU)を用いた。

成人アトピーは糖尿病を引き起こす?

 アトピー性皮膚炎(AD)は糖代謝に影響を及ぼすのか。デンマーク・コペンハーゲン大学のLise Gether氏らは、ADの成人において、インスリン感受性の低下やその他の糖代謝異常が認められるかを調べるため、経口糖負荷検査(OGTT)と高インスリン正常血糖クランプ法を用いて検討した。結果として、健康成人との間に違いはなかったことが報告され、著者は、「炎症性皮膚疾患であるADは、糖代謝にほとんどあるいはまったく影響しないことが示唆される」と述べている。疫学研究では、一般集団と比較して、ADの成人における2型糖尿病の発生の増加が示されている。Diabetes Obesity and Metabolism誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。

潜在性甲状腺機能低下症併発の急性心筋梗塞患者、ホルモン療法は有効か/JAMA

 潜在性甲状腺機能低下症を併発した急性心筋梗塞患者において、甲状腺ホルモン製剤レボチロキシンはプラセボと比較して、52週後の左室駆出率(LVEF)を改善しないことが、英国・ニューカッスル大学のAvais Jabbar氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年7月21日号に掲載された。甲状腺ホルモンは心筋収縮能の調節に重要な役割を果たしており、急性心筋梗塞患者における潜在性甲状腺機能低下症は不良な予後と関連するという。

COVID-19抗体検査の診断精度(解説:小金丸博氏)-1266

COVID-19の感染拡大を制御するためには、迅速かつ精度の高い診断検査が求められる。COVID-19の診断検査には主にPCR検査、抗原検査、抗体検査があるが、今回、抗体検査の診断精度をシステマティックレビューとメタ解析により検証した研究がBMJ誌に報告された。本研究の要点は、(1)抗体検査法の感度は検査法によって差があること、(2)市販の検査キットは施設内検査(in-house assay)と比べて感度が低いこと、(3)抗体検査の感度は発症後1週間以内で低く発症後3週以上で高いこと、の3点である。ELISA法の感度は84.3%(95%信頼区間:75.6%~90.9%)、LFIA法は66.0%(同:49.3%~79.3%)、CLIA法では97.8%(同:46.2%~100%)だった。プール解析した特異度は、ELISA法が97.6%、LFIA法は96.6%であり、CLIA法はプール化に適さず評価できなかった。LFIA法の感度は他の検査法より低く、特異度に関しては大きな差は認めなかった。診断精度は検査法によって差があるため、抗体検査の結果を評価する際にはどの検査法を用いたかを考慮する必要がある。

併存症のある高齢乳がん患者、補助化学療法と生存は関連するか/JAMA Oncol

 複数の併存疾患を有する高齢乳がん患者において、補助化学療法は生存と関連するのか。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNina Tamirisa氏らは、併存疾患を有する70歳以上の乳がん患者を対象に、補助化学療法と生存の関連を評価する、後ろ向きの大規模コホート研究を実施した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年7月16日号に掲載の報告より。  対象は米国国立がんデータベースに登録された、70歳以上のエストロゲン受容体陽性、ERBB2陰性、Charlson/Deyo 併存疾患指数が2または3の乳がん患者。2010年1月1日~2014年12月31日にリンパ節転移陽性乳がんの手術を受けていた。

周産期うつ病の日本における有病率~メタ解析

 周産期うつ病は、女性で問題となる重大な精神疾患の1つである。しかし、十分なレビューが行われておらず、日本人女性の周産期うつ病の有病率については、一定のコンセンサスが得られていない。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人女性の周産期うつ病の信頼できる有病率の推定を試みた。Annals of General Psychiatry誌2020年6月26日号の報告。  1994~2017年に発表された出産前または産後うつ病の有病率に関するデータを含む研究を、2つのデータベース(PubMed、ICHUSHI)より特定した。公開されたレポートよりデータを抽出した。

医療機関への寄付、 患者側の受け止め方は?/JAMA

 米国では、医療機関支援の資金源として、フィランソロピー(主に寄付による活動支援)の重要性が増しているが、倫理的ガイドラインの策定に資する実証的なエビデンスはほとんどないという。そこで、米国・ミシガン大学のReshma Jagsi氏らは、病院や医師に感謝の思いを持つ患者に慈善的な寄付を促す方法について、一般の人々の受け止め方を評価するための調査を行った。その結果、多くの人々が、寄付をする可能性のある患者を特定したり、寄付を促したり、寄付者に感謝の念を伝えるための法的に許容されているアプローチを支持しないことが明らかとなった。JAMA誌2020年7月21日号掲載の報告。

再発・難治性多発性骨髄腫、KdD療法でPFS改善/Lancet

 再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、プロテアソーム阻害薬カルフィルゾミブ+デキサメタゾン+抗CD38モノクローナル抗体製剤ダラツムマブ(KdD)による3剤併用療法は、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)に比べ、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、ベネフィット・リスクのプロファイルも良好であることが、ギリシャ・アテネ大学のMeletios Dimopoulos氏らが実施した「CANDOR試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年7月18日号に掲載された。新規に診断された多発性骨髄腫の治療では、レナリドミド+ボルテゾミブにより生存期間が改善されているが、多くの患者は病勢の進行または毒性により治療中止に至るため、再発・難治性多発性骨髄腫における新たな治療法の必要性が高まっている。カルフィルゾミブ+ダラツムマブは、第I相試験(MMY1001試験)において再発・難治性多発性骨髄腫に対する実質的な有効性と忍容可能な安全性が報告されている。

2型糖尿病適応のimeglimin、国内製造販売承認を申請/大日本住友製薬

 2020年7月30日、大日本住友製薬は2型糖尿病治療薬として開発中のimegliminの国内製造販売承認の申請を行ったと発表した。本剤は2021年度に国内で世界初となる上市を予定している。  imegliminは、ミトコンドリアの機能を改善するという独自の作用機序を有し、膵臓・筋肉・肝臓において、グルコース濃度依存的なインスリン分泌の促進と、イ ンスリン抵抗性の改善および糖新生の抑制という作用を示すことで血糖降下作用が期待されている。さらに、本剤の作用機序は、糖尿病によって引き起こされる細小血管・大血管障害の予防につながる血管内皮機能および拡張機能の改善作用や、膵臓β細胞の保護作用を有する可能性も示唆されている。