日本語でわかる最新の海外医学論文|page:410

日本人高齢者の認知症リスクと中年期以降の長期的な体重変化~大崎コホート2006

 高齢になるにつれ、体重減少や認知機能障害の頻度が高まるが、日本人高齢者の認知症発症リスクに体重変化が関連しているかは不明である。東北大学の陸 兪凱氏らは、中年期以降の長期的な体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査するため、日本人高齢者のコミュニティーベースコホート研究を実施した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年12月26日号の報告。  2006年に65歳以上の障害のない日本人高齢者を対象としたコホート研究を実施した。対象者は、1994年と2006年に自己報告式質問票を用いて体重データを収集し、体重変化に基づき次のように分類した。安定体重(-1.4~+1.4kg)、体重増加(≧+1.5kg)、体重減少1(-2.4~-1.5kg)、体重減少2(-3.4~-2.5kg)、体重減少3(-4.4~-3.5kg)、体重減少4(-5.4~-4.5kg)、体重減少5(≦-5.5kg)。認知症発症は、公的な介護保険データベースより収集した。対象者のフォローアップ期間は、2007年4月~2012年11月の5.7年間であった。認知症発症に関連する多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。

低・中所得国は、がん手術後の転帰が不良/Lancet

 がん患者の80%が手術を必要とするが、術後の早期の転帰に関する低~中所得国(LMIC)の比較データはほとんどないという。英国・エディンバラ大学のEwen M. Harrison氏らGlobalSurg Collaborative and NIHR Global Health Research Unit on Global Surgeryの研究グループは、とくに疾患の病期や合併症が術後の死亡に及ぼす影響に着目して、世界の病院のデータを用いて乳がん、大腸がん、胃がんの術後転帰を比較した。その結果、(1)LMICでは術後の死亡率が高いが、これは病期が進行した患者が多いことだけでは十分に説明できない、(2)術後合併症からの患者救済能力(capacity to rescue)は、有意義な介入のための明確な機会をもたらす、(3)術後の早期死亡は、一般的な合併症の検出と介入を目指した、周術期の治療体制の強化に重点を置いた施策によって抑制される可能性があることなどが示された。Lancet誌2021年1月21日号掲載の報告。

副反応は大丈夫?新型コロナワクチンの疑問に答えるLINEボット

 国内でも新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が月内にもはじまる見込みだが、新しいワクチンであることから副反応等を理由に、接種をためらう人も多い。  こうした状況を憂慮した医師を中心に、ワクチンに関するよくある質問に答えるLINEのチャットボットを利用した情報提供がはじまった。  この「コロワくんの相談室」はLINEに友達追加することで、無料で利用できる。 ・ワクチンの接種方法 ・ワクチンの効果 ・ワクチンの仕組み ・ワクチンの副反応  という画面のメニューから、自分の知りたい内容を選んでいくと、ボットが事前に用意された回答を提示する。回答の下には関連する厚生労働省サイトや、回答の根拠となる論文誌へのリンクもつけられており、医療従事者が患者に説明する際にも利便性が高そうだ。

日本における緊急事態宣言下のマタニティハラスメントとうつ病との関連

 妊娠への差別として知られるマタニティハラスメントは、先進国において広まったままである。しかし、マタニティハラスメントによるメンタルヘルスへの影響を調査した研究は、十分とはいえない。北里大学の可知 悠子氏らは、日本における妊娠中のマタニティハラスメントとうつ病との関連を調査した。Journal of Occupational Health誌2021年1月号の報告。  日本において一部地域の緊急事態宣言が続く2020年5月22日~31日に妊婦(妊娠確認時に就業していた女性)359人を対象に横断的インターネット調査を実施した。マタニティハラスメントは、国のガイドラインで禁止されている16事項のいずれかを受けた場合と定義した。うつ病の定義は、エジンバラ産後うつ病自己評価票日本語版(EPDS)スコア9以上とした。分析には、ロジスティック回帰分析を用いた。

造血器腫瘍遺伝子パネル検査を開発/大塚製薬・イルミナ

 大塚製薬と次世代シークエンサーの世界トップ企業であるIllumina,Inc.(以下、イルミナ社)は、造血器腫瘍を対象とするがん遺伝子パネル検査を体外診断用検査キットとして開発および商業化する契約を締結したと発表。  今回の契約締結により、大塚製薬は、同社が国内主要施設と共同研究を進めている日本で初めての造血器腫瘍を対象としたがん遺伝子パネル検査を、イルミナ社の医療機NextSeq 550Dxシステムで使用できる体外診断用検査キットとして開発する。

代謝改善手術、2型糖尿病で長期効果が明らかに/Lancet

 2型糖尿病患者の長期管理において、代謝改善手術(metabolic surgery)は従来の内科的治療と比較して、10年時の糖尿病寛解率が高く、糖尿病関連合併症も少ないことが、イタリア・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSのGeltrude Mingrone氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月23日号に掲載された。従来の肥満減量手術(bariatric surgery)の観察研究では、糖尿病の寛解が長期に持続する可能性が示唆されているが、これらの知見を2型糖尿病の広範な患者集団に外挿することは困難だという。また、これまでに、2型糖尿病への代謝改善手術の無作為化対照比較試験で、5年を超えるデータは得られていなかった。

遺伝子ワクチンの単回接種は新型コロナ・パンデミックの克服に有効か?(解説:山口佳寿博氏)-1352

現在、新型コロナに対する世界のワクチン争奪戦は熾烈を極め、ワクチンが世界全域に満遍なく配布されるかどうかは微妙な問題である。本邦にあってもPfizer社、Moderna社、AstraZeneca社と総計3.14億回分(2回接種として1億5,700万人分で全国民に行き渡る量)のワクチンが契約されているが、各製薬メーカーのワクチン生産能力には限界があり、契約されている全量が滞りなく納入されるという保証はない。それ故、世界全体で新型コロナのパンデミックを乗り切るためにはワクチンの2回接種ではなく1回接種を考慮する必要がある。

双極性障害に合併した強迫症状に対するアリピプラゾール増強療法

 双極性障害の薬物治療における第1選択薬の1つであるアリピプラゾールは、セロトニン再取り込み阻害薬耐性の強迫症(OCD)患者の臨床症状に対する有効性が示唆されている。そのため、OCDを合併した双極性障害患者では、気分安定薬にアリピプラゾールを併用にすることにより、より良い治療結果をもたらす可能性がある。イタリア・トリノ大学のGabriele Di Salvo氏らは、OCDを合併した寛解期双極性障害患者の強迫症状を治療するために、リチウムまたはバルプロ酸にアリピプラゾールを併用した際の有効性および安全性を検討した。Medicina誌2020年12月24日号の報告。

片頭痛に対する生物学的製剤のレビュー

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とするモノクローナル抗体は、片頭痛の予防に効果があるといわれている。CGRPモノクローナル抗体であるeptinezumab、 erenumab、fremanezumab、ガルカネズマブは、臨床試験において有効性と良好な安全性および忍容性プロファイルを示している。erenumabは、完全ヒトモノクローナル抗体であるが、他の薬剤はヒト化モノクローナル抗体であり、これらの薬剤は免疫反応を引き起こす可能性がある。米国・テバファーマスーティカルのJoshua M. Cohen氏らは、CGRPモノクローナル抗体と免疫原性との関係、それらの潜在的な臨床的意義についてレビューを行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年1月7日号の報告。

KRASG12C変異陽性肺がんにおけるsotorasib、迅速かつ持続的な効果示す/アムジェン

 アムジェンは、2021年1月29日、126例のKRASG12C変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)の患者を対象に治験薬sotorasibを評価した臨床試験であるCodeBreaK100の第II相コホートから得られた結果を発表した。この結果は、国際肺癌学会(IASLC)2020 世界肺癌会議(WCLC)のPresidential Symposiumで発表され、中央値で1年超の追跡評価期間を有する、NSCLCを対象として完遂した主要な第II相試験の初めての結果である。  Sotorasibの奏効率(ORR)および病勢コントロール率(DCR)は、それぞれ37.1%と80.6%であり、奏効期間の中央値は10ヵ月であった(データカットオフ2020年12月1日、追跡期間中央値12.2ヵ月)。

新型コロナ軽症例に出現、味覚障害以外の口腔病変とは?

 ブラジル・ブラジリア大学のDos Santos氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の口腔徴候と症状の有病率に関するエビデンスの系統的レビューを行い、味覚障害以外の口腔病変について明らかにした。Journal of Dental Research誌2021年2月号掲載の報告。  本レビューはPRISMAチェックリストに基づき、文献は6つのデータベースと灰色文献から検索されたCOVID-19患者の口腔症状と徴候に言及する研究が含まれた。バイアスのリスクはJBI(Joanna Briggs Institute)の評価ツールを用いて評価した。このレビューには33件の横断的研究と7件の症例報告の計40件の研究が含まれていた。  主な結果は以下のとおり。

漿液性卵巣がん、Wee1阻害薬追加でPFS延長/Lancet

 high-grade漿液性卵巣がんの治療において、Wee1阻害薬adavosertib(AZD1775、MK1775)とゲムシタビンの併用はゲムシタビン単独と比較して、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長させることが、カナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのStephanie Lheureux氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月23日号で報告された。Wee1キナーゼは、細胞周期のG2/M期チェックポイントの重要な制御因子で、G2/M期チェックポイントは損傷したDNAの有糸分裂への進入を防止する。high-grade漿液性卵巣がんは、TP53遺伝子変異の発現頻度が高く複製ストレスが高度ながんであり、TP53遺伝子変異はS期およびG2期チェックポイントへの依存性を増大させる。adavosertibは、Wee1を阻害することでG2期チェックポイント脱出を誘導することから、TP53遺伝子変異を有する腫瘍に有効と考えられている。adavosertib+ゲムシタビン療法は、前臨床試験で相乗効果を示し、早期の臨床試験では有望な抗腫瘍活性が確認されている。

悪性胸膜中皮腫の1次治療、ニボルマブ+イピリムマブがOS改善/Lancet

 未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の治療において、ニボルマブ+イピリムマブ療法は標準的化学療法と比較して、全生存(OS)期間を4ヵ月延長し、安全性プロファイルは同程度であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのPaul Baas氏らが行った「CheckMate 743試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月30日号で報告された。MPMの承認済みの全身化学療法レジメンは、生存に関する有益性は中等度であり、転帰は不良だという。ニボルマブ+イピリムマブ療法は、非小細胞肺がんの1次治療を含む他の腫瘍で臨床的有益性が示されている。

世界初の経口GLP-1受容体作動薬発売/ノボ ノルディスクファーマ・MSD

 ノルディスクファーマとMSDは、2型糖尿病を効能・効果とする1日1回服用の世界初にして唯一の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(商品名:リベルサス錠)を、2月5日に発売した。  今回発売された経口のセマグルチドは、2型糖尿病患者の食事および運動療法で効果不十分な場合の血糖コントロールの改善を適応とする糖尿病治療薬として承認されている。 承認にあたっては、9,543人の成人2型糖尿病患者が参加したグローバル臨床開発プログラム(PIONEER)に基づきなされた。このPIONEERの10試験のうち、2つの第IIIa相臨床試験では、日本人2型糖尿病患者を対象に行われた。

高血圧DNAワクチンの第I/IIa相試験で抗体産生確認/アンジェス

 アンジェスが開発している高血圧DNAワクチンの第I/IIa相臨床試験(オーストラリアで実施中)において、投与後の経過観察期間を経た初期の試験結果から、重篤な有害事象はなく安全性に問題がないこと、また、アンジオテンシンIIに対する抗体産生を認められたことを、2月4日、アンジェスが発表した。今後、安全性、免疫原性および有効性を評価する試験を継続的に行っていく予定。  高血圧DNAワクチンは、アンジオテンシンIIに対する抗体を体内で作り出し、その働きを抑えることで高血圧を治療するために開発が進められている。

血液によるCOVID-19重症化リスクの判定補助キットが保険適用/シスメックス

 シスメックスは2月4日、SARS-CoV-2陽性患者における重症化リスク判定を補助する新規の体外診断用医薬品として、インターフェロン-λ3(IFN-λ3)キット「HISCLTM IFN-λ3試薬」が2月3日に保険適用を受けたことを発表した。同キットと全自動免疫測定装置を用いて血清中のIFN-λ3を測定することで、SARS-CoV-2陽性患者における重症化リスク判定を補助するための情報を提供する。  シスメックスは国立国際医療研究センターとの共同研究を通じ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクの経過観察に有用なバイオマーカーとして、IFN-λ3を特定した。IFN-λ3は重症化の症状が認められる数日前に急激に血液中の濃度が上昇することが確認されており、重症化の予測や経過観察補助としての臨床有用性が報告されている1,2)。同製品は、2020年12月22日にSARS-CoV-2陽性患者における重症化リスク判定を補助する新規の体外診断用医薬品として、製造販売承認を取得している3)。

統合失調症患者に対する補助的ヨガトレーニング

 統合失調症患者の認知機能障害改善に対するヨガトレーニングの許容性および有効性に関連する要因を特定するため、インド・Dr. Ram Manohar Lohia HospitalのTriptish Bhatia氏らは、検討を行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2020年12月9日号の報告。  インド人統合失調症患者の認知機能に対するヨガトレーニングの影響を検討した2つの臨床試験でのデータを分析した。分析に使用した臨床試験は、21日間のランダム化比較試験(286例、3、6ヵ月のフォローアップ)および21日間の非盲検試験(62例)であった。ヨガトレーニング後の認知機能(注意力、顔の記憶)改善とベースライン特性(年齢、性別、社会経済状況、教育状況、教育期間、症状重症度)との関連を調査するため、多変量解析を用いた。

新型コロナ、20歳未満は感染しにくいが感染させやすい

 新型コロナウイルスの家庭内感染の調査から、20歳未満の若年者は高齢者より感染しにくいが、いったん感染すると人にうつしやすいことが、中国・武漢疾病予防管理センターのFang Li氏らの後ろ向き研究で示唆された。また感染力は、症状発現前の感染者、症状発現後の感染者、無症状のままだった感染者の順で高かった。Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2021年1月19日号に掲載。

TNF阻害薬効果不十分のRA、トシリズマブvs.リツキシマブ/Lancet

 TNF阻害薬で効果不十分の関節リウマチ患者において、RNAシークエンシングに基づく滑膜組織の層別化は病理組織学的分類と比較して臨床効果とより強く関連しており、滑膜組織のB細胞が低発現または存在しない場合は、リツキシマブよりトシリズマブが有効であることを、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のFrances Humby氏らが、多施設共同無作為化非盲検第IV相比較試験「rituximab vs tocilizumab in anti-TNF inadequate responder patients with rheumatoid arthritis:R4RA試験」の16週間の解析結果、報告した。生物学的製剤は関節リウマチの臨床経過を大きく変えたが、40%の患者は十分な効果を得られないことが示唆されており、その機序はいまだ明らかになっていない。

COVID-19外来患者への中和抗体2剤併用療法は有効か?/JAMA

 軽症~中等症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の中和抗体であるbamlanivimabとetesevimabの併用療法は、プラセボと比較し11(±4)日目のSARS-CoV-2ウイルス量を有意に減少させることが確認された。米国・ベイラー大学医療センターのRobert L. Gottlieb氏らが、COVID-19外来患者を対象に、bamlanivimab単独療法またはbamlanivimab+etesevimab併用療法の有効性と安全性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照第II/III相試験「BLAZE-1試験」の結果を報告した。すでにBLAZE-1試験第II相コホートの中間解析として、bamlanivimabによるウイルス量減少効果が報告され、この結果に基づき米国では2020年11月より、軽症~中等症COVID-19患者で成人および12歳以上の小児(体重40kg以上)、かつ、重症化または入院するリスクが高い患者に対するbamlanivimabの緊急使用が許可されている。JAMA誌オンライン版2021年1月21日号掲載の報告。