再発多発性骨髄腫、イサツキシマブ追加でPFS延長/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2021/06/22

 

 既治療の再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブをカルフィルゾミブ+デキサメタゾンと併用すると、カルフィルゾミブ+デキサメタゾンと比較して、無増悪生存(PFS)期間が延長するとともに深い奏効の割合が改善し、新たな標準治療となる可能性があることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施した「IKEMA試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年6月4日号で報告された。

上乗せ効果を評価する非盲検無作為化第III相試験

 本研究は、日本を含む16ヵ国69施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年11月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(フランスSanofiの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、前治療ライン数が1~3の再発・難治性多発性骨髄腫で、血清または尿中のM蛋白(血清M蛋白≧0.5g/dL、尿中M蛋白≧200mg/24時間)の測定が可能な患者であった。

 被験者は、イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾンの投与を受ける群(イサツキシマブ群)またはカルフィルゾミブ+デキサメタゾンの投与を受ける群(対照群)に、3対2の割合で無作為に割り付けられた。イサツキシマブは、10mg/kg/週を4週間静脈内投与し、その後は同用量が2週ごとに投与された。投与は、病勢進行または許容されない毒性が発現するまで継続された。

 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無増悪生存期間であった。

VGPR以上、MRD陰性、奏効期間も良好

 302例(年齢中央値64歳、女性44%、前治療レジメン数中央値2)が登録され、イサツキシマブ群に179例、対照群に123例が割り付けられた。

 追跡期間中央値20.7ヵ月の時点で、独立審査委員会の判定による無増悪生存期間中央値は、イサツキシマブ群が未到達、対照群は19.15ヵ月であり、有意な差が認められた(ハザード比[HR]:0.53、99%信頼区間[CI]:0.32~0.89、片側検定のp=0.0007)。また、2年時の推定無増悪生存率は、イサツキシマブ群が68.9%、対照群は45.7%であった。

 全奏効割合(国際骨髄腫作業部会[IMWG]の基準で、厳格な完全奏効[sCR]、完全奏効[CR]、最良部分奏効[VGPR]、部分奏効[PR]を達成した患者の合計)は、イサツキシマブ群が87%(155/179例)、対照群は83%(102/123例)と、両群間に有意な差はみられなかった(片側検定のp=0.19)ものの、VGPR以上の達成割合(73% vs.56%、p=0.0011)はイサツキシマブ群で良好であった。また、CR達成割合(sCR+CR)は、それぞれ40%および28%であった。微小残存病変(MRD)陰性の達成割合は、イサツキシマブ群が対照群の2倍以上だった(30% vs.13%、p=0.0004)。

 奏効期間(HR:0.43、95%CI:0.27~0.67)および次の治療法への移行までの期間(HR:0.57、95%CI:0.38~0.84)はイサツキシマブ群で長かった。

 Grade3以上の試験薬投与後に発現した有害事象(TEAE)は、イサツキシマブ群が77%(136/177例)、対照群は67%(82/122例)で認められ、重篤なTEAEはそれぞれ59%(105例)および57%(70例)、投与中止の原因となったTEAEは8%(15例)、14%(17例)にみられた。試験期間中に、致死的なTEAEはイサツキシマブ群3%(6例)、対照群3%(4例)で発生した。

 著者は、「カルフィルゾミブ+デキサメタゾンへのイサツキシマブの追加は、免疫調節薬を含む1次治療施行後に増悪した患者や、免疫調節薬に抵抗性の患者の新たな治療選択肢となるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)