日本語でわかる最新の海外医学論文|page:362

新型コロナ治療に中和抗体カクテル療法を承認申請/中外

 中外製薬は6月29日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療のためのcasirivimabおよびimdevimabの抗体カクテル療法について、国内における製造販売の承認申請を行ったことを発表した。COVID-19患者を対象とした海外臨床第III相試験(REGN-COV 2067)の成績と、日本人における安全性・忍容性、薬物動態の評価を目的とした国内第I相臨床試験の成績に基づき、厚生労働省に特例承認の適用を求めた。  本抗体カクテル療法は、SARS-CoV-2に対する2種類のウイルス中和抗体(casirivimab+imdevimab)を組み合わせ、COVID-19に対する治療および予防を目的として、米国・リジェネロン社などが開発したもの。

COVID-19に対する政府対応の質がメンタルヘルスに及ぼす影響

 COVID-19のパンデミックは、公衆衛生、経済、メンタルヘルスに深刻なダメージを与えている。カナダ・トロント大学のYena Lee氏らは、ウイルス感染を減少させるための政府の厳格な措置をタイムリーに実施することが、メンタルヘルスにベネフィットをもたらすと仮定し、抑うつ症状発現率の減少に影響するかを調査するためシステマティックレビューを行った。Journal of Affective Disorders誌2021年7月1日号の報告。  政府が実施したCOVID-19に対する対応の厳格さおよびタイムリーさの違いがうつ症状の発症をどの程度緩和するかを調査するため、33ヵ国の研究(114件、64万37例)のシステマティックレビューを実施した。高所得国18ヵ国、上位中所得国9ヵ国、下位中所得国6ヵ国からのデータが含まれた。政府が実施したCOVID-19に対する対応の厳格さおよびタイムリーさの評価には、Oxford COVID-19 Government Response("Stringency")Indexを用いた。うつ病の定義は、PHQ-9スコア10以上またはPHQ-2スコア3以上とした。

新型コロナワクチン後、乳房インプラント施行例でみられた免疫反応

 COVID-19ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、まれに痛みや腫脹などの反応が報告されている。皮膚充填剤のような異物は、免疫系が刺激されることで何らかの反応を引き起こす可能性があるという。ドイツ・Marienhospital StuttgartのLaurenzWeitgasser氏らは、COVID-19ワクチン接種後1~3日の間に乳房インプラント施行歴のある4例で注目すべき反応がみられたとし、その臨床的特徴や経過をThe Breast誌オンライン版2021年6月18日号に報告した。

トファシチニブ、COVID-19肺炎入院患者の予後を改善/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎で入院した患者の治療において、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブはプラセボと比較して、28日以内の死亡または呼吸不全のリスクを抑制し、安全性に大きな差はないことが、ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのPatricia O. Guimaraes氏らが実施した「STOP-COVID試験」で示された。NEJM誌オンライン版2021年6月16日号掲載の報告。  研究グループは、COVID-19肺炎入院患者の治療におけるトファシチニブの有効性と安全性を評価する目的で、二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(Pfizerの助成による)。本試験では、2020年9月16日~12月13日の期間に、ブラジルの15施設で患者登録が行われた。

心筋梗塞非責任病変治療においてFFRは有用なガイドか?(解説:上田恭敬氏)

責任病変のPCIに成功したSTEMI症例で、狭窄度50%以上の非責任病変を有する症例を対象として、非責任病変に対するPCIをアンジオガイドで行うかFFRガイドで行うかの2群に無作為に割り付け、1年間の全死亡、心筋梗塞、入院を伴う緊急血行再建術施行の複合エンドポイントを主要評価項目として、フランスの41病院で実施された多施設研究であるFLOWER-MI試験の結果が報告された。アンジオガイド群に581症例、FFRガイド群に590症例が割り付けられた。主要評価項目の発生は、アンジオガイド群で4.2%、FFRガイド群で5.5%に認められ、群間に差を認めなかった。全死亡は、アンジオガイド群で1.7%、FFRガイド群で1.5%に認めた。心筋梗塞は、アンジオガイド群で1.7%、FFRガイド群で3.1%に認めた。入院を伴う緊急血行再建術施行は、アンジオガイド群で1.9%、FFRガイド群で2.6%に認めた。

夏バテ対策のトップはこまめな飲水/アイスタット

 例年にない暑さが予想されている今年の夏。夏の暑さによる「夏バテ」は、老若男女を問わず起きりうる、身近な体調の悪化であり、生活の質や仕事や勉強の質を落とすリスクとなる。  この「夏バテ」について、働く世代の実際の状況はどのようなものか、株式会社アイスタットは6月18日にアンケートを行った。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員30~69歳の300人が対象。 調査概要 形式:WEBアンケート方式 期日:2021年6月18日 対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(30~69歳/全国)を対象

EGFR exon20挿入変異肺がんに対するDZD9008の可能性/ASCO2021

 EGFR exon20挿入変異(exon20ins)変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するEGFR阻害薬DZD9008の第I相試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、台湾大学のJames Chin-Hsin Yang氏から報告された。  EGFR exon20insはNSCLCの2%以下だが、これまでもいくつかの研究が行われている。本報告は、国際共同の2つの第I相試験を合算した中間解析結果である。 ・対象:EGFRまたはHER2 exon 20insを有する既治療の進行NSCLC ・介入:用量漸増コホートでは、DZD9008 50mg/100mg/200mg/300mg/400mg/日を投与、用量拡大コホートでは200mgと300mg/日を投与 ・評価項目: [主要評価項目]安全性、忍容性 [副次的評価項目]体内薬物動態、全奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、病勢制御率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)

産後のうつ病やQOLに対するアクアエクササイズの効果

 産後うつ病の有病率は、約20%といわれており、女性、乳児、そしてその家族に深刻な影響を及ぼす疾患である。スペイン・Hospital Comarcal de IncaのAraceli Navas氏らは、出産後1ヵ月間の産後うつ病、睡眠障害、QOLに対する中~強度のアクアエクササイズプログラムの有効性および安全性を評価するため、ランダム化臨床試験を実施した。Journal of Clinical Medicine誌2021年5月30日号の報告。  プライマリケア環境下における評価者盲検多施設共同並行群間ランダム化対照試験を実施した。スペイン・マヨルカ島のSon Llatzer Hospital産科部門が管轄する5つのプライマリケアセンターより、合併症リスクの低い妊娠14~20週の妊婦を募集した。妊婦320人は、中~強度のアクアエクササイズケアを行う群(介入群)と通常ケアを行う群(対照群)にランダムに割り付けられた。出産後1ヵ月における睡眠の質(MOS睡眠尺度)、QOL(QOL評価尺度:EQ-5D)、不安または抑うつ症状(エジンバラ産後うつ病自己評価尺度:EPDS)を評価した。

片頭痛の急性期治療、オピオイドは有効性示されず/JAMA

 片頭痛の急性期治療において、トリプタン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェン、ジヒドロエルゴタミン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬、lasmiditan(5-HT1F受容体作動薬)による薬物療法のほか、いくつかの非薬物療法は、痛みや機能の改善をもたらすが、これらを支持するエビデンスの強さ(SOE)にはばらつきがみられ、オピオイドなど他の多くの介入のエビデンスには限界があることが、米国・メイヨークリニックのJuliana H. VanderPluym氏らの調査で示された。著者は、「現行のガイドラインでは、片頭痛の急性期治療にオピオイドやブタルビタール含有配合薬は推奨されていないが、オピオイドはさまざまな病態の急性期患者に頻繁に処方されている。今回の解析では、オピオイドは全般にSOEが低いか不十分であり、他の治療法やプラセボに比べ有害事象の割合が高いことが示された。したがって、現行のガイドラインのオピオイド非推奨に変更はない」と述べている。JAMA誌2021年6月15日号掲載の報告。

まれだが致死的な血栓症への対応・事前説明はきわめて難しい(AZワクチン)(解説:後藤信哉氏)-1407

新型コロナウイルス対策としてワクチンの普及は切り札になれると期待している。ワクチンに限らず、すべての医療介入にはメリットとデメリットがある。新型コロナウイルスワクチンの場合には、ワクチン接種によりウイルス感染の広がりを阻止できるとの社会的期待がある。しかし、個別症例にはデメリットもある。本研究は医療従事者における13万例の接種に合併した5例の血栓症の報告である。対象となった医療従事者は32~54歳で特段の疾病の既往はなかった。いずれの症例も接種後7~10日にイベントが起こっている。アナフィラキシーは接種現場で起こる。対応の準備もできる。接種後7~10日に頭痛、背部痛、腹痛などにて救急搬送されている。いずれの症例も静脈血栓が確認されている。血栓の形成部位は脳静脈洞など普通遭遇しない部位である。本研究では臨床イベントのみでなく血液検査を詳細に施行している。いずれの症例もHIT抗体と呼ばれる血小板第4因子・ポリアニオンの高い抗体価を呈した。著者は、これらの症例をワクチンによる免疫性の血小板減少・血栓症としての自発的な(ヘパリンを使用していないとの意味)ヘパリン惹起血小板減少・血栓症(HITT:heparin-induced thrombocytopenia・thrombosis)としている。HITは時に致死的な病態である。ワクチンにまったくの健常者に、ワクチン接種の1~2週に発症する。

COVID-19入院患者へのトシリズマブを緊急使用許可/FDA

 中外製薬は6月25日、同社創製の関節リウマチ治療薬トシリズマブ(商品名:アクテムラ)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可したと発表した。コルチコステロイドの全身投与を受けており、酸素補給、非侵襲的もしくは侵襲的な人工呼吸、またはECMOが必要な入院中の成人および2歳以上小児がその対象となる。  今回の緊急使用許可は、4つのランダム化比較試験におけるCOVID-19入院患者、計5,500例超の成績に基づいており、酸素補給または呼吸補助を必要とするコルチコステロイド投与中の患者の転帰を改善する可能性があることが示唆された。

妊婦、子供は?各学会のワクチン接種に対する声明まとめ

 新型コロナワクチンの接種が進む中、疾患等を理由として接種に対して不安を持つ人を対象に、各学会が声明を出している。主だったものを下記にまとめた。 ■日本感染症学会 「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」 対象:全般 要旨:ワクチンの開発状況、作用機序、有効性、安全性等の基本情報 ■日本小児科学会 「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」 対象:子供(12歳以上) 要旨:まずは子どもの周囲への成人の接種を進める。そのうえで、12歳以上の子供へのワクチン接種は本人と養育者が十分に理解したうえで進めることが望ましく、個別接種を推奨する。

抗精神病薬による体重増加と臨床効果との関係

 これまでの研究において、抗精神病薬で治療中の慢性期統合失調症患者では、体重増加と精神病理学的改善効果の関連が示唆されている。しかし、多くの交絡因子の影響により、その結果は一貫していない。中国・首都医科大学のYing Qi Chen氏らは、抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者において、体重増加が抗精神病薬の治療効果と関連しているかについて、調査を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年5月11日号の報告。

冠動脈血行再建術後のP2Y12阻害薬vs. DAPTのメタ解析/BMJ

 スイス・ベルン大学のMarco Valgimigli氏は、無作為化比較試験6件のメタ解析を行い、P2Y12阻害薬単独療法は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と比較して、死亡、心筋梗塞および脳卒中のリスクは同等であるが、P2Y12阻害薬単独療法の有効性は性別によって異なり、出血リスクはDAPTより低いことを明らかにした。BMJ誌2021年6月16日号掲載の報告。  研究グループは、Ovid Medline、Embaseおよび3つのWebサイト(www.tctmd.com、www.escardio.org、www.acc.org/cardiosourceplus)を検索して、2020年7月16日までに発表された、経口抗凝固療法の適応がない患者における冠動脈血行再建術後の経口P212阻害薬単独療法とDAPTの有効性を比較(中央判定)した無作為化比較試験を特定し、個々の患者レベルでのメタ解析を行った。

医療・健康管理の無料アプリ、個人情報保護に問題か/BMJ

 オーストラリア・マッコーリー大学のGioacchino Tangari氏らは、オーストラリアのGoogle Playストアで入手可能な、Android用の無料の健康関連モバイルアプリケーション(mHealthアプリ)1万5,838種について分析し、これらにはプライバシーに関する重大な問題と一貫性のないプライバシー行為が認められたことを明らかにした。「臨床医は、mHealthアプリのメリットとリスクを判断する際にこれらのことを認識し、患者に明確に説明する必要がある」と著者は強調している。BMJ誌2021年6月16日号掲載の報告。

これから「プラグマティックトライアル」が増える?(解説:後藤信哉氏)-1408

臨床的仮説の検証にはランダム化比較試験による有効性、安全性の検証が必須というのが現在のルールである。巨額の利潤を期待できる新薬の認可承認、適応拡大が目的であれば日常臨床とは若干異なる条件におけるランダム化比較試験も可能である。しかし、循環器領域では標準治療が進歩して革新的新薬の認可承認、適応拡大を目指したランダム化比較試験の数は減少している。科学雑誌の発刊とはいえビジネスである。ランダム化比較試験が減少した時代でも臨床論文を発表して、多く引用されなければ雑誌の未来はなくなってしまう。臨床試験のコストを下げつつ、質を担保する工夫が必要となる。

コロナワクチン後に心筋炎、CDCが接種との関連性を指摘

 米国疾病予防管理センター(CDC)は6月23日、新型コロナワクチンを接種した若年層において、心筋炎などの副反応と見られる症状が、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に1,000件以上報告されていることを明らかにした。CDCは接種と関連している可能性を指摘し、さらなる調査を進めるとしている。ただ、これまでに投与されたワクチン総量と比しても発症はまれであり、COVID-19のリスクおよび関連合併症を考慮した上で、ワクチン接種を引き続き推奨する方針だ。

日本人CVD高齢者のMCI検出に対するRDST-Jの有用性

 心血管疾患(CVD)を有する高齢者では、認知機能低下が認められることが多く、このことでセルフマネジメント能力を低下させる可能性がある。しかし、軽度認知障害(MCI)を鑑別するための方法は、臨床現場で常に実行可能であるとは限らない。名古屋大学の足立 拓史氏らは、認知症の認知機能低下を簡易的に判定する検査ツールRapid Dementia Screening Test日本語版(RDST-J)を用いることで、MCI検出が可能かを評価した。Journal of Geriatric Cardiology誌2021年4月28日号の報告。

ALK陽性肺がんにおけるct-DNAのバイオマーカーとしての可能性(CROWN)/ASCO2021

 未治療のALK陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)における第3世代ALK‐TKIロルラチニブの第III相CROWN試験。バイオマーカーとしての血中腫瘍DNA(ct-DNA)の追加解析がASCO2021で発表され、早期のct-DNAの変化がロルラチニブの効果予測と関係する可能性が示された。 CROWN試験・対象:StageIIIB/IVの未治療のALK陽性肺がん(無症状のCNS転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mgx2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]治験実施医によるPFS、BICR評価の奏効率(OR)、BICR評価の脳内奏効率(IC-OR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、BICR評価の脳内奏効期間(IC-DR)、全生存期間(OS)、安全性、ct‐DNAバイオマーカー