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2025-09-01 ~ 2025-09-07

2025/09/05

DGAT-2阻害薬ION224、MASHを改善/Lancet

ジャーナル四天王

 ジアシルグリセロール O-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)を標的とした肝指向性アンチセンスオリゴヌクレオチドのION224は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対する安全かつ有効な治療薬となりうることを、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らION224-CS2 Investigatorsが、米国およびプエルトリコの43の臨床施設で実施した「ION224-CS2試験」において初めて明らかにした。ION224は、MASHの病態に重要な、脂肪毒性ならびに炎症、肝細胞障害および肝線維化に関連する代謝経路であるde novo脂肪合成を抑制する。著者は、「本試験で観察された組織学的改善は体重の変化とは無関係であり、GLP-1をベースとした治療など他の治療との併用が期待される」とまとめている。Lancet誌2025年8月23日号掲載の報告。

早期浸潤性乳がん、2次がんのリスクは?/BMJ

ジャーナル四天王

 英国・オックスフォード大学のPaul McGale氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究の結果、早期浸潤性乳がん治療を受けた女性の2次原発がんリスクは一般集団の女性よりわずかに高いものの、リスク増加全体の約6割は対側乳がんであり、術後補助療法に伴うリスクは低いことを報告した。乳がんサバイバーは2次原発がんを発症するリスクが高いが、そのリスクの推定方法は一貫しておらず、2次原発がんのリスクと患者・腫瘍特性、および治療との関係は明確にはなっていない。BMJ誌2025年8月27日号掲載の報告。

心不全入院へのダパグリフロジンの効果~DAPA ACT HF-TIMI 68試験/ESC2025

医療一般

 SGLT2阻害薬は、外来での心不全治療において心血管死または心不全増悪のリスク低減に寄与するが、心不全による入院での投与開始データは限定的である。今回、ダパグリフロジンによるさまざまな臨床研究を行っているTIMI Study GroupがDAPA ACT HF-TIMI 68試験を実施。その結果、ダパグリフロジンを入院中に開始してもプラセボと比較して2ヵ月にわたる心血管死または心不全悪化リスクを有意に低下させなかった。ただし、3試験のメタ解析からSGLT2阻害薬が心血管死または心不全悪化の早期リスクと全死亡リスクを有意に低下させることが明らかになった。

日本人双極症患者の労働生産性に対する抑うつ症状、認知機能低下の影響

医療一般

 琉球大学の高江洲 義和氏らは、日本人双極症患者における労働生産性低下と抑うつ症状および認知機能低下との関連性、また双極症の症状と労働生産性低下との関連性を評価するため、48週間の縦断的研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年9月号の報告。  就労中または病気療養中の日本人双極症成人患者を対象に、48週間のプロスペクティブ縦断的ウェブベースコホート研究を実施した。認知機能低下、労働生産性低下、生活の質(QOL)、抑うつ症状の重症度、睡眠障害を評価する検証済みの自記式評価尺度を含む質問票調査を用いて、ベースラインから48週目まで12週ごとに調査した。主要エンドポイントは、48週時点の認知機能のベースラインからの変化と労働生産性低下との相関とした。副次的エンドポイントは、各症状スコアのベースラインからの変化、認知機能低下、労働生産性低下、抑うつ症状、QOL、睡眠障害とした。

65歳以上の高齢者、NSAIDsの腎機能への影響は?

医療一般

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、疼痛管理に広く使用されているが、とくに高齢者において腎毒性のリスクが懸念される。NSAIDsと急性腎障害の関連が知られているが、長期使用が腎機能に与える影響については、これまで一貫した見解が得られていない。そこで、韓国・Samsung Medical CenterのJung-Sun Lim氏らの研究グループは、韓国の高齢者コホートを10年間追跡した大規模な研究により、NSAIDsの長期使用が腎機能に与える影響を検討した。その結果、NSAIDsの定期的な使用が高齢者の慢性腎臓病(CKD)発症リスクを高め、腎機能の低下を加速させたことが示された。本研究結果は、Drugs & Aging誌オンライン版2025年8月6日号に掲載された。

テストで良い点を取りたいならジャンピングジャックをすると良い?

医療一般

 高強度の運動をして脳の活性化を促すことで、子どもの学力テストの点数が上がる可能性のあることが、新たに報告された予備的な研究で示唆された。テストの前にハイニーウォークやジャンピングジャック、ランジ、スクワットといった運動を9分間行った子どもでは、テストの点数が有意に高かったことが示されたという。米ノースカロライナ大学グリーンズボロ校運動学分野のEric Drollette氏らによるこの研究の詳細は、「Psychology of Sport & Exercise」7月号に掲載された。  Drollette氏は、「体育や身体活動は次世代の子どもにとって有益である。メンタルヘルスにも脳の健康にも良く、さらに学力にも良い影響を与える」と言う。同氏は、「学校の教室で、『集中力を取り戻すために休憩を取って体を動かそう』と呼び掛ける教師がいる。それが有効なことは経験的に分かっていたが、科学的に検証されたことはなかった」と述べている。

ウォーキングはペースを速めるほど効果が大きい

医療一般

 健康増進のために推奨されることの多いウォーキングだが、その効果を期待するなら、速度を重視した方が良いかもしれない。より速く歩くことで、より大きな健康効果を得られる可能性を示唆するデータが報告された。米ヴァンダービルト大学のLili Liu氏らの研究の結果であり、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に7月29日掲載された。  ウォーキングと健康アウトカムとの関係を調べたこれまでの研究は、主に白人や中~高所得者を対象に行われてきたが、本研究では主に低所得者や黒人に焦点が当てられた。データ解析の結果、1日15分の早歩きで死亡リスクが約20%低下することが示された。この結果を基にLiu氏は、「早歩きを含む、より高強度の有酸素運動を日常生活に取り入れた方が良い」と勧めている。

肺炎リスクから考える、ICU患者の「口腔ケア」

医療一般

 気管挿管後に発症する人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、集中治療室(ICU)に入院する患者における主な感染性合併症であり、その発生率は8~28%に上る。今回、ICU患者において口腔ケアを実施することで、口腔内の細菌数が有意に減少することが確認された。また、人工呼吸器の挿管によって、口腔内の細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性が低下することも明らかになった。研究は、藤田医科大学医学部七栗歯科の金森大輔氏らによるもので、詳細は「Critical Care」に7月23日掲載された。

2025/09/04

上咽頭がん、シスプラチンを用いないtoripalimab併用療法は実現可能か/JAMA

ジャーナル四天王

 局所進行上咽頭がん患者において、放射線治療時にシスプラチンを用いないtoripalimab併用療法(toripalimab+導入化学療法および放射線治療)は、治療成功生存期間(failure-free survival:FFS)に関する非劣性が示され、毒性の低い、実現可能な治療法であることが、中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのCheng Xu氏らDIAMOND Study Groupが行った第III相無作為化試験「DIAMOND試験」の結果で示された。先行研究により、上咽頭がん治療においてPD-1阻害薬のtoripalimabを用いることで、放射線治療時に毒性の高いシスプラチンの併用を省略でき、生存に影響を及ぼさない可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2025年8月21日号掲載の報告。

中等度~重度のCKD関連そう痒症、anrikefon vs.プラセボ/BMJ

ジャーナル四天王

 血液透析を受けている中等度~重度のそう痒症を有する患者において、新規末梢性κオピオイド受容体作動薬anrikefon(旧称HSK21542)は安全であることが確認され、かゆみの強度を顕著に軽減し、かゆみに関連する生活の質(QOL)を改善させたことが、中国・Southeast University School of MedicineのBi-Cheng Liu氏らAnrikefon-302 study collaborator groupによる、第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で示された。κオピオイド受容体作動薬は、中等度~重度の慢性腎臓病(CKD)関連そう痒症の有望な治療戦略とみなされている。anrikefonは、κオピオイド受容体への結合親和性を高める親水性の小ペプチドおよびスピロ環構造を有し、血液脳関門の通過は最小限となる。持続的な治療効果と中枢性のオピオイド副作用発現頻度の低さから、CKD関連そう痒症を有する患者の新たな治療選択肢として期待されていた。BMJ誌2025年8月19日号掲載の報告。

3学会がコロナワクチン定期接種を「強く推奨」、高齢者のリスク依然高い

医療一般

 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会は2025年9月1日、今秋10月から始まる新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの定期接種を「強く推奨する」との共同見解を発表した。高齢者における重症化や死亡のリスクが依然として高いことや、ウイルスの変異が続いていることを主な理由としている。  3学会によると、国内のCOVID-19による死亡者数は2024年に3万5,865例に上り、同年のインフルエンザによる死亡者数2,855例を大きく上回っている。COVID-19による死者数のピークだった2022年の4万7,638例からは減少しているものの、依然として高い水準で推移しており、大きな減少はみられていない。

カフェインの摂取量を増やすと認知機能が向上

医療一般

 カフェインは、中枢神経刺激を目的に使用されることが一般的であり、神経保護作用を有するとされるが、認知機能との関連性についての集団研究によるエビデンスは限られている。中国・山西医科大学のXiaoli Wang氏らは、米国の60歳以上の成人におけるカフェイン摂取と認知機能との関連を評価した。Journal of Human Nutrition and Dietetics誌2025年8月号の報告。  2011〜14年の米国国民健康栄養調査(NHANES)データに基づき、60歳以上の米国成人2,461人を対象として、本研究を実施した。カフェイン摂取量の評価には24時間食事想起法、認知機能の評価にはアルツハイマー病登録コンソーシアム(CERAD)、動物流暢性検査(AFT)、数字符号置換検査(DSST)から得られた複合スコアを用いた。カフェイン摂取量と認知機能との関連性を評価するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。制限付き3次スプライン(RCS)を用いて用量反応関係を検討し、サブグループ解析および感度分析を実施した。

歩き方を少し変えることで膝の痛みが大幅に軽減するかも?

医療一般

 歩くときの爪先の角度を個別に修正することで、変形性膝関節症の痛みを大幅に軽減できる可能性のあることが新たな研究で示された。また、この治療アプローチにより膝にかかる負荷が軽減され、変形性膝関節症の進行を遅らせることができる可能性があることも示唆されたという。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医科大学のValentina Mazzoli氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Rheumatology」に8月12日掲載された。  Mazzoli氏は、「この研究結果は、膝関節への負荷を減らす上で最適な爪先の角度を見つけるのを手助けすることが、初期の変形性膝関節症に対処するための容易で安価な方法となり得ることを示唆している」と述べている。同氏はさらに、「この治療戦略を用いることで、患者の鎮痛薬への依存が軽減され、膝関節置換術が必要となるまでの時間を延長できる可能性がある」とNYUのニュースリリースの中で付け加えている。

より長く、より速く歩くことが心臓の健康に有益

医療一般

 毎日の散歩の距離を増やして歩くペースを上げると、高血圧に関連する心臓病や脳卒中のリスクを減らすのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。1日の歩数が2,300歩程度の場合と比較して、1,000歩増えるごとに心筋梗塞、心不全、脳卒中のリスクが低下することが明らかになったという。シドニー大学(オーストラリア)マッケンジー・ウェアラブル研究ハブ所長のEmmanuel Stamatakis氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Preventive Cardiology」に8月6日掲載された。Stamatakis氏は、「これらの研究結果は、たとえ一般に推奨されている目標である1日1万歩を下回る運動量であっても、身体活動を行うことが有益であることを裏付けている」と欧州心臓病学会(ESC)のニュースリリースの中で述べている。

口の中の健康状態が生活習慣病リスクを高める可能性

医療一般

 口の中の健康状態が良くないことと、高血糖や脂質異常症、腎機能低下など、さまざまな生活習慣病のリスクの高さとの関連性が報告された。藤田医科大学医学部歯科・口腔外科学講座の吉田光由氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Oral Rehabilitation」に4月17日掲載され、7月10日に同大学のサイト内にプレスリリースが掲載された。  この研究では、機能歯数(咀嚼に役立っている歯の数)や舌苔の付着レベルなどが、空腹時血糖値やHbA1c、血清脂質値などと関連していることが明らかになった。吉田氏はプレスリリースの中で、「われわれの研究結果は全体として、口腔機能の低下が生活習慣病のリスクとなり得ることを示唆している。よって良好な口腔の健康を維持することは、全身の健康を維持するための第一歩と考えられる」と述べている。

2025/09/03

透析を要する腎不全患者、MRAは心血管死を予防するか/Lancet

ジャーナル四天王

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、心不全および非重症慢性腎臓病の患者の心血管イベントを予防する可能性があるが、透析を要する腎不全患者への効果は明らかではない。カナダ・McMaster UniversityのLonnie Pyne氏らの研究チームは、この患者集団におけるMRAの有効性と安全性の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を実施。ステロイド型MRAは、透析を要する腎不全患者における心血管疾患による死亡にほとんど、あるいはまったく影響を及ぼさなかったことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年8月23日号で報告された。

dalbavancinは複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の新たな選択肢か?―DOTSランダム化臨床試験から―(解説:栗山哲氏)

CLEAR!ジャーナル四天王

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の菌血症は、病態の多様性や重篤度からの治療の長期化などからランダム化臨床試験(RCT)が少なく、推奨される治療に関して明確な世界的コンセンサスは得られていない(Holland TL, et al. JAMA. 2014;312:1330-1341.)。DOTS試験は、複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の患者に対して、リポグリコペプチド系抗生物質・dalbavancinの有効性と安全性を従来の標準治療と比較した初めてのRCTである(Turner NA, et al. JAMA. 2025;13:e2512543.)。本剤は、わが国では未承認薬である。

日本の乳がんサバイバーにおける子宮体がんリスク

医療一般

 日本の乳がんサバイバーの子宮体がんリスクは、乳がんではない女性と比べて7.71倍高いことが、筑波大学の河村 千登星氏らによるマッチドコホート研究で示された。また内分泌療法別にみると、タモキシフェン投与患者では5.67倍、内分泌療法なしの患者で3.56倍リスクが高かった。Breast Cancer誌オンライン版2025年8月27日号に掲載。  本研究は、複数の健康保険組合のレセプトおよび健診データによるJMDC Claims Databaseを用いたマッチドコホート研究である。2005年1月~2019年12月に登録された乳がんサバイバー2万3,729人と、年齢とデータベース登録時期で1:4でマッチさせた乳がんではない女性9万5,659人における子宮体がんリスクを、層別化Cox回帰分析を用いて比較した。さらに、マッチングから1年後に追跡を開始し、非層別化Cox回帰分析を用いて内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、内分泌療法なし)別のリスクを評価した。

日本人急性期統合失調症患者の長期予後に最も影響する早期ターゲット症状は?

医療一般

 急性期統合失調症における早期治療反応の予測は重要であるが、困難である。福島県立医科大学の小林 有里氏らは、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾール治療を行った患者において、2週間後の特定の症状領域改善が、6週間後の全体的な治療反応を予測するかどうかを明らかにするため、観察研究を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2025年9・10月号の報告。  対象は、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾール治療を行った患者65例(抗精神病薬未使用患者:34例、抗精神病薬未使用再発患者:31例)。ベンゾジアゼピン使用患者は41例(64.1%)であった。治療反応の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および臨床全般印象改善度(CGI-I)を用いた。

新インプラントデバイスがBCG不応性膀胱がんに有効

医療一般

 TAR-200と呼ばれる、薬剤を封入した小さなプレッツェル型のインプラントデバイスにより、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)治療に反応しない高リスク膀胱がん患者の5人中4人でがんが消失したとする第2相臨床試験の結果が報告された。米南カリフォルニア大学ケック医学校泌尿器腫瘍科長のSiamak Daneshmand氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Clinical Oncology」に7月30日掲載された。  Daneshmand氏は、「これまで、治療抵抗性を示す膀胱がんに対する治療選択肢は非常に限られていた。この新しい治療法は、一般的な膀胱がんに対する治療法としてこれまでに報告されたものの中では最も効果が高い」と述べている。

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