術後大腸がん患者への運動療法、DFSとOSを改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/25

 

 前臨床研究および観察研究では、運動が大腸がんを含むがんのアウトカムを改善する可能性が示唆されている。カナダ・アルバータ大学のKerry S. Courneya氏らCHALLENGE Investigatorsは「CHALLENGE試験」において、大腸がんに対する術後補助化学療法終了から6ヵ月以内に開始した3年間の構造化された運動プログラムは、これを行わない場合と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善し、全生存期間(OS)の有意な延長をもたらすことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年6月1日号に掲載された。

運動の有効性を評価する国際的な無作為化第III相試験

 CHALLENGE試験は、カナダとオーストラリアを主とする55施設で実施した無作為化第III相試験であり、2009~24年に参加者を登録した(Canadian Cancer Societyなどの助成を受けた)。

 StageIIIまたは高リスクのStageIIの大腸腺がんで、切除術を受け、過去2~6ヵ月の間に術後補助化学療法を完了し、中等度から高強度の身体活動の時間が週に150分相当未満の患者を対象とした。

 被験者を、標準的なサーベイランスに加え身体活動と健康的な栄養摂取を奨励する健康教育資料の提供のみを受ける群、または健康教育資料+3年間の構造化運動プログラムを受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目はITT集団におけるDFSとし、無作為化の時点から大腸がんの再発(局所または遠隔)、新規の原発がん、2次がん、全死因死亡のいずれか最初に発現したイベントまでの期間と定義した。

5年DFS率は80.3%vs.73.9%、8年OS率は90.3%vs.83.2%

 889例を登録し、運動群に445例、健康教育群に444例を割り付けた。全体の年齢中央値は61歳(範囲19~84)、51%が女性で、90%の病変がStageIII、61%が術後補助化学療法としてFOLFOX(フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン)を受けていた。ベースラインで、患者報告による中等度から高強度の身体活動の代謝当量(MET)は週に11.5MET・時で、予測最大酸素摂取量は毎分体重1kg当たり30.7mLであり、6分間歩行距離は530mであった。

 追跡期間中央値7.9年の時点で、DFSイベントは224例(運動群93例、健康教育群131例)で発現した。DFS中央値は、健康教育群に比べ運動群で有意に延長し(ハザード比[HR]:0.72[95%信頼区間[CI]:0.55~0.94]、p=0.02)、年間イベント発生率は運動群3.7%、健康教育群5.4%であった。また、5年DFS率は、運動群80.3%、健康教育群73.9%だった(群間差:6.4%ポイント[95%CI:0.6~12.2])。

 DFSの結果は、健康教育群よりも運動群でOS中央値が長いことを裏付けるものであり(HR:0.63[95%CI:0.43~0.94])、年間死亡率は運動群1.4%、健康教育群2.3%であった。また、8年OS率は、運動群90.3%、健康教育群83.2%だった(群間差:7.1%ポイント[95%CI:1.8~12.3])

運動介入による有害事象は10%

 36-Item Short Form Survey(SF-36)の身体機能のサブスケールの評価では、ベースラインから6ヵ月(7.1 vs.1.3)、1年(6.8 vs.3.3)、1.5年(7.2 vs.2.4)、2年(6.1 vs.2.6)、3年(6.1 vs.3.0)のいずれの時点においても、健康教育群に比べ運動群で改善度が大きかった。

 介入期間中の有害事象は、運動群の351例(82.0%)、健康教育群の352例(76.4%)で発現した。筋骨格系の有害事象は、運動群で79例(18.5%)、健康教育群で53例(11.5%)に発現し、運動群の79例中8例(10%)は運動による介入に関連すると判定された。Grade3以上の有害事象は、運動群で66例(15.4%)、健康教育群で42例(9.1%)に認めた。

 著者は、「運動による無病生存期間の改善は、主に肝の遠隔再発(3.6%vs.6.5%)と新規原発がん(5.2%vs.9.7%)の発生が低率であったことに起因しており、運動はさまざまなメカニズムを介して大腸がんの微小転移を効果的に治療し、2次がんを予防する可能性が示唆される」「運動群では、ベースラインから週当たり約10MET・時の中等度から高強度の身体活動の増加という目標を達成し、この増分は約45~60分の速歩を週に3~4回、または約25~30分のジョギングを週に3~4回追加することに相当する」「本試験の結果は、構造化運動プログラムのがんの標準治療への組み込みを支持するものだが、知識だけでは患者の行動やアウトカムを変えることは困難であるため、意味のある運動の増加を達成するには医療システムによる行動支援プログラムへの投資が求められるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)