内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:247

GLP-1受容体作動薬セマグルチドは中止により体重減少効果が消失する(解説:住谷哲氏)-1392

ダイエットでよく知られた現象にヨーヨー効果(yo-yo effect)がある。運動や食事でうまく減量できても、サボるとすぐに元の体重に戻ってしまうことが、玩具のヨーヨーの上下運動に似ていることから名付けられた。運動による筋肉量の維持を伴わずにカロリー制限だけで減量を試みると、減った筋肉量が脂肪に置換されてその後の減量が一層困難になる弊害もよく知られている。STEPは抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬セマグルチド注射薬開発を目的とした国際第III相試験プログラムである。すでにSTEP 1-3において、2型糖尿病の合併の有無に関係なく、セマグルチド2.4mg/週の投与により著明な体重減少がもたらされることが報告されている。STEP 4である本試験では、セマグルチドによる体重減少が投与を中止することでリバウンドするか否かを検討したwithdrawal trialである。

日本循環器協会が発足―予防啓発や人材育成など7つの事業を柱に

 5月10日、循環器病の新たな団体として『日本循環器協会』が発足した。代表理事に小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授)、平田 健一氏(神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野教授)を迎え、各都道府県などと連携を取ることで、患者の心不全予防の啓発に力をいれていく。  循環器病による国内死亡率は近年の高齢化に伴いがんよりも高い。また、健康寿命にも大きく影響を及ぼしており、平均寿命に対し、健康寿命は男性で8.84年、女性で12.35年も短く、国としての大きな問題になっている。そこで、2016年から「脳卒中・循環器病克服5ヵ年計画」や「脳卒中・循環器病対策基本法」が、昨年10月には「循環器病対策推進基本計画」が動き出したことで、各都道府県でも基本計画が実行されていくことになる。これまでも循環器病領域には歴史のある日本循環器学会や日本心臓財団が存在するが、いずれも患者やサポート企業、自治体との連携が限定的であったことを踏まえ、市民により近い距離での情報発信や患者・家族サポートなどの活動を行うための新たな組織が必要となり設立に至った。

RA系阻害薬は、COVID-19入院患者に継続してよい?

 COVID-19入院患者において、レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬の継続有無による転帰の差はないことが、米国・ペンシルベニア大学のJordana B. Cohen氏によって明らかにされた。RA系阻害薬は、COVID-19入院患者でも安全に継続できるという。The Lancet. Respiratory Medicine誌2021年3月号の報告。  RA系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の服用は、COVID-19の重症度に影響を与える可能性が示唆されている。世界7ヵ国20の大規模な委託病院において、前向き無作為化非盲検試験REPLACE COVID試験(ClinicalTrials.gov:NCT04338009)を実施し、RA系阻害薬の継続と中止がCOVID-19入院患者の転帰に影響を与えるかどうか、検証した。

2型糖尿病、「座る時間の短縮」も指導して

  身体活動に加えて、座位中心の生活習慣を2型糖尿病のリスク評価に含める必要がある。2型糖尿病のリスク低減には、身体活動の促進と座位中心の生活習慣の回避を併せた指導が重要であると、スペイン・ナバラ大学のMaria Llavero-Valero氏らによって示された。Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases誌2021年2月8日号の報告。  身体活動と座りがちな行動―。ともに独立して2型糖尿病進展との関連性が示されている。しかし、両者の組み合わせによる検証は乏しい。そのため、本研究では身体活動スコアの評価だけでなく、座位中心の生活習慣スコアも併せて評価し、2型糖尿病との関連性を比較検証した。

降圧薬で正常血圧者も心血管イベントリスク低下?/Lancet

 降圧薬により収縮期血圧を5mmHg低下させることで、心血管疾患の既往歴の有無を問わず、また血圧が正常値や正常高値であっても、主要心血管イベントのリスクが約10%低下することが、英国・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(BPLTTC)の検討で示された。著者は、「これらの知見により、薬剤による一定程度の降圧治療は、その時点で治療の対象とされない血圧値であっても、主要心血管疾患の1次および2次予防において、治療対象の血圧値の場合と同様に有効であることが示唆される。これは、降圧治療が、主に血圧が平均値よりも高い場合に限定されている実臨床に変革を求めるものであり、降圧薬は、血圧値や心血管疾患の既往歴を問わず、心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるほうがよいことを示唆する」とし、「患者に降圧治療の適応を伝える際は、血圧の低下そのものに焦点を当てるのではなく、心血管リスクの低減の重要性を強調すべきである」と指摘している。Lancet誌2021年5月1日号掲載の報告。

AIが探索したCOVID-19の治療薬/日本イーライリリー

 日本イーライリリーは、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎に対する治療薬として、適応追加承認を取得した経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)に関するプレスセミナーを開催した。バリシチニブは関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている薬剤。  今回のセミナーでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への適応拡大で行われた臨床試験の経過、使用上の詳細について説明が行われた。  はじめに齋藤 翔氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター 総合感染症科)が、「新型コロナウイルス感染症の病態、治療の現状と課題 JAK阻害剤の臨床的位置づけ」をテーマに、バリシチニブの臨床的な位置付けや使用上の注意点などを説明した。

食事パターンは高齢者の認知機能に関連している

 高齢者において、地中海式食事法とマインド食が記憶と言語機能に、「アルコール飲料」がワーキングメモリに関連していることが、ドイツ・German Center for Neurodegenerative Disorders(DZNE)のL M P Wesselman氏らの研究により明らかとなった。結果を踏まえて著者は、「認知機能低下率に対する栄養の推定的効果、およびアルツハイマー病(AD)リスクが高いグループへの食事介入の可能性について結論を出すには、縦断的データが必要だ」としている。European Journal of Nutrition誌2021年3月号の報告。

新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。

東京五輪での医師ボランティア募集、8割が否定的/会員アンケート結果

 コロナ禍で医療崩壊が叫ばれ東京オリンピック・パラリンピックの開催自体が危ぶまれる中、同競技大会組織委員会が日本スポーツ協会公認のスポーツドクターからボランティア約200人を募集していたことが明らかとなった(募集は5月14日で締切、応募総数は393人)。この募集に対して、当事者となる医師たちはどのような心境だろうかー。  本アンケートは、スポーツドクターの有資格者が多い診療科(整形外科、救急科、リハビリテーション科)かつ競技会場となる9都道県(北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県)在住のケアネット会員医師を対象に実施[5月7日(金)~12日(水)]。ボランティアへの応募意向をはじめ、参加時に心配な点や募集に対して感じたことなどを伺った。

COVID-19予防効果のある薬剤は?RCT11件のメタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染およびCOVID-19に対する薬剤の予防効果について、カナダ・マックマスター大学のJessica J Bartoszko氏ら研究グループが、WHOのCOVID-19関連データベースを基に、新たなエビデンスを継続的に組み込むリビングシステマティックレビュー(LSR)とネットワークメタ解析により検討したところ、ヒドロキシクロロキンについては、入院および死亡率にほとんど影響がない上、有害事象のリスクを増大する可能性が示された。イベルメクチン単独およびイベルメクチン・イオタカラギナン併用は、バイアスリスクが大きい上、不正確性も極めて高く、確かな根拠が得られなかった。本研究は、BMJ誌2021年4月26日号に掲載された。