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〔CLEAR! ジャーナル四天王(91)〕 IL-1の阻害は1型糖尿病患者のβ細胞機能の低下を遅らせることができるか?

この研究は、発症して間もない1型糖尿病における免疫学的機序によるβ細胞の破壊を、IL-1を阻害する2つの薬剤で防止できるかどうかを、プラセボを用いたRCT研究で検討したものである。 1つはヒト抗IL-1モノクローナル抗体のカナキヌマブ(canakinumab)の1ヵ月毎、12ヵ月の皮下注射であり、もう1つはIL-1拮抗薬であるアナキンラ(anakinra)の9ヵ月間、毎日の注射である。 いずれも、食事負荷によるインスリン反応で評価したβ細胞機能の減少を抑制することはできなかった。アナキンラの方はプラセボと比べて注射部位の皮膚反応の増加が認められている。 1型糖尿病患者は、病気の発症後もβ細胞機能、すなわちインスリン分泌が減少し、頻回のインスリン注射やインスリンポンプ治療を行っても、最終的には枯渇状態になることが多い。インスリンが枯渇すると、高血糖と低血糖を繰り返し、血糖変動が大きくなり、血糖コントロールが困難になることが多く、合併症もより起こりやすくなる。このβ細胞の破壊と機能の減少にIL-1が関与していることが考えられている。IL-1は高血糖の時に放出され、直接にインスリンの合成、放出を阻害し、β細胞のアポトーシスを誘導する。 この1型糖尿病患のβ細胞機能の減少を、抗IL-1抗体でも、IL-1拮抗薬でも防ぐことができなかったことは、β細胞の破壊の機序がIL-1などのinnate immunityだけではなく、もっと複雑であることを示していると考えられる。この研究はネガティブな結果であるが、次に進むべき2つのステップを示してくれる重要な論文である。 1つはもっと早い段階、1型糖尿病が臨床的に発症する以前、自己抗体のみが陽性の段階でIL-1阻害の治療を試みる必要があることである。もう1つは抗CD-3抗体やT細胞選択的共刺激調整薬のabetaceptが1型糖尿病患者のインスリン分泌低下を遅延させたという報告や、動物実験では抗CD-3抗体とIL-1阻害の併用により糖尿病の寛解が得られたという報告より、抗CD-3抗体と抗IL-1抗体の併用を試みる価値があることである。 2型糖尿病患者はアナキンラを投与すると血糖が改善し、インスリン分泌が増加し、β細胞機能が改善することが報告されている。したがって、1型糖尿病におけるβ細胞機能の低下には、2型糖尿病とは異なり、もっと複雑で重篤な機序が関与してことがわかる。また、最近は1型糖尿病も、劇症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病とヘテロであることがわかっている。したがって、それらの1型糖尿病の発症機序も異なっている可能性があり、将来はそれぞれ異なった免疫療法が必要となるのかもしれない。

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入院期間の長い認知症患者の特徴は?:大阪大学

 認知症患者の長期入院では、しばしば重篤な周辺症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、以下BPSD)の治療が必要となる。また、重篤なBPSD患者は、長期間の入院を必要とする。大阪大学の杉山 博通氏らは、認知症病棟のよりよいリソース管理のため長期入院に関連する因子の同定を試みた。International psychogeriatrics誌オンライン版2013年4月23日号の報告。 対象は、2009年5月11日から2010年11月30日までにBPSDの治療のために、精神科病院3施設に入院した患者150例。信頼性のある親族がいる患者のみを調査に組み込んだ。著者らは、患者データ(人口統計、認知障害、日常生活活動、認知症の原因疾患、認知症の重症度、年金額)、主な介護者(人口統計、介護負担)、認知症治療年数を評価した。長期入院に関連する因子の影響を180日間フォローアップし、評価した。 主な結果は以下のとおり。・150例のうち、104例は180日以内に退院し、46例は180日以上入院した。・平均入院期間は110.4±58.1日だった。・年金の少ない患者、医師による認知症の治療年数が短い患者において入院期間が長かった(単変量および多変量Coxハザード解析)。また、その他の変数との関連は認められなかった。関連医療ニュース ・アルツハイマー病治療、学歴により疾患への対処に違いあり? ・認知症患者の興奮症状に対し、抗精神病薬をどう使う? ・抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?

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非心臓手術の周術期β遮断薬投与、死亡率を抑制/JAMA

 心リスクが高い非心臓/非血管手術患者では、周術期早期のβ遮断薬投与により全死因死亡や心合併症の発生率が低下することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMartin J London氏らの検討で示された。非心臓手術患者における周術期β遮断薬投与の有効性や安全性は現在も結論が得られておらず、現行の非心臓手術周術期の評価と治療に関するAHA/ACCガイドラインでは、他の疾患のためにすでにβ遮断薬が投与されている患者に限って周術期も継続投与すべきとされる(class I)。JAMA誌2013年4月24日号掲載の報告。周術期β遮断薬投与と術後転帰の関連を後ろ向きコホート試験で評価 研究グループは、非心臓手術を施行された患者における周術期早期のβ遮断薬投与と術後の転帰の関連について評価するレトロスペクティブなコホート試験を行った。 2005年1月~2010年8月までに米国の104の退役軍人医療センターで非心臓手術を受けた患者13万6,745例[手術当日または術後にβ遮断薬を投与された患者5万5,138例(40.3%)、非投与患者8万1,607例]および傾向スコアをマッチさせたコホート7万5,610例(β遮断薬投与患者、非投与患者それぞれ3万7,805例)を解析の対象とした。 主要評価項目は30日全死因死亡、副次的評価項目は心合併症(非致死的な心停止、Q波心筋梗塞)の発生率とした。無作為化試験による妥当性の検証が必要 β遮断薬は、血管手術を施行された患者(1万3,863例)の66.7%に投与され、非血管手術患者(12万2,882例)の37.4%に比べると有意に高かった(p<0.001)。 β遮断薬投与率は、改訂版心リスク指標(Revised Cardiac Risk Index:RCRI)のリスク因子数が増えるに従って上昇し、リスク因子なしの患者は25.3%、4つ以上の場合は71.3%であった(p<0.001)。 全体で術後30日までに1,568例(1.1%)が死亡し、心合併症は1,196例(0.9%)に認められた。 傾向スコアをマッチさせた群では、β遮断薬の投与により死亡率が有意に低下した(相対リスク(RR):0.73、95%信頼区間(CI):0.65~0.83、p<0.001、治療必要数(NNT):241、95%CI:173~397)。 RCRIのリスク因子数で層別化すると、リスク因子が2つ以上の患者でβ遮断薬による死亡率の有意な低下が認められ、リスク因子数が増えるほど死亡抑制効果が高い傾向がみられた。リスク因子2つはRR:0.63(95%CI:0.50~0.80、p<0.001)、NNT:105(同:69~212)、同3つではRR:0.54(同:0.39~0.73、p<0.001)、NNT:41(同:28~80)、4つ以上ではRR:0.40(同:0.25~0.73、p<0.001)、NNT:18(同:12~34)であった。ただし、この関連は非血管手術患者に限定された。 β遮断薬の投与は非致死的なQ波心筋梗塞または心停止も有意に抑制した(RR:0.67、95%CI:0.57~0.79、p<0.001、NNT:339、95%CI:240~582)。この関連も非血管手術患者に限られた。 著者は、「ベースラインの心リスクが高い非心臓/非血管手術施行患者では、周術期早期のβ遮断薬投与により30日全死因死亡や心合併症の発生率が有意に低下した」とまとめ、「RCRIのリスク因子数の評価は周術期β遮断薬の使用の意思決定に有用な可能性があるが、これらの観察的知見の妥当性を検証するために、RCRIで低~中等度のリスクの患者を対象に周術期β遮断薬投与の多施設共同無作為化試験を行う必要がある」と指摘している。

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キーンベック病の長期予後、血管柄付き骨移植術は良好

 血管柄付き骨移植術(VBG)は、進行期のキーンベック病に対する治療法の一つであるが、この治療法の長期予後に関する報告はほとんどなかった。日本・京都府立医科大学講師の藤原浩芳氏らは、VBGを施行したキーンベック病患者を10年以上追跡し、長期予後は良好であることを報告した。The Journal of Hand Surgery誌2013年5月号(オンライン版2013年4月2日号)の掲載報告。キーンベック病予後の平均追跡期間は12年3ヵ月 本研究の目的は、Lichtman分類StageIIIのキーンベック病患者をVBG後10年追跡し、長期予後を評価することであった。 対象は、1996年から2001年の間にVBGを施行した進行期キーンベック病患者18例(Lichtman分類Stage III A 10例、Stage III B 8例)で、少なくとも10年間追跡調査した。 中手骨基部からの移植が11例、橈骨遠位部からの移植が7例であり、StageIII Bの8例のうち、5例に橈骨短縮術を、2例に有頭骨短縮術を併用した。 VBGを施行したキーンベック病患者の長期予後を評価した主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は、12年3ヵ月であった。・治療成績はMayo Modified Wrist Scoreで、「excellent」8例、「good」7例、「fair」3例であった。・Stahl indexおよびcarpal height ratioは、血管柄付き骨移植術単独のStageIII A患者では改善しなかったが、短縮術を併用したStageIII B患者では、有意な改善が認められた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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高い尿酸値はパーキンソン病の進行を遅らせる!?-メタ解析の結果から-

 男性において、高い尿酸値がパーキンソン病の進行を遅らせる可能性があることが、中国・浙江大学のChunhong Shen氏らの報告によって示唆された。しかしながら、今後も詳細な調査が必要であると指摘している。The Canadian journal of neurological sciences誌2013年1月号の掲載報告。 尿酸の抗酸化作用が、パーキンソン病の進行を遅らせる可能性がある。その仮定のもと、尿酸値とパーキンソン病のリスクの関連について調査した。 本研究はメタ解析。Pubmed、ISI Web of Science、EMBASEからパーキンソン病のリスクと尿酸値について報告されている文献を検索し、6つの研究を対象とした。対象患者は、計33,185人(男性:20,641人、女性:12,544人)。メタ解析には固定効果モデルまたはランダム効果モデルを用い、さらに性別による影響についても評価した。 結果は以下のとおり。・高い尿酸値を示した患者群では、パーキンソン病の発症リスクが33%減少していることが認められた。(相対リスク[RR]:0.67、 95%信頼区間[CI]:0.50~0.91)・性別の影響をみたサブ解析では、パーキンソン病に対する尿酸の抑制的な作用は、男性において統計的に有意であることが認められた([RR]:0.60、[CI]:0.40~0.90)。しかしながら、女性では有意とは言えなかった。・さらに11,795人において、尿酸値が高ければ高いほどパーキンソン病の発症リスクが減少していることが示された([RR]:0.77、[CI]:0.68~0.88)。・また、高い尿酸値がパーキンソン病の進行を遅らせる可能性があることも示唆された([RR]:0.56、[CI]:0.43~0.72)。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(90)〕 否定された『減塩パラドックス』―降圧の基本は、やはり減塩。

食塩摂取と高血圧とは、いわば切っても切れない関係にある。 薬剤による降圧療法は日常的に行われているが、各国の高血圧診療ガイドラインでは、薬物療法に先行する生活習慣の改善(life style modification)、なかでも『減塩』の履行・遵守を強く勧めている。高血圧診療における、生活習慣の改善の代名詞が『減塩』であり、日本高血圧学会でも学会をあげて『減塩』に取り組んでいる。たとえば、例年開催される学会のランチは減塩弁当であり、また昨年初めて行われた減塩サミットの共催に名を連ねた。 本論文は、こうした『減塩』の価値を、改めて再確認する内容をSystematic Review・メタ解析の手法を用いて報告している。いまさらとも言われかねない『減塩』の価値を検討し、証明する試みがなされ、BMJに発表された背景には、2011年に相前後してJAMAに発表された2本の論文で、『減塩パラドックス』、すなわち過度の減塩が心血管イベントを増加させる可能性が報告されたことが強く影響している1), 2)。これらの論文では、減塩が心血管イベントの抑制につながらない根拠として、減塩によるレニン・アンジオテンシン系の活性化や、交感神経系の活性化、脂質異常の悪化の可能性があげられている。 これらの論文は、JAMAに掲載されると瞬く間に反論、疑義が寄せられ、議論の的となった3)~11)。反論の中核となった論点は、食塩摂取量の推定方法 (標準的な24時間蓄尿サンプルによる推定ではなく、single urine sampleによる推定に基づいている)、データ採集の方法(数年間の隔たりがあるコホートについて解析をしており、データ採集時期に重大な差がある)であり、誤った手法によって収集されたデータが、誤った結論を導いた可能性が指摘されている。 著者らは、改めて厳格な選定基準のもと選定した研究成果に対して、Systematic Review・メタ解析を行った。その結果は、従来通り『減塩』の有効性を支持するものであり、世界的・公衆衛生学的な取り組みの修正を迫るものではなかった。CKDの評価項目にも採用されているsingle urine sampleによる簡便な評価法は、疾病についての啓蒙や、さまざまなコストの軽減、データ収集の容易さをもたらすメリットがある。しかし、このような簡便さによって、科学的な評価に耐えるデータ収集が損なわれている可能性があることを見過ごしてはいけない。ポストホック解析や、観察研究による問題提起は重要であるが、科学に求められていることは、普遍的な真実の解明であることを忘れてはならないのではないか。参考文献1) Stolarz-Skrzypek K, et al. JAMA. 2011; 305: 1777-1785.2) O'Donnell MJ, et al. JAMA. 2011; 306: 2229-2238.3) Aleksandrova K, et al. JAMA. 2011; 306:1083.4) Bochud M, et al. JAMA. 2011; 306: 1084.5) Cook NR. JAMA. 2011; 306: 1085.6) de Abreu-Silva EO, et al. JAMA. 2011; 306: 1085-1086.7) He FJ, Appel LJ, et al. Kidney Int. 2011; 80: 696-698.8) Labarthe DR, et al. JAMA. 2011; 306: 1084-1085.9) Rebholz CM, et al. JAMA. 2011; 306: 1083-1084.10) Whelton PK. JAMA. 2011; 306: 2262-2264.11) Mann S. JAMA. 2012; 307: 1138-1139.

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非定型抗精神病薬治療、忍容性の差を検証

 英国・UCLスクール・オブ・ファーマシーのNoor B. Almandil氏らは、小児と青年期若者の非定型抗精神病薬治療による体重増加とその他の代謝への影響について、システマティックレビューとメタ解析を行った。解析に組み込まれたのは、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールの3剤であった。Pediatric Drugs誌2013年4月15日号の掲載報告。 本解析では、体重増加への影響を主要目的とし、その他の代謝への影響を副次目的とした。EMBASE、PubMed、BIOSIS、International Pharmaceutical Abstractsなどのデータソース、および特定された試験の参考文献リストも対象として文献の検索を行った。適格としたのは、二重盲検無作為化対照試験であり、小児および若者(18歳以下)における非定型抗精神病薬使用と、代謝への有害作用(体重増加、脂質、グルコース、プロラクチン値異常)との関連を調べた試験とした。有害作用の検討は、主要エンドポイントあるいは副次エンドポイントであるかを問わなかった。 主な結果は以下のとおり。・プラセボと各試験薬を比較した、21試験・被験者2,455例が解析に組み込まれた。リスペリドンとの比較は14試験・1,331例、オランザピンは3試験・276例、アリピプラゾールは4試験・848例であった。・解析の結果、プラセボと比較して、各試験薬の体重増加の平均値は、オランザピン3.45kg(95%CI:2.93~3.98)、リスペリドン1.77kg(同:1.35~2.20)、アリピプラゾール0.94kg(同:0.65~1.24)であった。・その他代謝については、8試験において、リスペリドン治療群におけるプロラクチン値の統計的に有意な上昇が報告されていた。・また、2試験において、オランザピン治療群のグルコース、総コレステロール、プロラクチン値の統計的に有意な上昇が報告されていた。・一方でアリピプラゾール群について、プロラクチン値の統計的に有意な減少が3試験で報告されていた。・脂質、グルコース、プロラクチン値の変化については、メタ解析を行うにはデータが非常に限定的であった。・以上から、3剤とも体重増加との関連が統計学的に有意であること、最も体重増加が大きいのはオランザピンであり、アリピプラゾールはわずかであった。副次アウトカムについては、比較可能な複数試験は特定されたが、データはメタ解析の実施および確定的な結論を導き出すにはあまりにも不十分であった。関連医療ニュース ・薬剤誘発性高プロラクチン血症への対処は? ・第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・ ・第二世代抗精神病薬、QT延長に及ぼす影響:新潟大学

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疼痛性障害に対し、学際的な通所疼痛リハビリテーションプログラムが有効

 米国・ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部シカゴリハビリテーション研究所のChristine M. Gagnon氏らは学際的疼痛リハビリテーションプログラムの効果について検討し、多くの患者で精神的苦痛と疼痛が減少するとともに、就労が可能となったことを示した。Pain Practice誌2013年4月号(オンライン版2012年8月3日)の掲載報告。 本研究の目的は、労災補償請求患者のための学際的な通所疼痛リハビリテーションプログラムの有効性を評価することであった。 対象は101例で、主に慢性腰痛を有していた(75%)。 1日8時間、4週間(月曜から金曜)にわたり、個人およびグループによる段階的なプログラムを進めた。プログラムには、疼痛心理学、理学療法、作業療法、弛緩訓練/バイオフィードバック、有酸素運動、プール療法、職業カウンセリング、患者教育および内科的治療が含まれた。 評価項目は、プログラム完了状況、就労状況、復職状況、ベックうつ病評価尺度(BDI)、状態・特性不安尺度(STAI)、疼痛破局的思考尺度(PCS)、マクギル疼痛質問票視覚的ア評価尺度(MPQ VAS)とした。 主な結果は以下のとおり。・プログラム完了者のほとんど(91%)が就労できる状態になり(80%はフルタイム、11%は徐々に)、約半数(49%)は復職した。・プログラム完了者において、うつ病(p=0.000)、疼痛破局的思考(p=0.033)および疼痛(p=0.000)は有意に減少したが、不安については有意差はなかった(p=0.098)。・プログラム未完了者(早期退所または中止した患者)では、統計学的有意差はないものの、疼痛スコア(MPQ VAS)がプログラム開始前(61.20)に比べ、最終観察時(70.33)のほうが高かった。・退所時または退所後早期の痛みの増加は、オペラント因子が原因である可能性が示唆された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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乳児期の重度のアトピーや食物アレルギー、小児期のマラセチア感作リスクと関連

 1歳未満の乳児期に重度のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを有すると、小児期にマラセチアに対する感作を有するリスクが高くなっていたことを、フィンランド・タンペレ大学病院のO-M. Kekki氏らが10年間のフォローアップの結果、報告した。マラセチアは、ヒトの皮膚に常在する酵母様真菌だが、アトピー性皮膚炎では疾患の増悪に関与することが知られる。Pediatric Allergy and Immunology誌2013年5月号(オンライン版2013年4月3日号)の掲載報告。 研究グループは、乳児期から食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を有している小児について、10年フォローアップ時でのマラセチアに対する感作の有病率を調べた。 対象は、1歳未満でアトピー性皮膚炎かつ牛乳/小麦アレルギーと診断された乳児187例であった。アトピー性皮膚炎の部位は、初診時の診療記録で評価し、10年フォローアップ時はSCORADで評価した。また、11歳時にImmunoCAPにて、マラセチアに対する特異的IgEを評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験児187例は、24例(13%)が牛乳アレルギーを、71例(38%)が小麦アレルギーを、92例(49%)が牛乳と小麦アレルギーの両方を有していた。アトピー性皮膚炎の重症度の内訳は、軽度が94例(50%)、中等度が57例(30%)、重度が36例(19%)であった。・10年フォローアップ時点で、19例(10%)が継続して牛乳または小麦アレルギー(もしくはその両方)を有していた。アトピー性皮膚炎は147例(79%)が軽度であり、30例(16%)がSCORADスコア0であった。・被験児187例のうち、マラセチア属特異的IgE陽性(≧0.35kU/L)者は27%であった。M. sympodialis特異的IgE陽性者は20%であった。・乳児期のアトピー性皮膚炎の範囲は、10年フォローアップ時にマラセチア特異的IgEを有するより高いリスクと関連していた。・食物アレルギーのリスク比は、マラセチア特異的IgE陽性の場合、3.11(95%CI:2.05~4.72、p<0.001)であった。

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注射時間を問わず一定の有効性と安全性―持効型インスリン デグルデク

 従来の基礎インスリンは注射時間の制限があったが、1日1回投与のインスリン デグルデク(IDeg、商品名:トレシーバ)は、1日のうちどのタイミングで注射しても有効性と安全性を損なうことなく、良好な血糖コントロールが可能であることがベルギー・ルーベン大学Chantal Mathieu氏らの報告で明らかになった。患者さん一人ひとりの多様なニーズに合わせて注射時間を調整できるため、基礎インスリンのアドヒアランス向上につながると考えられる。The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌2013年3月号(オンライン版2013年2月7日号)の報告。 本研究は、大規模臨床プログラム「BEGINTM」の1型糖尿病患者を対象に行われた26週間のオープンラベル、treat to target、非劣性試験である(BEGIN:Flex T1)。最小8時間、最大40時間の間隔で故意にIDegの注射時間を変えた群(IDeg Forced-Flex群)について、定時にIDegを注射した群(定時IDeg群)および定時にインスリン グラルギン(IGlar、商品名:ランタス)を注射した群(定時IGlar群)と比較することで、非劣性を検討した。さらに、その後に26週間の延長試験を行い、IDeg投与を行っている全症例において、投与時間を自由に決められるレジメン(IDeg Free-Flex)に変更し、定時IGlar群と比較した。 主な結果は以下のとおり。<26週後>・26週目のHbA1c値はIDeg Forced-Flex群で0.40%、定時IDeg群で0.41%、定時IGlar群0.58%低下し、IDeg Forced-Flex群の非劣性が認められた。・26週目の空腹時血糖値は、IDeg Forced-Flex群で1.28 mmol/L、定時IDeg群で2.54 mmol/L低下し、定時IDeg群のほうが有意に低下した(p=0.021)。定時IGlar群はIDeg Forced-Flex群と同程度低下した。<26週の延長試験後>・52週目のHbA1c値は、IDeg Free-Flex群と定時IGlar群で同程度であった。・IDeg Free-Flex群の52週目の空腹時血糖値は定時IGlar群よりも有意に低下した(p=0.005)。<安全性>・低血糖発現率(<3.1 mmol/Lまたは重度の低血糖)は26週と52週で同程度であった。・IDeg Forced-Flex群の26週目までの夜間低血糖発現頻度は、定時IDeg群より37%(p=0.003)、定時IGlar群より40%少なかった(p=0.001)。・IDeg Free-Flex群の52週目までの夜間低血糖発現頻度は、定時IGlar群より25%少なかった(p=0.026)。※BEGINTMプログラムノボ ノルディスク社が実施した第3相臨床試験プログラム。日本、米国、欧州の規制当局へ相談し計画された。1型および2型糖尿病患者約1万人を対象に行われ、インスリン療法の領域で実施された試験の中では最大の試験となる。

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腰痛などに関与する傍脊柱筋変性を、日常的にCTで評価するための指標

 最近の研究で腰痛、椎間関節の変形性関節症、脊椎すべり症、椎間板変性疾患に傍脊柱筋変性が関与していることが示唆されているが、これまで簡単かつ信頼性の高いCTによる傍脊柱筋変性の指標はなかった。イスラエル・ベン=グリオン大学のLeonid Kalichman氏らはCTによる傍脊柱筋変性の評価について遂行可能性確認試験を行い、2つの指標(脂肪浸潤スコア、放射線学的密度比)が椎間関節の変形性関節症と有意に関連し、信頼性も高いことを明らかにした。Journal of Spinal Disorders & Techniques誌オンライン版2013年4月3日の掲載報告。傍脊柱筋の脂肪浸潤スコアと椎間関節の変形性関節症は有意に関連 本研究の目的は、傍脊柱筋における脂肪浸潤をスコア化し信頼性ならびに筋密度との関連を評価するとともに、椎間関節の変形性関節症と傍脊柱筋変性の指標との関連を評価することであった。 連続150例(腰部75例、腹部75例)のCT画像を評価し、L4-5レベルにおける多裂筋および脊柱起立筋の筋密度(放射線学的平均密度;ハンスフィールド単位)および標準偏差を求め、放射線学的密度比(RDR=筋密度/標準偏差)を算出するとともに、傍脊柱筋における脂肪浸潤を3段階で評価した。 椎間関節の変形性関節症と傍脊柱筋変性の指標との主な評価は以下のとおり。・傍脊柱筋の脂肪浸潤スコアの信頼性(Kappa係数)は、評価者内信頼性が0.87~0.92、評価者間信頼性0.70~0.81であった。・傍脊柱筋の筋密度の信頼性(級内相関係数)は、評価者内が0.96~0.99、評価者間が0.95~0.99、標準偏差についてはそれぞれ0.82~0.91および0.80~0.89であった。・RDRは、椎間関節の変形性関節症ならびに傍脊柱筋の脂肪浸潤スコアと有意に関連した(p<0.01)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(89)〕 C型慢性肝炎に対する治療法はいよいよ最終段階へ!-3剤併用療法のreport-

C型慢性肝炎に対する従来の標準治療は、PEG-Interferon(PEG-IFN)とRibavirin(Rib)の併用療法であった。しかし、この治療法では、(日本のC型肝炎患者の半数を占める)1b型高ウイルス量のいわゆる<難治例>に対する治療効果として、Sustained Virological Response(SVR:治療終了後6ヵ月の時点での血中HCV陰性化)を得られる頻度は、約50%であった。 さらに治療効果を向上させるために、さまざまな取り組みが進められている。新たな薬剤として、(1) NS3 Protease阻害薬、(2) NS5B Polymerase阻害薬(核酸型・非核酸型)、(3) NS5A阻害薬などが登場した。 本論文は、PEG-IFN・RibにNS5B Polymerase阻害薬であるSofosbuvir(GS-7977, PSI-7977)を加えた3剤併用療法の、米国での第2相試験に関する報告である。この報告では、3剤併用療法12週間あるいは24週間のSVR24(ITT解析)が、どちらも89%と良好な成績が得られた。現在、本邦でも、PEG-IFN・Ribに上記の(1)、(2)、(3)のいずれかを併用した複数の治療法の治験が進められており、数年後には治療法の選択肢が広がることが期待されている。 さらに、IFNを含まない複数の経口薬のみの併用による治療法の治験が進行、あるいは予定されており、いよいよC型慢性肝炎の治療法の開発は最終のステップに入ったと考えらえる。

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小児の双極I型障害、アリピプラゾール有用性の定義は

 先行研究において、成人と小児の双極性障害に関する治療反応について複数の異なる定義が用いられている。米国・ノースカロライナ大学のEric Youngstrom氏らは、小児の双極I型障害と関連する躁病あるいは混合エピソードに関するアリピプラゾールの臨床的に意義のある治療効果について、異なる評価尺度の結果を対比し有効率の定義付けを行った。その結果、ヤング躁病評価尺度(YMRS)の50%スコア低下などが臨床的に意義のある治療効果であると認められたことを報告した。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌2013年3月23日号(オンライン版2013年3月12日号)の掲載報告。 本検討は、小児および青年期若者の大規模サンプルにおいて、臨床的に意義のある改善の有効率を定義することを目的とした。4週間にわたる複数施設でのプラセボ対照試験のデータを探索的に解析した。被験者は10~17歳の急性躁病もしくは混合エピソードを呈した双極I型障害患者296例。アリピプラゾール(10あるいは30mg/日)とプラセボに無作為化され評価を受けた。主要有効性エンドポイントは、4週時におけるベースラインからのYMRS総スコアの変化の平均値とした。また、Clinical Global Impressions-Bipolar Disorder(CGI-BP)Overall and Mania scales、Child Global Assessment Scale(CGAS)、General Behavior Inventoryの上位および下位項目の評価も解析に組み込み、有効性の比較は、7つの定義について行われた。さまざまな治療反応の定義またはアウトカム評価における変化と、臨床的に意義のある改善(CGI-BP Overall改善スコア1または2で定義)との関連に関する検証は、Cohen's κ係数およびスピアマン相関係数にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・有効率は定義によって異なったが、スコアの変化に関する95%確度変化(既存評価からの個々の変化を評価するための統計的手法)は高値であった。YMRS総スコアは、≧33%の低下がみられた。・臨床的に意義のある改善を予想するという観点に立った最も妥当な有効率は、次のように定義された。 YMRSスコアが≧50%低下(κ=0.64)、 複合尺度による定義[YMRS<12.5、Children's Depression Rating Scale-Revised (CDRS-R)≦40、CGAS≧51(κ=0.59)、CGASおよびYMRSスコア33%低下の95%変化確度(κ=0.56)]・また、症状の下位項目は症状改善時の評価において、上位項目よりも概して良好であった(CGI-BP Overall改善スコアとの比較時のκ=~0.4-0.5vs.~0.2)。症状改善の評価は、下位項目による評価が信頼できるようであった。関連医療ニュース ・小児双極I型障害に対するアリピプラゾールの効果は? ・自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? ・治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

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患者自身が申告するアドヒアランスと血糖コントロールの関係-インスリン治療における検討-

 2型糖尿病患者のインスリン療法において、患者自身が申告するアドヒアランスと血糖コントロールとの関係が検討された。この結果、患者の自己申告であっても、アドヒアランスが高ければ良好な血糖コントロールを示すという相関関係が明らかになった。ただし、65歳以上の高齢者ではこの相関はみられなかった。本研究から、若年層の患者では自己申告によるアドヒアランスの報告も適切なインスリン投与量を判断するうえでは有用となる可能性が示唆された。 本研究は、日本人の2型糖尿病患者を対象にした検討で、天理よろづ相談所病院・増谷 剛氏らによってDiabetes Research and Clinical Practice誌オンライン版2013年3月20日号に報告された。 対象患者はインスリン治療中の2型糖尿病患者1,441例。インスリンレジメンに対する患者の自己申告によるアドヒアランスに関する情報を集積した。人口統計学的要因と良好な血糖コントロール(HbA1c値<7.0% [53 mmol/mol])との独立した関連性を評価するために、相対リスク回帰分析を用いて交絡因子を調整した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は65.4歳、BMIは24.7kg/m2、インスリン注射の本数は2.3本/日であった。・全患者の70.6%が自己のインスリンレジメンに対してアドヒアランスが高いと報告していた。・アドヒアランスの高い群と良好な血糖コントロールとの相関を1としたとき、アドヒアランスが中程度の群での相関係数は0.82(95%CI:0.67~1.00)、アドヒアランスが低い群では0.64(95%CI:0.31~1.31)であった(p for trend =0.029)。・年齢によるサブグループ解析の結果、65歳未満の患者では前述の相関関係がみられたが、65歳以上では相関はみられなかった。

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パートナーによる暴力、プライマリ・ケア医のカウンセリングは有効か?/Lancet

 親密なパートナーからの暴力(IPV)を受ける女性に対するプライマリ・ケア医による簡易カウンセリングは、女性のQOLや心の健康に良好な影響を及ぼさないものの、抑うつ状態の改善がみられたことが、オーストラリア・メルボルン大学のKelsey Hegarty氏らが進めるWEAVE試験の初期結果で示された。WHOは重大な公衆衛生上の問題であるIPVに対する早期介入の場としてのプライマリ・ケアの重要性を支持しているが、IPVを受けていると判定された女性への支援を目的とする医療的介入の有効性に関するエビデンスは十分ではない。WEAVEプロジェクトは、カウンセリングは短期的な暴力の低減を期待するものではなく、それによって女性が自分は支援されていると認識し、虐待について話し合って安心感を得ることで、自己効力感(self-efficacy)の前向きの変化や、安全対策や行動、心の健康、QOLの改善が促されるとの仮説に基づくものだという。Lancet誌オンライン版2013年4月16日号掲載の報告。簡易カウンセリングのQOL改善効果をクラスター無作為試験で評価 WEAVE試験は、IPVスクリーニングで同定された女性への対処法の訓練を受けたプライマリ・ケア医による簡易なカウンセリングが、女性のQOL、安全対策と行動、心の健康に及ぼす影響を評価するクラスター無作為化対照比較試験(試験プロトコール:http://www.biomedcentral.com/1471-2458/10/2)。 オーストラリア・ビクトリア州で開業するプライマリ・ケア医と、健康・ライフスタイル調査で過去12ヵ月の間にパートナーによる恐怖を経験したと答えた16~50歳の女性が登録され、次のような介入が行われた。(1)医師の訓練、(2)医師に対する、パートナーによる恐怖経験ありと判定された女性の通知、(3)IPV女性に対する、人間関係や情緒的問題に関する1~6回の講習会への参加の呼びかけ(訓練プログラム入手に関する連絡先:http://www.gp.unimelb.edu.au/pcru/abuse/resources.html)。 診療地域(都市部、地方)で層別化したのち、医師を介入群または標準治療を行う対照群に無作為化に割り付けた。研究者には割り付け情報がマスクされた。 主要評価項目は12ヵ月後のQOL(WHO Quality of Life-BREF)、安全対策と行動、心の健康(SF-12)とし、副次的評価項目はうつ状態および不安(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)、女性や子どもの安全に配慮した医師の問いかけに対する応答、虐待の恐怖について医師と話し合うことによる安心感(5ポイントLikertスケール)とした。今回はフォローアップ期間6ヵ月および12ヵ月の主な知見が報告された。女性や子どもの安全への配慮、支持的カウンセリングの訓練を受けるべき 52人の医師が登録され、介入群に25人(平均年齢49.3歳、都市部72%、女性56%、グループ診療92%、プライマリ・ケア医としての平均活動年数18.4年)、対照群には27人(46.9歳、70%、67%、100%、16.8年)が割り付けられた。 介入群の女性患者は137人(平均年齢37.9歳、パートナーと同居48%、18歳未満の子どもが同居53%)、対照群は135人(39.1歳、58%、64%)であった。12ヵ月のフォローアップを完遂したのは、介入群が70%(96/137人、医師23人)、対照群は74%(100/135人、医師26人)だった。 12ヵ月後のQOL、安全対策と行動、心の健康は、両群間で差を認めなかった。 不安(12カ月後)および恐怖について話し合うことによる安心感(6カ月後)も両群間に差はみられなかったが、抑うつ状態(12ヵ月後)(オッズ比[OR]:0.3、95%信頼区間[CI]:0.1~0.7、p=0.005)、女性の安全に配慮した医師の問いかけ(6ヵ月後)(OR:5.1、95%CI:1.9〜14.0、p=0.002)、子どもの安全に配慮した医師の問いかけ(6ヵ月後)(OR:5.5、95%CI:1.6~19.0、p=0.008)の効果は介入群で有意に改善した。有害事象は認めなかった。 著者は、「今回の知見は、親密なパートナーからの暴力を開示した女性への、プライマリ・ケア医による簡易カウンセリングに関する今後の研究に有益な情報をもたらすだろう。QOLは改善しなかったものの、うつ症状が抑制されたことから、プライマリ・ケア医は女性や子どもの安全への配慮や、虐待を経験した女性への支持的カウンセリングの仕方に関する訓練を受けるべきと考えられる」と結論している。

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例解説

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症腰椎圧迫骨折の急性期に、NSAIDs抵抗性の侵害受容性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を段階的に導入して十分な鎮痛効果が得られ、痛みの緩和だけでなくADLの改善が達成された症例である。高齢者の腰椎圧迫骨折後の5年生存率は30%との報告(Lau E, et al. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 1479-1486)もあり、腰椎圧迫骨折による疼痛(とくに体動時痛)→安静臥床の遷延→廃用症候群→寝たきり→誤嚥性肺炎→生命危機という経過が考えられる。オピオイド鎮痛薬は最も強力な鎮痛薬であることから、痛みの程度に応じて使用しADLを改善することはきわめて重要な意義を持つ。さらに、オピオイド鎮痛薬の導入にあたっては嘔気や便秘といった副作用対策も予防的に行われており、患者のオピオイド鎮痛薬に対する忍容性も達成されていた。本症例のように腰椎圧迫骨折後に痛みが遷延することは決して珍しくはない。しかしながら、このような遷延する痛みが骨折に伴う侵害受容性疼痛だといえるだろうか。言い換えると、「遷延する痛みが器質的な原因の結果として妥当であるか否か」ということだが、これは必ずしも明確に妥当であるとは言えないことが多い。確かに、本症例では、通常組織傷害が治癒すると考えられる3ヵ月を経過しても、体動とは無関係な持続痛が徐々に増悪・拡大しており、当初の腰椎圧迫骨折だけが痛みの原因とは考えにくい。したがって、われわれは非特異的腰痛症と診断した。このような症例に対して、オピオイド鎮痛薬の効果が明確では無いにもかかわらず、オピオイド鎮痛薬をやみくもに漸増し、さらに頓用薬を併用していたことは不適切であるといわざるを得ない。オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、1. Analgesia (オピオイド鎮痛薬を適切に使用し痛みを緩和させること)、2. Activities of daily living(オピオイド鎮痛薬の使用はADLを改善するためであることを医師が理解し患者に教育すること)、3. Adverse effects(オピオイド鎮痛薬による副作用対策を十分に実施すること)、4. Aberrant drug taking behavior(精神依存や濫用を含む不適切な使用を常に評価し、患者教育を行うこと)の頭文字をとって4Asという注意事項が知られている。本症例は急性期のAnalgesiaとAdverse effectsへの対処は適切であったと考えられるが、腰椎圧迫骨折から3ヵ月が経過した慢性期での対応については検討の余地がある。日本ペインクリニック学会が発行した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の使用目的として、痛みを単に緩和するだけでなくADLを改善するために使用することを推奨している。したがって、組織修復(骨癒合)がある程度進んだであろう時期には、痛みが残存している状況でもオピオイド鎮痛薬を増加させずに運動療法の導入やADL改善の意義について教育すべきであったと考えられる。このことは、慢性腰痛に対して長期安静がred flagとして認識されていることと同義である。よって本症例で慢性期に痛みが残存しておりオピオイド鎮痛薬を増量しても痛みが緩和しないことから、医師が安静を指示していたことは適切であるとは言い難い。また、器質的障害による疼痛(侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛)に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合には精神依存や濫用を引き起こしにくいことが基礎研究によって示されているが、この知見は言い換えるとオピオイド鎮痛薬を非器質的な疼痛に対して使用する場合には精神依存を防止し難いことを意味する。また、オピオイド鎮痛薬の血中濃度が乱高下すると精神依存を形成しやすい。したがって、日本ペインクリニック学会の指針でも、オピオイド鎮痛薬は器質的障害が明確な疼痛疾患に対して使用し、その使用時にはオピオイド鎮痛薬の血中濃度を一定にするために徐放製剤(2013年3月現在、非がん性慢性疼痛に対して保険適応を持つ製剤は、デュロテップMTパッチ®、トラムセット®、ノルスパンテープ®である)を使用することが推奨されている。また、このようなオピオイド鎮痛薬を使用する場合にも、非がん性慢性疼痛に対しては一日量として経口モルヒネ製剤120mg換算までにとどめることも推奨されている。これは、鎮痛薬を増量することとQOLの改善効果が必ずしも線形相関にはならず天井効果が現れることがあり、高用量では精神依存や濫用への懸念があるからである。さらに、オピオイド鎮痛薬の使用期間が長くなればなるほど精神依存や濫用、不適切使用が増加することも報告されており、オピオイド鎮痛薬の使用期間は可能な限り短期間にとどめなければならない。このほか、患者自身が鎮痛薬を管理する能力が低下している場合には、家族など患者の介護者にオピオイド鎮痛薬についての知識を教育し、その管理に関与するように指導することも重要である。本症例をまとめると、急性期の腰椎圧迫骨折に対してオピオイド鎮痛薬を早期から導入し、疼痛緩和とADLの改善を達成したことは適切であった。慢性期の腰痛に対して、オピオイド鎮痛薬を増量するとともに頓用させていた点は不適切であった。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、治療指針などの推奨事項を十分に理解したうえで適切に使用し、そのことを患者に教育しなければならない。つまり、オピオイド鎮痛薬に対する精神依存や濫用の形成から患者を保護することは医師の義務であると同時に、これらが疑われる患者やオピオイド鎮痛薬の不適切使用が認められる患者に対しては、痛みの重症度にかかわらずオピオイド鎮痛薬を処方しないことは医師の権利であると考えている。

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rhBMP-2を用いた椎体間固定術で注意すべきこと

 遺伝子組換えヒト骨形成タンパク質-2(rhBMP-2)は、すでに欧米では脊椎固定などに広く使用されているが、異所性骨形成、局所の骨吸収、神経根炎などさまざまな合併症が知られている。米国・ニューヨーク大学病院のShaun D. Rodgers氏らは、rhBMP-2を用いた椎体間固定術後の再手術中に致命的な血管損傷が発生した症例について考察した。その結果、rhBMP-2によって誘発された宿主炎症反応が、血管線維化と瘢痕化の一因となり血管損傷が引き起こされた可能性を指摘し、「脊椎外科医はrhBMP-2使用時の合併症として炎症性線維化に注意しなければならない」とまとめている。Journal of Neurosurgery: Spine誌オンライン版2013年4月5日の掲載報告。 本論文は症例報告である。症例は、L4-5の脊椎すべり症(グレード1)を有する63歳の男性。1年前より難治性腰痛および神経根障害の悪化を来し、rhBMP-2を充填した椎体間ケージを用いた経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)が施行された。 その後の経過は以下のとおりであった。・症状はわずかに改善したが、1年半後には保存的治療に反応しない慢性腰痛と神経性跛行を呈した。 ・放射線学的画像診断の結果、ネジのゆるみと偽関節が認められた。・ケージの除去、椎間板切除および大腿輪留置を行うため、前方後腹膜アプローチにて再手術を施行した。・アプローチ中、腸骨静脈が瘢痕化および線維化を伴い以前手術したL4-5椎体間スペースに癒着していることが観察された。・モビライゼーション中に左腸骨静脈が破れ失血と心停止を来したが、心臓マッサージ、除細動および輸血にて回復し、手術は終了した。 ・数日後、患者の神経学的症状は消失した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part2

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。今回は生物学的製剤の投与方法や新規薬剤に関する質問です。生物学的製剤の開始時期について教えてください。また、開始時にルーチンで実施する検査を教えてください。日本リウマチ学会より、関節リウマチに対するTNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプト使用ガイドラインが発行されている。これに基づくと、1.既存の抗リウマチ薬通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者(コントロール不良の目安として、圧痛関節数6関節以上、腫脹関節数6関節以上、CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上)や、画像検査における進行性の骨びらんを認める患者、DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上の患者2.既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、さらに予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性または画像検査における骨びらんを認める)を有する患者には、メトトレキサート(MTX)との併用による使用を考慮するとある。開始時のルーチンで施行する検査は、上記ガイドラインに記されている禁忌・要注意事項に該当する患者を除外する目的で、以下の検査を行う。白血球分画を含む末梢血検査、β-Dグルカン、胸部X線、ツベルクリン反応、クォンティフェロン(QFT)、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体また開始後の骨破壊の進展を評価するために、生物学的製剤開始前の関節X線を撮影することが多い。生物学的製剤の休薬や中止の判断基準を教えてください。いくつかの生物学的製剤で、休薬後、寛解や低疾患活動性を維持できるか(バイオフリー)を検証されている。日本発のエビデンスで最初の報告はRRR studyである(Ann Rheum Dis. 2010; 69: 1286-1291)。これはインフリキシマブによって低疾患活動性および寛解を24週間以上維持できた患者を対象に、インフリキシマブを中止し、その1年後の休薬達成率を確認したものである。その結果、55%が休薬を達成し続けた。ここで、休薬を達成し続けられた群は、そうでない群と比較して罹病期間が短く(4.7 vs 8.6年、p=0.02)、mTSS(modified total sharp score)が低値(46.9 vs 97.2、p=0.02)であると報告されている。他の製剤については検証中のものが多く確定的なことは言えないが、早期例で骨破壊が少なく、深い寛解を維持できた症例はバイオフリー寛解を維持しやすいようである。生物学的製剤投与中の感染症の早期発見方法について教えてください。わが国で施行した市販後全例調査の結果、生物学的製剤使用者の1~2%で重篤な細菌性肺炎の報告があった。ただし、早期発見する確実な手段はない。重要なことは感染症のリスクを評価し、リスクが高い症例は注意深く慎重に観察していくことである。さらに、事前の肺炎球菌ワクチンや冬期のインフルエンザワクチン接種を推奨する。生物学的製剤において感染症のリスクとして共通しているのは、ステロイドの内服、既存の肺病変、高齢、長期罹患などである(Arthritis Rheum. 2006; 54: 628-634)。さらに、インフリキシマブでは投与開始20~60日に細菌性肺炎の発症が増加する(Ann Rheum Dis. 2008; 67: 189-194)。よって投与2ヵ月以内は注意しながら診療する。また、トシリズマブ投与例ではCRPは上昇しないことが知られているため、スクリーニングの画像検査を積極的に行うことが望ましい。また、ニューモシスチス肺炎も0.2~0.3%程度報告されている。これについては、β-Dグルカンの測定を定期的に行い、労作時呼吸困難や咳嗽などを訴えた症例は慎重に精査を進めていく。間質性肺炎を合併した関節リウマチ患者に対して、どのように治療したらよいでしょうか?間質性肺疾患合併例ではMTX肺炎を誘発する懸念があるため、MTXを軸とした管理ができないことがある。米国リウマチ学会の治療推奨(Arthritis Care Res. 2012; 64: 625-639)などに基づき治療戦略を決定するが、一般的にわが国では、まず推奨度Aの抗リウマチ薬(ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タクロリムスなど)で疾患活動性のコントロールを試みることが多い。これで活動性が抑制できなければ生物学的製剤の適応を考慮する。例外的に、活動性がきわめて高く、予後不良因子を有する症例や短期間で骨破壊が進行する症例などでは、生物学的製剤を積極的に第一選択薬として用いることもある。この場合、MTX併用を必須とするインフリキシマブは投与できない。よって、残りの製剤のどれかを選択することになるが、「既存の肺病変」の存在は生物学的製剤において重篤感染症やニューモシスチス肺炎などのリスク因子になりうる(N Engl J Med. 2007; 357 : 1874-1876)ため、リスクとベネフィットを考慮して治療方針を決定する。JAK阻害薬(トファシチニブ)など、新規薬剤の可能性について教えてください。生物学的製剤の登場によって関節リウマチの診療は大きく変わった。これらは劇的な効果をもたらしたが、無効例も存在することは間違いなく、TNFやIL-6などの阻害だけでは病態を十分制御できないことを示唆している。これを受けて、現在、新規治療薬として1,000kDa以下の低分子化合物の開発が進行しており、なかでもJAK阻害薬の有効性が臨床でも確認されている。FDAが、2012年11月に関節リウマチの治療薬として、JAK1/JAK3阻害薬であるトファシチニブを認可した。承認用量である5mg 1日2回12週間の投与によって、12.5%の寛解率を示した(Arthritis Rheum. 2012; 64: 617-629)。その効果は生物学的製剤に匹敵する。一方、JAK阻害によって多数のサイトカインシグナルが阻害され、炎症と免疫に与える影響は複雑である。高分子化合物である生物学的製剤が細胞外の受容体に作用するのに対して、低分子化合物であるJAK阻害薬は細胞内で作用する。細胞内で作用した同薬剤が、最終的にヒトにおける長期安全性にどのような影響を及ぼすのか、今後の解明が待たれる。

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“重症にきび”はうつ病のリスク!?

 汗腺の膿瘍として知られるにきびinversaは慢性炎症性疾患であり、生活の質に影響を及ぼす疾患である。ドイツ・シャリテ大学のAgata Kurek氏らは、にきびinversa患者はうつ病発症リスクが高いかどうかを検討した。Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft誌オンライン版2013年4月9日号の報告。 対象は、自主的に研究に参加したにきびinversa(AI)患者90例。うつ病の発症を評価するために、患者の精神症状について不安と抑うつのスクリーニングテスト(HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale)を行った。コントロール群は年齢、性別、BMIで調整し、マッチングした。また、うつ病とうつ病に影響を及ぼすと推測される要因との相関関係を評価した。主な結果は以下のとおり。・AI患者はコントロール群と比較し、うつ病を有する割合が高かった。・コントロール群のうつ病有病率は2.4%であったのに対し、AI患者のうつ病有病率は38.6%であった。・AIの持続期間および年齢とは対照的に、不安や性的苦痛はうつ病の重症度と強い相関が認められた。関連医療ニュース ・視機能喪失の訴えは、うつ病のリスク!? ・うつ病治療に「チューインガム」が良い!? ・仕事のストレスとうつ病リスク:獨協医科大学

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余暇の身体活動量は2型糖尿病における死亡率と脳卒中リスクの予測因子となりうる?―JDCSによる分析

 日本人2型糖尿病患者において、余暇における週15.4METs・時以上の身体活動は、部分的な心血管リスクの改善を通じて、脳卒中リスクを有意に低下させることが新潟大学医歯学総合研究科 曽根 博仁氏らの研究で明らかになった。余暇の身体活動量は、全死亡率の有意な低下とも関連を認めたが、心血管リスクや心血管イベントとは独立していた。これらの結果は、欧米の糖尿病患者との違いを示唆しており、東アジア地域の糖尿病の臨床管理において考慮されるべきである。Diabetologia誌2013年5月号(オンライン版2013年2月27日号)の報告。 本研究は、日本人糖尿病患者における余暇の身体活動と心血管イベント、全死亡率との関係について検討した全国コホート研究である。 Japan Diabetes Complications Study(JDCS)に登録された2型糖尿病患者1,702例(平均58.5歳、女性47%)を対象に、8.05年(中央値)にわたり追跡調査を行った。質問票を用いて、余暇身体活動や職業を含むライフスタイルの調査を行った。アウトカムは、冠動脈心疾患(CHD)発症・脳卒中発症・全死亡率とした。ハザード比と95%CIはCox比例ハザードモデルにより算出した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、糖尿病罹病期間で調整後、余暇の身体運動が週15.4METs・時以上の群(三分位数の最大値)における、週3.7METs・時以下の群(三分位数の最小値)に対する脳卒中のハザード比は0.55(95%CI: 0.32~0.94、p=0.03)、全死亡率のハザード比が0.49(95%CI: 0.26~0.91、p=0.02)と有意に低かった。CHDのハザード比は0.77(95%CI:0.48~1.25、p=0.29)で有意差を認めなかった。・ライフスタイルあるいは食事・血清脂質を含む臨床的変数で調整後、脳卒中のハザード比の有意性は境界領域であった。・余暇の身体活動による全死亡率の有意な低下は、これらの変数とは独立しており、少なくとも主として心血管疾患の減少に帰するものではないと考えられた。※MET(Metabolic Equivalent)身体活動量と運動量の基準値で、運動強度を示す単位。普通に歩くなど日常的な運動の強度は3METs程度。

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