サイト内検索|page:221

検索結果 合計:10324件 表示位置:4401 - 4420

4401.

分子標的薬による術後アジュバントの意味【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第14回

第14回 ADAURA試験はpractice changingなのか:分子標的薬による術後アジュバントの意味1)Herbst RS, Tsuboi M, John T, et al. Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with stage IB-IIIA EGFR mutation positive (EGFRm) NSCLC after complete tumor resection: ADAURA. ASCO 2020, LBA 5.2)Hauschild A, et al. Long-term benefit of adjuvant dabrafenib + trametinib (D+T) in patients (pts) with resected stage III BRAF V600-mutant melanoma: Five-year analysis of COMBI-AD. ASCO 2020, abstract 10001.3)Joensuu H, Eriksson M, et al. Survival Outcomes Associated With 3 Years vs 1 Year of Adjuvant Imatinib for Patients With High-Risk Gastrointestinal Stromal Tumors; An Analysis of a Randomized Clinical Trial After 10-Year Follow-up. JAMA Oncol. 2020 May 29. [Epub ahead of print] 今年のASCOの目玉の1つ、完全切除NSCLC(病理病期Ib-IIIA)に対してオシメルチニブの術後補助化学療法を行ったADAURA試験。プラセボに対してプライマリエンドポイントである無存再発期間(RFS)をHR 0.17という見たことのない差でmetしたが、多くの議論が沸き上がっている。他がん腫の状況なども含め、論点を概説する。日常臨床を変えるには何が足りないか「OSを待つ必要がある」という意見も見掛けるが、完全切除のNSCLCに術後補助療法を行う目的は根治である。古くから5年生存が根治と見なされてきた経緯があるものの、近年術後再発した後の化学療法が非常に発達しているため、OSのみでは必ずしも根治の指標でない可能性がある。より厳密に根治率の改善を検証するためには長期DFS率が妥当と思われる。分子標的薬は根治をもたらすか:他がん腫での知見から今回用いられたのがオシメルチニブという分子標的薬であることには注意が必要である。他がん腫で術後補助療法に対して承認されている分子標的薬は、消化管間質腫瘍(GIST)に対するイマチニブ、悪性黒色腫に対するダブラフェニブ+トラメチニブの2レジメン。GIST:イマチニブの1年投与がプラセボに比して有意な無再発生存期間(RFS)を延長したが(HR 0.35)、OSは有意差を認めず(Dematteo RP, et al. Lancet. 2009;373:1097-1104.)。その後、high risk群を対象に3年間vs.1年間投与で前者が有意にRFSを延長した(Joensuu H, et al. JAMA. 2012;307:1265-1272.)。この発表はASCOでプレナリーとして報告されたものの、ディスカッサントからは内服中止後に再発が急増していることへの懸念が指摘された。ちょうど先頃、10年フォローアップの結果が報告された。RFSは統計学的には有意ではあるが最終的に両群の曲線が近づいている。またOSも現時点では有意に上回っているが、再発例のみの解析では再発後生存期間は同等とも報告されている。悪性黒色腫:StageIIIの悪性黒色腫を対象にダブラフェニブ・トラメチニブ併用とプラセボを比較したCOMBI-AD試験は、今回ASCOで長期成績が報告されたが(Hauschild A, #10001)、1年の投与終了後もRFSはほぼプラトーとなっていた(3/4/5年のRFS率はそれぞれ59/55/52%)。一見同じような印象を受けるドライバー変異を有するがん腫でも、それぞれの阻害剤に対する効果が異なるのだろうし、ダブラフェニブ・トラメチニブについては腫瘍免疫に対する影響も示唆されているようなので、こういった影響を考慮すべきなのかもしれない。つまり「分子標的薬で根治が得られるか」という疑問に対しては、まだ十分な答えがない状況である。EGFR陽性例でほかに参考になる知見同じ対象についてゲフィチニブがすでにDFS延長にもかかわらずOSで延長を示せなかったことから(CTONG1104試験、Wu YL, #9005)、GISTにおけるイマチニブのパターンをたどる可能性は否定できない。また、今回の解析では多くの患者がオシメルチニブ3年間投与の途中であり、イマチニブで見られた内服終了後の再発増加が認められるかは今後見ていく必要がある(ADAURAでも、よりハイリスクなStageIIIAのサブセットでは36ヵ月で再発が増えている“ようにも見える”)。なおCTONG1104試験で再発ハザード比の経時的変化を見た研究において、内服終了に近い15ヵ月前後から再発リスクが増加することも報告されている(Xu ST, IASLC 2017)。われわれのpracticeを変えるべきか現時点でpracticeを変えるにはまだ情報が不足しているという印象。一方で、HR 0.17というとんでもない数字がOSに反映される可能性は十分あるだろう。つまりGISTの試験のように「根治には十分寄与しないが、OSを延長する」ケースである。ただしこの結果が受け入れられるためには、「最終的にほとんどの症例が再発するのなら、OS延長も臨床的には意味があるのでは」という考え方の転換が必要になる。個人的には、こういった考えがコンセンサスとなるには時期尚早に感じられる。

4402.

双極性障害における心臓突然死の発生率とリスク因子

 双極性障害患者における心臓突然死の発生率やリスク因子に関する情報は十分ではない。台湾・台北医科大学のPao-Huan Chen氏らは、双極性障害患者の心臓突然死の調査およびリスク因子の特定のため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年5月23日号の報告。 2000~16年の台湾全民健康保険研究データベースおよびHealth Death Certification Systemのデータを用いた、プロスペクティブ台湾コホート研究を実施した。本コホートに含まれた双極性障害患者は4万6,490例、そのうち467例に心臓突然死が発生した。 主な結果は以下のとおり。・層別解析では、心臓突然死の標準化死亡率(SMR)は、すべての年齢で1.00超であり、30歳未満の患者で最高値(SMR:31.96、95%CI:20.47~47.55)であった。・とくに高血圧は、50歳未満(SMR:1.85、95%CI:1.23~2.79)および50歳以上(SMR:1.44、95%CI:1.14~1.83)の両方で心臓突然死リスクを上昇させた。・静脈およびリンパ管障害(SMR:1.97、95%CI:1.23~3.16)、アルコール使用関連障害(SMR:2.34、95%CI:1.62~3.38)は、50歳未満の心臓突然死リスクを上昇させた。・うっ血性心不全(SMR:1.59、95%CI:1.13~2.23)および認知症(SMR:1.75、95%CI:1.30~2.35)は、50歳以上の心臓突然死リスクを上昇させた。 著者らは「双極性障害患者は、どの年代においても心臓突然死リスクが非常に高いため、早急に特有の予防戦略が求められる」としている。

4403.

閉経後乳がん患者、術後AI+スタチンが再発リスク低下と関連

 スタチンの使用は、術後アロマターゼ阻害薬(AI)治療を受けている閉経後乳がん患者において、再発リスクの低下と関連していた。デンマーク・オーフス大学病院のSixten Harborg氏らが、集団ベースのコホート研究結果を、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2020年6月22日号に報告した。 研究者らは、2007~2017年にI~III期のホルモン受容体陽性乳がんと診断された閉経後のすべての患者を登録。術後AI治療が実施された。デンマーク国立処方レジストリから、スタチンの処方(診断後1年以上の処方)を確認し、生物学的潜伏期間を考慮し6ヵ月後からの時変曝露としてモデル化した。 追跡調査は診断7ヵ月後に始まり、再発、死亡、移住、5年経過のいずれかの最初のイベント、または2018年9月25日まで継続された。5年後の再発発生率を推定し、Cox回帰モデルを使用して、調整ハザード比(HR)を算出し、スタチン曝露群と非曝露群を比較した。 主な結果は以下のとおり。・14,773例の適格患者が登録された。・5年間の追跡期間中に、スタチン曝露群では3,163人年当たり32件の再発があり、非曝露群では45,655人年あたり612件の再発があった(1,000人年当たりの発生率:10.12[95%CI:6.92~14.28] vs.13.40[95%CI:12.36~14.51])。・多変量モデルでは、スタチンへの曝露が5年間の乳がん再発率の低下と関連していた(調整HR:0.72[95%CI:0.50~1.04])。・脂溶性スタチンへの曝露のみを考慮した場合にも、結果は同様であった(調整HR:0.70 [95%CI:0.48~1.02])。 研究者らは、交絡因子としてBMIや術後AI治療のアドヒアランスの影響などを考慮できていない点を本研究の限界として挙げつつも、AI治療を受けた早期乳がん患者が、術後レジメンに脂溶性スタチンを追加することでさらにベネフィットを得る可能性があると結んでいる。

4404.

小細胞肺がんに対するデュルバルマブ+tremelimumab+化学療法の成績(CASPIAN)/ASCO2020

 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis G. Paz-Ares氏は、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療で免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体デュルバルマブ、抗CTLA-4抗体tremelimumabと化学療法の併用と、デュルバルマブ+化学療法、化学療法の3群を比較した第III相試験「CASPIAN」の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で報告した。同学会では、2つ目の実験群であるデュルバルマブ+tremelimumab+化学療法群の初回解析では全生存期間(OS)の有意な改善は認められなかったが、デュルバルマブ+化学療法では、11ヵ月追加した中央値25.1ヵ月の追跡結果においても、有意なOSの延長を示した。・対象:未治療のES-SCLC患者(WHO PS 0/1)、無症候性あるいは治療済みで安定している脳転移症例は許容・試験群: デュルバルマブ+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群) デュルバルマブ+tremelimumab+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)・対照群:エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(EP群)・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、患者報告アウトカム(PRO)、安全性、忍容性 PFSの検定は、上記2つの試験群のOSの有意差が確認された場合に解析される。 主な結果は以下のとおり。D+T+EP vs.EP・OS中央値はD+T+EP群10.4ヵ月、EP群10.5ヵ月、2年OS率はEP群14.4%、D+T+EP群23.4%であったが、事前のp値設定≦0.0418を達成せず、統計学的有意差は認められなかった。・PFS中央値はD+T+EP群4.9ヵ月、EP群が5.4ヵ月であった。・奏効期間(DoR)はD+T+EP群5.2ヵ月、EP群が5.1ヵ月であった。・ORRはD+T+EP群が58.4%、EP群が58.0%であった。D+EP vs.EP・OS中央値はD+EP群が12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群が10.5ヵ月(95%CI:9.3~11.2)でD+EP群で有意な延長が認められた(HR:0.75、95%CI:0.62~0.91、p=0.0032)。2年後OS率は、EP群14.4%に対してD+EP群22.2%であった。・PFS中央値はD+EP群が5.1ヵ月(95%CI:4.7~6.2)、EP群が5.4ヵ月(95%CI:4.8~6.2)であった(HR:0.80、95%CI:0.66~0.96)。・DoRはD+EP群共に5.1ヵ月であった。・ORRはD+EP群が67.9%、EP群が58.0%であった。・有害事象(AE)発現率はD+T+EP群が99.2%、D+EP群が98.1%、EP群が97%で、Grade3~4のAE発現率はD+T+EP群が70.3%、D+EP群が62.3%、EP群が62.8%であった。・免疫関連AEは、D+T+EP群が36.1%、D+EP群が20.0%、EP群が2.6%であった。 今回の結果についてPaz-Ares氏は「D+EP群が進展型小細胞肺がんの1次治療で新たな標準治療となることをよ支持している」との見解を示した。

4405.

第13回 抗がん剤の仕事場となる核内集落~COVID-19薬を撃ち込むべき集落も発見か

サラダドレッシングの油滴のように、周囲とは一線を画す核内のタンパク質凝集体―いわば分子の集落(condensate)が、抗がん剤シスプラチンの仕事場の役割を担い、その集落を崩壊させると同剤の効果もまた失われると分かりました1-3)。シスプラチンの仕事場を担う分子集落は、がん誘発遺伝子に主に関与するタンパク質MED1によって形成されます。シスプラチンはMED1が形成する核内集落に蓄積して、がん細胞を殺傷するためDNAへの白金原子付加に作用しますが、その作用はBRD4阻害薬JQ.1でMED1集落をばらすと失われました。MED1の核内集落は場合によっては逆に抗がん剤を効き難くもします。乳がん治療薬タモキシフェンはシスプラチンと同様にMED1集落に集まってエストロゲン受容体α(ERα)を締め出しますが、MED1過剰発現のせいでMED1集落が大きくなりすぎるとタモキシフェンが薄まってERαを締め出せなくなってしまいます。そのように抗がん剤にとって分子集落はときに諸刃の剣になるようですが、作用がどうなるかは別にして分子集落への蓄積は抗がん剤に共通する特徴のようです。米国・Whitehead Instituteで働く今回の研究のリーダーRichard Young氏等が調べた抗がん剤はどれも細胞内集落に集まりました4)。研究者は次の課題として薬が分子集落に集まる仕組みの解明に取り組んでいます。その法則が分かれば低分子化合物を目当ての場所に集中させることができます。Young氏の指揮の下で今回の成果を手にしたIsaac Klein氏をはじめとする研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にも2か月ほど前から取り組んでおり、まだ発表前ですが、その原因ウイルスSARS-CoV-2の複製装置であるタンパク質3つが、治療薬を吸収して濃縮しうる細胞内集落を形成することを発見しています4)。この発見により、ウイルス複製の場であるその集落に集まってRNA複製を阻害する低分子化合物探しを始めることが可能になりました。2018年にYoung氏は今回の研究の著者の1人でもあるドイツ・Max Planck Instituteの細胞生物学者Anthony(Tony) Hyman氏と一緒に、ボストンにDewpoint Therapeuticsを設立しました。Dewpoint社は病因の細胞内集落を崩壊させるあるいはそのような集落に蓄積する薬の開発に取り組んでいます。Dewpoint社の最高科学責任者(CSO)Mark Murcko氏は、これからは細胞内集落を無視した創薬はありえないとNatureに話しています。一方、細胞内集落の過信を危ぶむ研究者もいます。細胞内集落は体外でのみ観察される現象かもしれず、そこに投下する薬探しに熱中することはちょっと心もとない(bit of a house of cards)とカリフォルニア大学バークレー校の生化学者Robert Tjian氏は言っています。参考1)Klein IA,et al.Science.2020;368:1386-1392.2)How cancer drugs find their targets could lead to a new toolset for drug development / Eurekalert3)Viny AD,et al.Science.2020;368:1314-1315.4)How cells’ ‘lava lamp’ effect could make cancer drugs more powerful / Nature

4406.

オリゴ転移乳がんの生存延長に最善の治療を検討

 中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical College のBo Lan氏らの研究から、頭蓋外オリゴ転移乳がんの予後は比較的良好であり、転移病変の外科的切除が無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を大きく改善する可能性が示された。International Journal of Cancer誌オンライン版2020年6月14日号に掲載。 本研究では、頭蓋外オリゴ転移の臨床的特徴と予後因子および最善の治療方法を特定することを目的に、2009~14年、中国・National Cancer Centerで頭蓋外オリゴ転移乳がんと診断された術後入院患者50例を対象に調査した。オリゴ転移乳がんは、転移病変が3個以下で1つの臓器に限局している転移乳がんと定義し、de novo StageIVと局所再発は除外した。 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は15.2ヵ月、OS中央値は78.9ヵ月、2年PFS率は40%、5年OS率は58%であった。・標準全身治療+転移病変すべての外科的切除による1次治療が、PFS延長(ハザード比[HR]:0.32、95%信頼区間[CI]:0.14~0.73、p=0.006)およびOS延長(HR:0.35、95%CI:0.14~0.86、p=0.022)の独立した予後因子であった。・サブグループ解析により、無病期間が24ヵ月以上、転移病変が1つのみ、ホルモン受容体陽性の症例で切除が有用な可能性が高いことが示された。

4407.

第12回 新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)利用開始、DLは240万件超

<先週の動き>1.新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)利用開始、DLは240万件超2.唾液で新型コロナウイルスの抗原検査が可能に3.初の“デジタル薬”? 禁煙治療アプリが承認4.厚労省が医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」を開設5.医師の時間外労働「年960時間+別枠420時間」を提言(日本医師会)1.新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)利用開始、DLは240万件超厚生労働省は、新型コロナウイルスに感染した人と濃厚接触した疑いがある場合に通知を受けられるスマートフォン向けのアプリを、19日午後、インターネット上に公開した。このアプリを事前にダウンロードし、Bluetoothをオンにしておくことにより、15分以上1メートル以内の距離にいる場合、接触した相手として記録する。アプリは21日17:00時点で約241万回ダウンロードされており、14日経過するとデータの記録を消去するなど、個人のプライバシー保護に配慮したものとなっている。(参考)新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) COVID-19 Contact-Confirming Application(厚労省)2.唾液で新型コロナウイルスの抗原検査が可能に加藤 勝信厚生労働大臣は、19日の会見で、唾液を使った新型コロナウイルス抗原検査についての検査試薬が承認されたことを明らかにした。痛みもなく、採取時に医療従事者の感染リスクも少なく、約30分で判定が可能となっている。感度はPCR検査と同程度とされており、PCRを補完するものとして期待されている。ただし、専用の機器が必要であり、現在対応できる検査機器は約800台と限りがある。今後、全国の医療機関での導入が進むかは予算措置などにもよると考えられる。(参考)全自動検査機器における新型コロナウイルス抗原検査試薬製造販売承認の取得について(みらかグループ)3.初の“デジタル薬”? 禁煙治療アプリが承認19日に開催された第2回 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)において、ニコチン依存症治療アプリが医療機器として承認されることが了承された。このアプリは、禁煙外来に受診している紙巻きタバコを吸っている人が対象で、禁煙治療薬と併用する。禁煙指導患者に対して、禁煙の継続率を高めるために医師が処方するもので、医療機器として申請されており、日本国内で初めて承認された。今後、高血圧や糖尿病といった生活習慣病に対する治療アプリ利用が国内で増えるきっかけとなる可能性が高い。(参考)医師が処方する「治療用アプリ」として国内初の薬事承認へ(CureApp)第2回 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)議題(厚労省)4.厚労省が医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」を開設新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療人材不足に対して、厚労省は19日に、医療人材募集情報と求職者のマッチングを行うウェブサイト「医療のお仕事 Key-Net」を開設した。すでにサイトは一般に公開されており、全国の医療機関・保健所などの人材募集情報が掲載されている。医療機関などへの問い合わせや応募、面接までオンラインで完結するが、本サイトを通じて採用する者に対しては、厚労省の提示する研修(無料・数時間程度)を受講することが条件となっている。対象職種は、医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、薬剤師、救急救命士および事務職。(参考)医師・看護師・医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」の開設について(厚労省)5.医師の時間外労働「年960時間+別枠420時間」を提言(日本医師会)日本医師会は、17日の記者会見において「医師の特殊性を踏まえた働き方検討委員会」(委員長:岡崎 淳一元厚生労働審議官)が作成した答申を公表した。これによると、2024年度から開始予定の「罰則付き」時間外の上限時間の適用を猶予する内容である。実施に当たっては、大学附属病院の診療科によっては960時間が適用される場合があり、960時間では地域医療の支援は不可能となることなどから、地域医療支援機能を維持するために、960時間が上限の場合には、副業・兼業のために別枠として1週あたり8時間、年間420時間まで認める制度を導入する必要があるとされる。実施に当たって、対応が間に合わない部分については医療機関の判断に任せることを提言した。(参考)「医師の特殊性を踏まえた働き方検討委員会 答申」(日本医師会)

4408.

COVID-19、医療者の心を支えるオンライン会議ツールと市民の励まし【臨床留学通信 from NY】番外編6

COVID-19、医療者の心を支えるオンライン会議ツールと市民の励ましCOVID-19治療は依然として模索が続いています。当初使用していたヒドロキシクロロキンについてはネガティブデータが続いており、現状使用していません1,2,3)。アジスロマイシンも同様です。レムデシビルに関しては、トライアルベースでの使用に留まり、RCTに参加する必要があります。また当院では、シングルアームで回復期患者の血漿を使用したトライアルベースの治療を行っています。このほか、トシリズマブをオフラベルで使用しています。当院の関連病院であるMount Sinai Hospital(大学病院)ではMesenchymal stem cell treatmentをやっているようです4)。また、当院のプロトコールにおいては入院患者の中等度~重症例(低酸素血症またはD-dimer、Creatinine、CRP上昇例など)に対しては、アピキサバンや(低分子)ヘパリンを投与しています。実際に、Mount Sinaiのデータベースを使用した抗凝固療法を支持する後ろ向き研究のデータが出ていますが、RCTの結果が待たれますし、あくまで患者さんの出血のリスクとの兼ね合いとなります5)。いずれにせよ、確固たる治療法がない現状が続いています6)。今回のCOVID-19に関連して、途方もない数の方々が病院で亡くなりました。ニューヨーク州においては、5月30日現在で、約37万人の感染者と2万3,000人の死亡者、ニューヨーク市においては、20万の感染者に対し1万5,000人の死亡者でした。当初は、感染の危険性から死ぬ間際であっても面会を禁止していました。自らが感染するリスクを抱えるだけでもストレスでありましたが、まったくの孤独で亡くなる患者さん達を目の当たりにし、患者さんの家族には電話でしか伝えることができず、医療従事者の心身には想像以上の負荷がかかっていました。そのようなつらい状況下の医療従事者を、多くのニューヨーカーが称え、鼓舞してくれました。マンハッタンの日本料理屋などからfood donationをいただいたり7)、毎晩7時になると、市内のあちらこちらから拍手が起こったりして、心が温まります8)。依然として家族の面会は禁止のままですが、病院ではiPadを使用してZoomなどのテレビ通話アプリを介して患者さんと家族が会話できるよう環境を整え、亡くなる間際もZoomを利用して最期を迎えられるように行なっています。実際に、米国では家族が離れて暮らすことはよくあり、国内であっても飛行機で簡単に移動もできない現状もあり、そういった手段は非常に有用であると考えます。1)https://www.carenet.com/news/journal/carenet/501362)https://www.carenet.com/news/journal/carenet/501113)https://www.carenet.com/news/journal/carenet/500954)https://www.mountsinai.org/about/newsroom/2020/mount-sinai-leading-the-way-in-innovative-stem-cell-therapy-for-covid19-patients-pr5)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32387623/?from_term=jacc+fuster+covid&from_sort=date&from_pos=26)https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMcp2009575?articleTools=true7)https://www.mifune-restaurant.com8)https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/10/nyregion/nyc-7pm-cheer-thank-you-coronavirus.htmlColumn画像を拡大するこの写真は、文中でも触れたfood donationでいただいたものです。とくに右側に写っているマッシュルームスープは最高においしく、多くの治療や看取りに疲れ切った心身に染み入りました。予想もしなかった留学先でのCOVID-19は厳しい体験の連続ですが、人々の温かさを知る機会にもなりました。

4409.

PD-L1陽性肺がん1次治療、抗TIGIT抗体tiragolumabとアテゾリズマブの併用(CITYSCAPE)/ASCO2020

 スペイン・Hospital Universitario Insular de Gran CanariaのDelvys Rodriguez-Abreu氏は、PD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療に対する抗TIGIT抗体tiragolumabとアテゾリズマブ併用とアテゾリズマブ単剤を比較する無作為化二重盲検第II相試験CITYSCAPEの結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。tiragolumabとアテゾリズマブの併用はアテゾリズマブ単独と比較してITT集団での奏効率(ORR)の向上と無増悪生存期間(PFS)の延長が認められたと報告した。 TIGIT(T-cell immunoreceptor with immunoglobulin and ITIM domains)は細胞傷害性T細胞やナチュラル・キラー細胞上に存在する免疫チェックポイント受容体。がん細胞はTIGITと結合することで免疫の攻撃を回避していることがわかっている。TIGITの発現はPD-L1の発現に関連しているとされ、とくに肺の腫瘍浸潤T細胞で多く発現することがわかっている。tiragolumabは抗TIGITモノクローナル抗体で、アテゾリズマブを併用することで高い抗腫瘍効果を示す可能性があると考えられている。・対象:TPS1%以上のPD-L1陽性StageIV NSCLC初回治療患者 135例・試験群:tiragolumab+アテゾリズマブ3週ごと(tiragolumab群、67例)・対照群:プラセボ+アテゾリズマブ3週ごと(プラセボ群、68例) 両群とも投与期間は病勢進行(PD)あるいは臨床的メリットが失われるまで投与・評価項目:[主要評価項目]ORR、PFS[副次評価項目]奏効持続期間(DoR)、全生存期間(OS)、患者報告アウトカム(PRO) 主な結果は以下の通り。・ITT集団でのORR はtiragolumab群37%、プラセボ群21%であった。・TPS≧50%のORRはtiragolumab群66%、プラセボ群24%であった。・TPS1〜49%のORRはtiragolumab群16%、プラセボ群18%であった。・ITT集団でのPFS中央値はtiragolumab群5.55ヵ月、プラセボ群が3.88ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.38~0.89)。・TPS≧50%のPFS中央値はtiragolumab群評価不能、プラセボ群が4.11ヵ月であった(HR:0.30、95%CI:0.15~0.61)。・TPS1〜49%のPFS中央値はtiragolumab群4.04ヵ月、プラセボ群が3.58ヵ月であった(HR:0.89、95%CI:0.53~1.49)。・全有害事象発現率はtiragolumab群99%、プラセボ群96%、重篤な有害事象発現率はtiragolumab群37%、プラセボ群35%であった。 Abreu氏は、「ORR、PFSの改善効果はTPS発現が50%以上のPD-L1陽性でより大きなものとなった。tiragolumab群の忍容性は良好で、安全性プロファイルはプラセボ群と同様。免疫関連の副作用はtiragolumab群のほうで多かったが、そのほどんとがGrade1~2で管理可能だった」と評した。

4410.

急性間欠性ポルフィリン症、RNAi薬givosiranが有効/NEJM

 急性間欠性ポルフィリン症患者の治療において、RNAi(RNA interference:RNA干渉)治療薬givosiranはプラセボに比べ、ポルフィリン症発作をはじめとする諸症状の抑制に高い効果を発揮する一方で、肝臓や腎臓の有害事象の頻度が高いことが、米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のManisha Balwani氏らが実施した「ENVISION試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年6月11日号に掲載された。急性肝性ポルフィリン症の急性発作と慢性症状の病因の中心となるのは、δ-アミノレブリン酸(ALA)とポルフォビリノーゲン(PBG)の蓄積をもたらす肝臓のδ-アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)のアップレギュレーションと考えられている。givosiranは、ALAS1のmRNAを標的とするRNAi治療薬であり、ALAとPBGの蓄積を防止するという。18ヵ国36施設のプラセボ対照第III相試験 本研究は、日本を含む18ヵ国36施設が参加した二重盲検プラセボ対照第III相試験であり、2017年11月16日~2018年6月27日に患者登録が行われた(Alnylam Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢12歳以上、症候性の急性肝性ポルフィリン症で、尿中ALAとPBG濃度が正常上限値の4倍以上に上昇した患者であった。 被験者は、givosiran(2.5mg/kg体重)を月1回皮下投与する群、またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、6ヵ月の治療が行われた。 主要エンドポイントは、急性間欠性ポルフィリン症(急性肝性ポルフィリン症の最も頻度の高いサブタイプ)患者における複合ポルフィリン症発作の年間発生率とした。複合ポルフィリン症発作は、入院、医療施設への緊急受診、自宅での静脈内ヘミン投与を行った場合とした。 重要な副次エンドポイントは、急性間欠性ポルフィリン症患者におけるALAとPBGの濃度、ヘミンの使用日数、1日最大疼痛スコア、および急性肝性ポルフィリン症患者における発作の年間発生率などであった。主要エンドポイントが74%低下、ALAは86%、PBGは91%低下 94例が登録され、givosiran群に48例、プラセボ群には46例が割り付けられた。全体の平均年齢は38.8±11.4歳、女性が84例(89%)であった。94例中89例が急性間欠性ポルフィリン症だった。 急性間欠性ポルフィリン症患者における6ヵ月後の複合ポルフィリン症発作の平均年間発生率は、givosiran群が3.2、プラセボ群は12.5であり、givosiran群で74%低かった(p<0.001)。複合発作の3つの構成要素である入院、緊急受診、静脈内ヘミン投与はいずれも、givosiran群で低下の程度が大きかった。また、複合発作の年間発生率の中央値では、givosiran群が1.0、プラセボ群は10.7であり、givosiran群で90%低かった。急性肝性ポルフィリン症でも、ほぼ同様の結果だった。 急性間欠性ポルフィリン症患者では、givosiran群はプラセボ群に比べ、尿中のALA(3ヵ月、6ヵ月)およびPBG(6ヵ月)の濃度が低く(いずれもp<0.001)、ヘミンの使用日数が少なく(p<0.001)、1日最大疼痛スコアが良好だった(p=0.046)。また、急性肝性ポルフィリン症患者における発作の年間発生率も、givosiran群で低かった(p<0.001)。ALAとPBG濃度の低下は、介入期間中を通じて持続し、6ヵ月時のベースラインからの低下の割合中央値は、ALA濃度が86%、PBG濃度は91%だった。 givosiran群で頻度が高かった重要な有害事象は、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)値上昇(8% vs.2%)、血清クレアチニン値上昇または推定糸球体濾過量低下(15% vs.4%)、注射部位反応(25% vs.0%)であった。givosiran群の10%に、慢性腎臓病が発現した。 重篤な有害事象の割合は、givosiran群で高かった(21% vs.9%)。また、ALT値が正常上限値の3倍以上の患者の割合はgivosiran群で高く(15% vs.2%)、投与開始から3~5ヵ月後に発生した。ALT値が正常上限値の9.9倍に達した1例は、治療中止となったが、6ヵ月後には正常値に回復した。これ以外に、治療中止や脱落した患者はなかった。 著者は、「肝臓や腎臓の有害事象が多かったものの、安全性プロファイルは許容できるものであった」としている。これらの知見に基づき、givosiranは急性肝性ポルフィリン症の成人患者の治療薬として、2019年11月20日に米国食品医薬品局(FDA)の、2020年3月3日に欧州医薬品庁(EMA)の承認を得ており、EMAは12歳以上での使用を承認しているという。

4411.

COVID-19流行期の小児炎症性多臓器症候群、その臨床的特徴は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生率が高い地域では、通常とは異なる発熱や炎症の症候群を呈する子供の症例が報告されている。そこで、英国・Imperial College Healthcare NHS TrustのElizabeth Whittaker氏らは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症流行期の小児炎症性多臓器症候群(PIMS-TS)の判定基準を満たした入院患児の調査を行い、発熱や炎症から心筋障害、ショック、冠動脈瘤の発現まで、さまざまな徴候や症状とともに、重症度にも違いがみられることを明らかにした。JAMA誌オンライン版2020年6月8日号掲載の報告。58例の臨床的特徴を抽出し、他の炎症性疾患と比較 研究グループは、PIMS-TSの判定基準を満たした入院患児の臨床所見や検査値の特徴を調査し、これらの特徴を他の小児炎症性疾患と比較する目的で、症例集積研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 2020年3月23日~5月16日の期間に、イングランドの8つの病院に入院したPIMS-TS患児58例を対象とした。最終フォローアップ日は2020年5月22日。 診療記録を精査することで、臨床所見や検査値の特徴を抽出し、2002~19年に欧米の病院に入院した川崎病(1,132例)、川崎病ショック症候群(45例)、毒素性ショック症候群(37例)の臨床的特徴と比較した。感染率78%、年齢が高く、炎症マーカーが高値 58例の年齢中央値は9歳(IQR:5.7~14)で、女児が33例(57%)であった。SARS-CoV-2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査では15例(26%)が陽性で、SARS-CoV-2のIgG検査では46例中40例(87%)が陽性であった。全体として、58例中45例(78%)で現在または過去のSARS-CoV-2感染のエビデンスが得られた。 全患児に、発熱と非特異的症状(嘔吐26/58例[45%]、腹痛31/58例[53%]、下痢30/58例[52%])が認められた。発疹は58例中30例(52%)に、結膜充血は58例中26例(45%)にみられた。 検査値の評価では、著明な炎症が認められた。たとえば、C反応性蛋白(CRP)中央値(58例全例で測定)は229mg/L(IQR:156~338)で、フェリチン(58例中53例で評価)中央値は610μg/L(359~1,280)であった。 58例の患児のうち、29例がショック(心筋機能障害の生化学的エビデンスを伴う)を来し、強心薬および蘇生輸液を要した(29例中23例[79%]が機械的換気を受けた)。13例は米国心臓協会(AHA)の川崎病の定義を満たし、23例はショックや川崎病の特徴を伴わない発熱および炎症所見を有していた。8例(14%)には、冠動脈拡張と冠動脈瘤が発現した。 PIMS-TSを川崎病および川崎病ショック症候群と比較したところ、臨床所見や検査値の特徴に違いが認められた。たとえば、PIMS-TSは、これら2つの炎症性疾患に比べ年齢中央値が高く(PIMS-TS:9歳[IQR:5.7~14]vs.川崎病:2.7歳[1.4~4.7]vs.川崎病ショック症候群:3.8歳[0.2~18])、CRP中央値(229mg/L[IQR:156~338]vs.67mg/L[40~150]vs.193mg/L[83~237])などの炎症マーカーが高値を示した。 著者は、「これらの知見は、重篤なPIMS-TSで入院した患児の臨床的特徴を示しており、この明らかに新しい症候群の実態を理解するのに役立つだろう」としている。

4412.

高齢者へのアスピリンにうつ病予防効果なし

 うつ病は炎症の増加に関連しており、とくに高齢者においてはうつ発症前に炎症が生じる可能性がある。いくつかの前臨床データはアスピリンの潜在的な抗うつ効果を示唆しており、アスピリン治療を受けた人はうつ病の発生率が低いことを示唆する限定的な観察データもある。オーストラリア・The Institute for Mental and Physical Health and Clinical TranslationのMichael Berk氏らによる、低用量アスピリン(100mg)が健康な高齢者のうつ病リスクを低下させるかを見た研究の結果によると、リスク低下の効果は見られなかったという。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年6月3日号掲載の報告。 この二重盲検プラセボ対照ランダム化試験は、高齢者におけるアスピリンが認知症と障害のない健康寿命を延長するかどうかを調べたASPREE試験のサブ解析で、事前に指定された二次転帰はうつ病だった。オーストラリアにおける70歳以上の全人種/民族、米国における70歳以上の白人および65歳以上黒人/ヒスパニック系が含まれた。参加者は、アスピリン(100mg/日)群とプラセボに群に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は4.7年(四分位範囲:3.5~5.6)、主要評価項目は大うつ病性のプロキシでうつ病自己評価尺度スコア(CES-D-10)の8以上だった。 主な結果は以下のとおり。・1万9,114例が登録され、9,525例がアスピリン、9,589例がプラセボ群に割り付けられた。平均年齢はアスピリン群で75.2(SD4.0)歳、プラセボ群で75.1(4.5)歳であった。・女性が9,531(56.4%)で、参加者の人口統計とベースラインにおける臨床的特徴はグループ間で類似していた。・年間7万9,886回のCES-D-10測定が行われ、参加者1人あたり平均4.2回の測定が行われた。・年1回の通院においてCES-D-10スコア8以上となった患者の割合は、アスピリン群とプラセボ群で有意差はなかった。・CES-D-10スコア8以上の新たな発生率(/1,000人年)は、アスピリン群で70.4、プラセボ群で69.1〔ハザード比:1.02(95%信頼区間:0.96-1.08、p=0.54)〕でこちらも有意差はなかった。

4413.

第11回 GLP-1製剤の自由診療問題と教科書的な生活習慣改善指導との共通点

痩せてスリムな体になりたいというのは比較的万人に共通した願望ではないだろうか。とりわけ年齢を経れば代謝が低下し、太りやすくなるため、中年太りを解消したいという人は私の周りでも少なくない。ところが食事療法、運動療法は大変だから、なるべく楽に痩せたい。そんな「夢」を逆手に取る行為に日本医師会がご立腹のようである。6月17日の定例会見で、日本医師会(以下、日医)副会長の今村 聡氏が、一部の医療機関においてダイエット向けに糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬を自由診療で処方していることを問題視し、そのことが報じられた。確かに好ましい話ではない。だが、こうした適応外処方の自由診療、あるいは薬の個人輸入代行業はかなり前から跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している。実際、私も知人から個人輸入代行で痩せる薬を入手したと見せられたことがある。この時、見せられたのは抗てんかん薬のトピラマート(商品名:トピナ)である。てんかん専門医から肥満傾向のてんかん患者には使いやすいと聞いたことがあるが、こんな難しい薬が医師の管理もなく、ダイエット目的で入手できるのだと改めて驚いたものだ。これ以外にも同じく糖尿病で使われるSGLT2阻害薬も痩せ薬としてアンダーグラウンドで取引されていると聞いたことがある。GLP-1受容体作動薬の場合、既に海外で肥満症治療薬として承認されているのは事実であり、日本国内でも臨床試験中。ちなみにGLP-1受容体作動薬をダイエット目的で処方している自由診療クリニックのホームページを見ると、海外で承認済みであることを強調しながら、「日本では製薬メーカーで治験が行われず、日本では未承認です(原文ママ)」と事実とは異なる記載をしている。記事中ではGLP-1受容体作動薬の副作用として下痢が記述されているが、むしろ私が危惧するのは低血糖発作のほうだ。そもそもダイエットをしている人は、言っちゃ悪いが極端な糖質制限など偏った食事をしている人が通常集団よりも多いと推察される。そんなところにGLP-1受容体作動薬を投与しようものならば、低血糖発作リスクは高いはずである。その辺を会見で今村氏が言及したかどうかは個人的に気になる。というのも、痩せたい願望が強い人にとっては、下痢レベルの副作用を無視することは十分に考えられる。結果として、逆にこの記事が「寝た子を起こす」がごとく、痩せたい願望を持つ人への誘因になってしまう可能性すらある。(ちなみに日本医師会の定例記者会見は決まった企業メディアにしか参加が認められていない。企業メディアの場合は新たに参加が認められるケースもあるが、フリーランスは実績にかかわらず参加不可。私も過去に広報部門に参加を希望したが一蹴されている)問題のある自由診療はGLP-1だけじゃないしかし、このニュースに私は割り切れないものを感じてしまう。確かに今回のGLP-1受容体作動薬の自由診療による処方は問題ありだし、警告すべきものとは思う。しかし、従来から自由診療では、問題がある治療が行われていることをまさか日医執行部が知らぬわけはないだろう。代表例ががん患者に対する細胞免疫療法。要は患者から採取したT細胞などを増やし、活性化させて体内に戻してがんと戦わせるという「治療」だ。だが、これらは科学的エビデンスが確立されていないのは周知のこと。近年、血液がんを対象に承認されたキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)のキムリアなどの成り立ちを見ても分かるように、ヒトのT細胞を抽出してちょっとやそっと増やしたりして体内に戻しても生存期間延長や治癒など得られないことは医師ならばわかるはずだ。しかし、がん終末期の患者が藁をもすがる思いで1回数十万円から百万円超ものこの「治療」に貴重なお金を注ぎ、期待したであろう効果を得られず患者が亡くなっている現実はもう30年以上横行している。むしろ例え事実上「糠に釘」でも日医が警鐘を鳴らし続けることが望ましいのではないだろうか。生活習慣改善指導は教科書的でいいのか?それ以上に割り切れないと思う点もある。それは痩せたい人への事実上の医療不在である。ちなみにここでいう痩せたい人とは、単に美容のために痩せたい人を意味するのではなく、疾患あるいはその予備群、代表例を挙げると生活習慣病で肥満傾向を持つ人などだ。患者の立場ならば、医師からなるべく体重を減らすため、過食を止め、運動するよう「指導」された経験のある人はいるだろう。だが、誤解を恐れずに言えば「そう言われただけ」の人がほとんどのはずだ。具体的にどんな運動をどれだけやればいいか、過食を止めるためにどうすれば良いか、何をどのように食べるべきか、単に教科書的文章の読み上げではなく、自分の生活に合わせてどのようにすればよいかを具体的に指導を受けた経験がある人は稀ではないだろうか?そのことをうかがわせる実例として、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」を挙げよう。同ガイドラインは書籍として総ページ数は約380ページだが、食事療法、運動療法に関する記述ページはその1割弱。内容はほぼ国内外のエビデンスをさらりと紹介している程度である。多くの経口糖尿病治療薬の添付文書には判で押したように「本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること」という記載がありながら、医師による食事療法、運動療法の指導も判で押したような教科書的なものばかりだ。もちろん個々の患者に合った運動療法、食事療法を指導することも、それを患者が継続することも容易でないことは分かるが、現状はあまりに受け皿がなさすぎるなかで、自由診療だけをとがめるのは穴の開いたバケツで水をくむようなものである。実際、私も経験がある。血液検査の結果、中性脂肪が若干正常上限値を上回っていた時のことだ。医師から次のように言われ、ポカン口状態になった。「肉、魚、卵はできるだけ控えるように」は? 何食べればいいんですか? 大豆? 豆腐? 納豆? 肉、魚、卵はできるだけ控えたら外食では食べるものがない。私たちが聞きたいのは、たとえば「お肉は脂身を残して量は少なめにして、その代わりに豆腐などを副菜に取り入れて」などより具体的なことである。幸いこの中性脂肪高値は一時的なものだったが、後に尿酸値の8.1mg/dLという検査結果に飛び上がらんばかりに驚いたことがある。この時の医師も某ジェネリック医薬品メーカーが作った高尿酸血症・痛風患者向けの冊子の内容を棒読みするだけだった。体重を減らす飲酒を控えるプリン体摂取を控える毎日2Lの飲水唯一棒読みではなかったのは、「体重を減らす」と言った後に「フフッ」と笑ったことぐらい。要はみんなできないんだよねという意味だろう。しかし、私はこれにややカチンときた。さらに飲酒は好きだし、控えるのは限界がある。プリン体をとりわけ多く含む食品はそもそも日常的にそれほど摂取機会がない。ということで体重減少と2L飲水に取り組んだ。いわば「おいしく楽しく酒を飲み続けるため」にそうしたのだ。詳細は省くが1年7ヵ月で14kg減。尿酸値も正常化している。だが、この間、運動をどう習慣化すればいいのか、その内容をどう変化させるかなど試行錯誤の連続。ちなみに一見簡単そうな飲水2Lのほうが楽しくもなく、習慣化までに苦労した。今この原稿を執筆中の傍らに1.5Lと600mLのペットボトルがある。こうしたことで医師などから工夫の伝授や励ましがあれば、どれだけ助けになっただろうと今も時々思う。こうした医療不在の隙を自由診療の囁きが埋めてしまっているのが現実ではないだろうか。このように書くと、「医師に何でも求めないで欲しい」と言われるかもしれないが、ならば医師から対応可能な職種へ繋ぐシステムが欲しいと思う。もちろんそうした職種への報酬の財源は医科診療報酬のプラス幅をやや抑えて捻出する。まあ、日医執行部が最も反発しそうではあるが。

4414.

扁平上皮肺がん、カルボプラチン+S-1導入療法後のS-1維持療法の有用性(WJOG7512L)/Cancer

 扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の導入療法後の維持療法について、S-1療法が有用である知見が報告された。近畿大学の田中 薫氏らによる第III相臨床試験「WJOG7512L試験」の結果、化学療法未施行の進行・再発扁平上皮NSCLC患者において、カルボプラチン+S-1導入療法後のS-1による維持療法は、支持療法(BSC)のみの維持療法と比較して有効であり忍容性も良好であることが認められたという。Cancer誌オンライン版2020年6月2日号の掲載報告。 研究グループは、化学療法未施行の進行・再発扁平上皮NSCLC患者を対象に、導入療法としてカルボプラチン(AUC5、1日目、3週ごと)+S-1(1回40mg/m2×2/日、3週ごと)併用療法を施行し、4サイクル後に進行しなかった患者をS-1+BSC群またはBSC群に無作為に割り付けた。 本試験の主な目的は、無増悪生存期間(PFS)に関してBSCに対するS-1+BSCの優越性を確認することであった。 主な結果は以下のとおり。・365例が登録され、347例が導入療法を受け、このうち131例が無作為化された(S-1+BSC群67例、BSC単独群64例)。・S-1+BSC群ではBSC単独群より進行のリスクが有意に低かった(ハザード比:0.548、95%信頼区間:0.374~0.802、p=0.0019)。・維持療法中のS-1による主な有害事象は、食欲不振、貧血、疲労などで、ほとんどは重症ではなかった。

4415.

ディスアナプシスは高齢者のCOPDリスクを増大/JAMA

 気道サイズと肺胞の大きさが不均衡のディスアナプシスは、高齢者の慢性閉塞性肺疾患(COPD)と有意に関連しており、肺の大きさに比して下気道樹径が小さいほどCOPDのリスクが大きいことも示された。米国・コロンビア大学のBenjamin M. Smith氏らが、2件のコホート試験と1件のケースコントロール試験を基に、後ろ向きコホート試験を行い明らかにしたもので、結果を踏まえて著者は、「ディスアナプシスはCOPDのリスク因子と思われる」とまとめている。COPDの主要なリスクとして喫煙があるが、COPDリスクの大部分は不明のままである。研究グループは、高齢者において、CT画像診断で確認したディスアナプシスがCOPDの発生およびCOPDにおける肺機能低下と関連しているかを調べる検討を行った。JAMA誌2020年6月9日号掲載の報告。ディスアナプシスと、COPD発症率やCOPD患者の肺機能低下との関連を検証 研究グループは、2010~18年に米国6ヵ所で行われた「アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA)肺試験」(被験者数2,531例)と、2010~18年にカナダ9ヵ所で行われた「カナダコホート閉塞性肺疾患」(CanCOLD、被験者数1,272例)の2件のコミュニティーベースのサンプル、および2011~16年に米国12ヵ所で行われたCOPDのケースコントロール試験「COPDの部分母集団と中期アウトカム尺度に関する試験」(SPIROMICS、被験者数2,726例)を基に、後ろ向きコホート試験を行い、CT画像診断で確認したディスアナプシスと、高齢者のCOPD発症率や、COPD患者における肺機能低下との関連を検証した。 ディスアナプシスは、標準的な解剖学的部位19ヵ所で測定した幾何学的平均気道内腔を、肺容積で割り定量化した(気道/肺比)。 主要アウトカムはCOPDの発症率で、気管支拡張薬投与後の1秒率(FEV1:FVC)が0.70未満で、呼吸症状を伴う状態と定義した。副次アウトカムは、肺機能の縦断的変化だった。 全分析結果について、人口統計学的要因や標準的COPDリスク因子(喫煙や受動喫煙、職業性・環境汚染、喘息)で補正を行った。気道/肺比の格差、FEV1低下幅には関連せず MESA肺試験被験者2,531例の平均(SD)年齢は69歳(9)で、女性は1,334例(52.7%)だった。COPD患者は237例(9.4%)で、平均(SD)気道/肺比は0.033(0.004)、平均(SD)FEV1低下幅は-33mL/年(31)だった。COPDを有していなかった被験者2,294例において、追跡期間中央値6.2年の間に新たにCOPDを発症したのは、98例(4.3%)だった。 気道/肺比が最高四分位群の被験者と比べて、最低四分位群のCOPD発症率は有意に高率だった(1,000人年当たり9.8 vs.1.2、率比[RR]:8.12、95%信頼区間[CI]:3.81~17.27、率差:8.6/1,000人年、95%CI:7.1~9.2、p<0.001)。一方で、FEV1低下幅について有意差はみられなかった(−31 vs.−33mL/年、群間差:2mL/年、95%CI:-2~5、p=0.30)。 CanCOLD試験被験者1,272例の平均(SD)年齢は67歳(10)、女性は564例(44.3%)だった。追跡期間中央値3.1年の間にCOPDを発症したのは、113/752例(15.0%)、平均(SD)FEV1低下幅は-36mL/年(75)だった。 気道/肺比が最高四分位群の被験者と比べて、最低四分位群のCOPD発症率は有意に高率だった(1,000人年当たり80.6 vs.24.2、RR:3.33、95%CI:1.89~5.85、率差:56.4/1,000人年、95%CI:38.0~66.8、p<0.001)。一方で、FEV1低下幅について有意差はみられなかった(-34 vs.-36mL/年、群間差:1mL/年、95%CI:-15~16、p=0.97)。 SPIROMICS被験者のうち、追跡期間中央値2.1年でCOPDを発症したのは1,206例で、平均(SD)年齢は65歳(8)、女性は542例(44.9%)だった。そのうち気道/肺比が最低四分位群の平均(SD)FEV1低下幅は-37mL/年(15)で、MESA肺試験被験者の低下と有意差はなかった(p=0.98)。一方で、最高四分位群の低下幅は、MESA肺試験被験者の低下幅と比べて有意に大きく、低下が急速に起きていたことが判明した(-55mL/年[SD 16]、群間差:-17mL/年、95%CI:-32~-3、p=0.004)。

4416.

FDA、小細胞肺がんにlurbinectedinを承認

 FDAは、2020年6月15日、プラチナベース化学療法中/後に進行した転移のある小細胞肺がん(SCLC)の成人の治療について、lurbinectedin(Jazz PharmaceuticalsおよびPharmaMar)を迅速承認した。 この承認は、プラチナベース化学療法後に進行したSCLCの成人105例を対象とした、非盲検多施設単一群試験の単剤治療データに基づいている。この研究では、lurbinectedinの研究者評価の全奏効率は35%、奏効期間中央値は5.3ヵ月であった。lurbinectedinの頻度の高い(≧20%)治療関連有害事象は、白血球減少症、リンパ球減少症、疲労、貧血、好中球減少症、クレアチニン増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、グルコース増加、血小板減少症、悪心、食欲低下、筋骨格痛、アルブミン減少、便秘 、呼吸困難、ナトリウムの減少、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、嘔吐、咳、マグネシウムの減少、下痢であった。

4417.

CDK4/6i治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がん、alpelisib併用が有効性示す(BYLieve)/ASCO2020

 CDK4/6阻害薬を含む治療歴のあるホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対し、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用療法が、臨床的有効性を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が第II相BYLieve試験の結果を発表した。・対象:CDK4/6阻害薬を含む治療後に増悪した、PIK3CA遺伝子変異陽性、ECOG PS≦2、測定可能病変あるいは溶骨性病変を有する、男性あるいは女性(閉経後/閉経前)のHR+/HER2-進行乳がん患者 ・試験群(コホートA):直前の治療としてCDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬(AI)の投薬を受けた患者 alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mgを1サイクル28日でDay1に投与(1サイクル目のみDay1、15)※BYLieve試験ではコホートB(直前の治療がCDK4/6阻害薬+フルベストラントの患者、alpelisib+レトロゾールを投与)およびコホートC(AIで増悪後全身化学療法を受けた患者または直前の治療が内分泌療法だった患者、alpelisib+フルベストラントを投与)についても登録中。今回はコホートAの結果について発表された。・評価項目:[主要評価項目]RECISTv1.1に基づく6ヵ月時点の各コホートでの無増悪生存率[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、PFS2、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2017年8月14日~2019年12月17日に、少なくとも6ヵ月以上の追跡期間のある患者127例がコホートAに登録された(追跡期間中央値は11.7ヵ月)。このうち、PIK3CA遺伝子変異陽性が確認された121例が解析対象とされた。・ベースライン特性は女性が100%、年齢中央値は58歳(範囲:33~83)。白色人種63.8%、アジア人種9.4%、黒色人種4.7%。ECOG PS 0が62.2%であった。・転移病変に対する治療歴数0(術後療法としてCDK4/6阻害薬を投与)が11.8%、1が70.1%、2が16.5%、3が1.6%。転移病変に対する内分泌療法歴数0が11.8%、1が77.2%、2が11.0%であった。・試験登録時のprimary endocrine resistance(転移・再発乳がんに対する一次内分泌療法を開始して6ヵ月以内にPD、または術後内分泌療法を開始して2年以内の再発)症例が20.5%を占めていた。・6ヵ月時点の無増悪生存率は50.4%(95%信頼区間[CI]:41.2~59.6)となり、あらかじめ設定された95%信頼区間の下限(>30%)を超え、臨床的有効性が示された。・PFS中央値は7.3ヵ月(95%CI:5.6~8.3)であった。・ORRは17.4%、CBRは45.5%。CRは0例、PRは21例、SDは55例であった。・Grade 3以上の有害事象は、高血糖28.3%、発疹9.4%、下痢5.5%など。有害事象による治療中止は20.5%で起き、治療中止につながった有害事象で最も多かったのは皮疹であった(3.9%)。・抗ヒスタミン薬を事前に投与されなかった患者(117例)で皮疹が発生しなかったのは53.0%だったのに対し、事前に投与された患者(10例)では70.0%で発生せず、またGrade 3以上の皮疹の発生率も低かった(21.4% vs.10.0%)。同様の傾向がSOLAR-1試験でも観察され、予防的抗ヒスタミン剤が皮疹の発生と重症度を低下させる可能性があることが示唆された。・米国Flatiron Health Foundation Medicineのデータベースを利用した、リアルワールドデータとのマッチド解析の結果、リアルワールドでの標準治療と比較して、コホートAの治療法はPFSを改善した。 SOLAR-1試験において、CDK4/6阻害薬による治療歴のあった少数のサブグループでは、alpelisib併用群で6ヵ月時点の無増悪生存率は44.4%、PFS中央値は5.5ヵ月であった。研究者らは、今回のBYLieve試験からの報告はSOLAR-1試験の結果をサポートするもので、CDK4/6阻害薬治療後のalpelisibとフルベストラントの併用療法が、臨床的に意味のある有効性と管理可能な毒性を示したとまとめている。

4418.

第12回 さよならN95マスク!? 米国病院でのP100フィルターマスク導入

目下の新型コロナウイルス感染(COVID-19)流行で使い捨てのN95マスクが不足し、多くの医療施設はメーカーの推奨使用期間を超えて長く使えるように消毒して再利用する取り組みを始めました。しかし消毒して再利用する手順は実に負担が大きく、しかもN95マスクを消毒できる回数はたかが知れています。米国ペンシルベニア州ピッツバーグを本拠とする医療網Allegheny Health Network(AHN)も、2万人以上が働く合計2,200床ほどの9つの病院でN95マスクを消毒して繰り返し使用する体制をいったんは整えました。しかし消毒後の接顔不良を訴えるスタッフが多くいました。それに費用負担の問題も解決しません。そこでAHNはN95マスクに見切りを付け、ほぼ際限なく繰り返し使えるガスマスク様のP100フィルター付きエラストマー製マスク(以下、エラストマーマスク)の導入に踏み切ります1)。エラストマーマスクは柔軟で顔に隙間なく装着できるゴム様の素材でできており、繰り返し洗浄できます。米国疾病管理センター(CDC)によるとN95マスクと同等かそれ以上の空気中の感染物質からの保護性能を誇り、P100フィルターは空気中の浮遊粒子をほぼ100%遮断します。AHNは、鼻と口を覆う半顔面エラストマーマスクを3月末から試しに1ヵ月間使ってみました。まずはAHNの9つの病院でCOVID-19患者に最も多く接するスタッフに提供されました。最初は共有されましたが、十分に手に入るようになってからは1人に1つが充てがわれ、各々がメーカーの説明書に沿って使用のたびに消毒をして次の使用に備えました。Journal of American College of Surgeons(JACS)誌に掲載されたAHNの医師等の報告2)によると、約2,000人(1,962人)が試着をしてほぼ全員(94%;1,840人)が自分に合うものが見つかるか合うように調節できました。合うものがどうしても見つからなかったスタッフには、N95マスクか他の通気手段が提供されました。1ヵ月使用した後でN95マスクに戻ることにしたスタッフは1人もおらず、N95の出番はほぼ無くなりました(N95マスクの使用が95%減少)。AHNのある1つの病院における、18床の集中治療室(ICU)での比較の結果、月1回のP100フィルター交換による半顔面エラストマーマスク使用は安上がりであり、1ヵ月あたりの費用は控えめに見積もってもN95マスクのわずか10分の1で済みました。エラストマーマスクはN95マスクと違って試着して合わなかったものがゴミになることはなく、しかも長く使うほどより安上がりになります。N95マスクを消毒して再利用する取り組みをしている病院なら、新たな負担なく導入できることもエラストマーマスクの利点です。エラストマーマスクは将来の流行に備えて保管可能であり、医療スタッフそれぞれが身につける防護具一揃いに不可欠とみなすべきとAHNの医師/最高医学責任者Sricharan Chalikonda氏はJACS報告で結論しています。参考1)Elastomeric masks provide a more durable, less costly option for health care workers2)Chalikonda S, et al. J Am Coll Surg. 2020 June 11. [Epub ahead of print]

4419.

HER2陽性DCISへの放射線療法、トラスツズマブの上乗せ効果は?(NSABP B-43試験)/ASCO2020

 乳房温存手術を受けHER2陽性非浸潤性乳管がん症例(DCIS)において、術後放射線療法にトラスツズマブを併用投与することの有用性を検討したNRG oncology/NSABP B-43試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で米国・Rush University Cancer CenterのMelody A. Cobleigh氏より発表された。本試験はNSABP臨床試験グループが実施した、オープンラベル第III相無作為化比較試験である。・対象:中央判定によりHER2陽性が確認されたDCIS患者(切除断端陰性)・試験群:放射線療法(全乳房照射±ブースト照射)にトラスツズマブの併用投与(RT群) トラスツズマブは初回8mg/kg、その後は3週間隔で6mg/kgを放射線療法に併用投与・対照群:放射線療法(全乳房照射±ブースト照射)のみ(R群)・評価項目:[主要評価項目]同側乳房内再発(IBTR)の発生率[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、非再発生存期間(RFI)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2008年12月~2014年12月に7,888例が検査され、そのうち2,751例(35%)がHER2陽性と判定され、2,014例が無作為割り付けされた。さらにそのうち1,998例(99.2%)のデータが収集でき、 その追跡期間中央値は79.2ヵ月であった。・両群間に、患者背景(年齢、核異型度、閉経状況、ホルモン療法の併用率)のばらつきはなかった。・IBTR発生率は、RT群で5.0%、R群で6.3%、ハザード比(HR)は0.805(95%CI:0.557~1.165)、p=0.26であった。・IBTRの累積発生率は5年時点でRT群が3.9%、R群が4.9%で、HR 0.81、p=0.26であった。これを、再発が浸潤性がんか非浸潤性がんかで分けて調べたところ、浸潤性では5年時点でRT群1.2%、R群1.4%で、HR 1.11、p=0.74であり、非浸潤性ではそれぞれ2.9%と4.1%、HR 0.68、p=0.10であった。・5年時DFS率はRT群90.6%、R群88.4%、HR 0.84、p=0.13であった。・5年時OS率はRT群99%(死亡22例)、R群98.9%(死亡26例)で、HR 0.85、p=0.59であった。・IBTRに関するサブグループ解析(閉経状況、ホルモン療法の投与状況、核異型度など)でも、両群間に統計学的な有意差は検出されなかった。・Grade3の有害事象がRT群は4.9%、R群は3.9%であった。また、各群2例ずつGrade3の心機能障害が認められた。またR群で1例、浸潤性のIBTRが認められ、その症例は術後療法(アントラサイクリン、タキサン、トラスツズマブ)を受けた後、急性骨髄性白血病を発症した。 演者のCobleigh氏は「DCISに対する放射線療法へのトラスツズマブの併用は、統計学的な有意差は示せなかったものの、19%のIBTR抑制を示し、毒性も低かった。今後の研究はゲノム分類などを用いて、より高リスク群に焦点を当てるべきだろう」と述べた。

4420.

治療抵抗性統合失調症に対するルラシドンの精神病理および認知機能への効果

 クロザピンに加え、薬理学的にクロザピンに類似した他の非定型抗精神病薬(たとえばオランザピン、リスペリドン、melperone)も、治療抵抗性統合失調症(TRS)に対する有効率は40%未満である。米国・ノースウェスタン大学のHerbert Y. Meltzer氏らは、TRS患者に対する非定型抗精神病薬ルラシドンの精神病理および認知機能への有用性を検討するため、6ヵ月間の試験期間中に2つの用量での比較を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2020年5/6月号の報告。 ルラシドン80mg/日による6週間のオープン試験(第I相試験)期間中に精神病理学的な改善が認められなかった患者をTRSと定義した。その後、TRS患者をルラシドン80mg/日または240mg/日に割り付け、24週間のランダム化二重盲検試験(第II相試験)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計およびサブスケールスコア、7つの認知機能領域のうち処理速度と実行機能の2つにおいて、用量依存的ではない有意な改善が認められた。・対象患者67例中28例(41.8%)において、PANSS合計スコアの20%以上の改善が認められた。・治療反応患者28例中19例(67.9%)において、第II相試験の6~24週目に最初のPANSS合計スコア20%以上の改善が認められた。この患者の中には、過去にクロザピンで治療不応であった患者が一部含まれていた。 著者らは「TRS患者に対するルラシドンの改善効果は、これまでに報告されたクロザピン、melperone、オランザピン、リスペリドンの効果と同等であった。ルラシドン80mg/日においてもTRS患者に有効であったが、より長い治療期間が必要とされる。今後、TRS患者に対するルラシドンとクロザピンの直接比較試験が待ち望まれる」としている。

検索結果 合計:10324件 表示位置:4401 - 4420